正直、私は今回少し気持ち悪すぎたって思ってしまいました。
先程まで苦しそうにしていたこいしちゃんはもうぐっすりと眠っていた。
私は特にすることがなかったので、とりあえずお風呂に入って、さっぱりしてきた。
「……まだ寝てるんだ」
解いた髪を拭きながら、私はこいしちゃんの方へと歩んでいく。
こいしちゃんの隣で体育座りをして、ため息をつく。
「…」
こいしちゃんを見ていると、どうやら、少しは楽になったみたいだ。
安心した私はこいしちゃんの煌びやかな銀髪を撫でる。
綺麗な髪だ、お姉様が惚れる理由もわかる気がする。
「………こいしちゃん」
寝ているこいしちゃんに私は語りかけた。
誰も聞いていないだろうと思い、口にしてしまった。
「私ね…お姉様の事が大好きなんだ。家族としても、女の子としても」
返事はない。
当たり前だろうが、少し気恥しさはある。
「でもね……お姉様って実はこいしちゃんの事が好きだったりするんだよ……?」
少しずつ、私は声が震えてきていた。
何かこみ上げるものがあったが、必死にそれを耐えて、言葉を続ける。
「……私はね……お姉様とこいしちゃんが恋人になれば……それでもいいって……思ってるんだ」
だって、それは、私にとって、かけがえの無い幸せになるかもしれないから。
「………お姉様って、友達少ないじゃない?紅魔館最強の主って呼ばれていても、まだまだウブな女の子なんだよね……」
苦笑いをするように、笑いを含ませて、話していく。
その時でも、こいしちゃんは寝息を立てていた。
「……だから…ね、……こいしっ、ちゃん……」
私はこの言葉だけは、あまり言いたくなかった。
私にも、こいしちゃんにも悪影響を及ぼしてしまいそうで、怖かったから。
いつの間にか、私の頬に熱いものが伝っていた。
「……レミリアお姉様を……幸せにしてよ……これは、フランのお願い……だよ…」
満面の笑みで、眠るこいしちゃんを見つめる。
以前に、お姉様がこいしちゃんを好きだと知った時の涙とは違かった。
清々しい涙。初恋を諦めることが出来た、この清々しさはなんだかとても気持ちよかった。
でも、涙が止まることは無かった。
「……う、ううっ……ぐす……」
溢れ出る涙を腕で拭う。
やっと涙が止まり、私は気分転換に散歩でも行こうと思った。置き手紙を書こうと、立ち上がる。
「………っ!」
私は急に腕を掴まれた。
そして、こいしちゃんの布団に引き込まれる。
状況が飲み込めなかった私は戸惑うが、こいしちゃんに布団の中で強く抱きしめられていることだけは分かった。
「こ、こいしちゃん?」
「……フランちゃん、今の全部聞いたけどさ」
私は急に恥ずかしくなり、赤面してしまう。
「き、聞いてたんだ……」
「…無理だよ」
「え?」
語尾を強めて言ったこいしちゃんの言葉に私は疑問符を浮かべるかとしかできなかった。
「こ、こいしちゃん?……きゃっ!」
「んっ……」
顔を上げて、こいしちゃんは私の唇に自分の唇を重ねた。
「んっ…ちゅぅ…………」
「いゃっ……んんむ………ちゅ…」
無理やり唇を引き剥がした私は呼吸を整えて、こいしちゃんを見据える。
「ちょ、何するの!?」
「私はね、フランちゃん」
こいしちゃんは優しく、包むような目をして、私を見ていた。
そして、こう放った。
「フランちゃんが好きなの」
「っ!?」
「薄々気づいてると思うんだ、泉でのキスだって…流れのまま、勝手に体が動いてたんだ」
「こいしちゃん…」
「これは、フランちゃんの事が好きだから故なんだって、そう思えた」
こいしちゃんの声は少しずつ、震えていたが、何かを我慢しているかのようにプルプルと全身が震えだしていた。
「だから私は、レミリアちゃんを幸せにすることが出来ない。だって、フランちゃんと恋人になりたいから」
「…こいしちゃ………んっ……ちゅぅ……」
「好き……大好き、……愛してる………じゅるる……んぅ……」
こいしちゃんの舌の暖かさが口の中全体に広がり、私は体が跳ねる。
こいしちゃんは抱きしめる力をさらに強め、唾液が口から漏れないように強く塞いだ。
「……フランちゃん……フランちゃん…………ちゅっ……れろ……」
「こいしちゃん……こんな……ちゅ……」
開いた口の隙間から、少量の銀の糸がこぼれ落ち、布団を濡らした。
それに気づいたこいしちゃんは私を下敷きにして、こいしちゃんは私の上で四つん這いになっていた。
「こうすれば……唾液が漏れることないよね……」
「ま、まってこいしちゃ……んぅ!?」
「またなーいっ、……ちゅぅ……」
さらに強く押し付けられ、息が苦しくなる。
僅かに開いた隙間から空気を吸い込み、辛うじて呼吸を続けた。
しかし、それはすぐに塞がれ、唾液が流し込まれる。
「じゅるる………ちゅう…ぷはぁ……」
「あ、やだっ、……ちゅ…こいしちゃん、ちょっと……」
キスの途中、こいしちゃんが唇を離そうとするので、私はそれを止めようとする。
しかし、こいしちゃんはすぐに私から唇を離してしまったため、口の中に溜まっていた唾液が銀の糸となって外に出た。
それは、重力に従って、私の顔に全てかかる。
「あぅっ……もう……」
「……あらら、フランちゃんびちょびちょ……」
「……こいしちゃんのせいだよ……」
「じゃ、私が綺麗にするよ」
こいしちゃんは私の顔を舐め始めた。
かつて無い行為に私はギョッとしたが、こいしちゃんの力が強いため、私は身動きが取れない。
「フランちゃんの耳……ちっちゃくて可愛い……」
「あっ、まってこいしちゃん、そこはぁ……」
こいしちゃんの舌が、私の耳を舐め始めた。
私は体がもう一度強ばる。
私はもう強硬策に出るしかないと思い、ポケットからカードを取り出した。
「スペルカード!「禁忌「レーヴァテイン」!」
出現した炎の剣で、こいしちゃんを吹っ飛ばす。
ドゴォォンという大きな音がしたが、予め防音と防壁の結界を作っていたので、外には漏れていないはずだ。
「いったた……」
「もう、こいしちゃんのせいで気持ち悪くなった!もう一回風呂入る!」
「……わわ、ごめんってフランちゃんっ……何か奢るよ…」
「ほんと……?」
こいしちゃんの態度は何かさっきと違う感じがした。
一安心した私はこいしちゃんに手を差し伸べる。
「じゃあ、行こうか、まずは温泉に」
「……うん!」
口を拭いた私はこいしちゃんと共に温泉へと向かう。
すると、こいしちゃんはいつもの呑気な口調で話す。
「そういえば、私たちって立派な三角関係よねぇ」
「…そんな軽々しく言って良いものなの?」
「しーらないっ、フランちゃんがレミリアちゃん好きって言うし、レミリアちゃん私の事好きだし、私はフランちゃん好きだし……」
私は額に手を当てて、ため息をつく。
「……誰かが心動かないとダメってことか……」
「ま、私はこの関係嫌いじゃないよ」
その一言に私は固まった。
私の目線の先には、こいしちゃんがニッコリと笑っていた。
「なんだか、好きな人に気持ちを伝えると、楽になった気がするよ…それに……」
「それに?」
数歩こいしちゃんは進んで、くるりと踵を返した。
「私はフランちゃんが私の事好きだって言ってくれるように自分を磨かないとねっ!」
「………私も、お姉様が振り向いてくれるように、頑張らなきゃっ!」
私は、この三角関係が嫌いではない。
むしろ、好きなのかもしれない。
でも、いつかはお姉様と結ばれたい。
そう強く思って、こいしちゃんと温泉へと向かった。