A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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みなさんココまで読んで分かっているでしょうが、私の推しメンのメイン回ですので、気合い入れすぎて前後編になりました。

更にクウガの大好きな要素もココに持ってきたので余計にドーーンと熱量込めてます。




二章3話 相思

 襲撃が始まっても変わらない、勇者たちの訓練と勉学の日々。

 その休み時間に、珠子と杏は1つのイヤホンを共有して互いの好みの音楽の良さを主張しあっていた。

 

「ロックだろ!」

「バラードだよ」

 

 

 

 

「2人は本当に仲が良いですよね、見ていて微笑ましくなります」

 

「うんうんっ、まるで姉妹みたいだよね!」

 

「そうだね、俺もあの2人が出会ってすぐの頃からの付き合いだけど、あの2人は最初からすごく仲が良かった。正反対だからこそ、ってことなんだろうね」

 

 そんなことを言う陸人を、ひなたたち4人が揃って見つめる。お前が言うのか……と。

 

「……そう言うあなたも、あの2人とはかなり仲良く見えるけど……?」

 

「ああ、まるで三人兄妹のようだ。陸人が1番上。次が杏。末っ子が球子……うん、しっくりくるな」

 

 

 

 

「……ってオーイ! おかしいだろその順番! 2番はタマだろ、普通」

 

「えー、タマっち先輩がお姉さん? それは、想像しにくくない……?」

 

 音楽鑑賞を終えた球子と杏が話に入る。結局互いのオススメを聴いてみる、という結論に落ち着いたようだ。

 

 

「まぁ、順番はともかく、タマたち3人はそこらの兄妹よりずーっと仲良しだからな、そう思うのも無理はない」

 

「うん、3年前のバーテックス侵攻からの付き合いだもんね」

 

「そういえば、概要は知っていますが、その時のことを当人から聞いたことはありませんでしたね。話せる範囲で、聞かせてもらえますか?」

 

「分かりました。私は──」

 

 

 

 杏は流れるように言葉を紡ぐ。

 

 ──幼い頃、体が弱く、学校にもまともに通えない時期があったこと──

 

 ──そのせいで同じ学年をやり直すことになり、学校に馴染めなくなったこと──

 

 ──そんな折の侵攻の夜、球子と出会い、その強さと凛々しさに憧れたこと──

 

 ──球子という王子様のおかげで、今の自分があること──

 

 

 話が一区切りついた頃には、球子の顔は完全に茹で上がっていた。

 

「……べ、別にそんな大したことはしてないだろ……あんずはこんなに可愛いんだからさ、守ってやりたくなるのは当然だろ」

 

「うん、それでこそ王子様だよ。球子ちゃん」

 

「うっ、うるさいぞ、陸人! タマの話は終わりだ、終わり! あんず、陸人のことはどう思ってるんだ⁉︎」

 

「……えっ、ええぇっ⁉︎」

 

 自分の話題から離れたい一心で、球子はとんでもないキラーパスを出す。陸人は男子である。そして目の前にいる。そんな相手を「どう思っているか」というのはいくらなんでも酷である。

 静まりかえる教室。球子も自分の失言に気づいた頃、重たい空気を打ち破った勇者は当事者の1人、陸人だった。

 

「……あー、俺、予定があるんだ。ちょっと出てくるね」

 

 訂正、逃げの一手だった。しかし元々この後抜ける予定だったのは事実で、みんなもそれを知っていた。少し予定を早めただけなのだ。

 全員分の恨めしげな視線を背中に感じながら、陸人は教室を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで? 当人がいなくなったから改めて聞くけど、伊予島さんはどう思ってるの……? 伍代くんのこと……」

 

 千景のその発言に全員が驚いた顔をする。話をぶり返すなら、少なくとも千景以外の誰かだと誰もが思っていたからだ。

 

「……別に、暇つぶしの興味本位よ……真面目に答えようとしなくてもいいわ……」

 

 

「……え、えっと、陸人さんは、3年前からずっと私のことを守って、優しくしてくれて……でもそれは、私が特別なわけじゃないんです。陸人さんにとっては、誰かを助けるのは当たり前のことで……たまたま勇者として一緒にいることが多いから、仲良くしてもらってるだけというか……」

 

 球子が王子様なら、陸人は騎士様だ。杏はそう思う。特定の個人に忠を尽くすのではなく、もっと広く守る救国、救世の騎士。勇者と置き換えることもできるかもしれない。

 

「そんなこと分かってるのに……ちょっと優しくしてもらえると嬉しくなって……名前を呼ばれるだけで気持ちがフワフワして……頭を撫でてもらうと心がポカポカして、いつでも誰かのために頑張ってる陸人さんが、私は──」

 

 そこまで言って、杏は黙り込む。本人もここまで口に出すつもりはなかったのかもしれない。

 薄々感づいてはいたが、杏の口からここまでの言葉が出てくるとは誰も思わず、千景含む全員が言葉に悩む。

 

 

 

 

 そんな静寂の中、始業のチャイムが教室に響く。

 今ほどこの音に感謝することはないだろう。適当な言葉とともにそれぞれが自分の席に戻る。

 1分ほどして入ってきた教師役の大社職員は、なんとも言えない教室の雰囲気に首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ああああぁぁぁぁ……、言っちゃった、言っちゃったよ〜)

 

 伊予島杏は後悔していた。先ほどの自分の発言すべてを。

 なぜあそこまで暴露してしまったのか、誰もそこまで本気で聞いてはいなかったのに。

 この後どんな顔をして陸人に会えばいいのか。いや、陸人は何も知らないのだから、いつも通りでいいのだが。自分と陸人を見る仲間たちの視線が怖い。そんなつもりではなかったのだ。

 

 そして、ある意味陸人以上に今顔を合わせづらい相手がいる。

 

(タマっち先輩……私の話を聞いて、どう思ったかな……?)

 

 彼女も陸人のことを憎からず思っている。少なくとも杏にはそう見えた。球子本人にその自覚があるかは分からないが、心穏やかでいるとは考えにくい。

 

(なんでこんなことに……恋愛小説じゃないんだから……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土居球子は混乱していた。先ほどの杏の発言すべてに。

 確かに自分を含めた3人の仲は特別良かったが、それは友情だと信じて疑うことはなかった。

 

 だが、思い返せば、自分は昔から恋愛感情というものをよく分かっていない。小学生の頃もクラスの女子の恋バナに馴染めず、男子に混ざって遊んでいる方が気楽だった。

 そんな遊び仲間の1人に告白されたこともある。訳もわからず断ってしまい、その後彼とは疎遠になってしまった。今になって考えると、友情と恋愛感情の区別がつかなかった自分にも非があったのではないかとも思う。

 その時の彼(仮に友くんとする)と陸人を比較してみる……

 

 仲は……まあ友くんとも良かったとは思うが、これまでの人生で杏と陸人以上の友達がいた覚えはない。

 

 イイやつだと思うかどうか……友くんは何かと話しかけてきて、楽しかったが、時折鬱陶しく思うこともあった。なるほど、アレは彼なりのアピールだったんだなと今更になって気づく。

 陸人は、時々難しいことを言うが、球子が理解できなければ、必ず言葉を変え、身振りも使い、最後にはなんとなく分かった気にさせてくれる。頭の悪さを自覚している球子にとって、彼の気遣いは嬉しいものだった。

 

 カッコイイと思うかどうか……友くんは、遊び仲間以外の対象としてみたことがなく、そんなことを考えもしなかった。

 陸人は、優柔不断なところこそあるものの、日常でも戦場でも、ここ1番でやるべきことをやってくれる。そんな彼に見惚れたことも、あったかもしれない。

 

(アレ? ……これは、マズイんじゃないか……?)

 

 考えれば考えるほど、陸人のイイところばかり浮かんでくる。そんなはずはない。彼にも欠点があって、そんな彼を自分はしょうがないヤツだと呆れて見ていたはずなのだ。

 

(そんなはずはない……ないんだ……! だってそしたら、タマはあんずと……!)

 

 必死に否定材料を探す球子。その姿は、側から見て明らかにドツボにはまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伍代陸人は心配していた。自分が戻った時の教室の空気を。

 あのまま話が終わったならそれでいい。だが、もしも女子特有の恋バナパーティが始まってしまっていたら……

 ちょっと想像しにくいメンツだが、姦しくなる人数の更に倍の女子が揃っているのだ。可能性はゼロではない。

 

(……っていうか、何を想像しているんだ俺は。うぬぼれ屋さんか……)

 

 なんとなく気まずさに耐えきれずに逃げてしまったが、仮に恋バナが始まっても、自分にはなんの関係もない。

 

 杏や他の誰かが自分のような優柔不断で流されやすく、なにより1()()()()()()()()()()()()()()()()()()をそんな対象としてみることはあり得ない。

 そう思うと、一気に気が楽になる。ちょうど丸亀城についたようだ。トラックの荷台が解放され、光が差し込む。

 

「……さて、お披露目だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後の授業を終え、あの空気感を時間という最強の武器で払拭した面々は、丸亀城を出たところで、聞きなれない音に釣られて車両入り口を見る。

 

 バイクに乗った少年が、こちらに近づいてきていた。

 ヘルメットで顔は隠れているが、アレは間違いなく陸人だ。

 

「なっ、なんだアレ⁉︎」

 

「……陸人さん、だよね?」

 

「バイク……? ひなた、何か聞いているか?」

 

「陸人さんが新装備を受け取る、とは聞きましたが……アレがそうなんでしょうか……?」

 

「……というか、バイクの免許って16からじゃないの……?」

 

「聞いてみればわかるよ! オーイ、りっくーん!」

 

 声をかけながら近寄る友奈。後を追う勇者たち。10mほど手前でバイクを停止させた陸人がヘルメットを外す。

 

「やーやー、驚いてくれたようでなにより」

 

「……素直に驚いたぞ……コレが、新装備、か?」

 

「うん、名前は『トライチェイサー』クウガとゴウラムとの三位一体の戦術を目的に作られた専用バイクだよ」

 

「クウガ専用かー、いいなぁ、カッコイイ!」

 

「……でも、あなたまだ14歳でしょう……? 免許とか、大丈夫なの……?」

 

「うん、正式な免許は取れてないんだ。だから公道では走れない。けど、大社の方で特別に許可を取ってくれてね。ココや大社本部のような、大社所有の施設内なら乗っていいんだよ」

 

「なるほど……そして樹海や壁外は今や法の外の世界と言ってもいい。陸人さんがバイクに乗っても問題ない、というわけですね」

 

「そういうこと。ちょっと前に計画を聞かされて、大社本部で運転の練習と座学をやってたんだ。驚かせようと思って内緒でね。で、今日全ての準備が終わったから、ここまでトラックで運んでもらったんだ」

 

 そう言って自慢げに車体を撫でる陸人。テンションが上がっているのか、いつもより態度が年相応だ。

 

「スゲーなー! なぁ陸人、ココなら乗ってもいいんだよな⁉︎ ちょっとタマを後ろに乗せて走ってみてくれよ!」

 

「あっ、ズルいよタマっち先輩。私も乗ってみたいのに……」

 

「あら、意外ですね。球子さんはともかく、杏さんがこういったものに興味があるとは」

 

「あ……えっと、それは……」

 

「ああ、この前杏ちゃんに借りた小説に、主人公カップルが二人乗りしてるシーンがあったね」

 

「〜〜〜っ! バラさないでくださいよ、陸人さん!」

 

「アハハ、ごめんごめん。じゃあ順番に乗せて走るよ、ジャンケンで決めよう?」

 

 球子、杏、友奈、意外なことに若葉も参加し、敷地内を回るだけだったが、大好評だった。

 

 

 

「……陸人さん……」

 

 ジャンケンでビリになった杏が、控えめに陸人に掴まりながら声をかける。

 

「どうかな? 俺じゃ役者不足だろうけど、小説の情景を少しは味わえてる?」

 

「……そんなことないです……陸人さんと一緒に乗れて、すごく楽しいです」

 

「そっか、良かったよ」

 

「……陸人さん……私のこと……」

 

 ──どう思っていますか? ──

 

 その先を口に出すことはできず、陸人が聞き返す。

 

「んー? 何か言った? 杏ちゃん」

 

「いえ、何でも──」

 

 ないです、と言おうとした瞬間、世界はその時を止めた。

 

「──樹海化……!」

 

「いっつも急だなぁ……けど、トライチェイサーは間に合った……!」

 

 勇者たちも慣れたもので、世界が植物に染まりきる頃には、合流を果たし、準備に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 樹海化が完了、勇者たちも変身を終え、臨戦態勢を整えた。

 マップを確認しようと端末を見た球子が、困惑の声を上げる。

 

「……オイオイ、何だこりゃあ……」

 

 そこには巨大な反応が2つ。それは即ち、進化体が2体いるということ。

 

 前回倒した矢を放つ進化体ともう一体、人の下半身のような形状の進化体が、並び立っていた。

 

 

 

 

 

 

 




ココで明確に原作より難易度引き上げてみました。

シリアス度を持ち上げて話の盛り上がりを狙った結果、タマちゃんうどんタマ事件はなかったことになります。

あのシーンが好きな方、申し訳ありません。

中学生の陸人くんにバイクを使わせるために、自分が思いついた理屈です……これくらい大社なら出来るだろうということで1つ……

次回もお楽しみに
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