A New Hero. A Next Legend   作:二人で一人の探偵

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 完全に余談ですが、先日長野に行く用事がありまして、ついでに少し足を伸ばして諏訪に一泊してきました。
 諏訪大社は本宮と秋宮にしか行けませんでしたが、諏訪湖周辺をチャリで爆走してきました。
 徐々に領域を削られたとはいえ、あの広い範囲を守ってきたうたのんとみーちゃんはやっぱりすごいなと思いました(小並感)

 そんな訳でみーちゃんルート

 今回は周囲の人から見た2人の姿。幸せいっぱいの夫婦を外から見た感じです。




 ……あっ、そのっち&タマっち、誕生日おめでとう(小声)



終章W話 大人(IF:藤森 水都)

「……ん、これで大丈夫だね。お疲れ様、今日はもう上がっていいよ、あとは私がやっておくから」

 

「そんなわけには……私たちが残りますから社長は……」

 

「いいのいいの、どの道今日はまだ帰れないし」

 

 四国一の野菜宅配サービス『ホワイトフォレスト』の事務室。すっかり慣れた様子の水都が朗らかに微笑む。

 大企業と呼べるほどの規模はないが、社長の人徳もあって多くの農家と良好な関係を築き、業界トップの成果を上げた企業。そのリーダーとは思えないほど、普段の彼女は昔と変わらない暖かい雰囲気をまとっている。

 自ら残業しようと言う社長に恐縮する社員たち。そこに1人の女子社員が現れる。

 

「おっ、社長……まだ帰れんってことは、今日はお迎えの日ですか?」

 

「奈々ちゃん、あまり大声で言わないでよ……」

 

「アハハ、こりゃ失礼……ほらアンタら、社長の言う通り今日はもうさっさと帰りや! 上司命令やで!」

 

 かつて水都と同じく大社の巫女として役目を果たした三ノ輪奈々。巫女の任を降りてすぐ、会社の発足前から共に励んできた彼女は水都に次いで社のNo.2にあたる。

 彼女の言葉に首を傾げながらも退社の準備をする社員たち。今いる彼らはまだ新人で、知らないことも多くある。

 

「ほな私も、お邪魔にならんうちに上がりますね。お疲れ様です」

 

「うん、お疲れ様……あんまり変なこと吹き込まないでよ?」

 

「変なことなんて言いませんて! 黙ってたってそのうち分かることやないですか!」

 

 楽しげに社員たちと肩を組みながら退社していく奈々。あれはもう言うだけ無駄だろう。優秀で気心知れた彼女は頼りにはなるが、いささか口が軽すぎるのが難点だ。

 

(きっと明日にはあの新人たちも他の社員さんみたいに生暖かい目で私を見るようになるんだ……あぁ、ヤダなぁ)

 

 もしかしたらもう既に奈々が笑いながら教えているかもしれない。水都は思わずため息をつく。

 

「ふぅ……時間はまだちょっとあるか」

 

 意識を切り替えてデスクに向かう水都。チラチラと時計を確認するその顔には、隠しきれない待ち遠しさが浮かんでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「りくとせんせー、のぞみせんせー、さようなら!」

 

「はーい、また明日ね!」

「気をつけて!」

 

 かつて陸人と水都が訪れていた保育園。最後の園児を送り出し、2人の保育士が安堵のため息をつく。

 

「ふぅ、今日はこれで終わりね……助かったわ陸人くん。まさか3人も急に欠勤になるとは思わなくて」

 

「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」

 

 ホワイトフォレストは配達業とは別で、保育園や孤児院といった、子供達のための施設の経営もしている。陸人は保育士や調理師資格を取得し、系列の施設のヘルプ要員として働いている。立場としては一社員ではあるが、通常業務に参加しないため、知らない社員も少なくない。

 

「大分保育士の仕事も板についてきたわね。私もいつまで先輩顔できるかしら」

 

「そんなこと……望見さんは俺が目標にしてきた保育士ですから、いつまでも先輩ですよ」

 

「あら、嬉しいこと言うじゃない! これから一杯どう? 気分いいから先輩奢っちゃうわよ?」

 

「あー、スミマセン……今日はちょっと、これから用事がありまして……」

 

「あ、もしかしてアレ? 水都ちゃん?」

 

 恥ずかしそうに小さく頷く陸人。彼らが結婚してから数年経つが、未だに2人とも反応が初々しいため、知人にからかわれることも多い。

 雑談を交わしながら園内の片付けを済ませた陸人と望見。気づけばすっかり日も暮れている。

 

「そういうことなら今日はもう上がっちゃいなさい。後は私1人で大丈夫だから。今日はありがとうね!」

 

「ありがとうございます、お言葉に甘えて……失礼します! 飲みはまた今度で!」

 

 ソワソワした様子で帰り支度を済ませて飛び出す陸人。待たせたくないのか、早く会いたいのか……望見は微笑ましさを感じると同時に、未だに異性と縁がない自分の人生を思い返して肩を落とす。

 あの夫婦は見ていると幸せな気持ちにはなるが、同時に虚しくもなってしまうほどに幸福オーラを振りまいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕事を終え、入り口前で立っていた水都のもとに、ビートチェイサーに乗った陸人が到着した。

 

「あっ! 陸人さん!」

 

「水都ちゃん! 中で待っててくれれば良かったのに……寒かったでしょ? ……ほら、もっと暖かい格好しなきゃ」

 

「あ、ありがとう。でも陸人さんは……」

 

「俺は平気だから。それよりバイクに乗り慣れてない人は特にさむいだろうし……手袋は?」

 

「ごめんなさい、今朝慌ててたから……」

 

「じゃあこれ使って。俺はバイクのグローブ付けてるからさ」

 

 冬空の下待っていた水都の頰や手は若干赤らんでいる。それを見た陸人は慌ててバイクを降り、自分のマフラーを彼女の首に巻く。手袋も差し出し、甲斐甲斐しく世話を焼く様子も手馴れたもの。今の仕事を始めてからの陸人は、以前にも増して兄貴質というか父気質というか、面倒見の良さが増しているように水都は感じている。

 

「……よし、それじゃ行こうか。今日は朝のうちに準備しておいたから、すぐにご飯食べられるよ」

 

「わ、楽しみ……じゃあ安全運転でお願いします、運転手さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仲睦まじくひっついた2人を乗せてバイクが発進する。その様子を向かいのカフェから覗いていた者たちがいた。

 

「……わぁ〜、社長にあんな仲のいいお相手が……しかもあの人って確か……」

 

「せや、あの伍代陸人さん……あ、ちなみに社長が嫁入りしたから、伍代水都ってのがホンマの名前なんよ。結婚よりも会社始める方が早かったから仕事ん時は旧姓のままなんやけどね」

 

「そうなんですか。社長が結婚してるのはうっすら聞いてましたが……」

 

「それも知らずに社長狙ってる人は社外にもいるけど、あの様子じゃあねぇ……」

 

「まぁあの2人も色々あったからな。割って入れる人がいるとは、思えんなぁ」

 

 しみじみと呟く奈々。1番苦しかった時期を知っている彼女は、彼らの幸せそうな笑顔を見られる今この時間が、本当に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ちょっと待っててね。すぐ作るから」

 

「ううん、私も手伝うよ」

 

「いいからいいから、のんびりしててよ社長さん」

 

「それやめてよ、家の中で」

 

 帰宅して食事の支度をしていた伍代家に、やたら明るい訪問者が現れた。

 

「ハーイ! みーちゃん、陸人くん、本日の野菜たち持ってきたわよ!」

 

「いらっしゃい、うたのん……今日はキャベツの日だったんだね」

 

「いつもありがとう歌野ちゃん。手早くサラダにするから座ってて」

 

「それじゃお邪魔しまーす……うん、この家はいつも暖かいわねー、居心地いいわ」

 

 伍代家の向かいに住んでいる歌野は、ほぼ毎日のように野菜を持ってきて食事を共にしている。いっそ同居すればいいと水都も陸人も言ったが、流石に歌野もそこは遠慮した。無二の親友と唯一の想い人。その2人のお邪魔虫にはなりたくないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれの分野で日々働く3人は、夕食の席でその日の出来事を教え合うのが恒例になっていた。歌野の畑で大きな虫が出た、陸人の孤児院である子供が野菜嫌いを克服した、水都の会社の新人が小さなミスをした、等のなんて事のない話だ。

 

 食事を終え、風呂に入り、軽く飲んで、日が変わる前にお開き。それが伍代家の日常風景。

 夫婦が台所に並んで後片付けをする。これも日常風景。

 そしてその姿をスマホで撮影する歌野。これもまた日常風景だ。

 

「ん……? うたのん、また撮ってたの?」

 

「オフコース! 仲良し夫婦の光景が1日の疲れを癒してくれるの、私のエネルギー源よ!」

 

「いつも似たような構図だろうに、よく飽きないね?」

 

「ふふん、その変わらない構図から日々の小さな違いを見つけるのが楽しいんじゃない! 2人を除いた丸亀城のグループにも流して、みんなで語り合ったりもしてるのよ」

 

「えっ!」

「何それ聞いてないよ?」

 

 何やら誇らしげな歌野に困惑する伍代夫婦。2人並んで同じ角度に首をかしげる2人が愛らしくて、歌野のシャッターを押す指が止まらない。

 

「さて、今日の分のフォルダも潤ったし、今日はお暇するわね。アディオスアミーゴ!」

 

『あ……うん、また明日……』

 

 嵐のように去っていく農業王(仮)の背中を見送る陸人と水都。何年経ってもあのフリーダムっぷりは変わらない。

 

「……歌野ちゃん、スペイン語と英語の区別ついてるのかな?」

 

「あはは……うたのんのことだから、響きで選んだだけで細かいことは気にしてないんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 片付けと翌日の準備を終え、ベッドに入る。肩が軽く触れ合う距離で手を繋ぐのが夫婦の就寝スタイル。

 

「……ん……んぅ……」

 

「……ふぅ……おやすみ、水都ちゃん」

 

「……うん、おやすみなさい、陸人さん」

 

 横になる前に口づけを交わす。これもまた夫婦の習慣となっている。水都は小声で遠慮がちに問いかける。

 

「あの、陸人さん……今週末は……」

 

「あ、うん。無事お休みもらえたよ。休日が重なるのは久しぶりだね……たまには2人だけでのんびりしようか」

 

「……う、うん! 楽しみにしてるね」

 

「……()()()()も、その時にね……」

 

「〜〜〜っ‼︎ 陸人さん!」

 

 妻の唇に触れながら囁く陸人。水都の顔が爆発したかのような勢いで赤く染まる。

 

 

 

 

 

 

 これ以上なく物騒な出会い方をした陸人と水都。

 そんな彼らの10年後は、当初の本人たちの理想に近い大人として生きている。

 

 2人も、見守る者たちも確信している。

 優しく温かく美しい時間が、これまでもこれからも続いていくのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 うーむ、手こずった……自分の中にあるイメージをうまく描写できなかったかも……

 主に新婚さんですが、たまにいるじゃないですか。スーパーとかですごく仲よさげな夫婦とか。見ているだけで微笑ましくなる感じの。陸人くんとみーちゃんがくっついた時のイメージとしてはアレです。

 感想、評価等よろしくお願いします。

 次回もお楽しみに
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