今回、初めて一万字を超える話です。
フランの部屋に着くや否や、私はぐっと背伸びをした。
これで全てが解決した。そう思っていいのだろう。
「お疲れ様。フラン」
「うん、ありがと……」
私はベッドに座るフランの方を向く。そんなフランの顔はずっと上の空だった。
不思議に思った私はフランの顔を覗き込む。割と近距離で目が合ったからか、顔から蒸気が出るほど顔を赤くしてフランは仰け反った。
「わぁ!?」
「どうしたのフラン。何だか元気ないけど」
「ううん、なんか、実感湧かなくて……」
実感。フランがどんな実感が湧いたのか分からないが、とりあえずフランが可愛いから、私は笑った。
「レミリアちゃんも、大人になったね」
「……そう、だね」
一昔前なら、もしかしたらフランの争奪戦になっていたかもしれない。
それがもし、純粋な戦闘力で勝負とか言われたら、私のようなただの覚妖怪が敵うはずが無い。
そもそも、レミリアちゃんは普段は大人しくしているものの、本気を出せば幻想郷を丸ごと破壊することも出来る大妖怪なのだ。
確か、紫ちゃんも一番怖い妖怪だって言ってたなぁ……。
私は、レミリアちゃんと戦わなくて済む事にしみじみと感謝しながら、私はフランの隣に座り、右手で頭を撫でる。
そしてそのまま、私の右肩にフランの頭を乗せた。
「ちょ、恥ずかしいよ……!」
「いいのいいの。フラン、今日の朝から肩に力入りすぎ。もうレミリアちゃん公認なんだから、安心していいの」
「わかってるよ……だけど……」
「だけど?」
答えるのが恥ずかしかったのか、「う〜」と低い唸り声を上げたあと、りんごのように顔を赤くして両手で顔を塞いでいた。
「……もう、こいし……無理ぃ……」
茹でダコのように頭から湯気を出すフランを愛らしく思った私は耐えられなくなってフランの頭を自分の胸で包み込む。
「んもぉ! 可愛いすぎるよフラン!」
「わぷっ! こ、こいし!?」
「ほらほらぁ! 私の谷間で眠りなさい?」
「谷間……谷間……あ、
「はぁーいフラぁン? 君の判決は黒だよぉ? 冥界でみっちり反省なさぁい?」
「なんで生前から裁かれてるのってかすみませんでした謝るので許してください。だからその頭グリグリするのやめて、分かった土下座するから頭破裂しちゃうからああぁあ!!」
フランの発言は私の怒りの最終ラインを超えてしまったようで、両手でフランの両側頭部をぺしゃんこにするようにグリグリと動かしていた。
「全く! フランじゃなかったら一発で閻魔様に裁いて貰ってたよ!」
「こ、こいしの体からまさかあんな怪力が生まれるなんて……」
「…………とりあえず、良かったね。フラン」
「……うん」
終わりよければすべてよし。とはこのために言ったものだろう。
色々すれ違いもあって、レミリアちゃんとフランの姉妹に亀裂が入るかとか一瞬思ったけど、何とかなってよかった。
「まぁ、とりあえず、お腹すいたね」
「まだお昼だよ?」
「そうだなぁ……あっ、ポーカーしよポーカー!」
とりあえず、今から人里に行くのは少しばかり早い。紅魔館でゆっくりしていきたい気分なのだ。
「ポーカーかぁ……いいけど、何か賭けるの?」
「そうだね。せっかくポーカーやるんだし……」
とは言ったものの、賭け事に無頓着な私達だ。何を賭けるかなんてそんな遊びを今までしたことがない。
「甘味を奢るのは普通だしなぁ……」
「うーん」
瞬間、私の頭の中に電流が走った。
これだ。これしかない。
「フランちゃん!」
「び、びっくりした……興奮しすぎて前の呼び方になってるし……」
そんなフランの指摘をも無視して、目を輝かせながらフランに顔を近づける。
そして私はとっておきの賭けを申し出た。
「今日の攻め!」
「……は?」
フランの顔は「何言ってんだこいつ」を表現したかのように訝しんでいた。
フランの言いたいことは分かるけどその可哀想なものを見るような目はやめて欲しい。
「だから、今日のえっちの攻め!」
「今日えっちすること確定なんだ」
「いいじゃーん、昨日は何だか二人とも気分が乗らなかったんだから」
昨日、地霊殿で初めてフランとそういうことをした時はお互いにレミリアのことが頭の片隅にあって、完全に溶け込めてはいなかった。
それはお互いにわかっていた事だし、仕方ないことだとは思う。だからこそ、今日は思い切り発散したいと、そう思っているだけなのだ。
「えぇ……でも、こいしは昨日、八割くらい私に任せてたよね?」
「仕方ないじゃん! あんなに激しいとは思わなかったんだもん」
「その割には『今夜は……二人だけの……夜』とか言ってたのに」
「きぃいいぃい!!」
顔を真っ赤にした私は恥ずかしさのあまりベッドに置いてある枕でひたすらフランを叩いていた。
また、フランの私の真似も特徴だけ捉えていてなんとも腹立たしかった。
「わ、分かったごめんごめん……」
「むぅ……」
「じゃあ、ポーカーやろうか」
「早くやろ! 今度は私がフランをめちゃくちゃにしてあげるんだから!」
「言い回しが不穏だなぁ……」
フランはぶつくさ言いつつ、引き出しからトランプを出した。
こういう遊びも今まで何回もしたことはあった。それでも、「恋人と二人で遊ぶ」ことはこれが初めてだ。
そう思うだけで、私の胸は高鳴り始める。
やっぱり、恋人は最高だ。
「「せーのっ!」」
「フルハウス!」
「ツーペア!」
お互い床に叩きつけるように五枚のトランプを広げる。
今現在、三十対三十でかなり拮抗していた。
フルハウスによって負けた私は地面に額を擦りつけて、バンバンと力任せに叩く。
「なぁあ!! 勝てると思ったのにぃ!」
「甘いなこいし。ツーペアなんかで勝てると思ったら大間違いだよ。考えてドローすべきだったねぇ……」
「くっそぉ……」
フランのドヤ顔が鼻につく。
くそ、あの顔を羞恥で染め上げてやりたい。
そんな歪んだ思考が思い浮かんでしまって、慌てて頭を振って取り消す。
すると、ドアの外から誰かの声が飛んできた。
「フラン様ー? こいしさーん? お夕食が出来上がりましたが、如何致しますかー?」
ポーカーに白熱しすぎて、お昼ご飯を食べず、トイレ以外はぶっ通しで夜までやってしまっていた。
高度な心理戦が時の流れを忘れさせてくれたらしく、私達の腹の虫は大騒ぎだ。
「はーい! 少ししたら行くよー!」
「……まさか、フラン……」
「これが最終決戦……だね……」
どうやら、お互い今日のえっちの攻めは譲れないらしい。
ビカビカと赤い眼光を光らすフランとサードアイがゆらゆらと妖しく揺れる私、本気だ。
目を閉じて、五枚のカードを引いた。
そして、フランに見られないようにゆっくりとそのカードを確認する。
(ええと……スペードの8……ハートの8……クローバーの8……ダイヤの8……スペードの3…………えっ、これってまさか)
来てしまった。
ここに来て最強の運が舞い降りた。
(来たっ! 今日の攻めは私が勝ち取ったり! どうやってフランをいじめてやろうかなぁ……おっぱい揉んで……それから、身体を色々調べ回したりしてぇ……)
脳内でフランとの桃色の空間が広がっていく。
喘ぎながら私に愛を囁いてくれるフランを想像するだけで唾液と鼻血が垂れてきてしまいそうだ。
表情に出てしまうのを必死に抑え、私は自分の手札をマジマジと見つめるフランを見た。
「ふむ……」
(あ、その表情……いいカードが無かったんだねぇ……)
フランの顔はなんとも複雑な表情をしていた。
先程からそうだったが、
(むふふ……私の勝ちね!)
心の中で勝利の叫びをあげる。
おそらく今頃は心の中で白旗を上げていることだろう。
「じゃあ……フラン……行くよっ」
「よ、よし……」
私の一撃必殺を食らうがいい!
立ち上がって、めんこのように思い切り床にカードを叩きつけた。
そして、スペルカードの詠唱のように高らかにその組を叫ぶ。
「フォー、カードぉおおぉお!!」
見たかフラン! これが覚妖怪の強運だ!
さぁ、潔く負けを認めるがいい!
「…………」
「どうしたのフラン? ほらほら早くぅ……貴方のペアも見せてよぉ……」
煽るように、フランの頬をつんつんと叩く。
フランの顔はなんとも表現しがたい真顔になっていた。
そこから、私の顔を見るなり、だんだんと口角を上げていって、
「……ね、こいし」
「なぁにぃ? 今更「賭けはなし」なんて言わないでよぉ?」
「ううん、そうじゃなくて……覚悟はいい?」
「は、覚悟?」
何を言っているんだフランは、覚悟を決めなければいけないのはフランの方だろう。と、心の中で嘲笑する。
しかし、今のフランの顔には悔しさも焦燥も浮かんできていない。
少し嫌な予感がした私は少しだけ距離を取る。
「さ、こいし、私のカードを見なさい」
パサ……とゆっくり床に置かれた五枚のカード。
それはもう、とんでもないカードだった。
スペードの10、スペードのJ、スペードのQ、スペードのK、スペードのA。
「……は?」
この悪魔のような組み合わせに、私は言葉を失った。
そんな私を見て、フランは舌を可愛らしく出して、ニッコリと笑った。
「ロイヤルストレートフラッシュっ」
「は」
ポーカーというゲームの中で最高位に置かれる最強のペア。
それに加え、「スペード」であるという、オーバーキルにも程がある。
「はぁぁぁあぁぁあ!?」
当然、私はそれを認める訳にはいかなくて、身を乗り出してフランの肩を掴んだ。
「フラン! どんなイカサマしたの!?」
「い、イカサマじゃないよ……ちゃんと引いたし」
「ロイヤルストレートフラッシュがどぉれだけ低い確率なのか知ってるの?!」
「わ、わかってるよ……」
今この瞬間、私が妖怪として生を受けてから一番の奇跡かもしれない。
早苗ちゃんにでも頼めば、実現出来たかもしれないが、生憎今はいない。
「じゃあ、今日のえっちの攻めは私ね」
「ふ、フランが運の横領を……」
「運の横領って何……とにかく、拒否権はないからね? 今日は私がこいしの身体を自由にしていいんだから」
「うぅ……しょんなぁ……」
「はい、晩御飯食べよ?」
そう言って、立ち上がるフラン。
私はフランに引っ張ってもらって立ち上がるが、ズーンと雰囲気は沈んだままだった。
フォーカードが出た瞬間、勝ちを確信して、そこから「フランの身体をどういじめよう」とか「フランが恥ずかしくて死にそうなくらい激しくしてやる」とか、邪悪なことばかりを考えていた。
そんな考えが祟ったのだろうか。
諏訪子ちゃん。邪な気持ちだったのは謝るからこれ以上祟らないでね。
密かに、幻想郷の祟り神にお祈りを捧げた。
「……なんでそんなに元気ないのよ……」
お姉ちゃんのため息混じりの声が、第一声だった。
食堂に着くや否や、真っ黒いオーラが漂うこいしに全員が心配した。
「ちょっとゲームに白熱しちゃってさ、最後の最後まで同点だったんだけど……」
「フランが最終的に勝ったのね。ちなみになんのゲームしてたの?」
「ポーカーだよ」
「へぇ……貴方達にしては大人なゲームじゃない」
少し驚いたのか、お姉ちゃんは目を見張った。
失礼な、私だって495年も生きていたらそんじょそこらの大人よりも知識はあるもん。
「それでね、こいしはフォーカードが出来たらしくて」
「おお、やるじゃないこいし」
「……どうも……」
お姉ちゃんが褒めてるにも関わらず、相変わらず暗黒オーラを放つこいし。
ちょうどその時に咲夜やほかの妖精メイドが食事を運んできた。
「食べながら聞きましょう」というお姉ちゃんの提案により、その次の言葉が出てきたのは食べ始めて三十秒くらい経ったあとだ。
「えと、それでね。こいしは勝ちを確信したらしいんだよ」
「まぁ、フォーカードだったら勝ちはほぼ確定じゃない?」
「そこで、私はスペードのロイヤルストレートフラッシュ出しちゃってさ」
カランとステーキを切っていたお姉ちゃんの手に治まっていたナイフが落ちる。
そして、引きつった笑みを浮かべ、口端をひくひくと動かして訝しむように聞き返してきた。
「ろ、ロイヤルストレートフラッシュ? フランが?」
「……うん」
「あんた何かイカサマでもしたの?」
「してないよ! どーしてそんなに疑うのかなぁ……」
「そりゃあ……ロイヤルストレートフラッシュだもの。多少はそういうの考えるでしょ」
確か、パチュリーの図書でロイヤルストレートフラッシュは何十万回分の一くらいの確率だって書いてあったのを思い出し、ようやく自分の奇跡に気づいた。
「わ、私もしかして、凄い奇跡起こしちゃったんじゃ……」
「……そりゃあ……勝ちを確信してたこいしには大ダメージよねぇ……」
「我が妹ながら強運ねぇ」と感嘆のため息をついて、ステーキを口に運んだ。
「それで、何か賭けてたの?」
「ああ、今日のえっちの受け攻め」
もう一度、カランとナイフが落ちた。
それに加え、後ろでティーポットを持っていた咲夜もティーポットを落とす。
頑丈でなおかつ蓋も外れないタイプのティーポットで助かった。
「え、ええぇっちの受け攻めえぇ!?」
「うん、だから、今日は私が攻め。ね、こいし」
「そうだね……わぁーい楽しみだなぁ……」
「楽しみじゃない時の顔よねそれ……というか、
「? 当たり前じゃん。私の部屋でするけど?」
「……まぁ、いいけど……あんまりうるさくしないでよね」
先程までは慌てていたお姉ちゃんだったが、今では大きくため息をついて呆れるくらいに落ち着いていた。
「まぁ、お姉ちゃんくらい声が抑えられたら百点だよね」
「昔の話はやめなさいグングニるわよ」
「何グングニるって……」
お姉ちゃんの中でひとつの動詞が生まれていた。
「フラン様も大人になられましたね……」
咲夜は顔を真っ赤にしながらしみじみとしていた。
恥ずかしがるのかしみじみするのかどっちかにして欲しい。今かなり複雑な顔してるよ咲夜。
「まぁ、優しくしてやりなさいよ。フラン」
「大丈夫だって、ね、こいし?」
「……うん……」
「……元気なさすぎでしょう……そんなにフランを攻めたかったの?」
お姉ちゃんの質問にこいしは先程までのオーラを振り払って、身を乗り出すようにお姉ちゃんに力説した。
「当たり前だよレミリアちゃん! あのフランなんだよ!? 誰もが未踏の地であったフランの身体を私一人が自由に弄ぶことが出来るんだよ!?」
「お、おお……そうなのね……よく分かったわ……だから食事中に身を乗り出すのはやめなさい?」
「そーだよこいし。今すっごい顔してるから」
「すっごい顔て……」
スカーレット姉妹に注意されて、こいしは大人しく席に座ってステーキを食べ始めた。
「っうま……」
余程美味しかったのか、先程までの喧騒を忘れて、食に集中しだした。
「お空じゃこれは再現できないかな……さすが咲夜さんだね」
「ありがとうございます」
私も、自分の館の従者が褒められるのは悪い気分じゃない。むしろ誇らしい。
「ねぇ、またフランと一緒に地霊殿に来てよ。お空に料理を教えてあげて」
「とはいいますが……お空さんもかなりの料理上手でしたよね? 私が指導する立場にはないと思いますけど……」
「まぁ、その場合は料理語りってことで、ね、お願い」
パンと顔の前で合唱して頼み込むこいしに咲夜が先に折れた。
「分かりました。時間が空けば、フラン様と共に地霊殿に参りましょう」
「ほんと? やったぁ! これでお空もこのステーキを作れる……」
じゅるりとヨダレを啜るこいし。いや目の前のステーキ食べればいいじゃない。というツッコミは伏せておこう。
食事を終え、二人でフランの自室に戻った。
床には先程までの遊んでいたポーカーの痕跡があった。
フォーカードとロイヤルストレートフラッシュの計十枚のカードが残されており、こいしは若干顔を顰めた。
こいしはそんな記憶を消すようにフランに口を開いた。
「さてさて、お風呂はどうする?」
「え? 一緒に入るでしょ」
「え?」
当たり前のように発せられたその声に、こいしは言葉を失った。
フランに至っては「え? なんで別々に入るの?」みたいな顔をしていた。
「まさか、昨日みたいに別々に入ると思ったの?」
「う、うん……てっきり」
「ポーカーで勝ったのは私なんだから、こいしの身体は私のものでしょ?」
「言い方が不穏だけど……まぁいっかぁ」
半ば諦めていたこいしはもうフランの指示に従うしか無かった。
まぁぶっちゃけ、こういうのも悪くない。
もしかしたら、私はマゾ気質なのかもしれないとこいしは密かに危惧していた。
「や、やっぱり、裸ともなると、恥ずかしいね」
「今更何言ってるの。昨日見せあったじゃん」
昨日、地霊殿のベッドでお互い脱いだのはいいが、こいしはあの時はその場のテンションもあってか、抵抗はあまり無かった。
「だってフランの方が胸大きいし。なんか自信無くすんだよねぇ……」
ガラガラと風呂の戸を開けて、だだっ広い浴場に二人で入った。
二人は隣に座って、ほぼ同時に蛇口を捻る。
「そういえば、吸血鬼はシャワー大丈夫なんだね」
「うん、「流水」の概念を持たないただの「水」なら問題ないってパチュリーが言ってた」
「聡明だねぇ魔法使いって」
地霊殿に魔法使いがいないこともあって、魔法使いの利便性に驚くこいし。
フランにとっては当たり前の存在でも、周りからしたら珍しいという物に、フランは少しだけ優越感があった。
「そんなことより……」
チラリ……とフランがこいしをチラ見する。
そこには、お湯が全身にかかって、セミロングの髪がピタリと背中やうなじにへばり付いている。
フランにはそれが凄くつややかに見えた。
「こいしの肌って真っ白だね。綺麗……」
「フランだって負けてないんじゃない?」
こいしに比べ、フランは吸血鬼の癖に肌がこいしよりも少々黒い。
一般的にはどちらも色白だが、こいしはその中でも頭二つほど抜けて白いのだ。
「……ふぅーん……おっぱいもきれーだしねぇ」
「ぇひんっ」
ふにゅり。とフランがこいしの胸を人差し指でつつく。
変な声が出てしまったからか、それともフランに触られたからか分からないが、顔を真っ赤にしたこいしがフランを睨みつけていた。
「フーラーンー!?」
「あははっ、ごめんごめん。でも、やっぱりこいし、私と同じくらいじゃない?」
「何が?」
「大きさ。私BでこいしはAなのに、見た感じ大きさ一緒だから大きくしてもいいんじゃないかなって思って」
「あー、確かに最近Aのブラは少しだけキツかったりするんだよねぇ……」
こいしは自分のを触って確認してみる。
目視では自分でも分からないが、いざ触ってみると、こいしはその変化に気づいたらしい。
「うん、大きくなってる。今度Bのブラ買いに行こうよ」
「いいね、初デートは下着屋さんだ」
「わーい最高のデートスポットだー」
今まで友達として服屋や下着屋に行くことはあっても、恋人として下着屋に行くとなると、意味が変わってくる。
恋人にはその下着すらもさらけ出すのだ。なので、真面目に考えなければいけない。
以前まではサイズが合えば適当に選んでいた下着も今となっては真面目に悩むんだろうなぁ。と柄にもなく未来の想像をしてしまうこいし。
「……」
「フラン?」
「……えいっ」
「!?」
手を大きく広げ、こいしの胸を鷲掴みにしたフラン。
唐突なその行動に目を見開いて硬直してしまうこいし。耳まで真っ赤になっていて、フランにさらなる悪戯心をくすぐらせた。
モミモミと感触を楽しむように五本の指を動かしていく。
「……ぅ……」
「お、さすがこいし。話が分かるねぇ」
先程のポーカーで賭けた通り、今日のこいしの身体はフランのものなのだ。
抵抗しようにもそれは先程のフランとの賭けを無かったことにしてしまうので、大きく嫌がることは出来ない。
いや、こいし自身も満更でもないみたいで、嫌な顔ひとつしなかった。
「ぅう……恥ずかしいよぉ……」
「……んふふ……あっ、そうだ」
フランはその感触を十分に楽しんだ後、思い出したかのように風呂を出た。
「ふ、フラン?」
「ちょっとまってて、すぐ戻るから」
そう言ってフランはお風呂場を後にして、更衣室で何かゴソゴソと漁っていた。
「あった!」という声がした後、フランはとんでもない悪顔になって戻ってきた。
そして右手には
「フラン……その顔怖いよ?」
「こいし、今からあなたは……「四人」相手にしてもらうよ?」
「え、……えっ?」
言っている意味が分からない。
こいしはシャワーを持ちながらまたもや硬直した。
「禁忌「フォーオブアカインド」」
右手に持っていたスペルカードから光が発せられる。
お風呂場全体が眩い真っ赤な光で包み込まれ、こいしは思わず目を瞑る。
「……な、何してるのフラン?」
「……ふふふ……」
目を開けてフランの方を見る。
すると、スペルカードの効果でフランが四人に分身していた。
そこでこいしは、フランの意図を悟った。顔が真っ青になっていくのを感じる。
「ま、まさかフラン……」
「……はぁいこいし。私を感じて?」
一人がそう発言すると、隣に立っていた三人のフランが続くように「私も」「私も」「私も」と艶やかな笑みを作っていた。
「ま、待って……それはさすがにきつい……あ、ちょ……」
ゆっくりと、裸のフラン四人組が迫ってくる。
ここは天国なのか地獄なのか、こいしには判断ができないほど頭がショートしていた。
「ちょ、あっ、……ぁぁぁぁ……」
フランとこいしが入った後にレミリアは入ろうと思っていたのだが、お風呂場が空いたのは結局二時間後くらいで、レミリアは堪忍袋の緒が切れた。
お風呂場で鬼のような形相のレミリアに正座させられるフラン×4とこいしであった。
「うぅ……まだ足が痺れてるよぉ……」
ようやくお姉ちゃんの説教から解放された私達はお風呂場で体を拭いて、寝巻きに着替え、廊下を歩いていた。
フォーオブアカインドも解除され、私とこいしの二人になっていた。
「そういうことは部屋でやりなさぁぁあい!!」というお姉ちゃんの怒りから三十分ほどのお説教が待ち受けていた。
大理石の床に三十分正座させられるのは誰でも辛いと思う。
「というか、こいし。さとりに言わなくてよかったの?」
「ん? 何が?」
「今日泊まる気でいたの?」
「あぁ、お燐に「今日もしかしたら紅魔館に泊まるかも」って伝えといたから、多分大丈夫だよ」
「ならいいけど……まさかパジャマまで持ってくるとは……」
こいしは白色のTシャツ一枚だった。
そのTシャツのサイズが大きいからか、下半身は下着以外何も着ていなかった。誘ってるじゃんこれ。
かくいう私も下着の上に透けないタイプのベビードールなので、あまり変わらないだろう。
自室に着くと、私はボブっと自分のベッドに飛び込んむ。
「さて、もう寝る?」
「寝かせる気ないくせに」
「まぁ、そうだね。じゃあこいし……おいで?」
「……ぅん」
ベッドの上で私は両手を広げる。こいしは恥ずかしそうに目を逸らしながらも、フランの胸に飛び込んだ。
ぎゅぅっと強く抱き締めているこいしの頭を優しく撫でた。
「今日、レミリアちゃんに認めてもらえて、ほんとに嬉しかった……」
「そうだね……」
「それでね。今日、レミリアちゃんの気持ちを知れたじゃない?」
「……うん」
こいしの声が少しずつ不安げになっていた。
「レミリアちゃんもフランの事好きだって言ってたからさ……」
「あの時は衝撃だったね……」
薄暗い部屋の中、こいしの表情は見えないが、少し体が震えてるのがわかった。
「もしかしたら、フランがいなくなっちゃうんじゃないかって……怖かった」
「……」
「まだ、フランの中でレミリアちゃんが大切な存在なのは分かってたけど…………こうして、フランは私を選んでくれて……嬉しかったよ?」
こいしが私の胸から顔を出して、上目遣いで私を見つめる。
碧眼が少し潤っていて、なんとも可愛らしい瞳に私は顔が熱くなるのを感じた。
こいしがそんなに不安がっていたとは思いもしなかった。
確かに、今日のお昼は私も心が揺れたのは事実だ。お姉ちゃんの気持ちを知れて、嬉しかった。
でも、その気持ちを知れた時にはもう、私の中はこいしでいっぱいだった。
そんなこいしに私は本心を伝えるため、口を開いた。
「……私の好きな人は……もう、こいしだけだよ」
「……」
「もう、私はこいししか見えない。こいししか愛せない。だから……そんな顔しないで」
「フラン……」
出来るだけ優しく、こいしに笑いかける。
こいしはそんな私の顔を確認したあと、もう一度私の胸に顔を埋めた。
表情は見えないが、耳は薄暗い部屋でも分かるほどかなり赤かった。
「……その顔はずるいよ……フラン……」
「……そんな変な顔だったかな……」
「……私の好きな人が、フランで良かった」
そんなこいしの一言が私にとってどれだけ優しかったことだろう。
今まで、レミリアお姉ちゃん一筋だった私が、こうして親友と愛を確かめあっている。
今思うと、私は最低な奴だったのかもって少し嫌気がさすかもしれない。軽い女だって、そう思ってしまうかもしれない。
でも、後悔はない。
そう思えたのは間違いなくこいしとレミリアお姉ちゃんのおかげだって、確信を持って言える。
「んっ……」
こいしがもう一度顔を上げて、目を閉じていた。
可愛らしい唇がキスを求めるように私に近づいてきていた。
私はそれを受け止めるかのように、優しく口付けをした。
昨日とは全く違う。
お姉ちゃんが頭の片隅にいて、悶々としていた昨日のキスとは別物だった。
思う存分、こいしを感じることが出来る。
思う存分、こいしを触ることが出来る。
思う存分……こいしを貪ることが出来る。
その感情が更に私の興奮を助長して、すぐさま舌を口の中に入れた。
「んっ……じゅる……ちゅぅ」
「ふら……んぅ……しゅ……きぃ……」
「わらひ……も……んちゅ……好きだよ……」
互いに唇を求め合う中で必死に想いを伝えた。
もう、口に出していないと、幸せが溢れてしまいそうで、目の前にいる彼女に私の幸せを共有したい。
私の手はいつの間にかこいしの身体に伸びていた。
くびれを人差し指なぞるようにつーっと這わせる。その度にこいしの身体が強ばるその反応が可愛くて仕方がない。
こいしの全てが可愛らしい。
こいしの全てが欲しい。
こいしの全てが愛おしい。
「こいし……今日は……朝まで……ね……」
「……ぅん……頑張る……」
もう、我慢できなかった。
こいしのそんな表情を見てしまうと、私の中にある理性が全て吹っ飛んだ。
まるで決壊したダムのように、私の想いが流れ出していた。
そんな私の想いと幸せを、こいしは全部受け止めてくれた。
「……今……何時ぃ……」
結局、空が明るくなるまで捗ってしまった。
それほどまで、お互いの感情が昂っていたということなのだ。
裸のまま添い寝して、疲れきった表情で目を擦る。
「おはよ。フラン」
「んぅ……おはよぉ……」
こいしの方は完全に目が覚めていたようで、昨日来ていた白のTシャツを着ていた。
両手には湯気がたっているマグカップを持ってベッドの隣にあった椅子に座っていた。
「ちなみに今はもうお昼だよ。咲夜さんは気を利かせてくれて、遅起きは許してくれてたよ」
朝方に来た咲夜をほぼ裸のこいしが応対してくれたともなると、初心な咲夜もきっと慌てたんだろうな。
「こいし……今日あんまり寝てないんじゃない?」
「そんな事ないよ。覚妖怪の睡眠時間は短いんだ」
「そんな設定あったんだね……」
私はベッドの端に脱ぎ捨てられていたベビードールを取って、身に纏う。
カーテンの隙間から差し込む太陽の光の強さからして、今は本当にお昼なんだろう。
「ダメだ……腰痛い……」
昨日、色々な体勢でしていたので、全身という全身が悲鳴をあげている。
特に腰、吸血鬼とあろうものが筋肉痛とは、余程集中してしまっていたんだろう。
「それよりもさ、フラン」
「ん? どうしたの?」
こいしはマグカップの中のコーヒーを飲んだあと、真剣な眼差しで私を見つめた。
「ポーカーのやつって、昨日までだよね?」
「まぁ、もう効果は切れてるけど」
「じゃあさ……」
この後のこいしの言葉に私は言葉を失った。
「今からするのは、私が攻めでいい?」
「……待ってよ」
状況が整理できない。
いや、頭の中でその状況を考えようとしていない。拒絶反応が起きている。
「い、今から? 今からまたするの?」
「うん。だって昨日はフランばっかでさ。楽しかったけど、やっぱり物足りなくて」
当たり前のようにキョトンとした顔で笑うこいし。やだその顔可愛い。
「私身体痛いって言ったよね?」
「でも、昨日も私が休憩しようって言ったのに休ませてくれなかったじゃん」
「う……」
昨日は理性が飛んでいたので、こいしの「休憩したい」という要望すら無視していた。
その度にこいしが頬を膨らませて睨みつけていたから、余計に興奮してしまっていたのだ。仕方ない。
「じゃあ、私がいただいちゃっていい?」
こいしがTシャツを脱いだ。
そして、ズカズカとベッドに座っている私に迫ってくる。
「わ、わかった。一回落ち着こ? ね? まだお昼だしさ……」
「関係ないよ。私がえっちしたい時なんだから、昼も夜も関係ない」
「……や、ちょ、待って……あっ、いゃあぁぁぁぁ」
今日の昼頃、窓を全て開けていた紅魔館から幼さも感じられるが、少し色っぽい喘ぎ声が聞こえてきて、来客の霊夢と魔理沙がいた大図書館は少し気まずかった。
そして、紅魔館当主は「いつまでやってんのよぉおおおおおぉ!!」と怒り狂い、私とこいしは一時間正座の刑を下された。
そんなハチャメチャな紅魔館がいつしか日常となっていた。
こいしとフランがところ構わずイチャイチャしだして、それをレミリアがお説教をする。
たまに来る来客もそんな三人のやり取りを微笑ましく見ていた。
覚妖怪と吸血鬼。
そんな二人が幸せな恋人生活を送る日常を記すには、まだ序の口である。
end……
この後、こいフラのアフターストーリー書きます。
そして、ラストカップリングのレミリア×こいしのストーリーを書きます。
実はまだ構成が定まっていないので、色々時間かかると思いますが、よろしくお願いいたします。
では、こいフラ編見ていただき、ありがとうございました。
新しく書いて欲しいエンドはありますか?※一話完結
-
3人とも報われないバッドエンド
-
3人とも平和的なハッピーエンド
-
3人に恋愛感情がないほのぼのエンド