A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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 久々にじっくり自分の作品を読んでみて、違和感を感じました……三点リーダとか空白とかがなってませんでした……現在修正中です。執筆と同時進行なのですぐには手が回り切りませんが、少しは読みやすくなるかな?と思います。

 そんな感じで最新話、わすゆ編最初で最後の日常回?




おもいで

 これまでどんな傷も翌日に持ち越さなかった鋼也だが、完治するまでに一週間が経過した。

 

「……あー、体バッキバキだ。ずっと寝過ごしてたからか、めちゃくちゃ動きにくい」

 

「あんだけ傷だらけになればなぁ……むしろ一週間で治る方がビックリだけどな」

 

 勇者たちは幸い軽傷で済み、学校を終えた放課後に鋼也のお見舞いに来ていた。

 

「本当に大丈夫? 無理してるようなら……」

 

「問題ねーよ。お前ら相手に嘘つく気はねえから安心しな」

 

「お〜……それじゃ祝勝会しちゃう〜?」

 

「いいね! イネス行こうイネス!」

 

「またイネス? 本当に好きね、銀」

 

「どーだろ、俺は許可取れるかは分かんねーぞ?」

 

「その時はお菓子買ってきてしののんの部屋でパーティってことで〜」

 

 先日のギルスの命令違反に対する処分は未だ通達されていない。しかし退院して本部に戻れば、流石にお咎めなしとはいかないだろう。全速力で跳んでいたため、ギルスの目撃者はほぼおらず、大した騒ぎにもなっていない。それでも秘密主義で規律第一の大社だ。監視がさらにきつくなる可能性は十分にある。

 

「私たちも一緒に行ければ良かったんだけど……」

 

「鋼也のおかげで被害が出なかったんだし、何も悪いことしてないじゃんか」

 

「しょうがねえさ。こうなることは覚悟でやったんだ、お前らが気にするこたぁねえよ」

 

「しののん……そういえば〜安芸先生は〜?」

 

 園子が知る中で唯一鋼也の味方をしてくれる大社職員のことを思い出した時、病室のドアがノックされた。鋼也が返事をすると、何やら慌てた様子の安芸が駆け込んできた。

 

「安芸さん? どうかしたのか?」

 

「ハァ、ハァ……お、落ち着いて聞いてちょうだい。鋼也くん……」

 

「いや、アンタが落ち着けよ……キャラがブレてんぞ教師」

 

 鋼也につっこまれ、息を整える安芸。いつもと印象が違う担任教師の姿に、勇者たちも目を丸くして見つめている。

 

「真由美さんが……鋼也くんのお母さんが、目を覚ましたの……!」

 

「……!」

『ええっ⁉︎』

 

「数日前に意識が戻って、まともに話せるくらいに回復したって……上の階の病室よ、行きましょう」

 

 安芸が手を差し出すも、鋼也は俯いたまま何も反応を返さない。疑問符を浮かべた銀がその顔を覗き込むと、顔面蒼白で見開いた眼を泳がせまくる、動揺しきった少年がそこにいた。

 

「…………」

「……鋼也」

 

 篠原鋼也にとって、母親は1つのトラウマだ。異形に変貌した自身。バケモノを見る目でこちらを睨む大人達。そして何より、血に沈む母親の顔。今でも夢で思い返しては飛び起きることがある。

 

「よし! それじゃ行こう、鋼也!」

 

 そんな彼の震える手を暖かい感触が包み込む。

 

「銀……?」

 

「怖い時は一緒にいるって、約束しただろ?」

 

「……俺、は……」

 

「鋼也を産んで、育てた人だぞ? 子供を恨んだりなんてするもんかよ。それは鋼也の方がわかってるだろ?」

 

「それは……」

 

「怖いのは分かる。でもさ、逃げ続けるわけにはいかないだろ。家族なんだから……だったら早いうちに会って、言いたいこと言い合って、普通の家族に戻ろうよ」

 

(……叶わねえな、ホント……)

 

「……安芸さん、案内してくれ……」

 

「……! ええ、すぐ上の病室よ」

 

 5人並んで病室を出る。その間も、鋼也と銀の手は固く結ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私たちはここで待ってるわ」

 

「えっ? でも……」

 

「いきなり大勢で押しかけても迷惑かもだし〜。ミノさん、しののんのことよろしくね〜」

 

「……お、おう! 任せろ」

 

「……開けるぞ……」

 

 恐る恐るノックすると、かつては毎日聞いていた声が返ってくる。小さく深呼吸をした鋼也が扉を開けると──

 

 

 

「ど〜〜〜ん!」

 

「うおっ⁉︎」

「ひゃあっ⁉︎」

 

 開けた瞬間、中にいた人物に思い切りタックルをかまされ、手を繋いでいた2人は仲良く扉に激突した。

 

「ちょっ、なん……母さん?」

 

「はいは〜い、お母さんですよ〜」

 

「……えっ? この人が⁉︎」

 

「真由美さん……まだ安静にしていないと……」

 

「いいじゃないの安芸ちゃん! ひさーしぶりの親子の再会なのよ⁉︎」

 

「その息子さんがあっけにとられてますから、早くベッドに戻ってください」

 

 安芸に押されてしかたなくベッドに戻る女性。銀は未だに思考が追いついていないのか、鋼也と女性の顔を見比べて口をパクパクさせている。

 

「こ、この人が鋼也の……?」

 

「そそ。何年経っても子持ちに見えないって言われるのが生涯の目標、篠原真由美29歳! ……あ、違う、寝てる間に三十路超えちゃったんだよなぁ……改めまして、篠原真由美32歳! よろしくね、三ノ輪銀ちゃん」

 

 恥ずかしげもなくウインク横ピースを決める32歳。確かに言うだけあって、大学生と言われても納得しそうなほど若々しいが、銀が驚いたのは何よりそのノリの軽さだ。

 今でこそ割とノリ良く話してくれるようになったが、出会った時の鋼也の陰鬱な雰囲気はヒドイものだった。事情を知って印象も変わったが、それでもその第一印象をもとに母親像を膨らませていた銀からすれば、この実像はかなりの不意打ちだった。

 

「えっと……アタシの名前を……?」

 

「うんうん! 一週間前……鋼也が担ぎ込まれた日に目覚めてね、ここまでの経緯はだいたい聞いてるの。乃木園子ちゃんと鷲尾須美ちゃんのことももちろん知ってるよ。息子がお世話になってます」

 

「い、いえいえこちらこそ……っていうか、そんなに動いて大丈夫なんですか? 3年も眠ってたのに……」

 

「フフン、これでも鍛えてましたから! 一週間もあればある程度は回復するのよ」

 

 ちょっと鍛えていたでどうにかなる問題なのか? と首を傾げる銀の隣、ずっと俯いていた鋼也が顔を上げた。

 

「……かっ……ぅ……」

 

 言いたいことは山ほどあるのに言葉にできない。思わず後ずさりそうになった鋼也を救ったのは、隣で強く手を握る少女の笑顔だった。

 

(……鋼也、がんばれ!)

 

 至近距離で見つめ合い、笑顔で頷きあう少年少女。ベッドの上には青春真っ盛りの息子を見て、だらしなく顔を綻ばせる母親(親バカ)がいるのだが、傍観していた安芸以外にそれに気づく者はいなかった。

 

 

 

「母さん、ゴメン!」

 

 意を決した鋼也は、第一声と同時に頭を下げた。一瞬でシリアスモードの表情に戻った真由美は、そんな息子を黙って見据えている。

 

「本当は、ずっと会いたかった。話せなくても、せめて顔を見たかった……だけどそれ以上に、眠り続ける母さんを見るのが怖かった。自分のしでかしたことを突きつけられるのが嫌で、俺はずっと──」

 

「あーあーあー! 長い、長いよ鋼也! 3年ぶりの会話なのに重苦しい前置きが長すぎ! 私がそういうの苦手なの知ってるでしょ? もっとシンプルでいいのよ。そもそも鋼也は何にも悪くないじゃない!」

 

 鬱陶しげに耳を塞ぐ真由美。あれほどのことがあっても何も変わらない母親に、力が入りまくっていた鋼也の肩も落ちる。

 

 本当は、言われなくても分かっていた。言うべき言葉はシンプルに。

 

「……お帰り、母さん……」

 

「ただいま、鋼也……それから、お帰りなさい」

 

「……ああ……ただい──」

 

 最後まで言いきるのを待てずに、真由美が鋼也を抱き寄せる。3年ぶりの感触を確かめる2人。

 

「待たせちゃって、ゴメンね……辛かったよね……苦しかったよね……」

 

「そんなこと……母さんこそ……痛かったろ? 俺がもっと──」

 

「いいの……謝らなくていい……親が子供に望むのはね……元気な顔を見せてくれること、それだけなんだから……」

 

「……かあ、さん……」

 

 抱き合いながらすすり泣く親子。横から見ていた銀と安芸も、気づけばその頰に涙が伝っていた。

 

 彼らは泣き続けた。離れていた時間を埋めるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて面会時間が終わり、鋼也たちは帰っていった。流石に今の状況で外泊許可は取れなかったようで、後ろ髪を引かれるように鋼也は病室を後にした。

 

「……さてと、安芸ちゃん?」

 

「はい、鋼也くんの拘束その他の扱いについて、決定に関与した人物をリストアップしました」

 

「さすが、3年でさらに優秀になったわね安芸ちゃん…………なるほど、この陣営……やっぱりアイツか……花村……!」

 

「はい、篠原家、とりわけ真由美さんと並び称されることが多かった花村家の当主、花村正樹。彼の派閥の人間が主導してギルスの処遇を決めていたようです」

 

「いけすかないとは思ってたけど、ここまでゲスだとはね……もっと早く潰しておけば良かったわ」

 

「彼は篠原家の権威が増す可能性を持つ鋼也くんのことも快く思っていなかったでしょう……真由美さんが目覚めたことを私に通さなかったのも、彼の一派の仕業でしょうし……どうします?」

 

「決まってんでしょ……さっさと職場復帰して、あのニヤケ顔ひん曲げてあげるわ」

 

 普段は似てないと言われることが多い篠原親子。知っているものは多くないが、そんな2人にも明確な共通点がある。

 

「組織にも子供にも悪影響しか与えない害獣野郎が……絶対に潰してやる……!」

 

 激怒した時の雰囲気は、非常によく似た親子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鋼也の退院から一週間が経過したある日。午前の訓練を終えて、彼の部屋に遊びに行こうと話していた勇者たちは、校門に見慣れた人影を見つける。

 

「……え……? あれ、鋼也?」

 

「よう、お疲れさん」

 

「ど、どうしてここに……? 外出許可は?」

 

「あーそれなんだけどな……なんか必要なくなったらしい。好きに外に出ていいんだと。今朝急に言われてさ」

 

「お〜急だね〜。何があったの〜?」

 

「俺にもサッパリ。この前母さんがありえないペースでリハビリ終えて職場復帰したとは聞いたけど、関係あるのかね」

 

「うーん……まあなんにしろ、外に出れるなら良いことだよな。そうだ! この前結局できなかった祝勝会やろうよ!」

 

「そうね……ということは、今日もイネスね?」

 

「じゃあじゃあ〜しののんには私オススメのジェラートを教えてあげま〜す」

 

「へえ、楽しみだな……そういや、ジェラートなんて食ったことねえな」

 

「おお〜。じゃあしののんの初めてを私たちでいただいちゃうわけだ〜」

 

「なんか言い方がいかがわしいわよそのっち。冗談はさておき、鋼也くんは他に行きたいところはある? せっかくだし今日はどこでも付き合うわよ」

 

「いや、何処ってのもよく分からんしな。お前らがイイトコ教えてくれよ」

 

「よっしゃ! ならやっぱりイネスだろ! アタシがばっちり堪能させてやるからな、鋼也」

 

「はいはい……期待してるよ……」

 

 

 

 

 

 

 その日を境に、鋼也に課されていた制限が次々と解除されていった。手錠も外され、好きに外出でき、挙句唐突に小学生に不相応な金額を与えられてしまった。流石に鋼也もおかしいと思って母親を問いただすも、気にせず楽しめとしか言われなかった。

 しかも時期を同じくして、安芸も勇者たちから離れているらしい。教師としても休んでいるとのこと。

 

(何があったんだか……)

 

「ん〜? しののん、どうかした〜?」

 

「……いや、なんでもねぇ……つーかどうしても必要かこれ? 適当な服で良くねえか?」

 

「ダメダメ〜、私たちで行く初めての夏祭りなんだよ〜? 乃木さんちの園子さんにおまかせあれ〜」

 

「……やーれやれ、早めに頼むわ……」

 

 鋼也は園子に連れられて、乃木家の邸宅を訪れている。近く開催される夏祭りに行く時の浴衣を見繕うことが目的だ。別室では須美が銀のコーディネートに精を出している。時折興奮した声が聞こえてくる辺り、順調に須美のキャラ崩壊が進んでいるようだ。

 

「園子、この頃の大社についてなんか聞いてるか?」

 

「ん〜ん、私はなんにも〜……大事なことなら教えてくれるだろうし、今は気にしなくていいんじゃないかな〜?」

 

「そんなもんかね……」

 

 乃木家のご令嬢も詳しいことは知らないらしい。当たり前の日常生活というものに不慣れな鋼也はどうしても気にしてしまうが、周りから見れば当然な権利でしかない。

 そんなことをつらつら考えているうちに園子が満足したらしく、着せ替えタイムは終了した。妙な倦怠感が抜けない体を伸ばしていると、部屋の扉が開かれる。

 

「そのっち、鋼也くん、こっちは終わったわよ」

 

「……あー疲れた……何回着せ替えられたんだアタシ……ん? どうしたんだ鋼也?」

 

 三ノ輪銀ファッションショーを終えた2人が戻ってきた。なにやら潤っている須美と対照的に疲弊しきった様子の銀。

 

「……いや、俺がこんなことしてていいのかと……つい、な……」

 

「んー、アタシにはその辺の感覚よく分かんないけど……でもそうだな……これまで鋼也が頑張ってきたご褒美、って思えばいいんじゃないか?」

 

「前向きだなお前さんは……まあ、俺も少しは見習うべきなのかもな……」

 

 少しくらいは素直になってもいいかもしれない。そんな風に笑う鋼也は、それから少しずつ日常に馴染んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏祭りの夜、お約束のように銀は集合場所に来なかった。

 

「……ま、予想通りだな」

 

「ど〜する〜? この人混みで探しに行くのもちょっとね〜」

 

「どうせまたトラブル解決に奔走してるんでしょうし……」

 

「しゃあねえ、ちょっと高いところから見てみますかね」

 

 ため息をこぼした鋼也が、傍の木に飛び乗ろうと跳躍する。高い身体能力を持つ彼なら造作もないこと……だったはずだが……

 

「えっ、しののん⁉︎」

「危ない!」

 

 枝に届くには僅かに飛距離が足りず、およそ2階分の高さから背面を下に落下する。

 

「──っ! チィッ‼︎」

 

 間一髪、幹を蹴って再跳躍。なんとか枝に捕まることができた。ホッと息をつく鋼也たち。しかしおかしい。本来彼は4階建ての校舎の屋上に飛び移れるほどの跳躍力があるはずなのだが。

 

(入院してからなんかおかしいな……そもそもなんだってあんな重傷になったんだ……? 再生能力が、弱くなってる?)

 

 自分の体に疑問符を浮かべていると、騒ぎに気づいた銀が巨木の上にいる鋼也を見つけた。目があった彼女の様子からして、どうやら問題は解決した後らしい。

 

「おーい! 鋼也、何やってんだ? そんなところで」

 

「お前を捜してたんだよ遅刻魔が……」

(まあ、今はいいか……)

 

 ふと浮かんだ一抹の不安は、赤い浴衣を着て笑う銀を見た瞬間霧散した。今は今を楽しむ。友のためにも。

 

 

 

 

 

「やっと全員揃ったわね」

 

「いやー、ホントごめんな? 迷子の子を見つけちゃってさ……」

 

「気にしなくていいよ〜。それよりしののん、ミノさんに何か言うことは〜?」

 

 揶揄うような園子の視線。鋼也はその意味を理解して口を開く。『女の子がおめかししてたらまず最初に褒めてあげること』園子大先生に口酸っぱく指導され、実際須美と園子相手に実践もしていたのだ。

 

「えーっと……いいと思うぞ。動きやすそうだけどちゃんと女の子っぽいし、勇者服に雰囲気が似てるな……やっぱり銀には、その色がよく映えるよ」

 

「…………」

 

「……銀? どうした?」

 

 あの鋼也から出てきたとは思えない褒め言葉に、銀の思考が停止する。その顔が浴衣と同じくらい赤く染まるのを見た園子が、彼女の肩を揺する。

 

「……はっ⁉︎ 今なんかすごいことがあったような……」

 

「……ミノさん……」

 

「鋼也くん、もうちょっと普段から優しい言葉をかけてあげてくれない?」

 

「いや、そんなつもりはないんだが……善処する……」

 

 なんとも微妙な雰囲気で屋台を巡る勇者たちだったが、やはり子供は子供。目の前に広がる祭りの空気に飲まれ、あっという間にテンションが上がっていく。

 

 

 

「う〜ん……ダメだ〜」

 

「任せてそのっち…………そこっ!」

 

「すげえ! あの見るからにヘビー級なぬいぐるみを」

 

「見ろよ店主の顔……あれが落とされるとは思ってなかったんだろうなぁ」

 

「お〜わっしーさすが〜。よっ、神樹館のスナイパ〜」

 

「ダメよそのっち……そこは『狙撃手』とか『狩人』とか言ってもらわないと」

 

 射的では遠距離型勇者が本領を発揮し……

 

 

 

「みてみて〜、『お嬢ちゃん可愛いから』っておまけしてもらっちゃった〜」

 

「さすが園子だな。愛されオーラ全開だ」

 

「いやでも、その量はおかしくない?」

 

「タコ焼き3パック……どうすんだそんな量」

 

「大丈夫だよ〜はい、ミノさんあ〜〜ん」

 

「へ? あ、あ〜〜ん……ってあっちぃ⁉︎」

 

「あ、ごめ〜んミノさん……それじゃ、ふ〜ふ〜……はい、わっしーあ〜〜ん」

 

「そ、そのっちったら……人前で恥ずかしいわ、もう……あむ」

 

「文句言いながら食うのかよ……」

 

「ほら、しののんの番だよ〜はい、あ〜……」

 

「ま、待て待て園子! それはダメだろ⁉︎」

 

「え〜なにが〜?」

 

「何って、その……だから……」

 

「分からないよ〜、なんでミノさんとわっしーは良くて、しののんはダメなの〜?」

 

「だ、男子だからだ! 好きでもない男子にそういうことはしちゃダメなんだぞ!」

 

「じゃあ大丈夫だよ〜。私しののんのこと好きだし〜」

 

「うえぇっ⁉︎」

 

「もう、そのっち? からかいすぎちゃダメよ?」

 

「は〜い……ゴメンねミノさん、私の『好き』はミノさんやわっしーへの『好き』と同じだから、心配しなくてい〜よ〜」

 

「な、なんだ……って、心配ってなんのことだよ⁉︎」

 

(まるで話に入れねえ……俺が話題だったみたいだが……これが女子の姦しさってやつか)

 

 天然か狙いか分からないリーダーの気まぐれに振り回され……

 

 

 

 

「ホイホイホイッと。どうよこの速さ! 昔から金魚すくいは大の得意で……」

 

「よっ、ほっ、はっ……へぇ、コツ掴めば簡単だなこりゃ」

 

「こーうーやー……それはアタシへの挑戦と受け取っていいんだな?」

 

「そう思いたきゃ好きにしろよ……ま、負ける気はしねえがな」

 

「上等! 祭り初心者にこの銀様が負けてたまるか!」

 

「ハッ! デカイ口叩くと後が怖いぜ!」

 

「盛り上がってるわねあの2人……さて、そのっち」

 

「うん〜それじゃ予定通り〜」

 

 子供らしく金魚すくいで張り合う2人を置いて、須美と園子が何処かへと……

 

 

 

「あークソッ! また引き分けかよ⁉︎」

 

「流石にこれ以上は店にも迷惑だな……ワリィ2人とも、待たせちまった…………あ?」

 

「アレ? 須美と園子がいない…………メール?」

 

 3戦3分けで勝負を終え、金魚すくいの屋台から離れた銀と鋼也は、仲間の2人がいないことにやっと気づいた。銀が自分の端末を確認すると……

 

 

 

 "これから花火までの間、2人ずつで別行動をとりま〜す。ミノさんはしののんと、た〜っぷりデートの思い出を作ってくること! これはリーダー命令です。花火の集合場所はさっき話したところだよ〜。19時まで30分、楽しんでね〜。

 園子

 

 p.s しののんには内緒ね〜"

 

 

 

(……そ、園子のやつ〜……)

 

「銀? 連絡ついたのかよ?」

 

「あ、ああ! なんかサンチョの限定グッズを見つけたとかで、走ってった園子を須美が追っかけてったみたい……花火の時間にさっき話した穴場で会おうって」

 

「そうかい。何事もねえならいいんだが……で? どうするよ」

 

「ふぇ?」

 

「2人だけになっちまったが、行きたいところがあるなら付き合うぜ?」

 

「え、えーとえーと……そうだ! 弟たちになんか買って帰らないと」

 

「んじゃ食い物と……なんか景品が手に入るところを回ってみるか」

 

 鋼也はそう言って、銀の左手を握って歩き出す。

 

「え、っと……鋼也?」

 

「これ以上はぐれたら合流が面倒だろ…………手握るのはマズかったか? それなら適当に裾でも……」

 

「い、いや大丈夫! 裾じゃうっかり離しちゃいそうだしな。うん、これでいい……」

 

 赤くなる顔をワタワタと隠しながら、それでも銀はその手を一切緩めなかった。すれ違う人々が2人を生暖かい目で見守ってくるのも余計に羞恥心を煽る。

 

(クソォ……なんで鋼也は平気そうな顔してるんだ)

 

(ヤベェな……これが夏祭りか……正直ナメてたぜ)

 

 実は友達との祭りというシチュエーションに若干ハイになっている鋼也は一時的に羞恥心が機能しなくなっているだけなのだが、絶賛赤面継続中の銀はそんなことを知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 2人で祭りを見て回ること数分、ある屋台が銀の目に留まった。その屋台は伝統的な組紐職人が出している店で、装飾品を中心に彩り豊かな組紐が並んでいる。

 

(あ……コレいいな……でも、お金が……)

 

 銀の目が1つの髪紐を見つめている。しかし決して小学生の財布に優しい額ではない。既にいくらか使ってしまっている上に家族への土産を考えると、手を出すのを躊躇ってしまう。

 

(そういやコイツ、この前気に入ってた髪紐が切れたとか言ってたな……)

 

 昨日珍しくしょぼくれていた少女の顔を思い出した鋼也は、使い道のない金が詰まった巾着を取り出して、厳つい店主に声をかける。

 

「オッサン、これ2つでいくらだ?」

 

「こ、鋼也⁉︎」

 

「お、なんだいボウズ。可愛い彼女にプレゼントか?」

 

「んなんじゃねーよ。ただ、コイツにゃ世話になったからな。礼の品だ」

 

「ハッハッハ! ちょいと素直じゃないのはいただけねえが、いいじゃねえか! そういうことならまけてやる、特別価格で半額、1個分の値段で売った!」

 

「いいのかよ?」

 

「その歳で一丁前に女をリードしようっていういい男に、特別サービスだ! 気が変わらんうちに買っちまいな!」

 

「ありがとよオッサン……アンタもいい男だと思うぜ?」

 

 お言葉に甘えて、格安の代金を支払って屋台を離れる。祭りの列から少し離れた脇道で、目の前で買ったプレゼントを差し出す。

 

「ホレ……前に使ってたやつと似てるし、コレが欲しかったんだろ?」

 

「……あ、ありがとう鋼也……でもなんでわざわざ……」

 

「さっきも言ったろ。助けられた礼だ……お前には色々教わったしな……」

 

「え?」

 

「なんでもねーよ。さっさと受け取れ、いらねえなら捨てちまうぞ?」

 

「わー、待って待って! ……あ、あのさ……プレゼント買ってもらっておいてなんだけど……ワガママ言ってもいいか?」

 

「なんだ。聞くだけ聞いてやる」

 

「その髪紐……鋼也がつけてくれないか? ……今ここで」

 

 銀はそう言って、髪を結んでいたスペアの髪紐を外し、髪を解いた。初めて見る銀の姿に一瞬目を奪われた鋼也は、妙に空いてしまった間を誤魔化すように問いかける。

 

「……えーっと……俺は女の髪なんざいじったことねえぞ? それでもいいのか?」

 

「うん……鋼也が買ってくれたものだから……鋼也につけて欲しいんだ……」

 

 真っ赤な顔で小さく頷く銀に、鋼也は観念したように息を吐くと、ゆっくり彼女の後ろに回る。

 

「そんじゃやってみるか……うまくいかなくても怒んなよ?」

 

 おっかなびっくり銀の髪に触れ、まとめていく。いつもの髪型を思い出し、まとめる量や結ぶ位置を慎重に見定める鋼也。その視線や時折首に触れる彼の指先がこそばゆくて、銀が小さく震えているが、集中している鋼也は気づかない。

 

「こんなもんか……鏡かなんか……端末で撮りゃいいか」

 

 銀の端末で写真を撮り、現在の姿を確認した銀は、自分の顔を一目見て即座に端末をしまった。

 

「お? ……どうした銀? なんかおかしかったか?」

 

「い、いや大丈夫……ちゃんとできてるよ。ありがと、鋼也」

(ア、アタシの顔……今あんなに真っ赤なのか……⁉︎ しかもめちゃくちゃ嬉しそうに……!)

 

 端末には自分自身が知らない三ノ輪銀が写っていた。とてつもなく恥ずかしげに、だけどそれ以上に嬉しそうに笑う少女……いや、1人の女性の姿が。

 

(アレじゃ、まるでアタシが──いや、まるで……じゃないのか……?)

 

 銀はまだ自分の心がはっきり理解できていないが、世間では彼女のような状態をこう表現する。

 

 ──『恋する乙女』と──

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……おい、結構時間ヤベェぞ、早く集合場所行かねえと」

 

「あ、ホントだ。ちょっと坂道だし、急がなきゃ────っうおっ⁉︎」

 

「銀!」

 

 唐突に転びかけた銀に手を伸ばして体を支える鋼也。足元を見てみると、銀の右足を支えていた草履の鼻緒が、見事に切れてしまっていた。

 

「うわーどうしよ……これ園子のウチの借り物なのに……」

 

「まあそれは後で謝るとして……流石にそれじゃ歩けねえだろ」

 

 今から替わりになるものを探すのは時間がかかりすぎる。となると……

 

「しゃあねえ……乗りな、銀」

 

「えっ⁉︎ こ、鋼也⁉︎」

 

「時間ねえんだって。花火見逃すのも、アイツら待たせんのもイヤだろ?」

 

「……ぅ……ぅう〜〜! わ、分かった……よろしく頼むよ、鋼也」

 

 色々なものを天秤にかけた結果、友情が勝ったらしい。恐る恐る銀が鋼也の背に乗ると、そのまま勢いよく駆け出していく。

 

「うおっ! こ、鋼也⁉︎」

 

「普通に進んでたら間に合わねえ、ちょっと飛ばすぜ!」

 

 木々を飛び回り、石段を駆け上る。人を背負っているとは思えない勢いではためく浴衣姿が、夏の夜空に舞い上がる。

 

「なんだぁ、ありゃ」

「さっきのボウズ、か……?」

「スゴーい! おばあちゃん、飛んでる人がいるよー」

「まあほんと……まるで牛若丸だねぇ」

 

「お、おい鋼也! なんかすごい目立ってるぞ!」

 

「ハハッ、いいじゃねえか! 祭りなんだから目立ってナンボだろ!」

 

 数年に渡る軟禁生活で無自覚のうちに溜まっていたストレスを解消するように、鋼也はただ笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「う〜ん、遅いね〜2人とも」

 

「銀だけならまだしも、鋼也くんがついてて遅れるとは思わなかったわね……」

 

 2人と別れて祭りを散策していた園子と須美は、園子の家で聞いた花火鑑賞の穴場……林の中心の開けた平野で仲間を待っていた。

 

「返信がないということは、多分今急いでこちらに向かっているんだと思うけど」

 

「もう1分もないよ〜。ミノさん、しののん……私、余計なことしちゃったのかな〜?」

 

「そんなことないわよ、そのっち。2人のためを思ってのことなんでしょ? まだ来てないってことは、銀と鋼也くんは2人の時間をすごく楽しんでたってことじゃない? それはそのっちのお手柄よ」

 

「わっしー……ありがと〜」

(新作のネタ探しも兼ねてた……って言ったら怒るかな〜?)

 

「……とはいえ、もう始まってしまうわね。花火は4人一緒に見たかったけれど……」

 

 須美が空を見上げるのと同時に、最初の花火が独特の音と共に打ち上がる。その花が咲く、まさにその瞬間──

 

 

 

 花火をバックに、少女を背負った神世紀の牛若丸が夜空を翔け上がってきた。

 

「こ、鋼也くん……⁉︎」

「お〜、しののんかっこいい〜」

 

 目を丸くして驚く2人の目の前に降り立つ鋼也。息を荒げながらも優しく銀を下ろして空を見上げる。その顔は今までにない清々しさに満ちていた。

 

「ふぅ……ギリギリ、間に合ったな……」

 

「む、無茶しすぎだよ鋼也……死ぬかと思った」

 

「悪りぃ悪りぃ……でも楽しかったろ?」

 

「あのなぁ…………楽しかったよ、気持ちよかったよチクショウ!」

 

「まあまあ、話は後で聞くとして……」

 

「今は花火を楽しも〜。聞いた通り、よく見えるねここ〜」

 

 慌ただしいながらも合流した4人。並んで夜空の花を見上げる様は紛うことなく『友達』の姿。この日、篠原鋼也の忘れられない思い出が、1つ刻まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大社本部地下、電気を落とされ、目の前も見えない暗闇の中を必死に逃げ惑う男が1人。

 

「ひぃ、はぁ……くそっ、あの女……今更戻ってくるなんて……あのままくたばってれば……!」

 

「あらら、それはご期待に添えなくて、ごめんなさいね!」

 

 突然背後から聞こえた声に振り返った瞬間、男の顔面に拳が突き刺さる。数メートル吹き飛ばされ、壁に激突した男は、自分を殴った人物の顔を確認すると、鼻が曲がったその顔に怒りと恐怖を浮かべる。

 

「篠原、真由美ィ……!」

 

「ハーイ、花村くん……久しぶりね、人が寝てる間にずいぶん好き放題やってくれたじゃない? 組織もそうだけど、何より……私の鋼也に手を出して、タダで済むとか寝ぼけたこと考えてないわよねぇ……!」

 

 男……花村正樹は、最大のライバルである真由美の事故を契機に派閥を拡大、発言力を増していった。その権力で鋼也の処遇にまで口を出し、元来の口八丁と数の力で彼の軟禁を決めた張本人である。

 

「さて、お縄にする前に聞いてあげるわ……なんだってこんなマネしたわけ? アンタが私や篠原家を嫌ってるのは知ってたけど、こんなことしでかすほどじゃなかった。私が倒れて舞い上がっちゃったとか?」

 

「ククッ……あなたは何も分かってない。この世界はもう終わってる……大社のやることには最早なんの意味もないんだ……」

 

 俯いてブツブツと呟く花村。その体から、黒い影のようなものが蠢き、花村を包み込む。

 

「──っ! 花村、それは──」

 

「あなたに分かるはずがない……選ばれたのは僕だ……選ばれなかったのがあなただ!」

 

 立ち上がった花村は、常人ではあり得ない速度で真由美に迫る。しかしその顔に焦りはない。花村の行動に違和感と危険を感じ取っていた彼女が、1人でのこのこ来るわけがない。

 

「──ガッ⁉︎」

 

「すみません花村さん……あなたの行動は認められない」

 

 刃引きした薙刀が花村の脳天に直撃、あっけなく気絶する。一切気配を気取られることなく背後を取った下手人、三好春信は小さく息を吐くと、後ろに控えていた部下に拘束を命じる。

 

「助かったわ三好くん。さすがは今代の『麒麟児』ね」

 

「やめてくださいよ……ただでも恥ずかしい渾名なのに、『先代』のあなたに言われるのは色々辛いです。そもそも僕が手を出さなくても、真由美さん1人でどうにかなったでしょ?」

 

「ごめんごめん……で、どう見る?」

 

「最後の動きは異常でした。それまでは少し精神に異常をきたしているくらいかと思ったのですが……」

 

「……え? いやその前にもっとおかしいのあったじゃん。あの影みたいなの見えなかったの?」

 

「影……ですか? いえ、僕には何も……」

 

 おかしいと思った真由美は、証人として遠くに配置していた数人に確認を取る。すると、自分と同じく影を見たのは適正持ちの現役巫女1人だけ。後は全員が見ていないと言う。

 

「私と巫女にしか見えない……?」

 

「そういえば真由美さん、結婚前は巫女のお役目についていたと言っていましたね」

 

「ええ、これでも昔は筆頭巫女だったのよ? ……ってことは、適正持ち、もしくはかつて持っていた者だけが知覚できる……?」

 

 連行されていく花村には目もくれず思考に没頭する真由美。首魁を捕らえたはずなのに、疑問と不安は増していくばかり。そんな心境を読んだように、更なる急報が舞い込んでくる。

 

「真由美さん!」

 

「あら安芸ちゃん、どしたの? 花村のヤローならもう連れてっちゃったから、ぶん殴りたいなら収容所に──」

 

「そうではなく! 鋼也くんのことです」

 

 その一言で完全に頭を切り替えた真由美は、傍の春信も引っ張って研究室に向かう。いつだって最優先されるのは息子のこと。それが彼女の掲げる母親の在り方だ。

 

 

 

 

 

 

 

「これは……」

 

「これまでの戦闘後の鋼也くんの検査記録を全て調べてみました。やはり間違いなく彼の再生能力は落ちています」

 

「……それは、やっぱりもう……鋼也の時間がなくなってるってこと?」

 

「私も最初はそう思いました。ですが調べてみると、別の考えが浮かんできたんです」

 

「別の考え……?」

 

 まだ小学生相当の息子の寿命が切れる。そんな理不尽をどうしても許せない真由美に、安芸が吉報と凶報を同時に運んでくる。

 

「検査によると再生能力だけでなく、身体能力も落ちている──あくまで変身前の、ですが」

 

「変身前、ということは──」

 

「はい。変身後の能力はむしろ向上しているんです。開発部、呪術部にも調べてもらいましたが、神性そのものも大きく引き上げられているそうです」

 

「それって……」

 

「これまでの情報で考えられるのは2つですね」

 

 言い淀む真由美に代わって、春信がその知見でいち早く結論を導き出す。

 

「1つは鋼也くんの体が本当に限界にきている場合。消えかけのロウソクが強く燃え上がるように、その全てを燃やして出力を上げているという可能性。そしてもう1つが──」

 

「何らかの理由で、融けあい混ざり合っていた鋼也とギルスが分離した場合。英雄の力に引っ張られて向上していた鋼也の身体能力が通常に戻り、同時に統制が取れたギルスの力が安定して、結果として出力が増している可能性。この二択ね」

 

 春信の言葉を遮り、結論を述べる真由美。絶望と希望を同時に突きつけられた母親は、何の感情も浮かんでいない無表情でデータの束を眺めている。

 

「……今のままじゃどちらも推測の域を出ないわ。もっと精査しないと……安芸ちゃん、三好くん、手伝ってくれる?」

 

「もちろんですよ、他の人も呼びましょう。真由美さんと鋼也くんのためなら、みんな協力してくれます」

 

「私も全力を尽くします……あの、このことは鋼也くんには──」

 

「確定情報が出るまでは黙っていましょう……あの子は散々振り回されてきた。これ以上惑わせるようなことはしたくないわ」

 

 この日からしばらく、篠原派閥の大社職員が交代で休暇を取っては地下に向かう光景が見られるようになる。全ては鋼也のために。母親としても、教師としても、大人としても、その選択は決して間違ったものではなかった。しかし……

 

 

 

「……これが、人類を救う希望の一手……」

 

 大社の中央会議で、ある施行が可決された。その資料の表紙には……

 

『勇者システム強化案 "満開"の導入について』

 

 見逃してはならないその案を、大人達は見逃してしまった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()間の悪さによって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天の神の方も、まもなく準備が完了するようです……今回はあなたにも出てもらうことになります」

 

「……分カッテイル……」

 

 神霊の世界、テオスと向かい合うように佇むアンノウン……いや、アンノウンとは比較にならない力の持ち主は、テオスの言葉に応えるように手に持つ剣を振るう。

 

『地のエル』

 

 最高位のアンノウンである『エルロード』の一体。テオスが信を置く切り札が、とうとう切られてしまった。

 

「あなたの標的はギルスです。アレはあまりに希少すぎて、私ですら把握していない可能性を持っています。それが芽を出すよりも早く、摘み取ってもらいたい」

 

「ギルス、カ……ナルホド、確カニ私モ、ホトンド憶エガナイナ……」

 

「ええ。人間に、そんな未知数の要因は必要ない。そのために……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天の神──バーテックス

 テオス──アンノウン

 大社──勇者

 神樹──ギルス

 

 それぞれの思惑は絡み合い、一つの螺旋となって天へと昇る。

 

 果たして、最後に微笑むのは────

 

 

 

 

 

 

 

 




 鋼也くんがいい感じに報われてきました……さて、最終決戦です。わすゆ編はちょっと短くまとめすぎたかな?

 感想、評価よろしくお願いします

 次回もお楽しみに

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