A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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いよいよ雄介さんの秘密が明かされます。

今から批判が怖くて仕方ない……

でも上げちゃう、思いついちゃったんだから!


五章3話 兄弟

 雄介はアマダムを拾い、そのまま奥の遺跡にたどり着いた。

 土地神が力を削られ、結界が維持できなくなっていたのだ。

 

 不意に現れた人間に、土地神もアマダムもたいそう驚いた。

 

 その人間は成人した大人でありながら、神の声を聞く力を持っていたからだ。

 

「この、ベルト……? もしかしてあなたのものですか?」

 

 土地神の抽象的な神託にも柔軟に理解を示し、アマダムとも融合せずに交信できるほど、神の力との適合が高かった。

 

 両者との対話の中で事態を把握した雄介は、再び封印を強固なものとする儀式。その準備に協力するようになった。

 

 かつて他の遺跡で見つけた雄介と陸人以外には反応しなかった謎の遺物。そういった神の力を宿した遺物を集め、遺跡に土地神の力を収束する。

 

 そのために家からも他の遺跡からも遺物をかき集める雄介。

 

 最初は警戒していたアマダムと土地神も、彼の俗人離れした善性に、やがて信を置くようになる。

 

「大丈夫! 古代の力と人間と神様が協力すれば、きっと何とかなるさ」

 

 サムズアップして笑う雄介。アマダムも土地神も、不思議とその言葉にかける気になっていた。

 

 

 ──貴様は神の力との相性が非常にいい。この私を扱うものとしても破格の資質を持っている──

 

「へぇ、そうなんだ」

 

 ──だが貴様自身の性質があまりに戦士に向いていない。あの神たちに対抗するのは厳しいだろうな──

 

「そっか。まあ、俺もそう思うよ」

 

 

 

 雄介は誰かの笑顔を守りたい、という優しさと、それを貫く強さを持っていた。

 しかし、どんな相手にも力でぶつかることへの忌避感が強すぎた。戦士としては致命的で、悩みや迷いが命取りになるクウガとしてはそれだけでどれほど資質があっても失格条件だった。

 雄介は神に近い適正を持っていた。それでも……

 

 伍代雄介はクウガにはなれない。

 

 ましてや敵は莫大な力を秘めた神の集合体。迷いを抱えて戦える相手ではない。

 アマダムは雄介がクウガになれないことを惜しんだ。そして同時に彼を戦わせずに済んで安堵もしていた。

 それくらいには雄介を仲間として信頼していた。

 

 雄介は自分が戦えないことを知り、アマダムを家族がいる愛媛の実家に送った。

 陸人は自分と同じく神の力への適合資質を持っている。そして何より命を守るという夢と、そのために戦う覚悟があった。

 

 陸人の夢を叶える力を授けるため、最悪の事態に人を守るため、雄介はアマダムを陸人に託した。

 

 

 

 

 

 

 

 そして雄介は再封印の準備を急いだ。

 陸人が戦わなくてはならない状況を避けるために。

 

 だがその努力は、ある意味で逆効果になったとも言える。

 再封印に集中していた土地神は、天の神が己の力で人類を滅ぼす準備を整えていることに気づくのが遅れてしまった。

 

 土地神がそれに気づいたのは、バーテックス侵攻の1週間前。この時点で全ての人類を守ることは不可能であった。

 

「それなら、ますます急がなきゃ! 何もしてない人が死ぬなんて、絶対に間違ってる!」

 

 それでも雄介は諦めず。少しでも大きく強固な結界を張ることで人間を守ろうと遺物を集める。

 それを見た土地神は、最後の手段を1つ、雄介に提示した。

 そして雄介は、それを快諾した。

 

 

 

 

 そして運命の日。結界は間に合わず、雄介は何ら力を持たない只人の身で、人を守るために奔走し続けた。

 その中で戦う方向で神の力を扱える勇者の白鳥歌野、雄介と同じく神の声を聞く力を持つ巫女の藤森水都と出会う。

 

 3人の必死の抵抗で稼いだ時間で、土地神は諏訪を覆う結界を展開。一部の生き残った人間を匿うことに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌野ちゃん、こっちの畑は終わったよ」

 

「サンクス、雄介さん! 手際のいい仲間がいるとやっぱり助かるわ」

 

「お疲れ様、2人とも。ご飯、持ってきたよ」

 

 惨劇から1年。歌野と雄介と水都を中心として、諏訪は少しずつ立ち直ってきていた。

 

 戦闘は歌野。襲来を知らせる役は水都。結界を強固にする役を雄介に割り振って、彼らは諏訪を守ってきた。

 

「うたのんと雄介さんは、本当にすごい……2人がいて良かったよ」

 

「何言ってるの? みーちゃんだってすごいじゃない、私たち3人で戦ってるんだから!」

 

「うん、歌野ちゃんと水都ちゃんはすごいよ。その歳でこれだけの命を守ってきたんだ。自信持って」

 

 歌野と水都にとって雄介は兄のような存在だった。3人が3人だったからこそ、これまでの諏訪があると言ってもいい。

 

「だから、約束しよう。2()()()何があっても折れないで。諏訪を守ることと、何より自分の命を大事にする。生きることを諦めないって約束」

 

 いつも優しく諭すような話し方をする雄介らしからぬ力のこもった言葉。歌野と水都は、深く考えずその約束を交わした。

 

 その3日後、雄介は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 土地神から提示された最終手段。ある程度結界が安定した今だからこそ取れる策。

 それは神と融合できるほど高い適正を持った雄介が、結界と同化すること。

 結界を強化し、人を守り、同時に遺跡の封印を強固にするという当初の目的も果たす。これにより一度捕捉された遺跡の場所を隠蔽することもできる。

 ギリギリの現状で取れる最善策だった。

 

 雄介は近いうちに自分が消えることを承知していた。だから家族に連絡を取ることはしなかった。歌野にも口止めしていた。

 全ては自分が消えた後の影響を少しでも小さくするため。切なすぎる心遣いだった。

 

 

 

 土地神は最後に雄介に問う。何か残すものはあるかと。

 雄介は1つだけ土地神に託した。届くことがあるかも分からない、最後のメッセージだけを残して。

 

「この世界には陸人がいる。歌野ちゃんや水都ちゃんのような強くて優しい子がたくさんいる。神様だって味方してくれる。だから俺は何も心配してない。残すものなんて、家族へのメッセージくらいでいいんだよ」

 

 そう言って雄介は笑顔でサムズアップをする。

 

 最後まで変わらずに、伍代雄介は伍代雄介のまま、家族を、仲間を信じてこの世界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 映像が終わる。この後結界は2年間諏訪と遺跡を守り、反撃の時間を稼いだ。そして今でも、遺跡を守り続けている。

 

 ──本来なら、全ての怪物を蘇らせるのが天の神の目的だったのだろう。だが、あの男の意思の力が土地神の結界の力を増し、奴は予定を変えざるを得なかった……まあ、最も厄介な2体を選んだ辺りは流石の執念といったところか──

 

 アマダムの言葉も遠くに聞こえる。陸人は混乱していた。

 

 兄はとうに死んだものだと思っていた。歌野たちの態度からも、死んでいるのは察していた。

 

 しかし、こんな戦いを兄が潜り抜けてきたとは想像もできなかった。

 

 もっと早くに遺跡が壊されていれば、今頃世界は完全に終わっていた。

 もっと早くに諏訪の結界が破られていれば、陸人が歌野と水都を助けることもできなかった。

 そもそも雄介が自分を信じてアマダムを託していなければ、陸人はあの夜になすすべなく死んでいた。

 

 全ては世界を、弟を信じて後を託した勇者のおかげだった。

 

『拳を握る』勇気ではなく、『自分を捧げる』勇気を持った勇者。

 それが陸人の兄だった。

 

 

 

 

 ──そこにあの男が託した文がある。貴様と妹御、家族宛だ──

 

 

 

 何もないところから現れた2通の便箋。それぞれ陸人とみのりの宛名が書いてあった。

 

 みのりの分は開かずにしまい、自分宛の手紙を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──陸人へ──

 

 こんな形で手紙を書くのは初めてだね。これを読んでる時には大まかな事情は知ってると思うから、省略します。

 俺は俺の夢を叶えるために戦った。一足先にリタイアするのは兄として情けない限りだけど、これも適材適所って奴だね。

 だから陸人も、自分のことを、自分の夢を何より大切に生きて欲しい。それが兄として、弟に願うことです。

 陸人の夢を聞いた時、俺は世界で1番眩しいものを見つけたんだな、って。そう思いました。陸人のこと、誇りに思うよ。

 俺みたいな半端な形じゃない。真の意味で夢を叶える力が、陸人にはあるって俺は信じてる。

 

 2000の技を持ち、君と同じく夢を追う男

 陸人の兄 伍代雄介

 

 

 

 

 

 

 P.S 陸人は女の子と関わる時にもう少し性差を意識したほうがいい。歌野ちゃんや水都ちゃんともし会えたら、よろしくね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ッ! ……なんだよ、コレ……」

 

 陸人は泣いていた。みのりを目の前で失った時でさえ泣かなかった陸人が、ボロボロと涙をこぼしていた。

 それは、夢を見つけて以来ずっと背負ってきた『命を守るために』という意識からほんの一瞬、自分を解放した証。

 

「……女の子の扱いとか、行く先々でモテモテだった雄介さんに、言われたくないよ……」

 

 球子も杏も真鈴も、何も言えなかった。手紙こそ読んでいないが、今の陸人の気持ちは分かってやれているつもりでいた。その上でかける言葉が見つからないのだ。

 

「……ゥ、アァ……アアアアァァァァ──‼︎」

 

 神が作った空間に、陸人の嘆きが響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて光の空間が閉じる。雄介の手紙を届ける、そのためだけに残していた最後の力が尽きるのだ。

 これでもうこの遺跡は元来持っていた怪物を封印する力しかない。

 ことここに至って天の神も今更この遺跡を襲うよりも四国に戦力を向けるだろう。

 

 雄介と土地神の役目は今ようやく終わった。

 

 ここからは、託された者が戦う時だ。

 

 

 

 陸人は涙を拭い、立ち上がる。

 

「あなたたちに託されたバトンは、必ず俺が……俺たちが未来へつないでみせる。今までありがとう、お疲れ様……」

 

 頭を下げる陸人。彼に習って真鈴たちも頭を下げる。

 

 

 

 再び顔を上げた陸人は、笑顔を浮かべていた。

 

「……見ててくれ……()()()()

 

 兄から託された勇気のバトンは、2年の時を超え今確かに、弟の手に渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




雄介さんから陸人くんへ、勇気のバトン、夢のバトンが渡されました。

本作では諏訪の土地神様と神樹様は同士で別物の神様として扱っています。
ここの雄介さんの2000番目の技はクウガではなく結界との同化。同じように誰かの笑顔を守るための力です。

ちなみにゴウラム様が人の姿を取る時にみのりさんを真似るのは、陸人と雄介の記憶に共通して出てくる大きな存在だったからです。



次回もこんな感じで地の文だらけでのわゆ要素はかなり薄め。

それでもよければお待ちください。

感想、評価等よろしくお願いします。

次回もお楽しみに
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