1話 姉妹の時間
幻想郷中心地に位置する紅き館。紅魔館。ここには、スカーレットデビルと恐れられる吸血鬼にして紅魔館当主、レミリア・スカーレットという幼い吸血鬼がいた。
そんなレミリア・スカーレットは私の姉。私、フランドール・スカーレットは全てを破壊し尽くせる能力を持ち合わせていた。レミリアお姉様はそんな私を恐れて地下室に隔離した。
それから、私を飽きさせないように、毎日のようにレミリアお姉様は私の相手をしてくれた。そんなレミリアお姉様の優しさと親切心に徐々に惹かれていっていたのだ。
「失礼するわよ。フラン」
「あ、お姉様!」
今日も私はお姉様に飛びつく。そんな急な抱擁にも余裕で対応してくれ、頭すらも撫でてくれる。
「んふふ〜」
「今日も御機嫌ね。フラン」
「明日ね! こいしちゃんと遊ぶ約束をしたんだ!」
能力を恐れられて地下室に隔離されていたのは、もう一昔前の話。今では能力のコントロールを自分で行えるようになり、自由に外を出入り出来ている。お姉様もそれを許容してくれた。
「あら、古明地のところの? ええ、楽しんでらっしゃい」
「やった! お姉様大好き!」
「私もよ。フラン」
優しい声音と共に、お姉様の右手が私の頭を撫でる。いつものナイトキャップが無いため、お姉様の温もりが直に届く。その温かさは私を自然に笑顔にさせる。そんな魔法がかかってるみたいだった。
「さて、今日は……その……」
少し言いにくそうに口ごもるお姉様。そんなお姉様もとても可愛かった。そして意を決したのか、顔を上げた。
「一緒に寝ない?」
「……」
一瞬、私の思考回路が停止した。どれだけお姉様と親しかろうが、一緒に寝ることなんて一度も無かった。そんな私たちの関係だったのにお姉様がその拮抗を破ったのだ。
「も、もちろん! いいよ」
「そう、じゃあ先にベッドに入っててちょうだい」
安堵したように顔を緩め、すぐに引き締めたお姉様。無理してカリスマ性を醸し出そうとしているお姉様の頑張りもまた誰が見ても感心するものだ。
お姉様は身を翻し一度部屋を後にした。寝間着にでも着替えてくるのだろうが、私の心臓はバクバクと跳ねたままだ。
単刀直入に言うと、私はお姉様に親愛感情を抱いていると同時に「恋愛感情」すらも抱いてしまっている。これがいけない事だってことくらい、世間を知らない私でも分かるけど、芽生えたものを戻すことなんて出来ない。
はぁ……緊張した。
最近、フランが私へのスキンシップが多く、体によく触れる。それは大きく被さる感じではなく、撫で回すように触れるので、少しいやらしい。心配になった私は咲夜に相談した。
「ねぇ、咲夜」
「いかが致しましたか? お嬢様?」
「最近ね? フランが私の身体を撫でるように触れてくるのよ。それって何かの兆しなのかしら?」
一瞬、咲夜の手が止まった。そしてぎこちなさそうな顔をした咲夜は人差し指を立てた。
「そ、それはですね。恐らく、「発情期」のようなものではないでしょうか?」
発情期。それは雌が子孫を残すために性交を求める時期のこと。そんなの、私には来たことがないのに、フランには来ている。個人差があるのだろうか?
(い、妹様がお嬢様に恋してるなんて口が裂けても言えない……!)
「じ、じゃあ咲夜。その発情期を解消させるにはどうすれば……」
「え、え!?」
咲夜はさっきよりも大きく戸惑う。
(ど、どうしよう! 解消法なんて…………あるにはあるけど! ダメだ! こんなこと言えない! お嬢様、貴方はどうしてそこまでそういった話題には無知なのですか!?)
「ねぇ咲夜?」
「はい!? え、あ、えーとですね……」
(ここは安全策を取るのが最善かしら……)
咲夜は何だか辺りをキョロキョロと見渡していたが、大きく息を吸って、私に顔を近づけた。
「一緒に寝ることです」
「一緒に……寝る?」
「はい、発情期とは人肌に触れたいという気待ちが溢れます。なら、一緒に寝て、触れさせてあげればいいのです。それだけ長時間触れていれば、妹様の気は晴れるはずです」
私は咲夜の話をくい込むように聞いていた。そう、一緒に寝る。つまり「添い寝」すればフランのスキンシップは無くなると言う。私はそれを信じて、今日の夜。フランに一緒に寝ることを提案したら、快く快諾していた。
「どうして私が緊張しているのかしら……」
高鳴る心臓に苛立ちを感じながら、寝巻きに着替え、鏡の前で一回転。肉親だとしても、みっともない所はあまり見せたくないからだ。自室を出てフランのいる部屋へと向かった。
私はお姉様が来るのをずっと待っていた。心臓が高鳴り、息を荒くなっていた。どうしてここまで気分が高揚しているのかは知らないが、とにかく大好きなお姉様と一緒に寝れるという事実だけが私を興奮させていた。
しばらくすると、ドアが叩かれ、寝間着姿のお姉様が少し照れながら入ってくる。ああ、可愛いなぁ……
「いらっしゃい、お姉様。寝よっか。もう夜遅いし」
「そ、そうね……」
私が先にベッドに入り、お姉様を誘導する。普段は誰も寄せ付けない主の威圧があるが、今はただの幼い少女だ。私とお姉様は向かい合わせになり、お互いが目を見つめ合う。
赤色の目と頬。私はそれを見てとてもお姉様が愛らしくなってきた。
「ふ、フランは恥ずかしくないの?」
「え? なんで?」
「だ、だって……こんな近距離で……」
「だって姉妹だし! 別に気にしてないよ?」
私とお姉様の関係は姉妹。でも、私はそれ以上の感情を持っていることは知らずにね……
「そ、そうだけど…………うう……」
「ふふっ、お姉様可愛い」
「か、からかわないでっ」
そうやって慌て始めるお姉様は本当に可愛い。私と違ってハリのある肌。保湿が行き届いている唇。吸い込まれるような赤い瞳。妹の私でもついつい見蕩れてしまう。
「ねぇ、お姉様…………いい?」
「いいって……何が?」
鈍感すぎるお姉様に私は少し苛立った。もどかしかったので、私は何も言わず唇を差し出した。それで察してもらえるだろう。
「ふ、フラン!? 私達は……」
「姉妹……だよ?」
「わ、分かってるなら……」
「もう、我慢出来ないの」
私はお姉様の頬を両手で掴み、無理やり唇を重ねる。甘い味が続く中、私は目をうっすらと開けてお姉様を見る。顔を真っ赤して、目を閉じているお姉様が数センチ先にいる。その顔がまた美しかった。
「んっ……ふ、フラ…………」
「んぅ……逃がさないよ……」
私を押し、離そうとする手を制しながら耳元で囁くとお姉様は身体をビクンと震わせた。
「舌…………入れるね……」
「え!? だ、だめ…………んぐ……あっ……」
舌を無理やりねじ込ませて、お姉様の口内を舐め回す。お姉様の唾液もとっても甘い味がして、私は幸せの最絶頂にいた気分になった。
「ぷはぁ……はぁ……はぁ……」
「フラン……もう……」
私とお姉様の唇の間に銀色の糸が引かれる。もうお姉様の顔は完全に蕩けており、これ以上抵抗は出来そうにないみたいだった。流石に可哀想に見えた私はイタズラな笑顔を浮かばせ、口元を拭いた。
「仕方ないなぁ……今日はこれで……おしまいね……」
「う、うん……」
私は布団に潜り込み、お姉様に抱きつく、お姉様はまた身体を強ばらせるが、私は安心させるように声をかける。
「大丈夫。"今日は"は何もしないよ?」
「え、ええ…」
私はそれだけ言って、お姉様の温もりを感じながら、眠りへと誘われた。
尊い