A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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本日2度目!

前後編、ということで2話ともある程度まとまってから投稿したのでこんなペースで書けました。

前話を読まずに最新話のこっちに来てしまった方は、先に前話からどうぞ



二章4話 相愛

「思考して、対策するのはこっちだけじゃないってことだな……」

 

「どうする! 手分けするか⁉︎」

 

「その場合問題になるのは新顔の敵の能力が分からないことです……」

 

 2体の進化体という予想外の事態に、勇者たちは小型を始末しながら端末を用いた通信で作戦会議を行う。今の所2体とも動きを見せていないが、射撃型の進化体の厄介さを身をもって知っている勇者たちは一定の距離から踏み込めずにいた。

 

「このままじゃラチがあかない……俺が一当てして小さい方の出方を見るよ。バイクを使えば一撃離脱も出来る」

 

 そう言ってトライチェイサーに乗って人間の下半身のような形をした進化体に接近するクウガ。それを見た進化体は、クウガに背を向け、一目散に駆け出した。

 

「逃げた⁉︎」

 

「速いぞ、アイツ!」

 

「……待って、あの方向……!」

 

「まさか、神樹様狙い⁉︎」

 

「……俺が追う!」

 

 トライチェイサーは、樹海での走行を想定して悪路でもある程度速度を維持できるよう調整されていた。障害物を飛び越える二足歩行型と、スピードは互角。いや、僅かにトライチェイサーの方が上回っていた。だが、度々小型が進路を塞ぎにかかるため、その距離を縮めることができずにいた。

 

(このままじゃ神樹様が……!)

 

 もう1体がいる状況で使いたくなかったが、クウガは止む無く追撃戦に向いた力を使う。

 

 緑のクウガ。優れた感覚神経で遠くの敵を狙い撃つ射撃形態。

 

 その余りに鋭敏化される感覚の負荷により、制限時間がある諸刃の剣だ。その使用時間は僅か50秒。その限界を超えると強制的に変身解除。その後2時間変身できなくなるという致命的なデメリットを抱えている。

 

 専用武器『ペガサスボウガン』を形成し、進化体を狙うクウガ。

 その瞬間、沈黙を保っていた射撃型の進化体が、突如クウガに矢を斉射してきた。

 

「──ッ‼︎」

 

 クウガはトライチェイサーを蛇行させて矢を躱す。

 しかし、そこで二足歩行型から目を離したのが失策だった。急速反転からの飛び蹴り。それをまともにくらい吹き飛ばされるクウガ。

 

「グアッ! ……このっ!」

 

 バイクから転がり落ち、それでも無理な体勢から射撃を繰り出すも、アッサリと躱される。

 

 

 

 

 

 それを見た杏は、敵の狙いに気づいた。

 

「陸人さん、緑の変身を解いて!」

 

「──ッ!」

 

 杏の指示に反射的に赤に戻るクウガ。

 

 

 

「どういうことだ、杏?」

 

「今回の敵はクウガに狙いを絞っています。理由は分かりませんが、クウガの特性も理解しているようです。このままじゃ……」

 

 足が速い二足歩行型が突出することで、接近戦の弱さ、制限時間といった弱点を抱える緑の力を使わせる。そこを集中攻撃で叩き潰す。

 そして緑の力を解除したらすぐさま神樹に向かう。これの繰り返しでクウガを孤立させながら追い詰めることができる。

 

 これまでにない戦略的な動きに動揺する勇者たち。

 策略に気づいた時には既に勇者とクウガの間には足で埋めるには厳しい距離が開いてしまっていた。

 

「……どうするの……?」

 

「りっくんもだけど、このままじゃ神樹様も危ないよ!」

 

「精霊を使うか……? いや、それでも……」

 

 小型の波状攻撃で足止めされた勇者たちが焦る。

 追い込まれていくクウガを見た球子は、杏に声をかける。

 

 

 

 

「〜〜! あんず、速攻でなんか考えてくれ‼︎」

 

「ええっ? そんなこと言われても……」

 

 突然の無茶振りに動揺する杏。しかし、球子は真剣な瞳で杏を見つめ、繰り返す。

 

「頼む、あんず。タマの頭じゃダメなんだ! あんずが考えた作戦なら、タマはどんな無茶でもこなしてみせる! タマとあんずで陸人を助けるんだ‼︎」

 

 その言葉に、杏は以前の自分の言葉を思い出す。

 

 ──私は……勇者、伊予島杏は、これから先の戦いで、クウガ……伍代陸人さんを守ります。これは、私のワガママです──

 

 そうだ、自分は陸人を守ると誓った。ならば、そのために今できることは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 僅か数秒で策を構築した杏は、通信で指示を出す。

 

「…………陸人さん! ゴウラムを貸してください!」

 

「……杏ちゃん?」

 

「私たちで助けますから、信じてください!」

 

「……信じてるさ、いつだって!」

 

 クウガはゴウラムを呼び出し杏たちの元へ向かわせる。

 その隙に更に神樹に向かう進化体。思惑通りに動かされていると分かっていても、追うしかないクウガはバイクで追跡する。これまでにない苦戦に、陸人の心が摩耗していく。緑の力の制限時間は、既に10秒を切っていた。

 

 

 

 

「ゴウラムが来たぞ! あんず⁉︎」

 

「私とタマっち先輩で乗るよ! 若葉さんたちは、射撃型をお願いします」

 

「分かった。小型も含め、そちらに邪魔が入らないようにしよう!」

 

「……こちらは任せなさい……!」

 

「りっくんをお願い!」

 

 言葉を交わし、二手に分かれる勇者たち。

 射撃型の気を引くために積極的に仕掛ける若葉、友奈、千景。

 小型を撃ち落としながら、ゴウラムのトップスピードでクウガを追う球子と杏。

『クウガを助ける』その一心を共有した勇者たちは全てを語らずとも自分の役目を果たそうとする、本物の連携を体現していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珠子と杏は、進んで止まってを繰り返すクウガたちに追いつくことに成功した。

 杏の作戦は、ここで球子をクウガと合流させ、盾を備えたトライチェイサーとゴウラムからの二面射撃で足を止めるという手だった。しかし、ここで誰もが予想できなかった事態が発生する。

 

 

「……えっ? ゴ、ゴウラム⁉︎」

 

「んなぁっ⁉︎ ゴウラムが、割れたぁ⁉︎」

 

 トライチェイサーの真上に位置したゴウラムが、その体を2つに分けた。球子と杏は落下し、真下のトライチェイサーに乗り上げる。偶然か、ゴウラムの配慮か。前から球子、クウガ、杏の順に3人並んで無理矢理シートに着く。

 

「おわぁ! 球子ちゃん、杏ちゃん⁉︎」

 

「何だいきなり⁉︎」

 

「あっぶない……」

 

 訳もわからず3人乗りのまま走るトライチェイサー。その車体に、分離したゴウラムが合体する。

 

『トライゴウラム』

『馬の鎧』たるゴウラムと、鉄の騎馬と言えるトライチェイサーが合体した状態。速度と突進力に長けた、ゴウラムのもう1つの姿だ。

 

 

 

 

 

 

「よく分からんが、なんか行けそうだぞ! 陸人!」

 

「ああ、2人は足止めを狙ってくれ!」

 

「タマっち先輩、投げて! 私が当てるから!」

 

 球子が旋刃盤を投げる。その軌道を司るワイヤーを杏が撃ち抜く。曲芸じみた連携射撃によって、不規則な軌道で襲いかかる旋刃盤を避けることは、流石の二足歩行型にもできなかった。

 

 一瞬足を止めた進化体に、トライゴウラムが突撃する。その先端部に、エネルギーが収束していく。

 

「……出し惜しみはナシだ‼︎」

 

『いっ、けぇぇぇぇぇ‼︎』

 

『トライゴウラムアタック』

 トライゴウラム必殺の体当たりが、二足歩行型に直撃。粉砕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見事に強敵を撃破したクウガたち。しかし、無理矢理3人乗りしていたため、激突の反動を殺しきれなかった。現実世界ではあり得ない衝撃に空中に投げ出される3人。

 何とか2人を抱えて着地しようとしていたクウガは、遠くもう1つの戦場で、射撃型が若葉を狙っている瞬間を目撃した。

 

「──させるかっ!」

 

 瞬時に緑に変身。武器を構えて3連射。

『ブラストペガサス』射程と命中精度に優れた緑のクウガの必殺技が、矢を放とうとしていた発射口に直撃。もともと蓄積していたダメージと合わせて、射撃型は崩壊した。

 

 それと同時に限界を迎えたクウガは、空中でその変身を強制解除した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、陸人さん。口を開けてください」

 

「……杏ちゃん、そんなことしなくても……」

 

「でも利き腕使えないと食べにくいでしょう?」

 

「だ、大丈夫! 食べれるよ」

 

「そう言ってさっきから落としてばっかじゃんか。いいから大人しくしとけって。ほら、タマの分も分けてやるぞ、はい、ア〜〜ン」

 

「い、いいってば!」

 

 右腕を器具で固定している陸人の世話を焼く杏と球子。珍しく子供らしい反応を返す陸人を微笑ましく見ている仲間たち。

 

 あの後、陸人は生身でも構わず球子と杏を抱え込み着地……いや、落下し、無理な体勢が祟って右肩を脱臼した。アマダムの力で回復力が増幅されているとはいえ、しばらく右腕が使えない陸人の世話を買って出たのが杏と球子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今は、きっとこれでいいんだ……タマっち先輩が王子様で、陸人さんが騎士様で……私はお姫様なんて柄じゃないし、非力なりに2人と一緒に戦う仲間……)

 

 ──2人とも、怪我はない? ……良かったぁ──

 

 脂汗をかきながらもこちらを心配する陸人の顔。彼は何があっても変わらずにいてくれる。今回の戦闘で再認識した杏は、無理に答えを急ぐ必要はない、と結論づけた。

 

 ──いつか、この気持ちをどうしても先に進めたくなったその時は──

 

 そこまで想像して、杏は思考を中断。陸人の世話に戻った。

 

 

 

 

 

 そんな杏の内心を朧げに把握した球子も、とりあえず自分の感情の落とし所を見つけていた。

 

(あんずは陸人が好き……タマも陸人が……うん、きっと好きだ。けど、だからってそれでタマたちの友情がなくなるわけじゃない)

 

 これまでの自分の感情の全てが友情ではなかったのだろう。しかし、そこに友情がなかったわけではない。

 まだまだ未知のこの気持ちを抱えながら、これからきっと自分は嫌でも変わっていく。ならば今は、心地よいこの3人の関係を続けていきたい。球子と杏の結論は、とてもよく似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 陸人は2人の献身に困惑しながら、敵の動向について考えを巡らせていた。

 

(あのバーテックスの動き……クウガの能力を把握していたとしか思えない……実戦で使っていなかった緑の力まで……バーテックスは、いや、天の神はクウガについて知っている……?)

 

 先行きに不安を感じる陸人だったが、両側から聞こえる暖かい声が、暗い思考を吹き飛ばす。

 

「陸人さん、どうしました……? もしかしてケガが?」

 

「ナニッ⁉︎ 大丈夫か陸人!」

 

「ああ、ゴメン。何でもないよ、心配しないで」

 

「そうですか……? それじゃ……あ、あ〜〜ん……」

 

「ほらほら、早く食べないとうどん伸びるぞ、ア〜〜ン!」

 

 有難いがやりにくい2人の気遣いに苦笑しながら、諦めて差し出されるうどんを食べる陸人。

 

(そうだ……敵が何をしてこようが関係ない……俺がさらに強くなって、この子たちを守る……それだけだ)

 

 目の前の友達の尊さを再確認する陸人。彼は変わらない。大好きだから、大切だから守る。そのシンプルな意志1つで、彼は何度でも立ち上がれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 息をするように簡単に、人が死んでいく世界──

 

 それでも人が人を好きになる気持ちは、どの世界でも共通で──

 

 少年と少女たちは、今日も仲良く、睦まじく、微笑ましく、この世界に生きている。

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、トライゴウラム回です。

自分アレ大好きなんですけど、あまり活躍させる展開が思いつかないんですよね
ちなみに真鈴さんはじめ、大社の研究チームはこんな機能まるで知りませんでした。陸人からの報告で、改めて調査を行い、彼らの残業が確定しました。

今後の出番はどうなるのか?

次回もお楽しみに
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