ラプラスの狙撃手   作:君影ソウ

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第5話 : その引き金は誰の為だ

突如響いた零ちゃんの切羽詰まった声。

もうすぐで訓練が終わり、大成功で終わるはずだった僕らは、一瞬頭が真っ白になった。しかし、その後再び叫んだ轟君の声のおかげで、皆は一目散に屋上から外へ逃げ出すように飛び出した。

僕も走り出そうとしたその時だった。突然足場が揺らぎ、先程まで地面があったはずの場所から、身体が空中に投げ出されそうになる。しかし、間一髪のところで僕はそこから抜け出すことが出来た。

早く逃げよう。そう思った時だった。

 

「瓦礫………、足がっ!!!」

 

抜け出した先の瓦礫の山に足が挟まり、そこから抜けなくなる。足自体は無事だ、けれども瓦礫が上手い具合に積み重なってしまったせいで、右足が囚われてしまったのだ。

僕は焦る。もうすぐそこまで暴走し始めたロボが、自身のアームをブンブンと振り回しながらやって来ている。

あんなのに当たったら、すぐにぺしゃんこになってしまう。

 

「考えろ考えろ考えろ……………」

 

必死に頭を回す。ワン・フォー・オールを使うのはどうだ? 駄目だ、ここから抜け出したとしても奴の射程圏内に入ってしまう。このまま迎撃? 無理だ、そこまで上手く使いこなせない。

 

絶望。その二文字が頭を締め尽くしたその刹那だった。

 

 

 

突如現れた浮遊感。地面が、先程までいたはずの屋上が眼前から遠のいていく。時々視界の端に映る白髪は、まるで白雪の如く美しかった。

そして何よりも、温かかった。

 

『ゼロは屈しない』

 

僕を助けてくれた人が零ちゃんだったことに気付いたと同時に、彼女は左手で鈍い銀色を放つリボルバー握り、こちらに向けてアームを振り上げようとした暴走ロボに向かって二、三個ほど弾を放った。

その振動は抱えられているはずの僕にですら届くほど強いもので、僅かに彼女も痛みに顔を歪めた。

 

「ガガッ……………、コードネーム“ゼロ”…………………………覚エテオケ…イツカ……復讐ヲ……!!!」

 

『黙れガラクタが』

 

 

バンッ、バン。

 

零ちゃんの優れた射撃は、暴走ロボを僅か一秒にして制圧した。更に、喋り始めた彼を再び射撃。ロボは、目の部分の赤い光をゆっくりと点滅させて、最後には失った。ロボは、完全に彼女に破壊されたのだ。

地上についた零ちゃんは、ガラクタ達の間に僕を下ろす。

 

「零ちゃん…ありがとう、でも一体君は、何と戦っているんだ……?」

 

『私の敵は、_____この国の影だよ』

 

ガラクタの死骸の上に佇む白髪の彼女。死んだ機械達から流れ出した燃料は、血の海にも見えた。

 

『一体いつになったら報われるんだろうね』

 

彼女が呟いたその切実な言葉は、先程の戦闘にて巻き起こった風に連れ去られていった。

 

 

 

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今回のロボ暴走事件だが、このことはA組生徒の意思も含めて世間には公開されない事になった。なお、この暴走の原因は何者かによる“サイバー攻撃”であったということも、警察の力により判明した。

久々に使ったもう一つの愛銃___“S&W M500”に弾を補充してからスカートの下に隠し直す。威力が強すぎるので、普段はあまり使いたくない代物であったが、今回はその威力が吉と出てくれたおかげで、出久を救うことができたので良しとしよう。

本部の方へ報告するべく荷物をまとめていれば、誰かの影が私の前へと立ちはだかる。溜息を吐いて、上を向こうとした。

しかし、それはその人物の優しい掌により妨げられた。

 

「上は向かねぇままでいい、下見てろ。…その方が楽なんだろ」

 

心地良い低音。大きくなった今でも分かる、あの大好きだった掌。私は何も言い返せなかった。

 

「……あの日から、俺とデクはテメェのことずっと探していた。そりゃ何があったか聞きてぇよ。…でも、お前が___零が、話すまで待っててやっから…………早く帰ってこい」

 

そして、彼はそのまま立ち去った。私は彼が、勝己が立ち去った夕陽の差し込む廊下をひたすら見つめていた。

 

 

 

『優しいのは変わんないんだね……、勝己。ごめんね、私はそれでも後には戻れない』

 

一粒の雫が、橙色の光を帯びてほろりと落ちていった。

 

 

 

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場は変わり、ここは雄英高校の会議室。

警察にヒーロー、更に裏のヒーローとして暗躍しているKNNの諜報員が重苦しい空気の中集められていた。

 

「今回の案件、間違いなく敵の仕業によるものだろう。そして、我々KNNが追っていた敵の一人である“クラッカー”によるものです」

 

髪を首元で切り揃えている黒髪のボブヘアの女がそう言えば、警察の塚内も口を開いた。

 

「そして今、クラッカーは敵連合との合流も見られています」

 

「そしてそれが判明して何が懸念されてるのかってあれだろ、先日派遣された望来零に対して固執していることが、今回で完全に判明したことだ。そうだろ? 暁」

 

サングラスを無機質に照らしつける蛍光灯の光に反射させながら、問い詰める様にして睨むのはプレゼント・マイク。だが、暁と呼ばれたKNNの女、銃士暁は、彼の鋭い一瞥を気にせずに話を始める。

 

「あぁ、その通りだよマイク。だがしかし、この判断には我々も苦渋の決断を迫られたのだ」

 

「その件は僕から___、現在、KNNの職員は六名。その内、“雄英高校生徒の護衛”を不自然なく遂行できるのは、丁度十五歳を迎えた零だけ。そして零は、ヒーロー顔負けの頭脳と力を持っています。

多少のリスクはあれど、この任務は彼女が適任だったという訳です。……………最も、貴方方ヒーローがもっとしっかりしていれば、我々の護衛なんか要らなかったでしょうに」

 

銃士に続き、口を開いたのは毒島だ。亜麻色の髪を揺らし、アメジストの様な紫色の瞳でヒーローを非難する彼の顔には、少しばかりか怒りが込められていた。

その言葉にムッとしたミッドナイトは、机を叩いて立ち上がった。

 

「何よその言い方、私達ヒーローが何もしてないみたいじゃない!!」

 

「事実じゃあないですか。貴方方は僕らの仕事の邪魔をしている事に気付いてないのか? 我々は貴方方とは違って、国の汚れ仕事も背負っているんです」

 

「黙っていれば好き勝手言いやがって……!! 合法の人殺し機関が……!!!」

 

ミッドナイトとプレゼント・マイクは、毒島の言い様に声を荒げて立ち上がる。毒島は、その二人を滑稽そうに目を細めて見詰めた。

一触即発。まさにそんな状況に陥ったときだった。

 

「落ち着いてくれ、皆。今回の取引にはもう一つ裏があるんだよ」

 

もふもふとした手を両者を宥めるようにして突き付けたのは、根津だった。ヒーローの二人はまだ何か言いたげだったが、根津の円らな瞳を見て、舌打ちをしつつも席についた。

 

「すまないな、根津校長」

 

「どうって事ないさ、暁君。こうなってしまったからには話すが……、彼女……望来零ちゃんを“ヒーロー”にする。これが、私の最終目標なのさ」

 

「一体、どういう事ですか……?」

 

スナイプが、顔に付けられたマスクをガシャンと鳴らしながら根津に問う。根津は、窓の外で淡く強い光を放つ月を見ながらとある少女の話を始めた。

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