A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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九章終了。

ここから逆転タイムです。

あまりにも無理くりな理屈を展開します。お気をつけください。


九章4話 明暗

 陸人に1日一度検査を命じるほどに、大社はクウガを心配し、警戒し、期待していた。

 一通りの検査を終えて、後は結果が出るのを待つだけの陸人は当てもなく本部をうろついていた。

 

(……う〜む、警戒されてるなぁ。すっかり危険人物扱いだ)

 

 ──当然といえば当然だがな。奴らにとって貴様は頼みの綱であると同時に最大級の爆弾だ──

 

 あまりの空気の悪さから逃れるために外に出ようとする。陸人はそこで3人の巫女が重苦しい雰囲気で歩いているのを見つけた。

 

(なんだろう、憶えがある顔だ……抜けた記憶の中で、会ったことがある相手か?)

 

 そのただならぬ様子が気になった陸人は、彼女たちの後を追った。見逃してはいけない何かが、そこにある気がしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三ノ輪さん、鷲尾さん。以前から話は聞いていたわよね? 天の神に赦しを乞うための『奉火祭』……その人員に私たちが選ばれました」

 

「……そう、ですか。予想はしていましたが……」

 

「ちょっ、実加ちゃん、ひかりさんも……淡々としすぎやろ」

 

「あなただって分かっていたでしょう? 適任として選ばれる範囲に自分がいることを」

 

 大社はダグバへの対抗策と並行してその後についても考えていた。ダグバに負ければそこで全て終わり。そして勝てたとしても最早人類側に戦う力は残らないだろう、というのが上層部の予想だ。

 なのでクウガがダグバを消滅させられた場合に備えて、天の神が弱っている現状、神話の『国譲り』を模倣した儀式を計画した。

 神の声を聞く力を持つ巫女を捧げることで、人類側の希望を天の神に伝える。それが奉火祭だ。

 

「天の神に言葉を届けるための生贄……それにはより高い適正を持った巫女が必要。私も三好さんも覚悟はしていたんです、奈々さん」

 

「そら、私も分かってたけど……分かってるけど!」

 

 三好と呼ばれた巫女が、持っていた資料を2人に見せる。

 そこには奉火祭に選ばれた6人の巫女の名前が記されていた。

 

 上里 ひなた

 藤森 水都

 安芸 真鈴

 三好 ひかり

 鷲尾 実加

 三ノ輪 奈々

 

 適正が高い順に上から6人の巫女が選ばれた。そこには勇者付きの巫女として貢献してきたひなたと水都、クウガ関連の研究や神託で唯一無二の成果を上げた真鈴も例外なく名を連ねていた。

 

「……なあ、ひかりさん。私らはともかく、ひなたさんたちはどうにか外してもらえんのかな?」

 

「……そ、そうです。3人は大社への貢献も大きいし、なにより勇者様たちとの繋がりが強い。生贄なんて……」

 

「そうね、私もそう思う。それでも大社がそう決定したということは、上層部はもう勇者様に期待はしていないのかもしれないわね」

 

 ダグバを倒したら、という仮定すらもかなり希望が入り混じったものだ。その上で天の神と戦う戦力が残るとは、到底考えられないのだろう。

 クウガはダグバと共に消えてもらう。もしくは潰し合った果てに危険な存在になれば消耗した隙にどうにか消すしかない。そしてどんな過程を経ても、勇者もそこまでだ。クウガ抜きの勇者ではどうしようもない。

 

 最重要は四国を、人類の生存域を死守すること。神の許しを得るためにはいずれ力を捨てる必要があると予想される。ならば有効に使い捨てる。それが大社の決定だ。

 

「今はあの3人は不在だけど、今日のうちには通達がいくでしょう。せめてそれまでに、私たちは気持ちを整えておくべきです。

 彼女たちにも勇者様たちにも、自分のことだけに集中してもらうために」

 

 悲壮な決意を固めたひかりに、実加と奈々もためらいがちに頷く。

 彼女たちも神に選ばれた巫女、それも生贄に選ばれるほどの存在。状況に飲まれて曲がってしまいながらも、固く強い意志を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸人は1人本部を歩く。向かうのは資料室。奉火祭について詳しく知るためだ。

 上層部に殴りこむことも考えたが、今大社で混乱を起こせば困る市民が大勢いる。聞いてしまったことを誰にも気付かれずに手を打つしかないのだ。

 

(……ひなたちゃん……水都ちゃん……真鈴さん……)

 

 アマダムは何も言わない。大社に呆れているのか、今の陸人を刺激しないようにしているのか。

 

(……奉火祭……天の神に捧げる……)

 

 向ける先を見失った怒りが、陸人の中で渦を巻く。

 

「巫女が生贄だと? ……させるかよ……!」

 

 誰にも聞こえないように呟かれた陸人らしくない言葉に、違和感を覚える者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸人が検査を受けている時間。真鈴は勇者たちに会いに丸亀城に訪れていた。

 

「真鈴さん、非常に重要な話とのことですが……」

 

「うん、クウガについて……陸人くんの体について」

 

 その言葉に目を見開く一同。真鈴は資料を広げて説明を始める。

 

「これまでの進行の度合いから考えて、今の陸人くんの状態は少しおかしいんだよね。脳に侵食せずに表面化している……順序が変なんだ」

 

「……よく分かんないけど、順番が違うと何かあるの?」

 

「本来の流れから逸れたのは何かが阻害しているから。あの遺跡から持ち帰った遺物や神託をもとに考えたの。これは私の希望的観測になるんだけど……」

 

 一同の顔を見回して真鈴が告げる。

 

「クウガが究極の進化を果たすには使用者の心が完全に黒く染まる必要があるんじゃないかな。

 精神を染め上げられた時、脳も侵食される……陸人くんは今、危ういバランスのままギリギリで正常な心を保っている。それが今の半端な進行をもたらしているんだと思うの」

 

「確か、『聖なる泉枯れ果てし時 凄まじき戦士雷の如く出で 太陽は闇に葬られん』でしたか……そう言われると、確かに納得できますね」

 

 陸人は度重なる消失と負担、激闘と絶望に耐えて人間としての在り方を捨てていない。ダグバを残して死ぬわけにはいかない、その義務感が陸人を最後の一歩手前で押しとどめており、それが陸人を苦しめ続けてもいる。

 

「……今の伍代くんについてはだいたい理解したわ。それで、彼を助けるにはどうすればいいの?」

 

「それについては更に願望が入り混じった予想になるけど、それでも聞く?」

 

 間髪入れずに頷く全員。真鈴は苦笑して説明を再開する。

 

「『心清き戦士 力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん』

 これがついこの間新しく届いた神託。これは多分究極の戦士の本来の在り方を示すもの」

 

「ダグバという邪悪を倒すためには同じ存在に至るしかない、という意味ですか」

 

「ダグバも『ボクと同じところまで』って言ってた。クウガにはその力があるってことなんだな」

 

 杏と球子はダグバと対峙した時を思い出す。あんな闇の塊と同じ存在に陸人が変わると言われても、現実感がまるでない。

 

「それともう一つ、同時に届いた神託があるの。

『清らかなる戦士 心の力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝自らの邪悪を除きて究極の闇を消し去らん』

 これはきっと、究極の進化を果たしたクウガの運命を乗り越える……その可能性を示してるんじゃないかって……」

 

「心の力を極めて戦い邪悪を葬る……それって!」

 

「人の心を無くさずに究極の戦士になるってこと? そんなことができるの?」

 

 感覚派の水都と歌野は表情に希望と疑問を浮かべている。

 

「これまでの陸人くんの心理分析やアマダムからの情報を総合して考えたの。クウガの力を引き出すのに1番大切なのは、使用者本人の内から湧き上がる生の感情。いつだってそれがクウガを強くしてきた」

 

「……生の、感情? それは今の伍代くんにはないものなの?」

 

「……りっくんは今、道徳観や義務感で人を守ろうとしてる。追い込まれすぎて、自分の感情を捨て始めてるんだよ」

 

 千景の疑問に内面をよく見ている友奈が返す。進行が決定的になってからの陸人は正論や強がりの言葉ばかりを口にする。本人の内に確かにある弱音を吐き出さないように、機械的に感情を封じているのだ。

 

「そう、だから必要なのは……とても難しい感情と理性の両立。

 危機感を持たずに希望にすがる訳じゃない……自己犠牲心でヤケクソに身を投げ打つのも違う……

 恐怖心を持ちながらも、生きることを諦めずに、自分もみんなも欲張りに守りきる。その覚悟が、人のまま究極へと至る道なんだと思うんだ」

 

 それは人の心で成し遂げるには非常に難しい。絶望から目を背けずに立ち向かうだけでも強い精神力がいる。さらにそこから陸人が偏りがちな自己犠牲に走ることなく、最も困難な可能性に手を伸ばす。

 外の情勢も、自身の内面もこれ以上なく追い詰められた陸人1人では決して至れない境地だ。

 

「陸人に、人類も自分も諦めさせない……その意思を持たせることが唯一の打開策、ということか?」

 

「そのために、わたしたちにできることは……」

 

 若葉とひなたは考える。人類のために、何より陸人のために自分たちに何ができるのかを。

 

「陸人くんは今正しく現状を理解している。だから必要なのは、生きたいと彼自身に思わせること。未来に希望を持たせることが、陸人くんの心を未来へ向ける一番の近道のはずだよ」

 

 それができるのはあなた達だけだから。真鈴は笑顔で可能性を示す。ここからはみんなの出番だよ、と渡されたバトンを、少女達は確かに受け取った。

 

「みんな、私は陸人に生きていて欲しい。そのために……」

 

 若葉が仲間を見回して告げる。その眼には確かな光が宿っている。

 

「若葉ちゃん。皆までおっしゃらずとも、全員が同じ気持ちですよ」

 

 ひなたが笑う。やっと全員が同じ方向を向いたことに安堵していた。

 

「りっくんはいつも助け合い、って言ってた。りっくんを助けるために、わたしたちにできることがあるのなら」

 

 友奈が涙を拭う。2度と立ち上がれない足に、それでもと力を込める。

 

「……彼には一生かけても返せない恩がある。こんなところでいなくなられると困るのよ……」

 

 千景が顔を上げる。素直じゃないその言葉に、彼女の素直な感情が乗っていた。

 

「私と若葉はまだ戦える。どんな手を使っても、陸人くんを繋ぎとめてみせるわ」

 

 歌野が誓う。仲間に、世界に、何よりも自分自身の心に刻み込む。

 

「陸人さんはみんなのヒーローだもん。信じて、求めて、想い続ければ、それは絶対に届くはずだよ」

 

 水都は信じる。出会ったその日から、彼女が彼を疑ったことは一度たりともありはしない。

 

「力を失くしたタマたちでも、陸人を守れるなら……タマはなんだってやる。まだ伝えられてないこともあるんだからな!」

 

 球子が堂々と言い切る。勇者として、少女として、陸人との別れを許容することは彼女には絶対にできないのだ。

 

「生きてさえいれば、人はいくらでも可能性を持てる。陸人さんが教えてくれたことを私も伝えてあげたい。陸人さんが、どれだけ愛されているのかを……」

 

 杏は力強く声にして、尻すぼみに小声になっていく。最後の『愛』については、やはりまだ気恥ずかしいようだ。

 

 

 

 

 

 

 彼女たちは、勇者で、巫女で、神が選んだ少女たちだ。

 運命が戦えと言うのなら、大好きな彼を奪おうとするのなら、その運命とだって戦ってみせる。

 

 

 

 そう言い切れる彼女たちだからこそ、神は信じて託したのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




暗い未来をなんとかしようともがく陸人。
やっと一筋の光明を見出した勇者たち。
合わせて『明暗』です。
言葉に合わせるなら順番逆ですが、ここまで散々暗いしめ方で続けてきたのに九章の最後まで「……させるかよ……!」でシメるのはちょっと、と思いまして、希望で次章につなげました。

次回、最終章です。最後なのでしっかり仕上げる必要がある上にちょっと長めに予定していますので、時間がかかります。まとまる前に上げても問題ない部分を小出しにしていくかもしれないです。

感想もらえるとモチベ上がって早く描けるかも……(露骨なおねだり)

感想、評価等よろしくお願いします。

次回もお楽しみに。

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