A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
というわけである意味1番描きたかった3章が始まります。
原作との相違もデカイので、否定意見もあるかもですが、読んでみてもらえると嬉しいです。
「さて、それでは陸人のケガが完治したことを祝って……」
『かんぱーい!』
「……乾杯……」
常人を大きく上回る回復力でケガを完治させた陸人を中心に7人は食堂に集まっていた。
「しかし、本当に早く治ったな……」
「アマダムの力……凄まじいものですね」
「俺自身びっくりだよ……これについてはまだまだ分かってないことのほうが多いしね」
アマダムをその身に宿して3年以上が経過した今でも、不明なことが多すぎる。陸人自身はそれほど気にしていないが、大社の頭痛の種の1つである。
話題は最近の勇者の報道に移る。
「なんだかんだで、タマたちも有名になったもんだよなー」
「私たちの戦いが、町のみんなを元気づける事にもなるんだもんね! 頑張らなきゃ」
(……まだまだ足りない……もっともっとバーテックスを倒して……そうすれば……)
「ぐんちゃん?」
「……何でもないわ……高嶋さん……」
「私はちょっと緊張しますね……最近は街に出ると声をかけられることも多くて……」
「まあ、それも勇者の使命の1つだ。杏は苦手かもしれないが、こらえてくれ」
そう言う若葉自身、今の状況には適応しきれているとは言えない。
彼女が戦う理由は復讐──自分の友人や多くの人々を殺したバーテックスに報いを受けさせること。
もちろん人類を守る勇者のお役目を忘れたことはない。だがそれでも若葉の戦意の中心、芯となっているのは『何事にも報いを』という乃木の生きざまなのだ。
「若葉ちゃん」
「……む、なんだ、陸人」
考え込む若葉に話しかける陸人。
「今俺たちがこうして戦いをくぐりぬけているのは、若葉ちゃんがリーダーだからだよ。一番前に出て勇敢に立ち向かうその背中が俺たちに力をくれるんだ」
「な、なんだ急に。おだてても何も出ないぞ!」
「いや、だからこれからも一緒に頑張ろう、ってことだよ……もうちょっと俺たちを見てほしいかな、とも思うけどね」
陸人の最後の言葉は、よく理解できなかったが、不思議と頭の片隅にずっと残るものだった。
「……白鳥さん、大丈夫か……?」
「……え、ええ……平気ですよ? ちょっとバーテックスがしつこかっただけです」
「……そうか……こちらも度々襲撃があるが、諏訪でもまたバーテックスが活性化しているか」
「そうですね。結局奴らが大人しくしていた期間に何かが起きたというわけではないですし……何だったのかしら……」
諏訪との勇者通信、白鳥歌野の声からはいつもの元気が感じられなかった。戦闘の疲労を隠し切れないほどに消耗しているのだ。
「……すまない……私たちに、そちらを助けに行けるだけの力があれば……」
「お気になさらず。乃木さんたちは四国の勇者。そして諏訪を守るのは諏訪の勇者である私の役目です。そちらにもそう余裕があるわけではないのでしょう?」
若葉は以前の通信で諏訪の窮状を知り、大社に救出作戦を申し出たことがある。返答は、これからますます戦いが激しくなることが予想される。今戦力を外に出すことはできない、というものだった。
「お互いの役目、きっちり果たしましょう、乃木さん」
「……ああ、そうだな。白鳥さん……」
こちらが励ますべき立場でありながら、彼女のほうがよほど心を強く持っていた。
いつも通り通信を終え、ひなたと共に廊下を歩く若葉。そこに彼女を待っていた陸人が姿を見せる。
「若葉ちゃん、諏訪の様子、どうだって?」
「……陸人……良くはないだろうな。白鳥さんは気丈にふるまっていたが、追い詰められているのは確かだ」
「……そうか……」
「……陸人さん、ちょっと……」
陸人に手招きし、若葉に聞こえぬように小声で話すひなた。
(大社に何度も諏訪の救助を直談判していると聞きましたが……)
(ああ、せめて俺1人でも行かせてもらえれば、と思ったんだけど……)
(実のところ、陸人さんに翻意アリ、などと言う者もいます……あまり目立つことをするのは……)
(……心配かけてゴメン、でも大事なことだから)
それだけ言うと、片手をあげて2人と別れる陸人。若葉は陸人の様子に疑問符を浮かべ、ひなたは何とも言えない不安を覚えていた。
「……なんて数……」
勇者システムのマップを見て千景が呟く。
「ざっと見積もっても2000体弱……厳しいね」
これまでの20倍ほどの数を前に、勇者たちは戦慄を隠せない。一同の不安を感じ取った若葉は、自分を奮い立たせ、単身突っ込んでしまう。
「それなら、こちらも20倍以上の勢いで殲滅する……それだけだ!」
「若葉さん⁉︎」
「若葉ちゃん、待って!」
1人突出した若葉を取り囲むように動くバーテックス。勇者たちが援護に向かう間もなく包囲網が完成していた。
「若葉、戻れ! 一人じゃ無理だ!」
「まずいわ……敵の一部が神樹に向かってる……」
「このままじゃ……」
「みんなは神樹様を守ってくれ……ゴウラムも預ける。若葉ちゃんは俺が……」
「私も行く!」
「友奈ちゃん……」
かつてない窮地に焦る一同。突破口を開こうとするクウガに同行を申し出たのは友奈だ。
「いくらなんでもりっくん一人じゃ無理だよ。私と2人で若葉ちゃんを助けよう?」
「……分かった、後ろに乗って。突っ込むよ!」
神樹を襲うバーテックスを仲間たちに任せ、トライチェイサーに乗る2人。
「……覚悟は?」
「いつでも!」
「よし、行くよ!」
壁と表現できるほどの敵の群れに、2人を乗せたバイクが飛び込んで行った。
「……完全に、囲まれたか……」
若葉は、絶体絶命の窮地でありながら、不思議なほどに落ち着いていた。見渡す限りバーテックスばかりという状況が、彼女の怒りを静かに、だが確かに滾らせているのだ。
仕掛けてきた小型をカウンターで切り裂く。
「……痛いか……だがな、貴様らに食われた人々はもっと痛くて、苦しかったんだ!」
その激情に任せ、切りかかろうとした瞬間、敵の包囲網を突き破り、バイクに乗った陸人と友奈が現れた。2人はここに来た時点で傷だらけ。それだけ無理やり突破してきたということだ。
「陸人……友奈……なぜ来た!」
「なぜって、友達だもん! 助けるに決まってるよ!」
「若葉ちゃんを死なせるわけにはいかないよ、ひなたちゃんだって待ってるんだ……!」
満身創痍で構える3人。先ほどこじ開けた包囲網の穴は、あっという間に塞がれていた。2人を逃がすことがかなわないと悟った若葉は、背中合わせのまま声をかける。
「……死ぬなよ……!」
「若葉ちゃんもね!」
「絶対に、守って見せる……!」
3人の決死の抵抗が始まった。
パンッ! と乾いた音が病室に響く。千景が若葉の頬を張った音だ。
「……あなたのせいよ……!」
「…………」
「……あなたが、勝手に突出したから……高嶋さんと伍代君は……!」
あの後、勇者たちは何とかすべての敵を撃破した。だが、その消耗は激しく、特に友奈と陸人は意識を失い病院に運び込まれた。
若葉は何も言わない。千景の怒りは最もだ。球子と杏も口を挟まず、若葉を見ている。
「……あなたは、周りが全く見えていない……! 自分がリーダーだということ、もっと自覚するべきよ……!」
千景の言葉に、若葉は陸人に言われたことを思い出す。
──これからも一緒に頑張ろう、ってことだよ……もうちょっと俺たちを見てほしいかな、とも思うけどね──
若葉は、陸人の忠告を聞き流し、その上彼を危険にさらした自分が、ひどく愚かな生き物に思えた。
2日後の夕方、陸人は大社付の病院の一室で目を覚ました。
(……体の感じからして、日をまたいだか……)
アマダム由来の回復力で、普通に動く分には支障ないレベルにまで復調していた陸人は、状況を把握すべく、病室を抜け出す。施設中が慌ただしく、少し気配を隠せば、誰も陸人に気づかないほどに大社は混乱していた。やはり勇者の事実上の敗北が響いているのか、とその場を離れようとした陸人は、そこで職員たちの会話を聞いた。
「やはり、諏訪はもう……」
「……ああ、正午の通信を最後に、連絡が途絶えたらしい……」
(──────‼︎)
駆け足でその場を離れる陸人。
夢中で駆け抜けた先で、友奈の病室を発見した。そこには意識が戻らない友奈と、彼女の手を握る千景がいた。
「……高嶋さん……私、乃木さんにひどいことを言ってしまったわ……あの子一人の責任ではないのに……」
「…………」
気づかれないように病室を後にする陸人。
外の空気を吸おうと屋上に出ると、今度は球子と杏がいた。
「陸人と友奈、大丈夫かな……?」
「あの2人のことだから、じきに目を覚ましてくれる、って思うけど……それに、若葉さんも心配だよ……」
「あー、若葉なぁ……昨日今日とゾンビみたいだったからな……」
「今まで、こういうメンバー間のトラブルは陸人さんと友奈さんが中心になってどうにかしてたから……でも、こんな時こそ私たちが何とかしなくちゃ、って思うんだ、タマッち先輩」
「うーん、そうだな。そうだよな! 2人が起きた時安心してもらえるように、タマたちで頑張んなきゃな!」
「うん、まずは若葉さんをどうすればいいかなんだけど……」
2人の会話を聞き、陸人は一つの決断を下した。
(ここは、みんなに任せても大丈夫そうだな……)
陸人はこっそりと病院から離れる。向かう先は寮の自室だ。
「……よし、こんなもんかな……」
陸人は自室で荷造りをしていた。以前球子と行ったアウトドアショップで買った、彼女おすすめのバックパックに可能な限りの食料と医薬品を詰め込み、部屋を見渡す。陸人の目に留まったのは、机の上の写真立て。そこには初陣を終えた勇者たちの、はじめての記念撮影の写真が飾ってあった。
(……死にに行くわけじゃない……また、みんなで笑うために……)
荷物を背負い、陸人は部屋を出る。
「やっぱりここにいましたね……陸人さん」
「……! ひなた、ちゃん……」
とある廃ビルの屋上、そこで陸人は予想外の来客に出会った。
「……どうしてここが……?」
「病室を抜け出したと聞いて、陸人さんが諏訪のことを聞いたんだ、とすぐにピンときました。よほどのことがなければ、あなたが周りを心配させるようなことはしませんから」
そこでひなたは陸人の考えをシミュレートしてみた。
諏訪へ向かうなら壁を越えなくてはならない。許可が下りなければバイクもゴウラムも使えない陸人は、見つからない程度に壁の近くに行き、そこから飛び越えようとするはず。
「後は諏訪の方角で壁に近い高層建築、まであたりを付けて、巫女の勘働きとでも言いますか……なんとなくここだと確信しました」
「参ったなあ……すごいよ、ひなたちゃん、ドンピシャだ」
「……みなさん心配していましたよ、特に球子さんと杏さんはすっかり気が動転していました」
「そうだね……みんなには、帰ってから謝るよ」
「……どうしても、思いとどまることはできませんか……?」
「ゴメン、でも今から行けば、まだ助けられる命があるかもしれないんだ」
「どうしてそこまで……? 陸人さんがそんなにボロボロの体で行かなくてはいけない理由はないと思いますが……?」
ひなたらしくない冷たい言葉に、本当に心配かけてるんだな。と陸人は苦笑する。
「昔、一度会っただけの人だけど……恩人が言ってたんだ。『手を伸ばせば届くのに伸ばさなかったら、絶対に後悔する』って」
両手を広げて言葉を紡ぐ陸人。
「俺の腕は、伸ばしてもこのくらい……でも、俺だけが持っているクウガの力を合わせれば、諏訪までギリギリ届くんじゃないか、って。そう思うんだ」
「陸人さん……」
「俺は後悔したくない。もう2度と、守れなかったって、無力に泣くのはイヤなんだ」
その言葉に、ひなたは用意していた説得の言葉を飲み込み、端末で連絡を取る。
「……真鈴さん、ええ、説得失敗です。予定通りお願いします」
「……え?」
手短に連絡を済ませたひなたは、いつもの微笑で陸人を見つめる。
「今、陸人さんの端末を大社の管理から外してもらいました。これで、ゴウラムもトライチェイサーも、好きに使えるようになります」
「ひなたちゃん?」
「まったく、最初から相談してくれればもっと簡単に準備できたんですよ?」
「え? え?」
陸人は混乱していた。先ほどまでどのようにひなたを説得するかを考えていたのに、何故か彼女はこちらの味方になっていたのだ。
「真鈴さんも、快く協力してくれました。どうやら大社がクウガの装備に制限をかけたことが、気に入らなかったようです」
「真鈴さんも……お礼を言っておいてくれる?」
「ふふっ、帰ってきてからご自分で伝えてください……その方が真鈴さんも喜びます」
「……そっか、うん……そうするよ」
笑いあう陸人とひなた。先ほどまでの不穏な空気はなく、そこにはいつもの、友達同士の2人がいた。
「陸人さん……」
手を伸ばせば届く距離まで歩み寄り、ひなたは告げる。
「私からあなたに求めることは1つだけです。生きて帰ってきてください……絶対に、無事な姿を私たちに見せてください」
「…………。分かった、約束するよ。俺は絶対に生きて帰る」
「約束です。破ったら泣きますから……大泣きしますからね?」
「アハハ、うん。大丈夫、ひなたちゃんを泣かせたりしないよ。若葉ちゃんに斬られたくないしね」
「若葉ちゃんのこともありますから……ここにいてほしかったんですが……」
「あの子は大丈夫だよ。何が大事か、考える力があるし、仲間もいる」
「はい、私も信じています……」
「俺もなるべく早く戻るよ…………来い、ゴウラム!」
頭上から現れるゴウラム。その体にバックパックを固定する陸人。
準備を終えて振り返ると、ひなたは泣きそうな顔で、それでも毅然と陸人を見つめていた。
「……陸人さん、行ってらっしゃいませ……お帰り、お待ちしています……」
そう言って頭を下げるひなたの手が震えているのが見えた。
陸人はその両手をそっと握って告げる。
「……ああ、行ってくる、
「!」
言うだけ言って恥ずかしくなったのか、素早く手を放してゴウラムに飛び乗った陸人は、あっという間に飛び立った。
ものの数秒で壁の外に姿を消した陸人の背中を目に焼き付け、ひなたは赤くなった頬を押さえてつぶやく。
「……若葉ちゃん以外に、こんなにドキドキさせられたのは初めてですね……」
安心させようと若葉の真似をしてみた陸人だったが、効果は覿面だったようだ。
というわけで、クウガ、この非常時に戦線離脱、という……
ひなたちゃん、有能すぎません……?あの年で大社の権力闘争に参加するわけですから、これくらいはできますよ、きっと
次回はちょっと時間かかるかも……
次回もお楽しみに