A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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予定を変えて二話に分けました。
そのため少し短めかも。




三章2話 壊滅

「す、諏訪に向かったぁ⁉︎」

 

「陸人さん、1人でですか⁉︎」

 

「はい、命を守るために……そう言っていました」

 

 翌日の朝、突如姿を消した陸人の行方を聞いた勇者たちは、総じて混乱していた。何せ諏訪である。壁外な上につい先日連絡を絶ったとされる場所だ。

 

「……大丈夫なの……? 彼、ケガは……」

 

「詳しく確認する余裕はありませんでしたが、流石に戦闘には支障が残っているのでは、と思います」

 

「……だったら……!」

 

「それを承知で陸人さんが決めたことです。私は彼を止める言葉を持っていませんでした。だから出来る範囲でお手伝いした、それだけです」

 

「……それだけって、あなたね……!」

 

 勇者たちの不安のはけ口になろうと、あえて淡々と言葉を紡ぐひなたと、その態度に噛み付く千景。そんな2人の会話に、ずっと黙って話を聞いていた若葉が割り込んだ。

 

「ひなた……陸人は、何か言っていたか……?」

 

 いつもの若葉らしくない、覇気のない声。そんな彼女を痛ましげに見ながら、ひなたが答える。

 

「皆さんには、帰ってから謝ると。必ず帰ってくると、約束してくれました」

 

「そうか……陸人は、やはりすごいな……」

 

 虚ろな瞳で呟く若葉。謝ることすらできなかったこともあり、彼女の心は曇っていく一方だ。そんな若葉をさらに追い込む事実が舞い込んでくる。

 

「……すみません、みなさん……私は、大社に呼び出されているので……数日の間留守にします……」

 

「なっ……⁉︎」

 

「ちょっ、待ってください! まだ聞きたいことが……」

 

「ごめんなさい、杏さん……私も今お話ししたこと以上のことは何も知らないんです。今陸人さんがどうしているかも」

 

「……そう、ですか……」

 

「……若葉ちゃんと、入院中の友奈さんのこと、よろしくお願いします……私と、陸人さんの分も……」

 

「……ムゥ、仕方ないな……タマたちは、陸人を信じてやれることをやるしかない、か」

 

「若葉ちゃん。どうしても答えが見つからない時は、私の部屋の日記帳、3冊目と書いてあるものの付箋がついたページを読んでみてください。ヒントになるかもしれません……」

 

「……ひなた……?」

 

「それでは、失礼します」

 

 そう言って教室を出るひなた。陸人、友奈、ひなた……人間関係の潤滑剤となり得る人材が残らず不在の状況……勇者たちを覆う空気は重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴウラムで海を越え、トライチェイサーで走行。なるべくバーテックスとの遭遇を避けながら諏訪に向かう陸人は、既に疲労していた。

 

(一応地図は持って来たが、荒廃しすぎてて、あまりアテにならないな)

 

 まともな交通路もない世界。オーバースペックのバイクを使うことも加味すると、諏訪までの時間は当初より短くできると希望を持っていたのだが、想定外に体にガタがきている。走行時の風圧に体が耐えられない。ここまでやせ我慢していたが、とうとう限界がきた。

 諏訪に着く前に野垂れ死ぬという最悪の展開を避けるために、止む無く小休止する陸人。半日使って全行程の約2/3しか進めなかった。

 

(この分だと諏訪に着くのは明日になるかも……一刻を争う状況なのに……!)

 

 久しぶりの単独行動のせいか、普段より気が急いている。

 頭を冷やそうとその場で横になる陸人。その瞬間、アマダムが脈動するのを感じた。諏訪に近づくたびに不定期に起こり、近づくほどに間隔が狭まってきている。

 

(アマダムのこの感じ……まるで何かに呼びかけているような……)

 

 そこまで考えたところで、空を舞うバーテックスを発見。向こうにも捕捉されたようだ。

 

「────変身ッ‼︎────」

 

 

 焦燥、疲労、疑問……様々な要素が陸人の首を少しずつ締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもより3人少ない教室。おざなり気味な授業を終え、杏は若葉を見て、深呼吸をしていた。

 

(……落ち着いて……話をするだけ……外に連れ出すだけだから……)

 

 杏は緊張していた。小学生の頃は1人で本の世界に没頭し、ここに来てからも球子や陸人に手を引かれて行動してきた。誰かを……まして今の屍のような若葉に声をかけるのには、相応の覚悟が必要だったのだ。杏が思い出すのは、自分に積極的に声をかけてくれた陸人との会話。

 

 

 

「陸人さんは、どうしていつも私を誘ってくれるんですか?」

 

「どうして、って?」

 

「私、内気だし、たいした話ができるわけでもないし」

 

「杏ちゃん、病弱であまり外に出れなかったって言ってたでしょ?」

 

「……は、はい……」

 

「俺も、小さい頃はせまーい世界で生きてきたから、知ってるんだ。外に出る、っていうのはそれだけで自分の世界を広げられるってこと。世界には思いもつかないものがある。知らないだけで、気づけばなんてことないようなものもね」

 

「……世界を……」

 

「勇者だなんだ、って考えることはたくさんあるだろうし、どうしても視野が狭まることはあると思う。そんな時は、ぜひ杏ちゃんからも誘ってほしいな」

 

 

 

 

 

 

(……そうだ。陸人さんが教えてくれたことを、今度は私が……)

 

 緊張がほぐれた杏は、陰鬱な雰囲気を漂わせる若葉に声をかける。

 

 

「……若葉さん……」

 

「……杏……?」

 

「ちょっと出かけましょう!」

 

 口にすればあまりに簡単な言葉だが、この日、杏は確かな成長を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかり暗くなった時分、陸人はフラフラの状態でバイクを走らせていた。

 

(地図もどこかにやっちゃったし、今、どこだ……?)

 

 あの後、中規模の群れに捕捉された陸人は振り切るためにガムシャラにバイクを走らせた。結果地図を失い、方角さえも自信がない有様だ。場所を把握しようにも見渡す限り廃墟だらけで、手掛かりにはならず、気が滅入るばかりだ。

 

(これが、バーテックスのやり方……)

 

 陸人のうちに溜まる暗い感情。それを振り払いながら必死にバイクを走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでもアマダムの感覚を頼りに進む内に、巨大な湖……諏訪湖にたどり着いた。

 

(……! くそッ、やっぱり間に合わなかったのか……?)

 

 諏訪の景色も、これまでの都市と同じくあらゆる人工物が破壊され、人の気配もまるで無かった。

 

 

 

 

「──────変身ッ! ──────」

 

 それでも可能性を信じ、小回りが利く青のクウガに変身して跳躍。人を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 捜索を始めて数分。クウガは神社らしき場所を見つけた。

 荒らしに荒らされた社を目にし、それでもと山の方面に捜索の範囲を広げるクウガ。同時にドンドン反応が激しくなるアマダム。それを意識の外に追いやり、クウガは足を急がせる。

 

 

「……バーテックス……?」

 

 麓のあたりにバーテックスの一団を発見。

 そしてそのうちの一体が、何かの攻撃で弾け飛ぶのを目撃した。

 

(────! アレは──!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うああああぁぁぁぁっ‼︎」

 

 裂帛の気合と共に鞭を振るう。もう何回繰り返したかも分からない動作に、体は悲鳴をあげていた。それでも白鳥歌野は諦めず、後ろの親友を守るために立ちふさがり続けていた。

 

「……うたのん……」

 

「心配しないで、みーちゃん。この程度の数……」

 

「……私は、もういいよ……うたのんだけでも逃げ……」

 

「ノンノン! それ以上はいくらみーちゃんでもシャラップよ! 大丈夫、任せなさい!」

 

 むしろ庇われていた親友にして相棒とでもいうべき巫女、藤森水都の方が精神的に限界が来ていた。

 

 

 

 

(私は諏訪を守れなかった……せめてみーちゃんだけでも……!)

 

 決意と共に鞭を構える歌野。そこで彼女は、青い閃光がバーテックスに飛び込むのを目撃した。

 

「ワッツ⁉︎」

 

「……アレは……」

 

 それは人の形をしていて、手にした棒で瞬く間に目の前の群れを殲滅してみせた。

 向かい合うクウガと歌野。

 

「助けてくれたことには感謝するわ……ただ、1つ質問させて。フーアーユー?」

 

 陸人は変身を解除する。

 

「……俺は、伍代陸人。四国から来た、乃木若葉の仲間です」

 

『‼︎』

 

 その言葉に2人は、2つ反応する。1つは若葉の名前が出たこと。もう1つは、『伍代』という名字だ。

 

「……OK、伍代くんね。私は白鳥歌野。諏訪の勇者よ。とりあえず、話せる場所に行きましょう」

 

「うたのん⁉︎」

 

「この人は大丈夫よみーちゃん。さっきの姿、乃木さんに聞いたクウガ、ってやつでしょう? ここまで追い込んだ状況で何かの罠ってこともないだろうし。それに何より……」

 

「……何より……?」

 

「私の勘が言ってるわ! この人は味方だってね!」

 

「……もう、うたのんはどんな時でもうたのんだなぁ」

 

 

 歌野の言葉に、ひとまず警戒を解いた水都が、陸人に話しかける。

 

「……えっと、伍代、さん……私は藤森水都……一応、諏訪の巫女です。私たちが隠れてた場所に案内します。一緒に来てください」

 

「分かった、よろしく……白鳥さん、藤森さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人に案内されて着いたのは、麓にひっそりと存在する洞窟だった。慣れた様子で奥に向かう2人に着いて行きながら、陸人は独特の雰囲気に周囲を見渡していた。

 

「アハハ、やっぱりなんか不思議よね。この洞窟。空気が澄んでいるというか……神聖な雰囲気があるというか」

 

「ここはすごく深くて……私たちも1番奥までは行けていないんです……あっ、あった」

 

 そこには焚き火の跡や、布切れの束など、生活の痕跡と呼ぶにはあまりに簡素な名残が散乱していた。2人の困窮ぶりを察した陸人は、端末からトライチェイサーを呼び出し、一緒に格納していた荷物から、携帯食料を取り出し、2人に渡す。

 

 

 

「こんなものしか持ってこれなかったけど、良かったら食べてくれ」

 

「ワーオ、サバイバルグッズ! サンクス、伍代くん!」

 

「……あ、ありがとうございます……食べるものを探しに出た先で見つかっちゃったから、何も食べてなくて……」

 

 勇ましくかぶりつく歌野と、女の子らしさを残しながらも勢いよく口に入れる水都。かなり空腹だったらしい。

 

 

 

「一応、持ってこれるだけ、10人分くらいはあるから。遠慮せず……他の人って、どこにいるか、2人は知ってる?」

 

 遠慮がちに聞く陸人。その質問に2人は俯き、自分の予想が当たっていたことを察した。

 

「昨日の正午、これまでで1番の大侵攻があってね……」

 

「……うたのんは必死に戦って……でも、1人じゃどうにもならなくて……」

 

「私とみーちゃんは、町の人たちが逃がしてくれたんだけど、その代わりに……」

 

「確認できたわけじゃないけど……うたのんみたいに戦えない人たちが生き残っている可能性は……」

 

「……そう、か……」

 

 

 

 

 

 陸人が伸ばした手は、勇者と巫女の2人に届いた。

 だが、その2人にしか届かなかった。

 これで助けに来たと言えるのか……

 

 手遅れになってからやってきた自分を責めていた陸人は、気づかなかった。

 洞窟に入ってから、あれほど激しく反応していたアマダムが、すっかり沈静化していることに。

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、うたのんとみーちゃん、合流です。

アマダムの反応とかしつこいくらいに書きましたが、その辺はまた少し先で描くことになります


次回もお楽しみに
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