零ちゃんが来てから二日が経った。
あっという間にその二日間は過ぎた気がする。理由は簡単だ。
あまりにも零ちゃんがクラスに馴染まないのだ。
それもそのはずだろう。お茶子ちゃんを始めとするA組の女子達は、飯田君に対してのあの言い様を見てから、彼女を怖がって話しかけない。また、男子達はA組の人達は熱い人が多いせいで、冷たい零ちゃんは完全に敵視されてしまっていた。
「(にしてもかっちゃんは、彼女を覚えてないのかな………。小ちゃい頃は僕よりも零ちゃんと仲が良かったのに……………)」
僕らがずっと探していた零ちゃんが、幼馴染が現れたというのにかっちゃんは彼女に話しかけることは愚か、彼女のことを見ない。理由は分からないが、僕はそんなかっちゃんの態度に対して苛立ちを覚えていた。
そして、クラスに淀んだ空気は突如現れた平和の象徴によって破られた。
「やぁ!! 少年少女! 元気にしてるかい??」
「オールマイト!!! そっか、次の時間はヒーロー基礎学か………!!」
上鳴君がオールマイトを見て、手をぽんっと叩く。上鳴君を筆頭とする零ちゃんに対しての中立派にとって、今や授業は夢の時間となっていた。
僕もそのうちの一人である。
オールマイトも空気を察したのか、休み時間が残り五分あるにもかかわらず授業を始めた。
「さぁ皆!! 今日のヒーロー基礎学はね__________」
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「「「籠城戦の訓練???」」」
「あぁ!! 大体は籠城戦にはならないケースの方が高いのだが、万が一という場合も兼ねて今日の授業は“籠城戦”についてって訳さ!」
『(籠城戦………、我々KNNは専門としない分野だけど、訓練は施されてる。問題はないかな)」
場所は変わり今は小さな三階建の建物の前に来ている。どうやら、目の前のこの小さな建物で“籠城戦”の訓練をするらしい。建物から五十メートル程離れた先には、沢山のロボが確認できた。
「今回は二グループに分かれて行ってもらう!!! チーム分けは私の方でさせてもらったから、モニターで確認してくれ!」
オールマイトがその図体には合わない小さなリモコンのボタンを力強く押すと、モニターには十人と十一人のA、Bグループが表示された。
『(名前、名前……、お、焦凍と一緒)』
私のグループは、青山、蛙吹、飯田、上鳴、口田、耳郎、轟、緑谷、峰田だった。正直言ってパワーに欠けている気もしなくないが、仕方ない。それに私が成績をとっても仕方がないのだ。
『(私が出来るのは彼らのサポートだけ)』
先に始まりを伝えられたAグループは、白い塗装を施された建物の中に入った。
「なぁ、えっと零ちゃん………? 俺達まだ君の個性を知らないから教えてくれないかな?」
金髪に黒い稲妻の様なメッシュの男___上鳴電気が、恐る恐る私に話しかける。私は少し嫌悪感を感じた。仕方ないだろう、彼から滲み出るチャラチャラした感じが私はあまり好きではないのだ。
上鳴が勇気を出して聞いた私の『個性』についてだが、最初は答える気はなかったが、周りの他のクラスメイト達も耳を傾けているのが見えた。
なので、仕方なく話すことにした。
『私の個性は端的に言えば“未来予知”、これでいい? ……成績のことなら心配しないで、皆より遅れて入ったからって足は引っ張らないから』
「だからそういう言い方はないんじゃ……!」
黒髪のボブヘアの子が舌打ちをするように言う。横目で流そうとした時、訓練開始のブザーが流れた。
「いいかいAグループの皆!!! 敵のロボを中に入れない様にして十分間耐えれば、君達の勝ちだ! ロボを入れないようにする時には、周りへの被害も考えるように!」
オールマイトは「検討を祈る!」と言って、放送を切った。しばらくして、遠くからローラーを走らせる地響きの様な音がした。
誰が最初に動き、指示を出すのだろうか。
私は少しながらこのことに興味があった。九人の顔を見回す。だが一向に誰も動こうとしない。
これがヒーロー志望?笑わせてくれるものだ。私が呆れて仕方なく口を開こうとした時だった。
「青山君は万が一の時のためにネビルレーザーは温存、飯田君、上鳴君に轟君は建物のギリギリに立ってロボを迎撃して!! 峰田君も飯田君達と一緒に足止めを! 梅雨ちゃんと耳郎さんは索敵をして、ロボとこの建物の距離を測って、何体がこっちに向かって来てるのかの確認を頼む! 零ちゃんは、未来予知を使えるんだったら使って、未来を予測してくれ!!」
「「「おう!!! / うん!!!」」」
『(本番での冷静さ………、出久、見ないうちに成長したんだね)_____了解した』
私は、頼もしくなった彼の背中を見て、自然と口角が上がるのだった。
ロボはその後出久の的確な指示により、順調に破壊し、籠城戦は成功していた。そして、訓練も残り一分となったその時だった。
『(あのロボの動きがおかしい、何だ? 不調か?)』
目を細め、遠くのロボを見る。全てのロボがこの建物目掛けて破壊しに来てると言うのに、そのロボだけはずっとそこに突っ立っているのだ。
私はオールマイトの無線と繋がっている無線機を使って、質問をした。
『オールマイト……、あのロボは故障? ………………オールマイト?』
オールマイトからの応答が、無い。嫌な汗がこめかみを伝って落ちる。そして、その時不意に“個性”は訪れた。
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目を紅く爛々とさせたそのロボは、狂った様に手足を動かして建物へと突っ込んでくる。
逃げ遅れた誰かが_____出久が、奴に巻き込まれて、
__________ぐしゃぐしゃになった。
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『ッッッ!!! 緊急事態!!!訓練は終わりだ、ここから皆離れて!!』
突然血相を変えて叫んだ私を不信そうに見つめる彼ら。だが、焦凍だけは状況を察してくれたらしい。
「零の未来予知だ!! 皆今すぐここから離れろ!」
焦凍がそう叫んだ時、既に狂ったロボはこちらに向かって猛突進を進めていた。飯田が峰田と口田を、焦凍が蛙吹と青山を、上鳴が耳郎を抱えて建物の屋上から飛び出す。壊れたロボの残骸が足場となって上手く下りれるだろう。
誰も取り残されていないのを確認して、私も下りようとした_____しかし、彼がいないことに気付いた。
『出久?!?!?!』
「ご、ごめん!! 瓦礫に足が挟まっただけ!!! 僕は大丈夫だから、零ちゃんは先に行って!!!」
残り僅か十メートルで到達する狂乱ロボ、目の前で倒れる出久。
これを見て、正常な判断が出来ない訳がなかった。
ロボが到達する五秒前、私は出久を瓦礫から救い出した。
ロボが到達する三秒前、私は出久を抱えて走り出した。
ロボが到達する一秒前、私と出久は間に合わない。
『ゼロは屈しない』