A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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最終決戦らしい展開を意識してみました。






十章7話 不屈

 クウガが消えた戦場。若葉は立ち尽くしたまま動けない。すっかり気の抜けた様子のダグバ。その顔面に歌野の鞭が直撃する。

 

「おっと……へぇー、まだやるんだ?」

 

「オフコース! なによ、陸人くんがやられて私も心折れてると思ったワケ? バカ言わないでよ!」

 

 大したダメージが入っているようには見えないが、歌野は絶え間ない乱舞をダグバに叩き込む。

 

「あなた、まさか本気で陸人くんを倒したつもりでいるの? だとしたら究極のデストロイヤー様も大したことないのね!」

 

「つまり、キミはまだクウガが生きてると?」

 

 それはあり得ない。今の世界はダグバにとって庭のようなもの。その上自分に近い存在であるクウガなら生きていれば必ず感じ取れる。その反応がないのは、クウガが消滅したからだ。ダグバはそう考え、歌野はそれでも信じている、陸人の生存を。

 

「片っ端からブレイクすることしかできないあなたが、どんなに辛くても全てを助けて背追い込んできた陸人くんに、勝てるわけがない! あの人があなたなんかに負けるわけがないのよ‼︎」

 

 なんの理屈も通っていない、純度100%の感情論。しかしそれが、沈みかけた若葉の心を引き上げた。

 

(そうだ、陸人がこんなところで死ぬはずがない……アイツが戻るまで、私たちが!)

 

 剣を握り直し、ダグバに斬りかかる若葉。2人の同時攻撃がダグバの剣を弾き飛ばす。

 

「ふーん、やるっていうならいいけどさ。でもキミたちどんどん弱くなってるよ?」

 

「だからどうした? 貴様が敵であることに変わりはない!」

「勝てる勝てないじゃない。あなたは倒さなきゃいけないのよ!」

 

 究極の力の同調が解除され、今も出力が下がり続けている2人。それでも陸人が戻るまで。彼女たちに退路も退く気もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸人の意識は生死の狭間をさまよっていた。体も動かず、どこにいるのかも分からず、ひたすら炎の熱だけを感じていた。

 どうにもならない状況で、思い出すのは何より大切な彼女たちのこと。

 

 

 

 "この先何があっても私はお前を1人にはしない。どんなに遠くに離れていっても、必ず私の翼で追いついて、力尽くでも引き戻す"

 

 誇り高く凛々しい心を持った少女。彼女の在り方に憧れて、人として心から尊敬していた。

 

 

 

 "……そうね。今日は、勇者らしく勇気を出そうってね。いつも怖くて引っ込めてる素直な気持ちを、素直に表現してみたの……"

 

 誰より繊細で純粋な心を持った少女。彼女がまっすぐ気持ちを伝えられるようになったことが嬉しかった。

 

 

 

 "自分の願いと向き合ってみて。陸人さんの将来の夢が、きっとそこにあるはずだから"

 

 誰かのために本気で悩める心を持った少女。彼女の強さでもある優しさに、確かに救われていた。

 

 

 

 "難しく考えることないの。ただ、分かってほしい……りっくんに生きててほしいって、みんなが願ってることを"

 

 世界の全てを包みこむ大きな心を持った少女。記憶をなくす前も後も、変わらず彼女を助けたいと願っていた。

 

 

 

 "私がこうしていられるのは陸人さんの尽力の結果ですよ。これからも、一緒にいてくださいね"

 

 戦えない身なれど、勇者にも劣らない強い心を持った少女。彼女がみんなを見ていてくれたからこそ、ここまで無理をしてこれた。

 

 

 

 "陸人くんはウェイトオーバーなくらいたくさんのものを背負ってるもの。これ以上のお荷物になるのは絶対にゴメンよ"

 

 どんな絶望を前にしても曇らず輝く心を持った少女。彼女が隣で笑っていてくれれば、なんだってできる気がしていた。

 

 

 

 "1人の女の子として、タマは陸人っていう男の子が大好きなんだ! 錯覚でも勘違いでもない。これがタマの初恋で、人生一番の恋だ‼︎"

 

 周りを暖める熱く逞しい心を持った少女。彼女が好きでいてくれる自分が、少しだけ好きになれた気がした。

 

 

 

 "タマっち先輩が自覚するよりも、戦いが始まるよりも前から……ううん、今にして思えば一目惚れだったのかもしれないね"

 

 誰かのためなら勇気を出せる心を持った少女。彼女をこれ以上泣かせないためにも、生きなくてはと本気で思えた。

 

 

 

(そうだ、俺には待ってる人がいて、やるべきことがある。こんなところで!)

 

「終わって、たまるかよぉぉぉぉ‼︎」

 

 これまでになかった生への執着。それが陸人の魂を、ギリギリのところで踏みとどまらせた。がむしゃらに伸ばした手を、何人もの手が掴み、引っ張り上げる。

 

(そうだ、アンタはこんなところで死んでいい人じゃない!)

(君が行くべきは、歌野ちゃんと水都ちゃんがいる場所だ!)

 

 覚えのない声に導かれて、陸人の魂は体に戻る。知らないはずの誰かの言葉には、確かな熱がこもっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、おなじみの場所に来れたのはいいが……」

 

 何もない世界、陸人の夢の中。いつもよりもさらに肉体を遠くに感じる。アマダムとも繋がれない今のままでは外に意識を戻す術が分からない。

 

(とりあえず果てまで走るか飛ぶか……この場所、果てなんてあるのか?)

 

 焦りと戸惑いから冷静さを失いつつある陸人の前に、かつて自分を救った希望が舞い降りる。

 

「陸人!」

「……海花?」

 

 天の神の呪いから陸人の希望へと昇華した記憶の中の少女。彼女が何人もの同じ気配を持つ存在を連れて現れた。

 

「海花、なんでここに……」

 

「陸人の心に力を与えるために、ずっと準備してたの! アンタの記憶を辿って、協力してくれる人を探してね」

 

 陸人の心を守るべく、海花は陸人の記憶を旅してきた。自身と同じルーツの、陸人を支えてくれる存在を1人でも増やすために。

 

 陸人と海花と共に幼い頃を過ごした仲間たち。

 最後に少しだけ理解し合えた最大のライバル、ゴ・ガドル・バ。

 今の陸人を形作った姉、伍代みのり。

 そして陸人にとっての永遠のヒーロー、伍代雄介。

 

「やっぱりすごいよ、4号……いや、陸人だったな」

「さすがリーダー、あとちょっとで最高にカッコよく決まるんだ! 気張りどころだぜ!」

「私たちみんなで応援するよ。もう一度、頑張ろ?」

 

 脳に宿る記憶には、もはやほとんど残っていない仲間たち。それでも魂に刻まれた彼らとの絆が、陸人の心を熱くする。

 

「ありがとう、みんな。実は、みんなの日本名も考えてたんだ。全部終わったら、慰霊碑を作って名前を刻もうと思ってる……その時は見に来てくれよな」

 

 陸人の言葉に嬉しそうに頷く子供たち。その輪の中から、海花が代表して前に出てくる。

 

「何があっても、どんな選択をしても、私は陸人のそばにいる……約束、ちゃんと守れたよね?」

 

「ああ、本当に助かったよ。ありがとう、海花」

 

 海花の頭を撫でる陸人。擽ったそうに身じろぎした海花が、陸人の背中を押して、次の人物の元へ。

 

 

 

 

「まさか、アンタが来てくれるとはな……」

 

「フン、あまりに情けない様を笑いに来ただけだ」

 

 変わらず荘厳で力強い声。ガドルは値踏みするように陸人を見つめる。陸人の方も、ガドルに対しては普段よりも態度が攻撃的だ。雑に扱うくらいが丁度いい、と考えている間柄ゆえだろう。

 

「お前は全てを守るのだろう。こんなところで寝ているヒマがあるのか?」

 

「言われなくてもやるさ。見てろ、ここから一気に逆転してやる」

 

「……フッ、まだ心まで死んだわけではなさそうだな。やってみろ、見ていてやる……!」

 

「ハッ、負けたくせに偉そうなやつだな!」

 

 ガドルの横を歩む陸人。すれ違いざまに片手を上げてコツンと拳を合わせる2人。ぶつかり続けた彼らだからこそ築けた関係がある。

 

 

 

 

「陸人くん……大丈夫?」

 

「姉さん……大丈夫、俺はまだやれるよ」

 

「フフッ。姉さんって呼ばれるの、なんだか新鮮だね」

 

 最初に陸人に愛を教えた女性、伍代みのり。3年以上を経ての再会だが、お互いにそんな気がしなかった。

 

「久しぶり、って感じしないな」

 

「うん。実はアマダムさんが私の姿を借りるとき、私の一部を連れて行ってくれてるんだよ」

 

 ここにいるのは陸人の記憶の中のみのり。アマダムは彼女と繋がることで姿を借りている。その際に感覚を共有できる程度にみのり自身を取り込んでくれるのだそうだ。

 みのりの言葉に、初めてアマダムと話した時のことを思い出す。確かにあの時、みのりの声が聞こえていた。陸人は幻聴だと思っていたが、あれは弟を想う姉の心が起こした小さな奇跡だったのだ。

 

「私に気を遣ってくれてるんだろうね。いつだっていい子だった陸人くんのすぐ近くに、あんないい人がいてくれるんだもの……心配はしてないよ」

 

「そっか……ありがとう、姉さん」

 

「まだやることがあるんでしょ? 私もここから見てるから、大好きなものを、守らなくちゃね。いってらっしゃい」

 

 背伸びして陸人を抱きしめるみのり。陸人との身長差に時の流れを実感して、一瞬寂しさを感じながらも、それをおくびにも出さずに姉らしい笑顔で弟を見送った。

 

 

 

 

 

「……陸人」

 

「兄さん……」

 

「うーん、兄さんって響きはいいな。もっと早く呼んでくれればよかったのに」

 

「ごめん、兄さん……」

 

「まあいいさ。今そう呼んでくれるってことは、意識が変わったってことだろ? 俺はそれが嬉しいよ」

 

 ちゃんと自分と向き合えている今の陸人を見て、雄介は安堵している。手紙には残さなかったが、ずっと心配していたのだ。

 

「兄さんに託されたもの、守ってくるよ……全部」

 

「ああ、今の陸人ならできるはずだよ。自分の願いを叶えてきな、陸人!」

 

「ああ、俺も……夢を追う男だからね」

 

「言うじゃん、陸人。それでこそ、俺たちの自慢の弟だ」

 

 2人向き合ってサムズアップ。全てを守ってきた2人のヒーロー。最強の兄弟の絆が、美しい輝きを放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 生者との絆で持ち直し、死者との絆で力を高めた陸人。今なら戻れる、戻れるはずだ。

 陸人が覚悟を決めたところで、夢の世界に邪悪な異物が入り込んできた。

 

 空高くから湧いてきた小型バーテックスの群れ。ダグバが無自覚に使っている天の神の力が、弱っている陸人の心を蝕むべく襲ってきたのだ。

 

「……クソ、こんな時に」

 

「いや、陸人は行きな。ここは俺に任せて」

「お前の敵はダグバだろう。こんなところでグズグズするな」

 

 陸人を制止して前に出るのは雄介とガドル。雄介の腰には、陸人と同じクウガのベルトが巻かれていた。

 

「兄さん……⁉︎」

 

「ここは夢の世界。俺が望むなら、ある程度の無茶は通るってことさ……変身っ‼︎」

 

 現実世界では終ぞ実現しなかった組み合わせ。陸人の記憶でしかない()()()()だからこそ成り立つ戦士、雄介のクウガが顕現した。その隣には変貌したガドル。不安の抱きようがないコンビだった。

 

「行け。勝者への餞別だ、ここは手を貸してやる……!」

「大丈夫、俺たちを信じて!」

「陸人くん、行って!」

「陸人‼︎」

 

「……ああ、分かった! 行ってきます‼︎」

 

 

 

 

 輝きを放って夢の世界から消える陸人。それを見送った一同は、改めて敵に向き直る。

 

「クウガの兄、か……とはいえ戦闘は素人だろう? 足を引っ張る前に下がっておけ」

 

「そのつもりはないよ。そもそも俺は、陸人たちを傷つけたあなたを完全には信じてないからね……みのり、子供達を頼む!」

 

「うん、任せてお兄ちゃん! みんなこっち、私についてきて!」

 

 構える2人に雷が落ち、その姿が変化する。ガドルの切り札『電撃体』

 そしてアマダムの力だけを真似た雄介だから引き出せた力。赤の金の姿『ライジングマイティ』

 何処かの世界で正面からぶつかり合った2人が、英雄を守るために並び立つ。

 

「巻き込まないように気を遣うつもりはないぞ!」

 

「あなたの優しさに期待はしてないよ、最初から!」

 

 陸人に宿る希望と、蝕む絶望。人の心の中で、誰も知らない戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(──って、あっついなオイ‼︎ やっぱり炎の中か、ここは)

 

 ──陸人! 目覚めたか──

 

(ゴメン、遅くなった……急ぐよ、ここを抜けてみんなのところに!)

 

 ──ああ。今の私達なら、できないことなど何もない──

 

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオッ‼︎」

 

 恐れから無意識にセーブしていた究極の力を全開放。身を包む炎を吸収してさらなる力に変換する。世界を覆い隠す炎が、その周辺だけ不自然に消えていく。

 

 

 

 

「出し惜しみは……!」

 

 ──出し惜しみは……! ──

 

 

 

 ──『ナシだっ‼︎』──

 

 

 

 

 その決意は世界に響く。

 ダグバの炎を身に纏い、クウガが世界に帰還した。

 

 

 

 

 

 クウガが降り立ったのは、かつて陸人が作った墓場。諏訪の遺跡のすぐ近くだった。クウガはその力で諏訪の周辺、限られた地域のみだが、ダグバの支配から奪還することに成功した。

 

(……そうか。吹き飛ばされた先はここだったのか。だから……)

 

 最初に陸人を引き上げてくれたのは、諏訪で散った魂たちだったのだ。墓地を作って悼んでくれたこと。歌野と水都を救ってくれたこと。それに感謝した彼らが、自分たちの仲間入りをしそうになっていた陸人を助けてくれた。

 

「ハハ……こんな粗末な墓でも、ちゃんと魂は拠り所にしてくれてたんだな」

 

 ──陸人? ──

 

「何でもない……飛ぶよ、アマダム!」

 

 炎の翼を広げ、究極の戦士が空を舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うああっ!」

「つうっ、シット……!」

 

 完全に同調効果が切れた若葉と歌野。ダグバも手を抜いて遊んではいたが、そろそろ飽きてきたらしい。

 

「ふぅ、まあ頑張ったんじゃない? もういいよ、サヨナラだ」

 

 右手を掲げて超巨大な火球を形成するダグバ。太陽かと見紛うそれは、2人を焼き尽くすには過剰すぎる火力を宿している。

 

「クッ……まだだ、まだ私たちは……!」

 

「ネバーギブアップ! それこそが勇者よ……!」

 

 諦めずに立ち上がる2人。その時、はるか彼方から希望の叫びが響いた。

 

 

 

 "出し惜しみは……ナシだっ‼︎"

 

 

 

「この声……!」

「やっと起きたのね、盛り上げ上手なんだから!」

 

 歓喜の声を上げる2人。そしてそれ以上に喜んだのが、狂気の破壊者、ダグバだ。

 

「ハハハ……まだやれるんだね。いいよいいよ、そうじゃなきゃねぇぇぇぇ‼︎」

 

 狂ったように笑いながら、ダグバが火球を発射する。それが数メートル先の勇者たちにぶつかる一瞬前に、真上から火球に飛び込む影があった。

 

「オオオオアアアアッ‼︎」

 

 炎の翼を広げたクウガが、天高くから飛び蹴りを叩き込んで小さな太陽をかき消した。

 

 

 

 

「陸人っ!」

「陸人くん!」

 

「お待たせ、2人とも。時間かかってゴメン」

 

「いいさ。戻ってきてくれれば、それだけで……」

 

「ここからよ。最後に勝てばオールオッケーなんだから!」

 

 再び同調する3人。彼らの士気も最高潮だ。その姿に神樹も全てを託し、勇者たちの強化に尽力してくれる。

 

「さっきより強くなったね。いいよ、それじゃ……こっちも全力だ!」

 

 ダグバがさらに神の力を増幅させる。楽しむために抑えていた力を全て解放した、正真正銘ダグバの本気だ。

 

「俺は負けない! お前を倒して、みんなで未来を掴むんだ‼︎」

 

「ボクは全部壊すよ……キミも、世界も、未来とやらも、全部‼︎」

 

 

 

 破壊と守護、両極端な2つの究極。神も世界も巻き込んだ、全ての決着の時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少しはクライマックスな空気、作れてたでしょうか?もうここで盛り上がらないと燻っちゃうんで、多少無理でも上げていってください(無茶振り)

現実世界では不可能な雄介クウガと味方してくれるガドル。調子に乗って無茶苦茶な展開にした自覚はあります。精神世界だからできたこととして許してください。ちなみにあっち側の戦いの続きはありません。彼らの出番はここまでです、ごめんなさい。

感想、評価等よろしくお願いします

次回もお楽しみに



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