A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

47 / 150
八章スタートです。
巫女コンビにスポットを当ててみました。せっかく2人いるので、対称的になるように描いています。分かりにくくなってたらスミマセン


八章1話 秘密

 最近陸人の様子がおかしい。目を凝らすような、疑うような動作が増えた。アマダムと頻繁に話しているらしく、心ここに在らずなことが多い。

 そして先日のガドルとの戦いから3日。なにかと食事の席を共にすることを避けようとしている。極め付けにそれとほぼ同時期に会話が噛み合わないという場面が時々見られる。先日は急に顔を歪めたと思えば慌てて部屋に戻った。そのまま翌朝まで出てこなかったようだ。

 

 来たる決戦に向けて色々あるんだ、と言って言い逃れを続けてはいるが、間違いなく何かが起きている。それが巫女、上里ひなたの結論だ。

 ひなたは抱え込みがちな仲間のために動くことを決めた。

 各々が鍛錬を終えた夕刻、まずは情報を集めることから。

 

 

「陸人くんが?」

 

「はい、何かを隠しているような……大社で何か噂とかありませんでしたか?」

 

「その辺の情報は私には意図して遮断されてるからなぁ……あ、でも最近よく本部に来ているみたいだよ、彼。検査でも立て続いてたのかね?」

 

「本部に、ですか。他の勇者たちは、そんなことはなかったはずですが……」

 

「私の方にも神託は来てないし、何かあればすぐ連絡するよ」

 

「よろしくお願いします、真鈴さん」

 

 通話を切り、ため息をこぼす。真鈴からの情報に嫌な予感が増してしまう。

 続けてひなたは、同じ立場である水都を探す。

 

 

 

 

 寮の手前で水都を見つけ、ひなたは物陰から様子を伺う。水都と共にいたのが問題の陸人だったからだ。

 

 

「この前はありがとう、水都ちゃん。もうヨーヨーはバッチリだね」

 

「うん、園のみんなも喜んでくれたし……また行きたいな」

 

「それなんだけど、これからはあそこの訪問は水都ちゃんにお任せしたいんだ」

 

「えぇっ⁉︎ でも私、まだヨーヨーくらいしかまともにできないし……」

 

「これからも俺がいろいろ教えるからさ。この先の戦いを考えると、あまり外出に割ける時間もないかなって思って……」

 

「陸人さん……」

 

 水都は目の前の友人に違和感を覚えた。確かに言っていることは正しい。それだけ状況は逼迫していると言える。

 しかしそれでも、陸人にとってあの時間は大切なものだったはずだ。園児や職員だって、急に陸人が来なくなれば絶対に悲しむし、心配もするだろう。いつもの陸人ならなんとかして時間を作ろうとする。そう思った水都は、なんとか説得しようと陸人の目を見る。

 

 目の前の自分を見ているはずなのに、遠ざかってしまった何かに目を向けているような、不思議な眼差しだった。

 陸人自身がどこか遠くに行ってしまいそうな、そんな未来が見えた気がした水都は、慌ててその考えを振り払い、説得の言葉を飲み込む。

 

「うん、分かった。陸人さんはしばらく来れないって伝えておくね。でも、落ち着いたら必ず……また一緒に行こう?」

 

「水都ちゃん……」

 

「……ね? 約束!」

 

「……ん、分かった」

 

 結局水都は何も言えず、曖昧な約束を陸人の小指に絡めることしかできなかった。

 

「ねえ、陸人さん」

 

「どうしたの? 水都ちゃん」

 

「私、信じるから。陸人さんは、約束を必ず守ってくれるって、信じてるから……忘れないでね? 今日私と約束したこと」

 

「……!」

 

 今の陸人にとって、『忘れないで』という一言はあまりに重く……水都は何一つ事情を知らなかったが、卓越した直感で、彼に1番響く、彼を繋ぎとめてくれそうな言葉を無自覚に選んでいた。

 

「ああ、忘れないよ。大切な友達との、大切な約束だ」

 

「──っ!」

 

 笑って堂々と言い切る陸人に、何故だか涙が抑えきれなくなった水都。陸人は笑って水都を胸に抱き寄せる。

 

「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いて、水都ちゃん」

 

 背中を撫でながらゆっくりささやきかける陸人。水都はどんどん我慢がきかなくなっていく。

 

「陸人、さん……りくとさん……!」

 

「うん、大丈夫。俺はここにいる。ちゃんと水都ちゃんのそばにいるよ」

 

 水都が落ち着くまで、2人はそうして名前を呼び合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、いきなり泣き出して……」

 

「気にしないで、水都ちゃん。一応、分かってるつもりだから……心配してくれて、ありがとう」

 

 その言葉に、再び涙がこみ上げてきた水都は一言二言告げて走り去る。これ以上陸人に甘えるわけにはいかなかったから。

 

 涙をこらえながら走る水都。

 逃げるように走った先の物陰にひなたがいたことにも気づかないほどに彼女の動揺は著しかった。

 訳も分からないのに胸が痛む。その理由すら分からないことが、より一層水都を苦しめていた。

 

 

 

 藤森水都は感受性が極めて高い。本人も自覚していないことだが、こと危険に対しての感知能力に限定すれば、ひなたすらも上回るほどの精度を持っている。

 その感性で、水都は曖昧すぎて他の誰も受け取れなかった神託を限定的に受け取った。

 黒のクウガをさらに黒く重く力強くしたような異形が、全てが燃えている世界に一人立ち尽くしている。それが全てを滅ぼしたようにも、全てを守ろうとしたようにも見える、おかしな情景だった。

 

 未来が不確定であること、あまりの惨状に水都が詳しく見ることを無意識に拒否したことで、その神託は水都の記憶に残っていない。それでも、クウガ=陸人に待ち受ける地獄のような未来のイメージが焼き付いてしまい、今も何かに苦しんでいる陸人を見て、悲しみという感情が噴出している。

 

 

 

 

(陸人さんが、言いたくないなら。私にできるのは、何も言わずに陸人さんの代わりを務めること)

 

 水都は直感に従い陸人を問い詰めることもできた。嘘を突き通すことが苦手な陸人なら、追求すれば話してくれたかもしれない。

 しかし水都は陸人の希望を汲んで、何も聞かなかった。陸人が自分に知らないフリを望むのならそれに従う。例えそれで自分が悲しくても、陸人自身が追い詰められても。

 自分に自信がない水都が陸人のためにできることとして、選んだ道がそれだった。

 

(陸人さんの心労を一つでも減らすこと。そのために、私は私にできることを……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、水都ちゃん」

 

 ──あの娘、何かを知って……いや、察していたな──

 

(ああ、とても感受性が強い子だ。なんとなく、程度に俺にとって良くないものを見たんだろうな。水都ちゃん自身、苦しいだろうに)

 

 それでも黙って頷いてくれたことに陸人は感謝していた。

 

(水都ちゃん、君のそれは立派な強さだよ。誰かのために痛みに耐えて自分の気持ちを押し殺す……誰にでもできることじゃない)

 

 水都が何も言わなかったことで、陸人は心の安静を得ていた。

 陸人から水都に手を差し伸べることはできない。今回水都を助けるには彼女の不定形な不安をはっきりさせるために自分の秘密を明かすしかない。そうなれば今度はその重みに苦しむだけだ。陸人にそんなことはできるはずもない。

 

(ゴメン、水都ちゃん。全部片付いて俺が生きてたら、必ず謝るから──っ!)

 

 ──もう来たか。間隔が短くなってきているな……急げ、ここで倒れればさすがに誤魔化せんぞ──

 

 

 

 唐突にしゃがみこむ陸人。しばらく何かをこらえるように体を震わせ、やがてフラフラと寮に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 一部始終を見ていたひなたは、事態の深刻さをおぼろげに把握した。

 

(これはもう、手段を選んでいる場合ではありませんね)

 

 陸人を問い詰めても全ての事実を話してくれるとは限らない。ならば本人に聞くより先に別のルートで情報を得て、自分は全て知っていると言えば、きっと陸人も少しは気を楽にして話してくれる。そのためには……

 

「真鈴さん、たびたびお電話してすみません。少し手伝っていただきたいことがありまして……フフフ……」

 

 ひなたは怒ると怖い。若葉や球子への説教風景を時々見ていた丸亀城の面々は知っていることだ。だが、さらに若葉しか知らない事実がある。

 

「あら、何ですか真鈴さん? 雰囲気がおかしい? そんなこと……私はいつも通り、いたって平常心ですよ……フフフフフ……」

 

 本気で怒った上里ひなたは笑うのだ。それはもう美しい笑顔で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸人の部屋。主人が息を荒くしてベッドに倒れ込んでいる。

 

(どんな代償も覚悟してたけど……キツイな、さすがに……!)

 

 陸人の全身に激痛が走り続ける。かつて天の神の罠で体内から雷撃を受けたことがあるが、陸人の体感ではそれに匹敵する痛みだ。

 

 陸人の体は変質を始めていた。失われた機能もその一環。至高の戦士を作り出すために不要なものをそぎ落とす作業だ。

 そしてこの激痛は、肉体を変質させる際に抑えきれずに発生しているもの。不定期に襲ってきてはろくに動けなくなるほどに痛めつけて、やがて引いていく。

 

 この様を仲間に見せるわけにもいかず、予兆を感じては自室に逃げ込み終わるまで耐える。幸い鍛錬中に痛みが来たことはない……というより変身している時の方が体が楽に感じるくらいだ。

 

 ──大社からよこされた鎮痛剤、効果はあるか? ──

 

(どうかな? 痛すぎて昨日よりマシなのかどうなのかも、よく分かんないや。けどまぁ、薬を飲んだって事実が気持ちを楽にしてくれることはあるかもね)

 

 プラシーボ効果にまで頼らざるをえないほどに追い込まれている。アマダムは少しでも気を紛らわせるために、発作が起きるたびにこうして話しかけている。そんなことしかできない自分を呪いながら。

 

 ──融合が進めば、この発作もなくなるだろう。それが喜ばしいこととは言えないが──

 

(また戦うことは決まってる。戦えば進行するのも決まってる。ならイイコト探ししてた方がマシだよ……ありがとうアマダム、少し気が楽になった)

 

 どんな痛みにも負けない陸人の心。しかし、彼を追い込むのは体の痛みだけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局そのまま眠り翌日の朝、陸人は目を覚まして最初に天井に貼られた紙の内容を読む。

 

『外に出る前に必ず! 1段目の引き出し。ノートの中身と記憶を照合する』

 

(……とりあえず、この張り紙のことも今の状況も、まだ憶えてるな)

 

 陸人は最低限の身支度を終えるとノートを開く。そこには自分の過去が時系列で簡易的にまとめられていた。4号だった頃、伍代家で暮らしていた頃、丸亀城に来てから……可能な限り多くのエピソードを書き残し、思い出せないものに印をつける。

 

 特に重要なのは今の仲間たちとの思い出で消えてしまったもののこと。この部屋にも記憶にないものが徐々に増えてきている気がする。それについての話になった場合の受け流し方をシミュレートしておく。

 全ては仲間の心の平穏を保つため。正直無理が出てきてはいるが、誤魔化し切らなくてはならないのだ。

 

 結局今朝もいくつか新たに印がついてしまった。分かっていても気が滅入る。陸人は肉体も精神も確実に追い込まれていた。

 

 

 

 

 

 

(……よし、終了。この時間ならみんなまだいないだろうし、今のうちに食堂に──)

 

 部屋の扉を開けた途端、すぐ外で待ち構えていたひなたが部屋に入ってきた。

 

「失礼します、陸人さん」

 

「えっ⁉︎ ひなたちゃん、ちょっと待って……」

 

 止める間も無く天井の張り紙、そして知っていたかのように引き出しから記憶照合用のノートを見つけられてしまう。

 怒っているような雰囲気だったひなたの背中が小さくなったような気がした。

 

「……あの、ひなたちゃん?」

 

 

 

 

 振り返った彼女は目に涙を溜めていた。陸人の前では泣かない、という意地で堪えているだけで、心はとうに決壊していた。

 

「どうして、そこまでするんですか? そんなことをして、私たちが喜ぶとでも思っているんですか?」

 

「……なんの話? いきなりどうしたの……」

 

 引きつった笑顔でなおも演技を続ける陸人が、ひなたは痛々しくて見ていられなかった。

 

「私にとぼける必要はありませんよ、全部教えてもらいましたから」

 

「え……?」

 

「色覚と味覚がないこと、記憶が維持できなくなったこと、体に時々激痛が走ること……大社から全て聞き出しました」

 

 ひなたは早くに大社の在り方に疑問を持った。特に若葉や陸人とは噛み合わないこともあるのでは、と最初から懸念していた。

 だからいざという時に仲間を助けるために、大社内での立ち回り方をずっと考えていたのだ。使える立場の人間とコネクションを作り、邪魔になる人間の弱みを握り、信じられるごく少数の人間を見極め、水面下で派閥を作っておいた。

 

 今回はその一部を使い、上層部と医療部門に働きかけて情報を開示させた。本気で怒ったひなたは仲間と認めていない人間に容赦などしない。

 

「陸人さん、私は全部知ってます。だから私にだけは正直に答えてください。我慢するのは、辛いでしょう?」

 

「俺は、大丈夫。ひなたちゃんは、若葉ちゃんたちのことを見ていてあげて……」

 

 頑なに弱音を吐かない陸人に、ひなたは強硬手段に出る。

 

「そうですか、分かりました。では皆さんとの雑談の一環として、陸人さんの状態を教えてきますね」

 

 ひなたは怒っていた。全てを隠してきた大社にも。仲間に大事なことを教えようとしない陸人にも。こんな状況になるまで気づかなかった自分にも。

 だから本気でみんなに教えようとしていて、それが分かったからこそ陸人も焦った。

 

「やめろっ‼︎」

 

「キャッ⁉︎」

 

 部屋を出ようとするひなたの両肩を掴んで壁に叩きつける。いつもの陸人らしくない、強引で優しさのない行動にひなたは目を丸くする。

 

「みんなには言うな! 知らなくていいんだ、こんなことは!」

 

「……り、陸人さん?」

 

 焦りから肩を強く握る陸人。その痛みに顔を歪ませるひなたを見て、ようやく彼は落ち着きを取り戻した。ハッとした顔で、慌ててひなたから離れ、頭を抱えてしゃがみこむ。

 

 

 

「〜〜〜〜クソッ! ごめん、どうにも気が立ってるな。ひなたちゃんに痛い思いをさせるなんて……」

 

「陸人さんに比べれば何でもないですよ。それより、もう心の方にまで影響が?」

 

「……どうだろ、追い詰められて心のバランスが崩れてるだけかもしれないし……今以上にヤバくなったら、みんなから距離を取ったほうがいいかもね。ひなたちゃんも、俺と2人になるのはやめた方がいい。何かあった時抵抗できないんだからさ」

 

 その言葉を聞いたひなたはムッとした顔で距離を詰める。

 

「私の大切な人を、危険人物呼ばわりしないでください。ほら、こうしてくっついても、陸人さんは何も危ないことなんてありません」

 

 しゃがむ陸人を包むように抱きしめるひなた。

 気恥ずかしさはあれど、陸人の心を和らげるためならひなたは何だってする覚悟だ。

 硬直している陸人に、囁くように優しく声をかける。

 

「……陸人さんの体は、ちゃんと暖かいです。私の体温、伝わりますよね?」

 

「ひなたちゃん……?」

 

「陸人さんの鼓動も、ちゃんと感じます。ふふっ、ちょっとドキドキしてますか? 私もです」

 

「あの、恥ずかしいならやめた方が……」

 

「そういうことじゃありません! もう、女の子に恥をかかせないでください。私が言いたいのは、陸人さんは私と何も変わらない……人間だということです」

 

 陸人の体もひなたの体も変わらない。同じ1人の人間なのだから、全てを背負う義務なんてない。ひなたはそう伝えたかった。

 

「お願いです。私には本音を話してください、陸人さん」

 

「でも、ひなたちゃんが辛いだけだよ。俺のせいで」

 

「何も言ってくれない今の方が絶対に辛いです。じゃあこうしましょう! 陸人さんのためじゃなく、私のために全部話してください」

 

「……ひなたちゃんのために?」

 

「私はただ陸人さんの全てを知りたい。あなたの事を知れないのが苦しい……こんな私を助けると思って、教えてくれませんか? 私が重い女だって、知っているでしょう?」

 

 そのどこかふざけたような態度に、陸人はようやく脱力した。

 

「驚いた……ひなたちゃん、自覚あったんだね」

 

「あ、ヒドイ……ちょっと気にしてるんですからね」

 

「ハハハ……でも若葉ちゃんも自分のことを何でも知ってていつも見ててくれるひなたちゃんには感謝してると思うよ?」

 

 あそこまで言われてもまだ自分が想われているという結論に至れない。陸人にとって仲間たちは『カワイイ女の子』ではあっても『異性』ではないらしい。友情も信頼も異性愛も、全て『愛』でまとめてしまう陸人の在り方は、時にその愛する仲間をヤキモキさせてしまっている。

 

 

 

「……あ〜〜〜、しんどいなぁ……」

 

「……!」

 

「正直毎朝記憶を確かめてどこかが消えてるのを実感するのは、精神的にクるよね」

 

「陸人さん……」

 

「体も本当に痛くてさ……早く進行してこの痛みから解放されたいとも思うんだ」

 

「……それは当然です。誰だってそう思いますよ」

 

 

 

 

 ようやくポツポツと弱音を吐き出す陸人。ひなたは抱きしめたまま、静かに聞き役に徹した。

 

「けど、不思議と"なんで俺が"っていう気にはならないんだ。"俺でよかった"とは思うけど……」

 

「それは、なぜですか? 陸人さんはもっと自分の運命を嘆いていいと思いますが……」

 

「俺はさ……この通り、我慢強いから。誰かにこの苦しみを押し付けて、何も知らずに生きているよりは今の方がずっとマシなんだよ」

 

「陸人さんは……本当に、もう……」

 

「誰かがやらなきゃいけないなら、俺でよかった……うん、これは紛れもなく俺の本音だよ」

 

 またしても泣きそうになるひなたを見て、陸人は自分からも腕を回して抱きしめる。

 

「大丈夫。みんなが待っててくれるから、何にだって負けないよ」

 

「陸人、さん……」

 

「俺は運命と戦う……そして、勝ってみせる」

 

「はい、信じています……」

 

 やっと笑ってくれたひなたに、陸人も安心の笑みをこぼす。

 

 

 

 

 

 

 

 話している途中で再び寝てしまった陸人。どうにか彼をベッドに運び、いつかと同じ膝枕の体勢で頭を撫でる。

 

 

 ほんの少しだけ顔色が良くなった陸人を見て、ひなたはようやく一息つけた。

 

「……ん、ひなた……」

 

「……!」

 

「……ちゃん……」

 

 寝言にすら反応してしまう自分がおかしくて笑ってしまうひなた。

 

(若葉ちゃんの次に側にいると落ち着けて……若葉ちゃんに負けないくらいに見ていてハラハラさせられて……若葉ちゃん以上に触れ合うとドキドキしてしまう。陸人さんは、私にとって──)

 

 こんな時に自分の想いに気付くなんて、と我ながら間の悪さに呆れてしまう。それでも希望のある未来を膝の上で眠るヒーローが掴んでくれると信じて、ひなたは優しく陸人を撫でる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 水都の触れない優しさに救われた。

 ひなたの譲らない強さに助けられた。

 

 2人の巫女は対称的なやり方で、勇者をサポートするというお役目を果たしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーん、暗い、しんどい……なんでこんなストーリーにしたんだ過去の私。

感性で把握した水都と、理性で追求したひなた。
信じることで何も言わなかった水都と、案ずるが故に言葉を尽くしたひなた。

どちらが正解ということもなく、それぞれのやり方に、陸人くんは救われています。

前回上げた番外編はコレ書いてから急ピッチで仕上げたものなんですが、あんな風にひなたちゃん推しの内容になったのはこの回の余韻が私の中に残ってたからなんでしょうね。見直してから気づきました。

陸人くんの記憶について

記憶そのものが失われたわけではなく、記憶を留めておく機能が無くなりました。これにより直ちに全てを忘れるのではなく、不規則に思い出せなくなっていくという事態に。
厄介なところは今日刻んだ記憶を明日には忘れている可能性もあること。期間が限定されていないため、何を忘れたのかを把握するのが非常に難しいことです。
陸人くんがやっているような対策しかできませんが、アレも忘れていることを自覚してから作ったノートなので完璧ではありません。そもそも記憶とはあんな付け焼き刃でフォローできるほど簡単なものではありませんし……
忘れてしまうのはご丁寧に思い出に限定されます。知識については戦う上で必要、と判断されたからです。


感想、評価等よろしくお願いします。

次回もお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。