フランがシスコン過ぎて困っています   作:かくてる

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12話 姉と姉

 一度旅館の部屋にに戻った私はこいしちゃんの傍に座っているだけだった。

 永琳がこいしちゃんのあちこちを触ったりして、容態を確認していた。

 

「ひどい熱ね…」

 

 永琳さんの顔がさっきよりも少し引き締まっていた。

 当のこいしちゃんは息を荒らげて、辛そうにしている。こんな時、どうしたらいいのかなんて、全然分からなかった。

 自分はこいしちゃんを助けることが出来たのだろうか?単に助けを求めただけで、私自身は何もしていないのではないだろうか?

 

 自分を責め立てているとドタドタと廊下で音がした。

 バタンっと強くドアが開けられ、汗をかいたお姉様とさとりがいた。

 

「こいしが倒れたって……」

「お姉様、さとり……」

 

 どうやら、鈴仙が2人を探して呼んできてくれたみたいだ。

 私は2人と目を合わせた後、横たわるこいしちゃんを見ながら答えた。

 

「まだ分かんない。永琳が診てくれてる」

「……そう…」

 

 永琳はこいしちゃんの所々を調べた。

 そして、聴診器を外して、私たちの方に向き直る。そして優しい笑みを浮かべた。

 

「ただの熱ね。昨日とかはしゃぎすぎたんじゃないかしら?」

「……よかったぁ…」

 

 私はほっと安堵の息をつき、畳に横たわる。

 一気に力が抜けて、私はどっと疲れが溜まっていることに気がついた。

 

「とりあえず、風邪薬と氷枕だけ置いていくわね。代金はいいわ。ついでだし」

「そう、ありがとう永琳、また差し入れ持っていくわ」

 

 お姉様は永琳達に礼をいう。お姉様は礼儀正しい人だから、必ず永遠亭に出向くことだろう。

 当の永琳は「いいわよそんなの」と言って、鈴仙と共にドアの外へ向かった。

 

「ふぅ……これからどうしましょうか?」

「元々、私がこいしちゃんと行動してたから、看病も私がするよ。お姉様とさとりはどこかで堪能してきなよ」

「え、でも……」

 

 私はこいしちゃんと2人きりで話したいこともあるし、何よりお姉様とさとりはあまりここで遊ぶ機会も少なかったから、こういう時だけでも鳳凰山を楽しんできて欲しい。

 

「いいのいいの。と言うより、私が看病したいの」

「そ、そう……」

「ほら!早く行く!」

 

 遠慮がちな2人の背中を押して玄関まで運ぶ、2人は荷物を持って外に出た。

 私は2人を見送った後、こいしの傍にちょこんと座る。まだ少し息苦しそうなこいしちゃんの額のタオルを変えるために、桶に水を入れた。

 そして、タオルを絞り、こいしちゃんの額に乗せる。

 

「はぁ……はぁ…」

「こいしちゃん?大丈夫?」

「だい、……じょうぶ……」

「じゃないね。今風邪薬持ってくるよ」

 

 私がもう一度立とうとすると、こいしちゃんの手が私の指先を掴んだ。

 

「フランちゃん……寂しい……から、ここに……いて…」

「……分かった」

 

 私は風邪薬をとるよりも先にこいしちゃんの手を強く握った。

 こいしちゃんの顔は悲しい顔をしていて、一人には出来なかった。

 

「私はここにいるよ」

「……うん…」

 

 私は優しくそう言うと、こいしちゃんは満足したように微笑し、そのまま眠りについたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいし、大丈夫かしら…」

「そこまで私の妹を心配してくれるんですねぇ?」

 

 私は旅館を出て、さとりと2人で商店街を回った。

 

「だ、だって……好きなんだもん………」

「んー?」

「な、何でもないっ、行くわよ!私、甘い物が食べたい!」

「はいはーい」

 

 わざとらしく耳を傾けるさとりに私は赤面してスタスタと早足で歩く。

 さとりは笑顔で私に対応してくれているが、雰囲気はどことなく、乗っていなかった。相当こいしの事が心配なのだろう。

 しばらく歩いていると、さとりが何かを見つけた。

 

「あ、こんな所に羊羹が…」

「えっ、羊羹!」

 

 私の食いつきぶりに、さとりは少々引き攣りながら答えた。

 

「え、ええ……」

「食べましょう、さとりっ!」

「わ、分かりました」

 

 

 

 

 店内に入り、注文をして、早速置かれた羊羹はとても美味しそうだった。

 小さな爪楊枝を使って、口に運ぶ。プルプルの食感が口内に広がり、西洋じゃ味わえない甘さを感じ取れた。

 

「美味しいわね……」

「羊羹はずっと美味しいですねぇ…」

 

 次々と口に運んでいく。その度に美味しくて幸せな感触が伝わっていく。

 

「さてさて、正直、フランさんとこいし抜きだと、やることがありませんね」

「そうねぇ…」

 

 こいしやフランがいると、あの2人はまだまだ子供っぽいので、ある程度振り回されて楽しんで入るが、性格上大人に近い私とさとりでは、あまり楽しめるところがあるのか分からない。というより、めんどくさいのだ。

 

「今帰ったら、フランさん怒りますかねぇ」

「怒るわね。一人の時間が欲しい時が多いのよ。この前だって、部屋の外までフランの声が漏れていたから、ドアを開けたら怒られたわ…」

 

 自分の体験談を交えながら話す。さとりはクスクスと上品に笑っていた。

 

「ちなみに、その時フランさん何していたんですか?」

 

 フランは窓側を向いて寝ていたので、何をしているかはハッキリ分かんなかったが、とりあえず覚えている限りのことを言う。

 

「うーん、詳しくは分からないけど、何だか「はぁ……はぁ……」とか、「んっ」とか、「あっ」とか、変な声出してたわね。というかそもそもフランが「お姉様」って呼ぶから、私は入ったのに……」

「えっ」

「ん?どうしたのよさとり?顔赤いわよ?まさか、あんたも熱を出したの?」

 

 私の答えにさとりはガタンと体が一瞬跳ねた。

 呆然と私を見るさとりの顔は真っ赤だった。

 

「あ、いや、なんでもないです…」

「あ、それと、スカートの中に手を入れていたわ。理由を聞いたら、「太ももが痒かったのっ」って言ってきて…どうにも嘘にしか聞こえないけど……」

「…ぶふっ!…れ、レミリアさんっ」

「ん?」

「それは不味いですって!」

「え?」

 

 さとりは急に声を張り上げる。そして、私の両肩を掴み、顔をぐいっと近づけた。

 

「え、え?何がよ?」

「……はっ……いけない、私ったら…いえ、何でもないです……ごめんなさい」

 

 さとりは我に返ったのか、自分の席にちょこんと座って、謝罪をする。顔を上げたさとりの顔はまだまだ赤かった。

 私は何故さとりがそんな反応をするのか、終始予想がつかなかった。

 

「さ、さて…そろそろ出ましょうか」

 

 咳払いをしたさとりが先に席を立つ。

 私は「そうね」とだけ言って、さとりの後に歩いた。代金を払って外に出ると、さとりがくるりを身を翻して、私の方を見た。

 

「レミリアさん。少し鳳凰山の山頂まで行きませんか?」

「山頂?なんでよ?」

 

 さとりは私の質問に答える前に空へと飛んでいってしまった。ぎょっとした私はさとりの後を追うように羽を動かし、飛んだ。

 

 

 

 ものの数分でついた鳳凰山の山頂は辺り一面に紅葉が張り巡らされていた。

 

「きれい……」

 

 この景色は幻想郷ではここだけなのかもしれない。そう思えるほど素晴らしい絶景が山頂には広がっていた。

 

「そこにベンチがあるので、ゆっくり休みましょう」

「そうね」

 

 どうせやることが無かったから、こう言った風流な場所で息抜きするのも悪くない。

 

「ここは絶景ねぇ…」

「本当に……」

「あ、ここから妖怪の山が見えるわ。相当な距離なのに凄いわね…」

 

 私が指を指すと、さとりもそれを目線で追う。見つけたさとりは驚きの表情を見せて、そこから目線を外さなかった。

 

「こいしやフランにも見せたいわね…」

「………やっぱり心配なんですね?」

「そりゃそうよ…」

 

 私の方に目をやったさとりは少し物悲しげに背もたれに寄りかかった。

 

「レミリアさん。あなたはこいしが好きなんですよね?」

「……ええ、大好きよ」

「でも、こいしはフランさんが好きです」

「知ってる…」

 

 ここまで聞いたら、さとりでも私でも分かることだろう。

 これがいわゆる「三角関係」だ。一人一人が違う人を好きになり、それが無限ループのように繋がること。

 つまり、3人が「叶わない恋」をしているという事だ。

 

「三角関係は人を歪めます。独占欲から拘束、拷問。ありとあらゆるものが襲います」

「………何が言いたいの?」

 

 遠まわしに言うさとりに少しだけイラつきを隠せなかった私はすぐに結論を出させるようにした。

 

「……歪まないでくださいね?」

「…分かってるわ、そんなこと。私はこいしが純粋に好きなの。それに、こいしがフランのことを好きなのなら、私はそれを全力で応援してる」

「……」

「正直、私はこいしとフランが恋仲になるのも、幸せの一つかなって考えたりもしてる。でも……」

 

 私は心配そうに顔を見つめるさとりを見て、ベンチから立ち上がり、数歩歩いてから、身を翻す。ニッと白い歯を見せて笑い、こう言った。

 

 

 

「でも、こいしが私を好きになってくれるように努力するのは、悪い事じゃないでしょ?」

 

 

 

 

 その言葉にさとりは数秒間呆然としていた。その後、さとりはクスクスを静かに微笑んだ。

 私はこんなに自分の言いたいことを気持ちよく言える場なんて無かったから、少し爽快感があった。




レミリア健気やな
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