A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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さて、今話も分割の影響で短めです


三章3話 慟哭

 その夜、若葉はひなたの部屋にいた。

 杏との外出で自分が守ってきたもの、今守るべきものを実感した若葉は、過去のトラウマと向き合い、乗り越えることができた。

 死者のためでなく、生者のために。

 

 そう思うとこれまで、視界に入れても見てこなかった仲間たちのことが、少しだけ身近に思えた。その足で他の勇者たちに謝罪と決意表明をして回り、若葉はこれまでにない安らかな気持ちで夜を迎えていた。

 明日からはもっと仲間のことを知ろう、と決意した若葉は、そこでひなたの言葉を思い出す。

 

 

 ──若葉ちゃん。どうしても答えが見つからない時は、私の部屋の日記帳、3冊目と書いてあるものの付箋がついたページを読んでみてください。ヒントになるかもしれません──

 

 

 自分なりの答えを見つけ、踏み出そうとしている若葉。その前に、大親友のひなたが残したヒントで弾みをつけようと、こうして部屋にやってきたのだ。

 勝手知ったる、という様子で日記の保管場所を見つける若葉。入り浸る、と表現できるほどに互いの部屋を行き来している結果だ。

 

 3冊目、と書かれたノートの中ほどに付箋が貼られている。

 いくら親友と言えど、日記を読まれるというのは年頃の女子としてハードルが高いことのはずだが。

 若葉ちゃんなら印の箇所以外は読もうともしないはず。というひなたの信頼と、その信頼に応える若葉の生真面目さあってこそだ。

 

 

 

 

 

 

 

 今日は陸人さんと2人きりの時間があった。いつも誰かと一緒にいる彼だ。珍しい機会だと思い、若葉ちゃんのことをどう思っているか聞いてみた。印象に残る言葉だったので、そのまま書き残しておく。

 

 ──いい子だよね。生真面目で、責任感が強くて、自分に厳しくて…………。

 ああ、確かに危なっかしいところはあるね。戦う目的なんかは特に。でもアレは、若葉ちゃんの長所だと思うんだ。

 復讐心が消えないのは、あの日のことを忘れてないから。

 報いを受けさせたいのは、死んじゃった人たちの痛みを想像できるから。

 本当の若葉ちゃんは、誰かの苦しみに寄り添える人。苦しみを一緒に背負って、その上で強く立ち上がる姿を見せることで人を励ます力がある。

 こんな世界だからこそ、そんな人が必要だと思うよ。神樹様が若葉ちゃんを選んだのは、そういう理由もあるんじゃないかな。

 足りない部分は、一緒に埋めていくための俺たちだよ。若葉ちゃんは、きっと最高のリーダーになれる──

 

 

 

 

 

 

「──‼︎」

 

 陸人はいつも自分を褒めてくれていた。尊敬する、と言ってくれた。その言葉の意味を、若葉は初めて理解した。

 

 

(陸人……再会するまでに、私はお前の期待に応えてみせる……だから、必ず帰ってこい……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 諏訪のとある洞窟……陸人と歌野と水都は、お互いの知る状況を教えあっていた。

 

「……そっか。それじゃ大社が救助に来てくれたわけじゃないんですね……」

 

「うん。ゴメン、こっちも結構切羽詰まっててね……」

 

「そんな中でも伍代くんは来てくれたんでしょ? あなたが謝ることないわ!」

 

 おおよその情報交換を終える頃にはある程度距離感が縮まっていた。

 

「俺としては明日にでも2人を四国に連れて帰りたいんだけど……2人はどうかな?」

 

「そうねぇ、正直伍代くんが来てくれなかったら手詰まりだったし。連れてってもらえるならそうして欲しいところね。みーちゃんは?」

 

「……う、うん。私も、もう諏訪にいても生きていくことはできないだろうし」

 

「じゃあ明るくなった頃に、出発しようと思う。準備ができたら早めに休もう。結構厳しい道程になるよ」

 

「OK! 大したものが残ってるわけじゃないし……いくつか無事な農具と種をまとめるだけで済むわ」

 

「……う、うたのん……さすがに女子としてもう少し気にしようよ……」

 

 

 

 話し合いを終え、2人は準備に入る。本当に無事な荷物は少ないらしく、そう時間はかからなかった。

 携帯食料と歌野が持っていたわずかな野菜で夕食を済ませる。その間、歌野はひたすら明るく、水都もそんな歌野を見て笑っていた。

 

「私の夢は農業王! こうなったら四国に移っても続けるわ! 畑、あるわよね?」

 

「……うたのん、こんなこと言って『農業王』ってプリントされたTシャツとジャージばっかり着てるんですよ? 女の子なのに」

 

「そっか。丸亀城には、女の子のオシャレとか詳しい巫女さんがいるから……白鳥さんのこと、お願いしてみようか?」

 

「ノー‼︎ 私の服は農作業の効率を考えたベストチョイスなのよ⁉︎」

 

 

 

 

 出会って数時間で彼らの仲は友人と言っていいほどになった。3人が3人とも相手に気を使って、空気を明るくしようとした結果だった。

 

 

 

 

 

 

 やがて誰からともなく横になった3人。歌野と水都が眠りについたのを確認した陸人は、静かに洞窟を出た。

 入口付近でゴウラムを召喚。警備を指示する。

 

「万一敵が来たら呼んでくれ。俺もそう遠くには行かないから」

 

 洞窟から出たせいか、アマダムが再度脈動する。心なしかゴウラムも落ち着きがないように見える。

 

(ゴメン、君たちにとって大事なものがここにあるのかもしれないけど……今はあの2人を最優先させてくれ……)

 

 その言葉が響いたのか、アマダムもゴウラムも落ち着きを取り戻した。陸人は落ちていたシャベルを拾い、洞窟から離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の朝、農作業の癖で早くに目覚めた歌野は、陸人がいないことに気づいた。

 周囲を探すも、見当たらない。その音で水都も眼を覚ます。

 

「……うたのん? どうしたの……?」

 

「伍代くんがいないのよ。外かしら」

 

 

 

 洞窟を出た所で、ゴウラムと遭遇する2人。水都は反射的に歌野の背に隠れる。

 

「えっと……ゴウラム君、だったわよね? 伍代くん、どこにいるか知らない?」

 

 物怖じせず、謎の飛行物体を君付けする歌野。かなりの大物だ。一瞬逡巡したような反応をしたゴウラムは、ゆっくりと洞窟から離れていく。ついてこい、と言うかのように。

 

「案内してくれる……ってことかな?」

 

「みたいね。行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴウラムの先導でたどり着いたのは木々の間にポツンと広がる平地。

 そこには木を削って作った棒が何十本も刺さっていた。その根元はまばらに盛り上がっており、種々の花が供えてある。

 

 

 

「……これは、もしかして……」

 

「……お墓……?」

 

 

 

 その場にあるもので賄った、あまりに簡素な墓。少し離れた木に寄りかかり、陸人が眠っていた。その手は傷が多く残り、顔も服も土汚れだらけだった。

 

 

 

「……伍代さん……」

 

「……ん……うわっ⁉︎ 寝ちゃってたのか……」

 

「伍代くん、これはキミが……?」

 

 目覚めた陸人は、気まずげな顔で答える。

 

「うん……近くにいた人の分しか作れなかったけど……」

 

 遺体の一部しか残っていない人がいた。体そのものがない人もいた。それでも衣服や装飾品、その他の遺品をかき集め、何かを形に残したかった。

 

 

「……なんで、ここまでしてくれるの? 伍代さんにとって、見ず知らずの人なのに……」

 

「お墓っていうのは、死者と生者、両方のためにあるものなんだってさ。死者の魂を祀るため、そして生者が死者に想いを馳せる場所を残すため、作られるものなんだ」

 

 陸人は2人を放っておけなかった。自分に気を遣って、泣くことも怒ることもできない2人を。

 

「白鳥さんも、藤森さんも、ちゃんと泣いてないんじゃないかと思ってね。ここを離れる前に、一回挨拶の機会を作りたかったんだ」

 

「──っ」

 

「……それ、は……」

 

「俺、ちょっと目覚ましに身体動かしてくるから。粗末な墓で申し訳ないんだけど……ここなら吐き出せること、あると思うから……」

 

 そう言ってその場を離れる陸人。

 

 

 

 

 

 

 

「……ご、ごめん、なさ……わたし、まもれなくて……」

 

「……うたのん……みんな……」

 

 

 

 

 

『う、うぅ……うあああああぁぁぁぁぁ‼︎』

 

 

 

 

 

 

 山中に、少女たちの本音の叫びがこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し経ったのち、戻ってきた歌野と水都は、少しだけスッキリした顔をしていた。

 

()()()()、本当にありがとう。ちょっと楽になったわ」

 

「嬉しかったです。ありがとう、()()()()

 

「うん、さっきよりいい顔してるよ。()()()()()()()()()()も」

 

 そこには気を使うことのない、本物の友達の空気感があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 出発の準備を整えた3人。陸人が考えた配置はこうだ。

 トライチェイサーを運転する陸人の後ろに水都。

 低空飛行させるゴウラムの上に勇者服装備の歌野。

 この形でなるべく会敵を避けて進む。来た時に確認したバーテックスの分布を参考に、安全なルートも模索済みだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんていうか、旅慣れてる感じするわね。陸人くん」

 

「……うん、そういうところも、()()()()に似てるよね」

 

「──ッ⁉︎」

 

 

 驚愕する陸人。なぜ、ここでその名前が出てくる? 

 

「そうだ、聞こうと思ってたんだけど、()()()()さん、って知ってる?」

 

「……伍代って珍しい名字だし、もしかしてと思ったんだけど……」

 

「……雄介、さんは……俺の……」

 

 兄だ、という言葉が出る直前──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟に向かって大量のバーテックスが飛んで来た。

 

 

「ワッツ⁉︎ 何事⁉︎」

 

「私たち、見つかっちゃった⁉︎」

 

「……マズイ、2人とも乗って‼︎」

 

 

 

 

 満足な休息も取れず、ズタズタのコンディションのまま追い立てられる3人。

 

 

 

「なんだって急にこんな──変身ッ! ──」

 

 

 

 世界を敵に回した逃走劇が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




バーテックス(全体数無制限)vsケガ人3人の鬼ごっこが始まりました。

さて、情けない話なのですが、感想をいただけると有難いです。
自分は自分の書きたい物語を自分の好きな書き方で書いており、それを変えられるかと言われると微妙なところなのですが。
他の方から見て自分の作品はどう映るのか知りたいので、もしよろしかったら感想下さい!(直球)

感想乞食のようなことを書いてしまい申し訳ありません。

次回もお楽しみに
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