フランがシスコン過ぎて困っています   作:かくてる

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この物語についてのお話があります。

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17話 地底の甘味処

「っはぁ……」

 

 災難だった。まさかちょっとした異変であんなことになるとは思わなかったし、お姉様があんなに狂気じみた顔で簡単に最強の妖怪を殺せるのだから、妹の私だって怖いに決まってる。

 私が無理やりキスをしたり、胸を触ったり。私はお姉様に「妹だから」という口実に甘えていたのかもしれない。

 多分、私が妹じゃなかったら、瞬殺されていたと思う。それくらい、お姉様は優しくて、私のことを大切に思ってくれている。

 血の繋がった姉を好きになるなんて、歪んでいる。世間がそう言いたいのも分かる。でも、私はそんな恋愛に甘えたくない。姉に向ける想いなんて、この世の全ての妹が同じなんてありえないから。その中に、恋愛感情があるのはおかしくないと思う。

 

「フランちゃん?」

「およ?」

 

 地底に降りて、地霊殿までゆっくり飛んでいると、下から聞き覚えのある声が聞こえた。

 こいしちゃんが2人のペットを連れて歩いていた。

 

「お、やっほー、こいしちゃん」

「フランちゃん、ドロワもいいけど、一回は白パ……」

 

 チョップをこいしちゃんの頭に振り下ろす。こいしちゃんは「あうぅ……」と言いながら頭を抑えて蹲る。後ろにいた2人も苦笑いをしていた。

 火焔猫 燐と霊烏路 空。地霊殿に引き取られた猫とカラスである。2人とはこいしちゃんと仲良くなった時と同時に付き合いがあって、互いに信頼している。

 

「こいしちゃん、セクハラするならさりげなくだよ。感想を述べる分には構わないけど、アドバイスはいらないかな」

「せ、セクハラされた人からセクハラのアドバイス貰うなんて……」

「それに、パンツだと飛んだ時に見えちゃうじゃん」

「それがいいんだよ!」

 

 ズイっと顔を近づけてくるこいしちゃん。私は数歩後ずさるが、ズンズンと距離を詰められる。

 

「そうやって垣間見えるフランちゃんの白パンが至高なんでしょ!? 何度そんな想像したことか……」

「……うっわ……」

「引かないで! 全部冗談だから! フランちゃん引かないで!」

 

 冗談に聞こえない。こいしちゃんが少し変態さんなのは昔からだが、やはり面と面に向かって話されると、少々引いてしまうところがあり、なんでこんな人と仲良くなってんだろうと不思議に思うことも多くある。

 

「で、フランちゃんは何しに?」

「普通に遊びに来たんだけど、こいしちゃんは?」

「今からお空とお燐と私の3人で地底の甘味処に行くんだ」

「甘味処!?」

 

 私の目は一瞬でキラキラになる。それこそ、お姉様の次に好きな物であるから。

 

「フランちゃんも行く?」

「行く行く! 行かせて!」

「じゃあフランちゃん、私にキスして」

「じゃあ行かない」

「冗談だから本気で引かないで!」

 

 テンポの良い会話を繰り広げながら、甘味処へと歩き始める。地底には独特の匂いと景色があるから、幻想郷とは別の世界にも見える。

 

「で、これからどこの甘味処に?」

「ああ、甘竹っていうちょっとお高い甘味処が地底にあるの、地底じゃ人気なんだ」

「あ、聞いた事ある。文々。新聞に載ってた」

「そう、私達は常連だったんだけど、中々フランちゃんを誘う機会が無くてさ」

 

 ため息混じりに話すこいしちゃんの横を歩く。地底を散歩するのも久しぶりだ。最近は地上の人里で遊ぶことが多いから、約3ヶ月ぶりだ。

 

「おっ、ここだ」

 

 商店街の真ん中に置かれた和風な雰囲気を醸し出す甘味処、「甘竹」があった。

 

「へぇ……」

 

 カラカラと戸を開け、店内に入る。匂いは甘く、居心地は良さそうだ。客の集まりも良く、こいしちゃんの言っていた人気だと言うのも間違いじゃ無さそうだ。

 

「いらっしゃいませ、4名様ですか?」

「あ、はい。そうです」

 

 ポニーテールの女性がお燐に話しかける。お燐は指を4本立てて、店員さんに伝える。

 店員さんは「かしこまりました、こちらへどうぞ」と私たちを案内してくれた。

 指定された席に座り、メニューを見る。

 

「おお、いい値段するね……」

「まぁ、いい味だけどねー」

 

 メニューを見て、少し目を見開く。人里のパフェの1.5倍くらい。

 

「メニュー決まった?」

「うん」

 

 こいしちゃんが近くにいた店員を呼ぶ、先程の店員さんのようだ。メモ帳を取り出して、注文を聞いた。

 

「私は抹茶パフェ、後、メロンソーダ」

「あたいは苺羊羹で」

「うにゅ…………チョコフォンデュで」

「私はチョコレート&クリームパフェで」

 

 店員さんはメモをしまい、一礼をして厨房に入っていった。

 

「ね、お燐、苺羊羹って美味しいの?」

「美味しいよ、甘さと柔らかさがマッチして手が止まらないんだよ」

 

 幸せそうに話すお燐。よほど美味しいのが伝わってくる。

 

「お待たせ致しました、抹茶パフェ、苺羊羹です」

 

 先に、こいしちゃんとお燐のものが出た。さっき話していた苺羊羹を見ると、確かに美味しそうだ。

 お燐とこいしちゃんはスプーンを取り出して、早速食べ始める。

 

「んぅー甘くて美味しいぃ……」

「溶けちゃいそうだよ……」

 

 2人は満足そうにパクパクと食べていく。私はお燐の言っていた苺羊羹が気になった。

 

「…………」

「…………? フランちゃん、気になるかい?」

「ふぇ? ああ、うん。少しね」

「食べてみる?」

 

 私が見ているのに気づいたお燐は苺羊羹を乗せたスプーンを私の顔の前に差し出してみる。

 いわゆる「あーん」だ。今日の朝も血の従者お姉様にされた。

 

「え? いいの?」

「いいよいいよ、わざわざ買い直すのも高いし、面倒だからね」

「あ、ありがと。んっ」

 

 口を開け、私はお燐の苺羊羹を食べさせてもらった。甘さが一瞬で広がり、幸せな味が私を刺激した。

 

「……おいしっ、美味しい!」

「だろ? これがまたたまんないんだよねぇ……」

 

 予想外の美味しさに自分も頼もうかと悩んでしまう。すると、左斜め前からこいしちゃんが手を止めて私を睨んでいた。

 

「ん? どしたの? こいしちゃん」

「こいし様?」

 

 お燐と私はこいしちゃんが何故そこまで怒っているのか理解は出来なかった。しかし、私の隣のお空も苦笑いをしていた。

 

「2人とも、いつの間にこんなに仲良くなってたの?」

「いつの間にって……そりゃ、人里でもよく会うしね、お燐」

「そうだね。フランちゃんとはよく遊びに行くし」

 

 そう言うと、こいしちゃんは驚きを隠せず、口をあんぐりとさせていた。

 

「ふ、フランちゃん……」

「んー?」

「お燐にあーんさせてもらったり、関節キスしたり、気にしないの?」

「別に、今更そんなの気にする仲じゃ……」

「わ、私よりもお燐の方が仲が良いなんて……くっ、レミリアちゃんの次だと思ってたのに……」

 

 こいしちゃんは「ぷぅぅ」と頬をふくらませてお燐と私を交互に睨みつける。あ、ちょっと可愛い。私は苦笑いをして、その場をやり過ごす。

 

「あ、あはは……」

「じ、じゃあフランちゃん、私のも食べる!?」

「え、い、いいよ」

「食べて!」

「え、ええ……」

 

 こいしちゃんの強引さに私は思わず引いてしまう。それでも、こいしちゃんは抹茶パフェを掬って私に差し出してくる。

 

「はい、あーん!」

「あ、あーん……」

 

 仕方なく私はこいしちゃんの抹茶パフェを食べる。あ、美味しい。

 

「どう? 美味しい?」

「うん……意外と……」

「こいしちゃんは甘党だもんねぇ、抹茶パフェなんて食べないでしょ?」

「……そうだね、甘いのばっかり食べちゃうから……」

「それに……」

 

 こいしちゃんは自分の口元に手を当て、微かに頬を赤く染めあげ、視線を下に向けた。

 

「関節キス…………しちゃったね」

「あ、お燐、もう1回食べてもいい?」

「いいよ、はい」

「やったっ、ありがと。はむ……」

「ちょっ、フランちゃん!?」

 

 私はこいしちゃんの戯言をスルーしてお燐にもう一口貰った。

 

「んぅー、美味しい」

「……うぅ……」

 

 悔しそうに歯ぎしりをしてまた睨む。そうこうしているうちに、私とお空のチョコフォンデュとチョコレート&クリームパフェが来た。

 

「うっわ、甘そ……」

 

 こいしちゃんが私のパフェを見て少し顔色を青くした。私は小首を傾げて不思議に思う。

 

「そう? 美味しいよ?」

「ほんとに? じゃあ…………あーん」

 

 こいしちゃんが口を開けて、こちらに向かって体を乗り出す。私にこいしちゃんの口内が丸見えになって、恥ずかしくないのかと不思議に思ってしまう。が、確かに私もお姉様に口内見せるのは恥ずかしくない。それと同じだろう。

 

「ん……」

 

 一杯掬ってこいしちゃんの口の中にスプーンを入れる。

 

「…………甘いけど、中々美味しいね」

「でしょ? あ、お空、替えのスプーンある?」

「ちょ、フランちゃん、ひどい!」

「冗談だよ」

 

 さすがにこいしちゃんをいじめすぎたかな。罪悪感もあるが、場も和ませられたので満足もしている。まぁ、今更そんなことを気にする仲ではないが。

 

「はぁ〜、美味しかった」

「人里にある「七星」と比べて値は張るけど味も格別だよね」

 

 以前に行った地上の甘味処「七星」と比べ、味が濃く、美味しいがやはり値段が高く、少しお財布が軽くなった。

 

「さてさて、あたいとお空はこの後仕事なので、戻りますね」

「おっけ、お姉ちゃんにはフランちゃんと遊ぶって言っといて」

「了解です」

 

 そう言って、お空とお燐は飛び去って地霊殿に戻っていった。こいしちゃんと二人きりになって、少し嫌な予感もするが、今日はしっかりと抵抗しよう。そう思った。

 

「ね、フランちゃん」

「ん?」

 

 こいしちゃんは少し真面目な表情で私を見据え言葉を放った。それはあまり知られたくなかったものだった。

 

「レミリアちゃんと何があったの?」

「…………え?」

 

 こいしちゃんは確信を持って言った。「何かあった」ではなく、「何があった」と、私とお姉様の間で何が起きたかというのが前提にあるような言い方。

 

「な、何も無いよ?」

「嘘だね。だってフランちゃん、今日レミリアちゃんの話しなかったでしょ? それに避けているかのように」

「…………」

「それに、私がレミリアちゃんの話を出したら、フランちゃんは毎回止まらないくらい語り出すのに、今日は語らなかった。私に知られたくないことでもあるのかな?」

 

 こういう時のこいしちゃんは鋭い。無意識の彼女でも、感覚はさすがにさとり妖怪と言ったところなのだろうか。

 

「あ、いや、別に怒ってるとか、そういう訳じゃないんだよ?」

「う、うん……」

「それで、何かあったの?」

「え、えっと……」

 

 こいしちゃんにはあまり言いたくはない。今のお姉様が私のことを好きと言ったら、こいしちゃんは諦めてしまう。それも「虚偽の恋」で関係が崩れてしまうのは最悪だ。だから、この時期に地霊殿に来たのは、大きなミスだった。

 

「…………まぁ、いっかっ」

「……え?」

 

 こいしちゃんはニコッと笑って、身を翻した。

 

「答えにくいことをわざわざ答えさせたくないもん。ほら、遊びに行こ?」

「あ、う、うん。ありがと……」

 

 こういう時だけ、優しいこいしちゃんは好きだ。私はほっと胸をなでおろして、こいしちゃんのあとをついて行った。

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