A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
端折れるだけ端折って、面白みの薄い文になっていたらごめんなさい。
瀬戸大橋記念公園。陸人たち10人は壁外調査に向けての最終確認を終えていた。
「荷物はバッチリだ! これなら6人で運べるだろ」
「それで巫女の3人はどうするの?」
「陸人さんが準備していると聞きましたが……」
その言葉を受けた陸人は端末を操作してゴウラムを呼び出す。
「おおっ⁉︎ これは……」
「なるほど、シートを据え付けたのか」
「うん、2人はこれに乗って、1人はバイク。俺の後ろに乗ってもらうことになるね」
ゴウラムの腕部に固定された2人がけの座席。安全バーと透明な風除けも備えた安全仕様だ。
スキー場のリフトのようなシートを吊り下げるゴウラムを見て、歌野が感嘆の声を漏らす。
「オゥ……ゴウラムくんがリフトのように。これ陸人くんがやったの?」
「うん。一応試してみたけど問題ないはずだよ」
陸人の技の1つ。大工技術が活きた。
「それでは席を決めましょうか」
「ジャンケンでもしますか?」
「じゃあ勝った人がバイクねー」
「タマは四国出るの四年ぶりくらいだな〜……陸人は?」
「俺もそれくらいかな。色々なところに連れてってもらったよ」
「私は初めてです。遠出とかしたことなくて……」
ワイワイ盛り上がる勇者たち。年頃の子供だけでの遠出。やはり無条件で気分が上がるのだろう。
「……さて、そろそろ行くか」
若葉の号令に全員が支度を整える。
「配置は決まった?」
「私が後ろです。よろしくお願いします、陸人さん」
「ん……じゃあこれ、ヘルメット」
「はい……すみません陸人さん、ヘルメットというものに縁がなくて……つけてもらっていいですか?」
目を閉じて少し背伸びをして、陸人に顔を向けるようにするひなた。その顔は楽しそうに綻んでいた。
「ハイハイ、できれば一度で覚えてね?」
苦しくないように気を遣ってヘルメットを着けさせる。
喉元に触れた時妙に色っぽい声が聞こえた気がしたが、陸人は全力でなかったことにした。
ひなたも顔が赤くなっていたので、思わず漏れてしまったらしい。
「よし、行こう!」
ひなたを座らせた陸人が振り払うように大声で呼びかける。
かくして壁外調査が始まった。
瀬戸大橋を渡る勇者たち。
「水都ちゃん、真鈴さん、大丈夫?」
「うん。風も来ないし、揺れも少ないし……」
「快適快適〜、よくできてるわ、さすがね」
ゴウラムリフトは問題ないようだ。
和やかな空気で進む一同だが、倉敷の荒廃した風景を視界に入れ、一気に空気が暗くなる。
「ひどいな……」
「……念のために周辺を捜索する。水都と真鈴は上から撮影と捜索を頼む」
あまりの壊されぶりに、ここに生存者はいないと誰もが確信を持ってはいたが……
全員で生き残りを探すも、やはり人もバーテックスも見つからなかった。
重くなった空気を感じた陸人が声をかける。
「まだまだ行くところはたくさんあるよ。諦めずに、次に行こう」
勇者の徒歩とは思えない脚力で神戸にたどり着いた。
二手に分かれて捜索する勇者たち。
陸人、ひなた、若葉、千景は廃墟を巡りながらどんどん心が重くなっていく。
「生存者……見つかりませんね」
「……全滅、したんでしょうね……」
「いや、結論を出すのは──」
「──っ! みんな、バーテックスが来る!」
少数のバーテックスと遭遇。ひなたに陸人がつき、2人で手早く片付けられたものの、千景の荒っぽさが目立った。
「……こんなやつらに、私たちは……!」
「千景ちゃん……」
誰も声をかけられず、そのまま捜索再開。
何度かバーテックスとの戦闘を挟んだものの、特に問題なく切り抜けた。
当てのない捜索と戦闘の繰り返しに疲労した顔で合流地点に着くと、既に別れた友奈たちがいた。
お互い出会ったのはバーテックスばかり、生存者は見つけられなかった。
「そろそろ野営地を探さねばな……」
「タマが目星をつけといたんだ! この辺りだと……山の方にキャンプ場があるから、そこに行こう!」
無理に明るくした球子の声に全員が乗っかり、その場を離れる。
(さっきの戦闘から、何かを感じる……バーテックスか?)
陸人はそこで、視線のような気配のような曖昧なものを感じていた。
市街地と同じく荒れ果てたキャンプ場。やはり人は誰もいなかった。
いくつか野営用の道具を集めて準備を始める。
「よーし、ここからはタマが仕切るぞ! 言うこと聞いてテキパキ動くんだぞー」
「球子さん、キャンプがしたくて盛り上がっているだけでは?」
「いいんじゃない? テントは俺か球子ちゃんと一緒に張ってね。初心者だとうまくいかないことがあるから」
「ハッ! ……そうか、陸人も慣れてたのか……」
自分の特技を示すチャンスに張り切る球子だったが、自分と同等に手際よく動く陸人に、その笑顔がひきつる。
「まあまあ、手分けして準備しよう。当てにしてるよ、球子ちゃん」
「そっ、そうか? よし、タマに任せタマえ!」
兄妹のようなやり取りを微笑ましく眺める一同。
2人を中心に手際よく支度を済ませ、焚き火を囲んで夕食タイムとなった。
「気が滅入るような光景ばかりだったが、こうしてみんなでうどんを食べるとやはり落ち着くな」
「まだまだ先は長いんだから、絶望してる暇はないよ、若葉ちゃん」
「そうね、初日は成果はなかったけど問題も特になかった。この調子で捜索続けましょう」
「オーケー……しかし、歩き回ったから汗かいちゃったわね」
「あ、じゃあ水浴びとかどうでしょう? すぐそこの川、冷たくてきれいな水でしたよ」
「ならみんなで行って来るといいよ。ここの番は俺がしとくから」
というわけで続いて水浴びタイムとなった。
火の様子を見ながら今日の光景を思い出す陸人。
(覚悟はしてたけど、やっぱり見つからないな……)
諏訪に向かう時も戻る時も、正直それどころではなかったため街の様子を詳しく確認したのは初めてだった。陸人をしてショックを隠しきれないほどに荒廃した世界。1人になるとどうしても暗い考えに偏る。
そこで陸人は、先ほども感じた気配がすぐ近くにあることに気づいた。
(──っ! ……これは……近くにバーテックスが?)
今仲間たちは無防備な状況。遭遇したら危険だ。
陸人はその気配を追って森に入る。
駆け抜けた先で見つけたのは──
黒い軍服に身を包んだ、屈強な雰囲気の男性だった。
目があったまま動かない陸人と男性。
やがて男性の方が身を翻し、猛スピードで走り去る。
「ま、待って!」
慌てて追いかける陸人。いつまでも追いつけない事実に驚嘆する。
(今の俺はアマダムの影響で変身しなくても人間離れした速度が出せる……なのに、なんだこの速さ⁉︎)
人間を超えた身体能力、人が生きるには厳しすぎる環境に平然としている様子……目の前の男への疑惑が増していく。
森を抜ける直前、男性の影が目の前からパッと消える。陸人は驚愕するも、勢いそのまま森を抜け、その奥の川に落ちるコースで、傾斜を飛び降りてしまう。
目の前に広がる光景に、陸人はさらなる驚愕に襲われる。
そこでは水浴びに出た仲間たち、9人の少女たちが一糸まとわぬ姿のまま、川の中で戯れていた。
若葉も、ひなたも、球子も、杏も、千景も、友奈も、歌野も、水都も、真鈴も……その全員の体を優れた視力で認識してしまう陸人。
彼女たちも突如現れた陸人になんの反応も返せず呆然と見ていた。
(──‼︎⁉︎⁇‼︎⁉︎⁇‼︎⁉︎⁇)
空中で混乱の極みに達する。反射的に青のクウガに変身。着水と同時に飛び上がり、派手に水しぶきをあげながらその場を離れる。
ちなみにこの時、変身所要時間の最短記録をマークした。
「……えっと……」
「今の、陸人さん、だよね?」
「何だったの? いったい……」
あまりに一瞬の出来事に、少女たちは羞恥心が働くより先に困惑に飲み込まれていた。
ちなみにあの一瞬、仲間たちの艶姿をより強く目に焼き付けようという男の本能が、青ではなく緑への変身をさせようと働きかけた──
──かどうかは、陸人とアマダムしか知らない……
勇者たちがキャンプ場に戻ると、陸人が土下座の体制で待ち構えていた。
「申し訳ありませんでしたっ‼︎」
「あ、あの……とりあえず頭を上げて……」
「私たちとて陸人が覗きなどするとは思っていない。ただ、どういう経緯でああなったのか、教えてくれるか?」
「みんな……」
寛容な態度で声をかけてくれる仲間たちに感動する陸人。
そんな陸人をからかうように笑う真鈴。
「まあ、恥ずかしかったしビックリしたけどね〜。まさか女子の水浴び場のど真ん中に飛び込んで来るとは……」
「ちょっ、真鈴さん……」
「思い出さないようにしてたんだから、言わないでくださいよ〜」
やはり恥ずかしいのは恥ずかしかったらしい。話し合って穏便に収めようと結論を出した彼女たちだが、齢14〜15の女子たちには限界がある。
「……クッ! ……分かった、ちょっと記憶を消してくる!」
「待て待て、何する気だ陸人!」
「ゴウラムで上空から落ちればきっと……!」
「危ないから! やめて、やめてください!」
らしくなく取り乱す陸人と、必死に止める仲間たち。収集がつくのに小一時間かかった。
「人がいた?」
「うん……だけど、アレは人だったのかどうか。人間離れした動きしてたし」
「人じゃないって? 見た目は男の人だったんでしょ?」
「よく分からない気配を感じた……アマダムも心当たりあるみたいなんだけど……この先でハッキリする、って何も教えてくれないんだ」
落ち着きを取り戻し、事情を説明する陸人。
その内容は全員が驚くことだったが、それ以上に訝しげな陸人の様子が気にかかった。全員が黙り込む。
「気になる話だけど、一度振り切られた状況で当てなく探すのは危険でしょうね。アマダムもその内分かるって言ってるんでしょ? じゃあそれを待つべきだと思うよ」
真鈴の言葉でその話題は打ち止めとなった。
空気を変えてくれた彼女に陸人は感謝していたが……
「……んで? 陸人くん、誰の体が1番の好みだったのかな〜?」
「グフッ⁉︎ ゲホッゲホッ……」
全力で吹き出した。あまりに気まずい話題に戻ってしまった。
「真鈴さん、何を──」
「やっぱり出るとこ出てるのはひなたちゃんと杏ちゃんよね? でも若葉ちゃんも歌野ちゃんも、友奈ちゃんもいい体してたわよね〜。水都ちゃんはとにかく肌が綺麗だし、千景ちゃんは顔も髪も体も美麗、って感じで……あ、もしかして球子ちゃん派? まあそれもアリな人はアリか……」
言葉を挟ませない勢いでたたみかける真鈴。さりげなく自分を外している。
特にダメージがでかいのが、言外にマニア向け呼ばわりされた球子と答えようのない質問にさらされた陸人だ。
「真鈴さん、何言うんだ! というかアリな人は、って何だ⁉︎」
「勘弁してよ、頼むからさ……」
真っ赤な顔で怒鳴り立てる球子と、逃げるようにその場を離れる陸人。
先程までの深刻な空気は見事塗りつぶされた……代わりに妙に桃色な空気が漂っていたが……
「真鈴さん……助かりましたが、他の方法はありませんでしたか?」
「まあいいじゃん、さっきの空気よりマシでしょ」
ため息をつくひなた。真鈴はこうして時々楽しげに人をからかう癖がある。
陸人の心理状態と全員の空気感が落ち着くまで、更に2時間を要し、そのまま言葉少なに就寝となった。
キャンプ場から遠く離れた森の中。佇む1人の男性。その周囲にはバラバラに割かれた小型バーテックスの群れがあった。
「……アレが、今回のクウガか……」
思い返すは先ほどの少年。まだ年若いが、強い覚悟をその瞳に感じた。
小さく笑みを浮かべると、その姿が異形へと変貌する。
全体的に黒く力強い意匠。その頭部にはカブトムシを思わせる、天を衝くように伸びる角がある。
「楽しめそうだな……!」
『ゴ・ガドル・バ』
超古代にその猛威を振るった怪人種族。
その中でも最上位の実力者が西暦に顕現した。
ハイ、と言うわけで閣下登場です。
ここでの彼は設定も性格も話作りの上で多少いじらせてもらっています。
『こんなの閣下じゃねえ!』と思う方もいるかもしれません。
申し訳ない……
とは言え、彼の出番はまだしばらく先です。お待ちください
感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに