最初は1番続ける気が無かった作品でした。
今回、最終回です。
私の心臓はまだバクバク高鳴ったままだ。こいしちゃんとの別れの言葉の後、私は永遠亭へと走っていった。
今、お姉様は誰が好きなのだろうか? きっと、まだこいしちゃんが好きなんじゃないか。
そんな嫌な考えが頭の中をグルグルと回っている。しかし、今の私に弱気になっている暇はない。
きっと、こいしちゃんは勇気を振り絞ったんだ。私への最後の告白、今までの軽い気持ちと比べ物にならないくらい、こいしちゃんは真剣に想いを伝えてくれた。
今思うと、そのこいしちゃんの気持ちが今の私の原動力かもしれない。
お姉様にもう一度伝えたい。けど、伝えてもきっと、また朝のような結末になるに違いない。そんなマイナスの考えも時折姿を見せてくる。
「うーん……」
今この時にお姉様に気持ちを伝えるべきなのだろうか。私の質問を曖昧に返され、気持ちの整理もついていない。
「でもきっと……」
今しかない。直感がそう語っている。多分、この先も告白のチャンスは沢山あると思う。でも、それでも、お姉様への「気持ち」は今伝えなきゃいけないと思った。
ここまで、お姉様への気持ちが溢れ出しているのは初めてかもしれない。何故かは分からないが、こいしちゃんの言葉の返答のとき、「お姉様を選ぶ」という言葉に凄い重みを感じた。
そしてあっという間に、永遠亭に着いた。
「永琳!」
私は、玄関を通りかかった永琳に声をかける。声に反応し、振り向いた永琳は少しだけ驚きの顔を見せる。
「フラン、戻ってきたの?」
「う、うん。それより、お姉様いる?」
そう問うと、永琳はすぐさま顔を横に振った。
「いいえ、少し前にここを出たわよ。行先は聞いてないけれど……」
「う、ほ、ほんと? 分かった。ありがとう!」
私は身を翻し、永遠亭を出た。
ただお姉様を探すだけなのに、どうしてこんなにもドキドキしているんだろうか。それこそ、お姉様への気持ちが溢れた、ということなのだろう。
早くお姉様に会いたい。そして、この気持ちをありのまま全て伝えたい。
お姉様は、この気持ちを受け止めてくれるかな……。
私は、咲夜と魔理沙と別れ、フランを探すために飛び回っていた。
私はようやく、長年のモヤモヤの原因を咲夜達のおかげで見つけることが出来た。
私はフランが好きなんだ。好き、大好き。この気持ちはさっきから留めることを知らない。
フランのことを考える度に早く会いたい。触れたい。そう思ってしまっている。
こいしに恋をしている時、こんなにも想いが前に出たことがあったのだろうか。
「フラン……」
名前を呼ぶ度、顔が熱くなっている。きっと、今だけはフランが妹だってことを私は忘れていたんだろう。
あの綺麗な金色の髪に、真っ赤な瞳に、あの白い肌に、そして、あの可愛くて愛おしい笑顔に、早く出会いたかった。
この気持ちをフランに伝わるかしら……。
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女の子同士で、さらに姉妹で恋なんて、きっとおかしい。
同じ母親から生まれ、そこから今まで、共に生活してきた絆は深いものではあると思う。
どれだけ絆が深くても、どれだけ幸せな道を進んだとしても、恋に落ちることはまず無いだろう。
でも、私達は違う。
レミリアお姉様は、ずっと私を支えてくれた。過ちを全て受け止めてくれた。
私達の業を嫌な顔一つせずに背負ってくれた。第一に私を考えてくれた。私がレミリアお姉様にキスをしても、ハグをしても、決して私を傷つけることは無かった。
多分、これだけでも、私がお姉様を好きになった理由になる。
私のこの思いはきっといつまでも変わることはないと思う。
私は、レミリア・スカーレットに、恋をしてる。
フランは、ずっと私の後を追いかけていた。フランの失敗も、過ちも、全部私が背負っていた。
でも、嫌な気分は無かった。フランが大切な妹だから、そんな理由もあると思う。
フランが私のことを恋愛的に見ていた時も、おかしいとは思ったけど、内心嬉しいと思っていたんじゃないかと思う。フランが私のことを好きになる前に、フランの容姿にはもちろん、眩しい笑顔やその優しさに私は惚れていたんだと思う。
私は、フランドール・スカーレットに、恋をしてる。
早くフランに会いたい。
早くお姉様に会いたい。
この溢れ出す思いを早くぶつけたい。
こいしちゃんの思いごと、ぶつけたい。
私が「好き」と言ったら、フランは驚くだろうか。
私が「好き」と言ったら、お姉様に受け流されるのだろうか。
きっと、もう迷わない。
もう、迷いたくない。
この「好き」という気持ちに偽りはない。
この「好き」という気持ちは本物だから。
早く。
早く。
フランに会わせて。
お姉様に会わせて。
「…………フラン」
「…………お姉様」
二人が顔を合わせる。紅い月の夜。
「もしかして、私を探していたの?」
「うん……お姉様に会いたくて……」
「そう……」
互いに頬を赤らめ、気まずそうに照れ笑いをする。レミリアはそんなフランの顔を見て微笑む。
「ねぇ、フラン」
「な、なに?」
緊張しているのか、それとも、以前のいざこざが忘れられていないのか分からないが、フランはまだぎこちなかった。
「私はね、フランが妹で本当に良かったと思ってる」
「き、急だね……」
たしかに急だったかもしれないが、もうレミリアの方が我慢出来なかったみたいだ。夜風に当たり、レミリアの紫の髪がサラサラと靡く。
「この数百年間で色んなことがあって、その度にフランと励ましあって、時には励ましてもらって、時には励まして……」
「……」
「その時からかしら……」
「……?」
すると、レミリアの顔はみるみるうちに赤く染まっていく。夜なのに、その赤面さがわかる程である。
しかし、そんな中でも、レミリアはハッキリと話す。
「フランのことをね。一人の吸血鬼として見ていたのは……」
「……え……?」
予想外の答えだったのか、フランは驚きで体が硬直し、呆けた顔をしてしまう。
レミリアはそんなフランを見て、微笑みながら、「涙」を流した。
「フランの優しさに、フランの笑顔に……いつの間にか……惹かれていたの…………」
「ま、まって……お姉様はこいしちゃんが好きなんじゃ……」
フランだって、気持ちを伝える為に来たのに、ついついレミリアの本心を聞き出してしまった。
「ええ、きっと好きだったわ……でも……でもね……」
レミリアの目尻からは大粒の涙が流れていた。その顔を見て、フランは大きく心臓が高鳴った。
レミリアは嗄れた声でも、精一杯叫ぶように、伝えたかったことを口にする。
「それ以上に…私は……フランのことが好きだったの…………」
「っ!」
フランは両手を口元にやる。そして、同じように大粒の涙を流す。
「フランと一緒にいる時、心地がよかった。色んな家族や友人が増えても……きっと……私の目にはフランが映っていた……」
レミリアはどんどんと胸が苦しくなった。伝えたい想いが溢れ出るのに対して、口が追いつかなかったからだ。
この際、もういっそこの言葉だけ伝えれば満足するだろう。
とめどなく溢れ出すフランへの想い。きっと、これから先もこれが続くのだろう。でも、これ以上幸せなことは無い。
妹に恋をする。きっとそれは茨の道だ。全員が素直に祝福はしてくれないだろう。
でも、そんなのは関係ない。私が好きになった人は、好きになった女の子は……。
フランドールただ一人だからだ。
「きっと、私は! フランが私のことを好きになる前から……ずっとずっと……大好きだった!」
私の目は鏡のように反射するほど、涙が溜まっていた。
嬉し涙もあるが、八割がたこれは「悔し涙」だった。
「遅いよ…………お姉様……」
「ごめんなさい」
「私の方がずっと好きだったはずなのに…………急にそんなこと言われたって……混乱するに決まってるのに…………っ」
「分かってる……でも、この気持ちが恋だってわかった瞬間、貴方に早く伝えたかったの……」
「………………っ!」
涙が止まらない。お姉様の真意を聞けて私の涙は「嬉し涙」へと変わっていった。
「嬉しいよ…………お姉様……」
めいっぱい、笑顔で返す。するとその目の前にも、涙ながらにも微笑んでくれるお姉様、いや、レミリア姉がいた。
そして、私は伝える。
この思いは私だけじゃない。私のために自分の恋路を諦めてくれこいしちゃんの思いも詰まってる。
きっとお姉様に抱く感情は「恋情」や「愛情」だけじゃない。「感謝」もある。気づけば迷惑ばかりかけていたし、これから先も迷惑をかける。
この先、辛いことも悲しいことも必ずあるし、避けることも出来ないものもある。
でも、お姉様と一緒なら、それ以上に幸せなものを築いていける気がする。
今までの感謝も込めて、そして私に芽生えた恋の想いも込めて、私は精一杯の笑顔で、心から伝える。
「私もお姉様…………いえ……レミリアお姉ちゃんが好き……これからも迷惑かけるし、馬鹿なこともすると思うけど…………ずっと支えてね…………」
そう、私が伝えた瞬間、温もりが全身に伝わった。
いつの間にか、お姉様の体と密着していた。しかもそれは、いつもの抱擁とは違くて、愛の籠った、優しいハグ。
お姉様は私の肩に顔を埋めて、強く私を抱きしめた。お姉様からは、まだ嗚咽が聞こえる。
「フラン……私はあなたを絶対に離さない……何があっても…ずっとずっと、好きでいる……これからは姉としても……そしてフランの彼女としても…愛し続ける……」
「私も……レミリア姉の気持ちを裏切るなんてことしない…………私にはお姉様しかいないから……レミリアお姉ちゃんに甘えたい……」
お姉様は私から離れる。しかし、手は肩に置いたまま。
私は、お姉様の顔を見た時に、今までにない嬉しさが込み上げてきた。
今この瞬間、私はレミリアお姉様と結ばれた。
ずっとずっと、夢に思っていた願いが今ここで叶った。
これから先、レミリアお姉様を愛し続ける誓いを、大切にする誓いを、今ここで交わした。
「……もう一度、言うわね……」
レミリアお姉様のセリフに私は「うん……」と頷いた。お姉様は涙を拭い、笑顔を向けた。
するとお姉様は私からもう一歩離れ、スカートの裾をつまみ、カーテシーをした。
そして、お姉様はもう一度、自分の想いを伝えてくれた。
「フランドール。私は、貴方のことが好きです。この世で一番愛しています……私と……恋人になってくれますか?」
この言葉を聞くために、私は何百年も一途に想い続けてきたんだろう。お姉様から、たった数秒の愛の言葉。それを聞くだけで、涙がまた溢れ出した。
それでも、私はそれを拭い、負けないくらいの笑顔で返す。
これは私にとって、最初で最後の告白。
これから先、困難な道にぶつかろうとも、私は彼女、レミリア・スカーレットを愛し続けたい。手を繋いで、その道を歩きたい。
「はい……よろしく……お願いしますっ……私も……大好きです…」
私達はもう一度、強く抱きしめ合った。急ではなく、ゆっくりと抱きしめた。もう離さないと言わんばかりに。
「これで、私もシスコンね……」
「いいの。私はシスコンなレミリアお姉ちゃんが大好きだよ!」
「……そうね………ねぇ、フラン………」
「んー?」
「……愛してるわ」
「…えへへっ………私もっ!」
私達は紅い月に照らされていた。その涙も、いつしか月明かりで紅くなっていたと思う。
スカーレットの夜。「大きな紅い館」の入口で、紅月に照らされながら…………
少女二人が優しく唇を重ねていた。
end……
なんか足りねぇ………。
イチャイチャ回書いてねぇじゃねぇかァァァァァァ!!
ということで、続けます。
アフターストーリー的な。
とりあえず、ここまで読んでいただき、感激の至りです!
また、次の分岐ルート、そして、アフターストーリーで会いましょう!
新しく書いて欲しいエンドはありますか?※一話完結
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3人とも報われないバッドエンド
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3人とも平和的なハッピーエンド
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3人に恋愛感情がないほのぼのエンド