すみません長くなりました。
「お、お邪魔しまー……す」
「ようこそ、地霊殿へ。お久しぶりだね、フランちゃん」
そう言って出迎えてくれたのは、地霊殿のペット、火焔猫 燐だった。
「こんにちは、お燐」
「こいし様、今日はどのようなご用件で彼女を?」
「あ、私達付き合ったから」
「なるほど、では、お二人ともこちらで……え?」
お燐の反応は至って普通なのだろう。お燐も私がお姉様が好きだったことを知っている。だから尚更、驚きが大きいのだろう。
「……え? あれ? フランちゃん? 君は……」
「あ、あはは……こいしちゃんに落ちちゃった……」
付き合い始めたばかりとはいえ、こういうこと言うのも気が引ける。というか、恥ずかしすぎて死にそうだ。
「は、はぁ……ごゆっくりどうぞ」
未だ納得出来ていないお燐は苦笑いしつつ、地霊殿へ入れてくれた。紅魔館と違って門番はいないが、内部に入るとセキュリティが硬い。
「ね、フラン。お部屋で何する?」
「そうだね……少し、相談があるんだけど……」
「相談?」
廊下を歩きながら、私はあることを思い出し、こいしに頼るようにした。
「こいしの部屋……久しぶりかも……」
「フランが地霊殿に来るのがそもそも久しぶりだもんね」
こいしの部屋を見渡す。必要最低限の物しか置いていない……訳でもなく、小説やちょっとしたお人形まで置いてある。私の部屋と似たり寄ったりなところが多い。
「じゃ、座って話そうか」
2人並んでベッドに座る。私のベッドよりも幾分かフカフカなのが少し羨ましい。
そして、言い出しづらい私は両方の人差し指を合わせながら
「お姉様のことなんだけど」
相談を切り出した。先程のお姉様との別れから、頭の中に引っかかり続けている。
「どう、謝ればいいのかな。今頃、お姉様はきっと泣いてると思う……」
「そう、だね……」
これにはこいしも悩みどころだったそうで、考え始めた。
「今考えても仕方ないことはわかってるけど……やっぱり、お姉様が心配だよ」
「やっぱり、きちんとお話するべきだとは思うよ。レミリアちゃんだって、理解してくれると思う……」
「そう、かな……」
こいしの意見に賛同しかねる。というのも、今1番傷ついてるお姉様にすっぱりと状況を伝えてしまえば、トドメを私たちが刺してしまう気がしたから。
「お姉様をなるべく傷つけないでお話したいけど……」
「多分……無理だよ」
「……」
「私思うんだ。きっと、恋愛の辛さって好きな子に好きな子ができた時、気持ちが届かなかった時……色々ある。それを乗り越えて笑顔で恋愛を終えられる人なんて結ばれた2人しかいないから」
「そっか……」
すると、木製の扉らしい軽快な音でノックがされる。そして、ガチャっと扉が開けられ
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「ありがとう、お燐」
お燐がトレイに乗せた紅茶を持ってきてくれた。お燐は今のこの空気を読んだのか、そそくさと出ようとしている。
「ねぇ、お燐」
「ん、どうしたの?」
たまらなくなった私はお燐に問いかける。お燐は私よりも年上だ。何か頼れることもあるかもしれない。
そう思って、私は先程こいしに質問したようにお燐に問う。
「……無理だよ。そんなの」
こいしと同じ答えが返ってきた。私はその答えに目を見張る。
「失恋は誰にとっても辛いものだ。それを優しく傷つけないように伝えようとすれば、返ってレミリアさんを傷つけてしまう羽目になる」
「そっか……」
「ええ、あたいも色々経験してきた身だからね。レミリアさんの気持ちも、フランちゃんの気持ちもわかる気がして」
「へぇー、お燐ってどんな経験をしてきたの?」
説得力のあるお燐の言葉にこいしが問う。
「地霊殿に来る前までは彼氏もいましたよ。でも、振られたり振ったり。時には失恋もしました。数百年も生きてたら、色々経験するものなんです」
お燐の経験値は私達が思うよりもずっと高かった。感心するように、私はため息をついて、
「ありがとう、お燐のおかげで少し楽になったよ」
「え? フラン、私は?」
「ん、こいしもだから安心して」
こいしの頭を撫でる。すると、糸がほどけたように顔が緩むこいし。いつもは私よりもしっかり者の癖に、こういう時だけは普通の可愛い女の子になる。
「……しかし、本当にお二人は付き合ったんですね」
「……うん。やっぱり私、軽い女かな……」
ついさっきまで、レミリアお姉様の事が好きだったのに、急にこいしに乗り換えるような事をしてしまって。
「いいや、人の気持ちは唐突に変わるものだと思うよ。だから、フランちゃんがこいし様を好きになる気持ちも決して軽いものなんかじゃない」
「……お燐はなんでもお見通しだね。ありがとう」
お燐の言葉に説得力があったかと言われれば、完全にそうだと言えないかもしれない。でも、その言葉で私の気持ちが楽になったのは事実。
「うん、お安い御用だよ。では、ごゆっくり」
頭を下げ、お燐はこの部屋を後にした。そして、しばしの静寂が訪れる。
「まぁ、今は考えても仕方ないよ。というか、お姉ちゃんに話さないとね」
「さとりは今いるの?」
「うん、そろそろ仕事から帰ってくると思う」
さとりは地底全体の土地管理を行っているため、金銭的な問題も領土的な問題も全てを抱えている。紅魔館とは桁違いの仕事量なのだ。
玄関ホールに二人で降りると、扉の前にはさとりが書類を持って歩いていた。
「お姉ちゃんおかえりー」
「あら、こいし……とフランさんまで、こんにちは」
「こんにちはー」
「……お姉ちゃん。私達ね、付き合うことになったんだ」
「……そう」
お燐とは違い、驚くことはなかった。とは思うが少し目を見開いていた。
「フランさん」
「は、はい!」
急に名指しされ、私は思わず背筋を正して、敬語で返事をしてしまう。さとりは私の目を見て、微笑む。
「こいしのこと、よろしくお願いします。少し手のかかる子ですが……」
「…………」
「もう! 私手なんかかからないもん!」
「私のケーキ今までで何個食べたのかしら?」
「うっ……」
「24個よね? 覚えているわよ? いつか奢らせるから」
「……さとり」
「はい?」
姉妹で会話している途中、私はさとりの目をもう一度見て、口を開く。
「絶対、こいしを幸せにするから。後悔なんか絶対させない」
「フラン……」
こいしは隣で顔を真っ赤にして、口を手で塞いでいた。私の言葉を聞いたさとりはその場で微笑んだ。
「ええ、よろしく頼みますね」
「……うん」
「それじゃあ、そろそろ晩御飯の時間ですね。今日は
「うん、とりあえず今日はね」
私の心を読んださとりはさり気なく泊まるのを了承してくれた。
「じゃ、フラン。行こっか」
「うん」
そう言って、私達3人は食堂へと向かった。
「あ、あの、こいし? 歩きにくいんだけど……」
「えぇー? いいでしょ別にぃ」
私の右腕にはこいしが密着していた。微かに感じるこいしの胸の感触が私の心臓を高鳴らせる。
「ふふ……私のおっぱい。どうかな」
「ちっぱいの間違いだよこいし」
「……」
「ふふっ、仲の良さは相変わらずですね」
さとりは口に手を当てて笑う。それに釣られ、私達も顔を見合せたあと、自然に笑ってしまう。
「っはぁー! 美味しかったぁ……」
「ね、地霊殿の料理ってこんなに美味しいんだ。咲夜と並ぶよ」
「全部お空が作ってるんだよ?」
「えっ? そうなんだ……」
以外な事実に私は目を見開く。そして、こいしは立ち上がると、扉の方へ歩いていった。
「じゃあフラン。私は先にお風呂に入るよ」
「う、うん」
そう言って、こいしはこの部屋から出ていった。私は急に1人になったことから、色々と考え始めた。
(お姉様……また、お話に行かないと……)
結局、まだお姉様が心配なのだ。何も言えずに、もどかしい感じがまだ私に残っている。
(でも、明日でも明後日でも、時間をかけて、お姉様とお話する)
いくら時間がかかってもいい。これから、お姉様がまたいつものように笑顔でいてくれるなら、それでいい。
(というか、ここベッドひとつしかないんだけど…………まさか添い寝……?)
今更こいしの添い寝は恥ずかしくない。というわけない。今までは「友人」として一緒に寝ることはあっても、「恋人」として一緒に寝ることは無かったから、心臓の高鳴りが止まらない。
「ど、どうしよ……」
そう考えると、顔が燃えるように熱くなった。これから、こういう行為も増えるのだろうけど、最初は緊張して死にそうになる。
そう考えている内に
「フラン、お先に貰ったよ。お風呂はすぐそこだから。あ、着替えも置いてあるよ」
「ひゃあっ!? う、うん。ありがとう」
「……何か考えてた?」
「う、ううん! じゃあお風呂に入ってくるね!」
私は慌てながらも、すぐさまお風呂場へ向かった。
衣服を脱いで、お風呂へ入り込む。
(……ついさっきまで……こいしが入ってたお風呂……)
そう、こいしが入っていたお風呂。それだけで、ドキドキしてしまう。
「……スウゥゥゥゥ……」
思わず、匂いを嗅いでしまう。お風呂場でこいしちゃんの匂いがするはずもないのに、どうしても心地のいい匂いを感じてしまう。
(何やってるの……私のバカ……)
急に恥ずかしくなった私はそそくさと体を洗う。紅魔館とは一味も二味も違う新鮮さに私はずっと驚いていた。
「ふぅ……いい湯だった……」
お風呂から上がった私は体を拭いて、こいしから借りた服を着る。
「……これ……」
黒のドレス。ドレス?
鎖骨から真っ直ぐ下に向かってフリルが付いており、胸元には白いリボンがある。いわゆるゴスロリだ。
「こいし……」
しかし、これ以上服がないので、仕方なくこれを着て私はお風呂場を後にした。
「……」
この姿のまま、部屋に入るのは死ぬほど恥ずかしい。私は部屋の前で少し止まってしまう。
(……ええい! 女は度胸!)
思い切って私は扉を開けた。そこには、日記のような物に羽根ペンを走らせているこいしちゃんがいた。
「……ふふっ……か、可愛いよフラン……」
「こいし! あなたもっとマシな服なかったの!?」
「……ご、ごめんね……ふふ……これしか、なくて……んふふ」
必死に笑いをこらえるこいしを睨みつける。やっぱり恥ずかしい。
こいしは本を閉じ、羽根ペンを立てて立ち上がる。
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「……うん……」
そう言って、同時にベッドに入る。
「フランとこうして2人きりで寝るの……夢だったんだ」
「……そうなの?」
「うん、こうやって二人で一緒に……」
こいしの顔がもう目の前にあった。薄暗い部屋の中でこいしの碧眼が輝いて見える。エメラルドのようなその瞳はとても綺麗だった。
「……こいし」
「ん?」
「これからも、こうして二人で寝よう? 遠慮なんてしないでさ、私たちは恋人同士なんだから……ね?」
精一杯、私の想いを伝えたつもりだ。これからも二人で過ごしたい、という願いを込めて。
「…………」
「こ、こいし?」
急にこいしが黙ってしまった。しかし、こいしの目はしっかりと私を捉えていた。
「遠慮はいらないんだよね?」
「へ? う、うん」
こいしが私の言ったことの確認をした。唐突な問い返しに私は戸惑いながら首を縦に振った。
すると、こいしの顔がもうゼロ距離にあった。
「んっ……ちゅぅ……」
「……っ! ……あむ……」
唐突なキスに私は戸惑う。しかし、こいしは構わず舌を私の口内に忍び込ませた。
「れろ……じゅる…………あふぅ……」
「あっ……んちゅ……」
私はこいしの袖を掴む。そんな私をこいしは強く抱き締めて、更に唇を押し当てた。
「ちゅ……ちゅ……じゅる……」
私の口の中をこいしの舌が這う。それを心地よくて気持ちいいと思ってしまう私はおかしいのだろうか。
「こい……し…………すきぃ……ちゅぅ……」
「フラン…………わたしも……ちゅ……じゅる……」
こうして、私とこいしの唇は離れる。もちろん、唇と唇よ間には銀の糸が伸びていた。
「フラン……はぁ……はぁ…………遠慮……しないよ?」
「……うん…………こいしとなら……いい、よ?」
蕩けきったこいしの顔に私は笑顔を送る。多分、私ももう我慢ができない。
「こいしが欲しい……何もかも……私にちょうだい?」
「……うん、今から私はフランのもの……フランは私のもの……」
「……うん……」
そう言うと、こいしは服を脱ぎ始めた。そして、私も服を脱ぎ始める。
「……綺麗な胸……」
「ちょ、やめてよ……恥ずかしい……」
「……B?」
「……うん……」
唐突に胸のカップを聞かれ、正直に答える。すると、こいしはプクッと頬をふくらませる。
「……私なんてまだAなのに……」
「あ、あはは……」
こいしの方が綺麗な形をしているなぁ。とは、恥ずかしくて私は口に出来なかった。
「じゃあ、フラン……」
「ん?」
こいしは私にもう一度口付けをする。今度は唇だけの甘くてやさしいキス。そして、大人の色気を放つようなこいしの微笑み。
「今夜は……私達だけの……夜……」
「……えっち……」
「フランにだけだよ……」
「んっ……好きだよ、こいし……愛してる……」
「……私も」
こうして、私とこいしは深くお互いを求め合う。身体も心も全てを溶かすような。そんな夜を私たちは過ごした。
新しく書いて欲しいエンドはありますか?※一話完結
-
3人とも報われないバッドエンド
-
3人とも平和的なハッピーエンド
-
3人に恋愛感情がないほのぼのエンド