A New Hero. A Next Legend 作:二人で一人の探偵
「みんな、無事……?」
「胸張って"無事"って言い切るにはあちこち痛いけどね……」
「なんとか大丈夫だよ、お姉ちゃん」
「私も……友奈ちゃんは?」
「私も大丈夫――りっくんがいない」
勇者達は陸人を除いて全員が近くに吹き飛ばされていた。軋む体に鞭打って、なんとか立ち上がる5人。変身も解除されているが、重傷を負ったものはいない。精霊バリアと、そして……
「……とにかく動かないと。あのデカブツ、神樹様に向かってるわ」
「そうね。陸人も動けるならアレを追って来るはず……みんな、行くわよ」
いつも通りに振舞っているものの、5人とも気づいていた。自分を含めた全員が、無理して強がっているだけだと。
いつだって体を張り、鼓舞してくれた陸人の不在。1番危険な位置にいた彼を心配するあまり周囲を見れなくなっている友奈。
ムードメーカーの2人が機能していない。再変身こそできたものの、勇者部の士気は下がる一方だった。
シマウマ型のアンノウン『エクウス・ノクティス』は枝に飛び乗り、ゆっくりと陸人の首にその手を伸ばす。1度殺された、いわば己自身の仇。その命をこの手で摘み取れる高揚感に酔っていたノクティスは気づかなかった。
目の前の少年の体から、うっすらと光が溢れていることを。
「――ッ‼︎」
「負けるわけには……いかないんだよ……!」
伸びてきた腕を左手で掴み取り、万力のような力で握りつぶす。ゆっくりと立ち上がった陸人は右手を強く握り、拳を構える。
「お前らなんかに、くれてやる命はない!」
光を宿した拳が唸る。右の正拳が異形の腹部を貫通、復活したノクティスの仮初の命を再び消しとばした。
「……ァ……ガ……!」
「邪魔を……するな!」
刺さった右腕を引き抜き、ノクティスの身体を地に落とす陸人。身体中に痛みはあるが、それ以上に違う感覚が全身を満たしている。
(痛覚が壊れたとか、そんなんじゃない……これまでにない何かが、俺の中で燃えている……!)
陸人の中で燃え盛る炎。眠っていた新たな力が、外に出るのを今か今かと待ちわびていた。
進撃するスタークラスターの上に陣取り、高みの見物に興じていた水のエルの目の前に、潰したはずの敵が姿を見せた。
「……素直ニ驚イタゾ……マダ生キテイタカ」
「直撃した俺が動けるんだ。みんなだって無事なはずだよ」
「ナラバ後程私ガ直接片付ケニ出向クベキカ。貴様ラヲ見誤ッタ事ハ認メヨウ。ダガ、ソノ身体デ如何ニシテ私ヲ倒スツモリダ?」
「正面からぶっ飛ばすに決まってるだろ。さっきのは本気で頭にきてんだよ!」
雄々しく叫び、走り出す陸人。狂人を見るような気持ちで、水のエルは再びバーテックスに指示を出す。先ほどと同サイズの火球が迫るも、陸人は足を止めず、むしろさらに加速して火球に突っ込む。
「おおおおぉぉぉぉっ‼︎」
「……何……⁉︎」
人の身体など即座に焼却できる程の火力に身を晒して尚、陸人は前進を続ける。一歩ごとに内なる炎と外部の熱が混ざり合い、その出力が上がっていく。
(――掴んだ、ここだ――‼︎)
内外の熱が同じ領域に達した瞬間、陸人は新しい力の覚醒を感じ取る。
「――――変身‼︎――――」
火球の熱を全て取り込み、圧倒的な熱量を奪い取った。太陽が消えた先から、1人の戦士の影が飛び出して行く。
「ぶっ飛べぇぇぇっ‼︎」
「何ダト……⁉︎」
強烈なアッパーカットを受け、跳ね上げられる水のエル。スタークラスターの上に着地し、向かい合う2人。水のエルの正面に立つ戦士は、見たことがない姿をしていた。
『バーニングフォーム』
灼熱の赤で染め上げられた身体は力強く膨張し、内に篭った熱が漏れ出している。ベルトの霊石は紫に変色し、瞳の色は輝く黄色。これまで必殺のタイミングで開いていた頭部の角も常時展開し、その進化を形容する。
かつてない強敵の出現に刺激されて目覚めた、アギトの次なる進化の形。
「……何ダ、ソノ姿ハ……!」
「さあな。俺自身アギトについては知らないことだらけで、振り回されっぱなしさ……だけど、1つだけはっきり分かってることがある」
折りたたまれた状態でベルトから現れる新しい武器『シャイニングカリバー』を展開。上下に刃を備えた薙刀状の『シングルモード』にして構える。
「これは……お前を倒すために手に入れた力だ!」
「調子ニ乗ルナ……未ダ進化ノ過程デ足踏ミヲ繰リ返ス、未成熟ナ生命ガ!」
水のエルが槍を振り下ろすだけでいくつもの瀑布が形成される。
アギトの一振りで空気すらも焼け付く熱が振り撒かれる。
炎と水。相反する力を極めた2人の戦士が、樹海の上空で激突する。
「何あれ、とんでもないことになってるわね」
「リク……すごい……」
「……行かなきゃ、りっくんを助けに!」
遠目にも分かる程に破壊的な力を振りかざすアギトと水のエル。彼方で巻き起こる戦闘に圧倒されていた勇者部は、友奈の言葉にハッとして武器を構える。
「でも、私たちの力じゃあそこには……」
「悔しいけど、今の私たちじゃ足を引っ張るだけだわ。木っ端のアンノウンもまだまだ数が残ってるし」
「だったら、強くなればいいんだよ。そのための力は、みんなもう溜まってる」
友奈の言う通り、アンノウンとの戦いで既に全員満開ゲージは溜まりきっている。しかし戦闘に入る前に陸人と約束してしまった。"満開は使わない"と。
にも関わらず満開を示唆した友奈の言葉に、美森は驚いていた。友奈は何があっても友達との約束を守る、そういう少女だったはずだ。
「なんでさっき、みんなが近くに吹き飛ばされてたと思う? りっくんが風を操って守ってくれたからだよ」
ストームフォームの風で障壁を作り、同時に気流を操作して仲間達が吹き飛ぶ先を調整していた。数十ものアンノウンが跋扈する現状で、仲間を孤立させないために。
精霊バリアと風の盾、その上で仲間を纏めておいたアギトの判断のおかげで、まだ彼女達は戦うことができる。
「約束破るのは……あとでちゃんと謝る。でも今りっくんを1人で戦わせたら、もう謝ることもできなくなる……そんな気がするの」
悲しそうにアギトの戦いを見つめる友奈。確かに今は互角に見えるが、敵は水のエルだけではない。こうしている今もスタークラスターは前進を続け、世界の終焉は着実に近づいている。
「りっくんが止めるのはきっと、満開には私たちにとって良くない何かがあるってことだと思う。それをみんなに受け入れろなんて言えない……だけど私は使うよ。りっくんを1人にしたくないから……ずっと一緒にいたいから!」
その言葉と同時に戦場に飛び込もうとする友奈。そんな彼女を引き止めるように肩に手が置かれる。満開について懸念を持っていた夏凜の手だ。
「言いたいだけ言って飛び出そうとすんじゃないっての。私だって覚悟はできてるわ。ここで動かないで、完成型勇者は名乗れないんだから」
友奈の隣に並び立つ夏凜。更にその両側に勇者の姉妹が並ぶ。
「ったく、部長のあたしを置いて話を進めないでちょうだい。陸人が頑張ってるのに、先輩が逃げ出すなんて許されないのよ」
「ちょっと怖いですけど、私も同じ気持ちです。戦うならみんな一緒で……帰ってくるのも、みんな一緒がいいです!」
覚悟を決めた仲間たちの前に歩み寄り、美森がゆっくり頷く。
「そうよね。先に隠し事をしてたのはリクの方なんだから……1回くらいこっちが約束破ったって、怒られる筋合いはないわ」
強引で子供染みた言い訳を口にして、美森も勇者の列に加わる。これで勇者部一同、満場一致だ。
「そんじゃ行くわよ! 勇者部――――」
『ファイトォォォッ‼︎』
号令と共に、同時に切り札を使う勇者達。仲間との明日のために。人に許された領域の一歩外へ、少女達は踏み出した。
アギトと水のエルは実力伯仲。しかし敵には、まだまだ厄介な伏兵が多く残っている。
「良イノカ? 其処デ留マッテ……」
「何?――グッ⁉︎」
地面から飛び出してきた巨大な異形。魚座の『ピスケス・バーテックス』が、地中潜行能力を活かして不意打ちを仕掛ける。反応できずに跳ねあげられたアギトに、追撃の水流が迫る。
「クッソ……舐めるなぁっ!」
カリバーで薙ぎ払い、何とか捌いたアギト。ピスケスが邪魔で、水のエルに集中できずにいる。
「りっくんを、傷つけるなぁぁぁっ‼︎」
全員の警戒の外から飛び込んできた桜色の衝撃。満開して大型のアームを備えた友奈が、その巨大な拳をピスケスに叩き込む。致命的な一撃を食らったバーテックスは、御霊すら出さずに消滅していく。
「友奈ちゃん……その姿、まさか――」
「ごめん、使ったよ。満開……みんなで一緒に」
振り返った先には、満開の猛威を振るってアンノウンの群れと戦っている仲間たちの姿。アギトの中に後悔が生じる。
「どうして……いや、俺のせいか」
『そうじゃない、そうじゃないわよ陸人! 私達はみんな自分のために選んだの』
友奈の端末から風の声が聞こえる。戦いながらも陸人に言葉をかけようとしているのだ。
「自分のため……?」
『陸人さんと、みんなと一緒に日常に帰る。そんな自分の願いを叶えるために、自分の意思で決めたことです』
続いて聞こえるのは樹の声。普段とは印象の異なる落ち着いた声色は、彼女の確かな覚悟を感じさせる。
『陸人がどれだけ強かろうが、その責任までは横取りさせないわ。勇者の使命だって、本来は外様のアンタじゃなくて私が背負うべきものなんだから!』
夏凜の力強い声。勇者としてのプライドと、その根底にある優しさ。それがある限り、彼女は絶対に逃げたりはしない。
『リク……』
「美森ちゃん……」
『少しだけ、あなたの気持ちが分かったわ。約束を破る、嘘をつく……友達を裏切るって、こんなに苦しいのね』
「……俺は……」
『だからもうこんな苦しみ、あなた1人には背負わせない。リクと正真正銘の対等な仲になるためなら、私はどこまでもついて行くわ。たとえあなた自身に止められてもね』
「……参ったな……それを持ち出されたら、俺はもう何も言えないよ」
隙を晒したアギトを狙った水のエルの攻撃を、彼方から青い砲撃が呑み込んだ。満開した勇者の力は、エルロードにも通用するレベルにまで到達している。
「……想定外ダ。アギトナライザ知ラズ、神聖ヲ借リルシカ出来ナイ人間ガ、ココマデ至ルトハ……」
「そうだな……俺とお前だけが、みんなの強さを分かってなかったんだ」
端末を返し、友奈と別れるアギト。スタークラスターを含めた残敵全てを勇者達に任せ、水のエル1人に集中する。
「"エルロードを侮るな"とか言ってたな……大方、それがお前の種族の名前なんだろう」
「ソレガ何ダ……」
「今度はこっちから言わせてもらうぜ……人間を、ナメるなよ!」
水のエルが軽んじた5人の勇者。彼女達は間違いなくただの人間だが、人間だからこそできることがあり、人間だからこそ得られる強さがある。
「邪魔すんじゃないわよ、雑魚に用はないんだから!」
夏凜の満開は背面に大剣を握るアームの追加。自身の両腕と合わせて、6本の刃を巧みに扱って敵を斬り刻む。
――勇者の中で1番速い君が、敵を振り切って一撃目を叩き込むんだ――
満開してシルエットが大きくはなったが、夏凜の持ち味であるスピードは衰えるどころか更に増している。勇者部の切り込み隊長は、敵に斬られたことすら気付かせず、一方的に打倒していく。
「まだまだここからよ! どいつもこいつも、振り切ってやるわ!」
夏凜にとってスピードとは、誰にも追いつけないほどの速さで敵を倒すためのもの。
そして、助けを求める仲間の元に誰よりも早く辿り着き、その手を掴むためのものだ。
「そぉぉりゃぁぁぁっ‼︎」
風の満開は基礎能力の向上と、武器の強化。これまでよりも更に巨大化させた大剣を振り回し、周囲の敵を一掃していく。
――仲間を守る役目ってことです。最年長で部長の風先輩だから任せられる大事な仕事ですよ――
陸人の言葉を思い出し、上空の妹に視線を向けると、彼女の背後から迫る矢が見えた。
「――樹っ!」
満開の機動力で間に割り込み、大剣で弾き返す。樹はそこでようやく死角の敵に気づき、ワイヤーで手早く撃破する。
「お姉ちゃん、ごめん!」
「大丈夫、これがあたしの役割だもの! 樹も、自分の役割を思い出してみなさい!」
姉の言葉を聞いて、先日の会議を思い返す樹。あの日、自分にしかできないと任せられた仕事が確かにあったのだ。
――樹ちゃんの武器には応用性と自由度がある。ワイヤーは長いし、数もあるからね。使い手の樹ちゃん本人にも、これはちょっと考えてほしい点だね――
「……お姉ちゃん、ちょっとだけ守ってもらってもいい?」
「考えがあるのね? お姉ちゃんにまっかせなさい!」
背後を姉に任せ、樹は周囲を見渡し、戦況の把握に徹する。敵の位置や人数、それぞれが持つ特性に、
(ここから、ここまで……後はあっちに――)
樹の満開は扱えるワイヤーの増加と強化。今の彼女なら、大抵のものは自前で用意できるだけの自由度と物量がある。
並び立つ太い根2つの間にワイヤーを通し、何重にも重ねて太く強くしていく。中央には更に束ねて足の踏み場も作る。神樹に接近する本命の敵、スタークラスターに当てるために角度を調整して準備は完了。樹は短時間で
「お姉ちゃん!」
「オッケー、要はスリングショットね!」
妹の策を瞬時に理解した姉が、最大限に大剣を大型化してカタパルトの中央に思い切り飛び込む。
風自身の勢いと、樹がワイヤーで引き絞ったことで蓄えられた弾性エネルギー。その全てが風に、そして大剣に集約される。
「いっけぇ、お姉ちゃん!」
「名付けて……犬吠埼バズーカァ‼︎」
些か気の抜けるネーミングを叫び、風が撃ち出されていく。大型建造物サイズまで巨大化した刃が、樹の想定通りのコースを飛ぶ。流星のような突撃は、一切の逃げ場も与えずに進路上のアンノウンを殲滅する。
道中6体ほどのアンノウンを片付けた風の大剣が、まったく衰えない勢いでスタークラスターに直撃。相当なダメージを与え、これまで斬っても撃っても止まらなかった巨体の動きが停止した。
(みんな、順調に数を減らしてる……このままいければ……!)
美森は満開によって得た飛行ユニット――多数の砲塔を備えた、いわば空中戦艦――を用いて戦場全域を見渡せる高度に滞空し、仲間たちの状況を見極めていた。
――美森ちゃんは貴重な狙撃手だからね。バーテックスを止めてもらわないと……何があるか分からない。最後方からみんなのフォローをお願いすることになる……頼りにしてるよ――
今の美森なら、どの仲間の元にも援護攻撃が届く。それだけの射程と威力を以って、仲間自身も気づいていない窮地を的確に救っていく。
「……え?――まさか!」
突如端末から鳴り響くアラート。何故か今の今まで気づかなかった、神樹の間近まで侵攻している敵影。双子座の『ジェミニ・バーテックス』が、その小ささと素早さを活かして、人類にチェックをかけていた。
「このっ――――小さい上に、速い!」
美森の砲撃を軽やかに躱し、尚も神樹に接近していくジェミニ。夏凜のスピードや樹のワイヤーでも補えないほどに、勇者達との距離は開いてしまっていた。
(どうすれば……どうすれば――!)
『だいじょ〜ぶ、任せて〜』
焦る美森の思考に割り込んできた、覚えのない声。戦場にそぐわない間延びした少女の言葉が、何故か端末から聞こえてくる。
「どういうこと? あなたいったい――」
『ま、いいからいいから〜……とりあえず、せ〜のっ!』
少女の掛け声と同時に、端末の向こうからいくつもの武器が突き刺さるような音が響く。数秒後、神樹のすぐ近くまで詰めていたジェミニの反応が消滅した。
「……あなたが、やってくれたの?」
『ま〜ね〜。これでもそこそこ強いんよ〜』
強者の雰囲気が一切感じ取れないが、この謎の人物は確かに力があり、ひとまず協力してくれるらしいことは美森も分かった。
「……最後の防衛線、お願いしていいかしら?」
『お任せあれ〜。でもあの合体したでっかいのとか、あっちの水の人とかは正直自信ないかな〜』
「分かってるわ……そっちは私達が必ず倒す。あなたは万一の撃ち漏らしを止めてもらえる?」
美森は本来、こんな形の闖入者をあっさり信用するようなタイプではない。それでもこの僅かな会話で声の主を信じる気になったのは、どこか既視感があったからだ。
「あなたの名前、聞いてもいい?」
『……う〜ん、名乗るのはまだ早いかなとか思っちゃったりして〜……今日のところは"スイレン"さん、とでも呼んでくれる〜?』
一瞬何かを噛みしめるように言葉を選んだ声の主。ふざけた調子で教えられた仮称は、これまた引っかかるものがあった。
「分かったわ。スイレンさん、後ろお願いね」
『……なんかポジション逆転した気分〜』
「何か言った?」
『な〜んにも〜、背中は任せてくださいな〜』
一方だけが感じる懐かしさ。2年の時を経て、色々と様変わりした両者の連携が一瞬の復活を遂げた。
「でぇぇぇやぁぁぁぁっ‼︎」
巨大な拳を2つ備えた友奈の満開。破壊力に優れた豪腕が唸り、アンノウンが吹き飛んでいく。盾代わりにもなり、素早く振るえば連打もできる。飛行能力も手に入れ、バランスの良いフィニッシャーとして進化した友奈は、片っ端から異形を潰して回っている。
――友奈ちゃんに任せたいのはフィニッシャー……トドメ役だ。爆発力と突破力がある君には、他のみんなが削った敵にデカい一発を打ち込んでもらいたい――
(トドメ役……私の役目は、あのデッカいのを倒すこと!)
周囲の敵影を減らした友奈は、遠方のスタークラスターを見据える。轟音が響き、巨体の動きが停止した。仲間が足を止めてくれたようだ。
「この世界は、壊させない!」
巨腕で大地を殴り、桜の勇者が高く飛び立つ。接近に気づいたスタークラスターも、火球を形成して迎撃に出る。
「友奈ちゃん、決めて!」
彼方から青い閃光が火球を呑み込み、霧散させる。美森の援護射撃だ。
「ありがとう、東郷さん!……勇者ぁぁぁ、パァァァンチッ‼︎」
巨体の中心に拳を叩き込み、甚大なダメージを与える。そのまま4人で封印の儀に移行。あとは御霊を壊すだけ……だったのだが……
「ウッソでしょ⁉︎」
「冗談キツイわよ……!」
「あわわわわ……!」
「往生際が悪すぎる……!」
「ひゃあ〜、これは……」
唖然とする勇者達。戦いはまだ、終わってはいない。
「そろそろ諦めて、俺に斬られろアンノウン!」
「侮ルナト言ッテイル、アギト!」
何度目かも分からない鍔迫り合い。既に両者とも疲労はピークに達している。押し切れずに間合いを開き、一息をついたアギトは周辺が静かになってきたことに気づいた。
「はっ、配下の数がずいぶん減ったみたいだぜ……もう在庫切れか?」
「フン……コレ以上ハ必要無イ。私一人デ十分トイウダケダ」
一瞬、覚えのある香りを感じ取ったアギト。それは気のせいとしても、睡蓮の彼女にも背中を押されているような気分になれた。
(みんなが力を貸してくれる。あとは、コイツらを倒せば……!)
カリバーを振り上げるのと同時に水のエルの奥、はるか向こう側にあまりにも巨大な異物が出現したのを目撃し、アギトの動きが停止する。
「なんだ……アレは……⁉︎」
「アレガ天ノ神ノ仕込ミカ……確カニ、強引ナダケノ愚物デハ無イヨウダナ」
スタークラスターの内より現れた御霊。それはこの星に収まりきらないほどのサイズを誇り、その大部分が宇宙にまで飛び出していた。
立ち竦む勇者達。
勝利を確信する水の天使。
勝ち筋を探し続けるアギト。
それぞれの譲れないものを懸けて。舞台は地球さえ超え、決着の刻が迫る。
また微妙なところで切ってしまった……
感想、評価等よろしくお願いします。
次回もお楽しみに