フランがシスコン過ぎて困っています   作:かくてる

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遅くなってすみません。

レミこいルートです。


分岐 : たった一度の一途な恋
分岐ルート1話 友人という関係


「……」

 

 フランが永遠亭から飛び出して数十分が経過した。

 私の中で、まだ心の整理がついていない。なんて言うのは、ただの言い訳かもしれない。

 一時の快楽を求め、フランに思わせぶりな態度をとった私にすべての責任がある。

 

 生き物は、快楽に依存してしまう特性がある。食欲を満たす快楽、睡眠欲を貪る快楽、そして、性欲を弄ぶ快楽。

 

 ただそれらを求めるには、必ず何かを代償としてしまうことがある。

 そして、私の欲求を満たすために代償としてしまったのが「(フラン)」なのである。

 なんて軽はずみな行動をしてしまったのだろうか。なんてくだらない思考を持っていたのだろうか。

 ただただ自分の情けなさ、不甲斐なさでいっぱいになる。

 

 これを「罪悪感」と言うのだろうか。

 なんて、ポエムっぽいこと言っていれば心が落ち着くと思っていたのに、何ら変わりがない。

 

「……お嬢様」

 

 咲夜の顔は酷く歪んでいた。

 その顔を見れば、どんな考えをしているか、それがわかってしまうくらい。

 

「妹様は……」

「……完全に私のせいよ。仮に妹とはいえ、純粋に好意を向けてくれたのに、それを無下にしたんだもの」

「……そう、ですか」

 

 口にすれば、更なる罪悪感が私を支配する。

 一つの病室とは思えない思い空気が張り詰める中、私は両手に強く握り拳を作り、昨日まで私が使っていたベッドに座る。

 咲夜は扉の横で姿勢よく立っていた。

 

「この際、お嬢様のお気持ちを整理してみてはどうですか?」

「私の……気持ち」

「はい、お嬢様が今、想いを向けているこいしさんのこと、そして、妹様のこと。そうすればきっと、お嬢様が次に取るべき行動がはっきりとするはずです」

「……そうね」

 

 まず、フランのこと。

 やっぱり彼女は私の妹だ。

 恋愛的に見ることは、今の私には正直出来そうにない。

 ただ、私はフランのことを世界で一番大切に、そして愛していた。

 気づいたらフランが隣にいて、当たり前のようにフランがそばにいる日常を過ごしていた。

 恋人。そんな肩書きにフランと共に塗り替えられるのなら、それも悪くないのかもしれない。

 

 

 そして、私は、こいしのことを思い出す。

 

 

 

 ────

 

 紅霧異変を起こし、フランが活発に外に出てくれるようになった頃。

 紅霧異変後も咲夜や他の面々の異変解決のおかげで、永遠に終わらない冬や下から飛び出る怨霊達の異変も解決されている。

 

 私はいつものようにバルコニーでお茶をして、時間を持て余す。

 暇だ。この時間はいつもフランとレクリエーションをするか、パチェの図書館で本を読むか、外に出て、博麗神社に向かうか。それくらいしかやることがない。

 

「咲夜、フラン見てない?」

 

 私は、夕飯の準備のために食堂へ向かおうとした咲夜に声をかける。

 

「妹様はご友人と遊びに行くと、今日の午前中から外に出ていらっしゃいますよ」

「……友人?」

 

 あの子、いつの間に友人なんて作っていたのだろう。

 確かに、ここ最近、フランが紅魔館にこもっていることは少なくなった。と言うより、ほぼ無くなった。

 

 意外と観察眼の鋭いフランは一目で信頼に値するかどうかを判断する能力を持っている。

 そんなフランが友人を作るとは思わなかった。

 そう不思議に思っていると、玄関の扉が開いた。

 

「お姉様! ただいまっ」

「お、お邪魔、しますっ」

 

 二人の幼い声が聞こえた。

 いつもは前者のみの声だが、今日は二つ目の別の声が私の耳に届く。

 

「あら、おかえり、フラン……その子は?」

 

 薄い緑色がかかった銀髪のセミロング。

 黒色の帽子に可愛らしい黄色のリボン。そして、フリルが使われた緑色の襟首とスカート。

 フランと身長はさほど上下せず、フランよりもほんの少しだけ高いくらいの少女。

 

「え、えとっ、古明地、こいしです。よろしくお願いします」

「前に人里で会って、仲良くなったんだ」

「へぇ、よろしくね。こいし。私はこの子の姉、レミリア・スカーレットよ」

「は、はい! よろしくお願いします……えと、レミリアさん」

 

 私は右手を差し出し、こいしと握手を交わす。

 見た感じ、あまりフランのように元気が溢れるような子では無いようだ。

 ……いや、違う。

 

(この子、自分の素を封じ込めてるわね)

 

 もしかしたら、フランと似たところが多いのかもしれない。

 というのも、フランも以前まではこんなに活発な子ではなかった。

 自分がいると迷惑になる。足でまといになる。吸血鬼ハンターに追われている時から、その節があった。

 今となってはこんなにも元気になってくれているが、一時期は心配もしたものだ。

 

「……」

「ね、お姉様。今日は私の部屋でこいしちゃんと遊んでいい?」

「ええ、いいわよ」

「やったっ、行こ、こいしちゃん」

「う、うん」

「……へぇ」

 

 どうやら、フランにだけは少しだけ心を開いているみたいだ。

 初対面に緊張する生き物は珍しくはない。ただ、こいしのように本心を丸ごと隠している者は珍しい。

 ただ、その封印はフランにのみ解けているようだ。

 

「ねね、お姉様も後で来てよ。いい? こいしちゃん」

「うん」

「分かったわ。お邪魔させてもらうわね」

 

 そう言って、二人はフランの部屋に消えていった。

 さて、と思った私は少し散歩をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 散歩から帰ったあと、玄関の前で待っていたのはフランだった。

 

「おかえり、お姉様。どこに行ってたの?」

「散歩よ。それで、どうしたの?」

「今から3人でババ抜きをやろうって話になったの。やらない?」

「いいわよ」

「今私こいしちゃんに4連敗してるんだよねぇ」

「フランは前から運悪いものね」

 

 そんな会話をしていると、いつの間にかフランの部屋に着き、そこにはトランプをシャッフルしているこいしがいた。

 

「こいし、お邪魔するわね」

「は、はい。どうぞ」

「さてさて、ババ抜きの続きをやろうかっ」

「こいしはどうだったの?」

 

 さりげなく、こいしとの会話を図る。こいしは話しかけられるとは思わなかったのか、多少慌てた様子で私の質問に返そうと必死に思考をめぐらせていた。

 

「あ、え、えと……今のところ4連勝……してます……」

「すごいじゃない。フランの運が悪いのもあるけど、こいし自身も強運なんじゃないかしら?」

「あ、ありがとうございます……」

「むぅ、私そんなに悪運じゃないもん」

「はいはい、こいしがシャッフルしてくれたから、配るわよ」

 

 そう言って、私達はババ抜きを始めた。

 案の定、フランの手札にはほぼ八割がたジョーカーを手にしている時間があった。

 

「……フラン。あなた顔に出すぎよ」

「い、いやっ、じ、ジョーカーなんて引いてないし……ほ、ほら、お姉様が引いてっ」

「……」

 

 フランの手札から一枚のカードに指をかける。

 

「……ひぅ」

 

 少し悩み、今度は右隣のカードに指をかける。

 

「……わぁ」

「いや顔に出すぎよ」

 

 二枚目に手をつけたカードが確実にジョーカーだ。ここまでわかりやすいと、こいしの4連勝も納得である。

 

「え、そ、そうかな」

「ええ、ね、こいし」

「は、はい。そうです……」

 

 まだ私に少しだけ緊張しているみたいで、フランと話す時よりもよそよそしいというかなんというか。

 まぁ、会って間もないのに馴れ馴れしく話す方が難しいので、これが普通の反応なのだろう。

 

 

 結局、こいしが一抜けで私が二番目、フランがババ持ちで五戦目は終了した。

 

「どぉーして勝てないのよぉ」

「自覚ないのもびっくりよフラン」

「あ、あはは……」

「さて、次はどうする?」

「あ、ごめんなさい、と、トイレ行ってきていいですか?」

 

 こいしが引っ込み気味に手を挙げた。

 

「ええ、右行って突き当りね」

「ありがとう、ございます」

 

 そう言って、そそくさと部屋をあとにしたこいし。

 部屋に残された私達は散らばったトランプをまとめていた。

 

「さて、お姉様。イチャイチャする?」

「嫌。それよりも、こいしのこと聞かせてちょうだい」

「そ、即答だったね……えと、こいしちゃんのこと?」

「ええ、どんな妖怪なのかとか、フランが友達としてあの子を連れてきたということは余程信用が出来るようだけど……」

 

 別にこいしを疑っている訳では無いが、フランが少し引っ込み思案な彼女と仲良くなるのが少しばかり珍しいと感じただけだ。フランはそれも汲み取ってくれていると思う。

 フランは少し微笑むと、トランプを床に置いた。

 

「……こいしちゃんね、覚妖怪っていう、心を読むことが出来る妖怪らしいんだ」

「ああ、胸にあった目はそういうことなのね」

「そう。でも、覚妖怪って言うのは世間から見たらかなり気味悪がられててさ」

「それは納得だわ。勝手に心の中を読まれたら溜まったものじゃないもの」

「それだけならいいんだけど、直接言葉をぶつけられたり、挙句の果てには暴力でこいしちゃんを殺そうとする奴らもいたみたい」

 

 フランが悲しそうに握りこぶしを作る。

 

「こいしちゃんにはお姉ちゃんがいるの。お姉ちゃんと一緒に幻想郷に来たんだけど、暴力はなくとも、心の中で自分たちを蔑まれていてさ」

「……幻想郷でも?」

「そう、それで、傷ついて傷心しきってるこいしちゃんと人里で会ってさ、なんだか、私と境遇が似てる気がして」

 

 少し照れるように微笑むフラン。私はそれを黙って聞いていた。

 

「人から恐れられていて、優しいお姉ちゃんがいて、一度はこの世界に失望して……なんて、大袈裟かもしれないけど、私はこいしちゃんを助けたいって思った」

「……そう」

「それに、こいしちゃんも本当は元気で優しい子なんだよ。今は、色々と壁があって、静かになっちゃってるけど、きっと、お姉様とも仲良くなれる気がする」

「……」

 

 私はフランの話が終わると、大きくため息をついた。

 それは呆れでも悔いでもない。フランに対しての感嘆のため息だった。

 

「成長したのね、フラン。姉として誇らしいわ」

 

 フランが自ら、他人を助けたいとそう思えることに私は何よりも喜びを感じた。

 そして、右手でフランの金色の髪をクシャッと撫でる。するとフランの顔は「にへへ……」と綻ばせていた。

 

「……きっと辛い過去があったのね、こいしにも」

「うん」

「いつかきっと、こいしも素をさらけ出してくれるように頑張りましょうか」

 

 今日初めて会った子にここまで全力を尽くそうと思えたのは、なぜなのか、未だに分からない。

 多分きっと、フランが連れてきた助けたいと思える人物だったからだろう。

 ちょうどその時、こいしがゆっくりと部屋に戻ってきた。

 

「さてさて、次は七並べやろ!」

「……フランちゃん、弱そう」

「こいしちゃん!? せめて応援してくれない!?」

 

 そんな感じで、少しずつこいしもこの環境に慣れ始めて、口数が増えたのは、もう日が暮れる前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っはぁー! 楽しかったぁ……」

「熱中しすぎよフラン……いつもより全力だったような……」

「つ、疲れた……」

「むぅ、いいじゃん。二人して勝ちまくっちゃうんだもん。強すぎるんだよ二人とも!」

「いやあなたが弱いだけでしょう」

 

 呆れたようにため息をつく私と、苦笑いをするこいし。

 外を見ると、いつの間にか日が暮れていた。

 

「あら、もうこんな時間なのね」

 

 懐中時計を見るともうすぐ6時半を回るところだった。

 

「あ、もう帰ります」

 

 こいしが控えめにそう言うと、同時にフランも立ち上がる。

 

「じゃあ私送ってくるよ」

「ええ、そうしなさい」

 

 そうして私達は三人で玄関へと歩いていく。

 玄関を開けた瞬間に、フランが申し訳なさそうに口を開いた。

 

「ご、ごめん! トイレ行かせてくれない?」

「え? うん。分かった」

「ごめんねっ、ありがと」

 

 そう言うと、フランは少し足早にトイレへと向かった。

 

「……」

「……」

 

 そこからは私とこいしの気まずい時間が訪れた。互いに何を話していいのか分からず、チラチラ見るだけである。

 

「「あのっ」」

 

 案の定、声をかけるタイミングが被ってしまう。

 

「あ、ああ、ごめんなさい。こいしから話していいわよ」

「あ、はい……えと、フランちゃんってどういう人なんですか?」

「どんな人? うーん、そうねぇ」

 

 やはり、フランを一番近い距離で接してきた私からフランの事を聞きたいのだろう。

 フランが一体どういう人柄で他の人と関わるのか。

 

「あの子、少し前までは身内以外との関係を一切断ってたのよ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、なんなら、こいし。あなたが初めての友達よ」

「えっ」

「あの子は何もかもを破壊できる能力を持っているの」

 

 瞬間、こいしの顔が驚きから恐怖へと変わっていった。あの子、こいしには話していなかったんだろうか。

 

「それで、フランは自ら、外への干渉の一切を遮断した」

 

 今となっては、忌々しい思い出である。私にもっと力があれば、フランをもっと早くに救うことが出来たなら、今のような幸せが早期にやってきたかもしれないのに。

 

「今のフランはそれを制御出来るようになって、人を傷つけることは無くなった。でも、心に大きな乱れがあると、たまに我を失うほどの狂気に侵されることもあるの」

「ほ、ほんとですか!?」

「でも今は精神も安定してるから、あまり心配はいらないの」

「よ、良かった……」

 

 その言葉は自分の身を案ずるものなのか、それとも、フランが幸せな生活を送れることに対するものなのか、どうか、後者であって欲しい。

 気になった私は思わず聞いてしまった。

 

「良かった……?」

 

 するとこいしは安堵しきった表情で即答した。

 

「はい、だってフランちゃんは今この瞬間を幸せに過ごせていると思うと私も嬉しいですから」

「……そう」

 

 私は思わず泣きそうになってしまった。この子はなんていい子なのだろう。と、心の中でこいしを絶賛する。

 

「フランも良い友達を持ったわね」

「い、いえ……そんな……私も、フランちゃんに救われた身ですから」

 

 照れるように手をブンブンと左右に振るこいし。

 

「ごめんなさい。フランからあなたの過去……聞いたわ」

「……そう、ですか」

 

 少しだけ、こいしの顔が曇る。

 やはり、こいし本人もあまり思い出したくない事情なのだろうと、表情を見れば一瞬でわかった。

 

「あなたも……辛かったのね」

「いえ、レミリアさんやフランちゃんに比べたら、可愛いものですよ」

「そんなわけない。こいし、あなたは一人で苦しんでたのよ。私はフランと一緒にいたから、乗り越えられた。でもあなたは姉にも頼らずに、自分で悩んで、苦しんで、それでも報われない。そんなこと……あっていいはずがないのよ……」

「レミリアさん……」

 

 いつの間にか、私は思ったことが全て口に出るようになってしまった。

 それも仕方ない。こんなに幼い少女が、私よりも数百歳は年下の彼女が、私よりも辛い苦しみを味わっていいはずがないのだ。

 私は無意識に彼女を救いたいと思った。どうしてか、それは今も分からない。

 

「……もし、良かったら、私とも友達になってくれないかしら?」

「……レミリアさん……」

「恥ずかしいけど、私も友達はあまり多くないのよ。だから、こいしとも仲良くしたくて……」

 

 苦笑いをして、右手を差し出す。

 私も、フランほどじゃないが似たような境遇だ。霊夢や魔理沙、その他の妖怪しか仲良く話せる人物は身内以外にはいない。

 一時は呆然と私を見ているだけだったが、少しするとこいしは今日一番の笑顔を見せて笑った。

 

「……わかりました……ううん、わかった。レミリアちゃんっ」

「……ッ」

 

 心臓が一度、大きく跳ねた気がした。いや、実際跳ねたと思う。

 心なしか顔も少し熱い気がする。

 

「? ……どうしたの?」

「い、いや、なんでもないわ。じゃあ、よろしくね。こいし」

「……う、うん。よろしく」

 

 まだ、この時はよそよそしかったと思う。

 友達になったと言えど、直ぐに仲良くなる訳では無いので、最初はフランを入れての三人で遊ぶことが多かった。

 

 そしてたまに、私とこいしの二人で遊ぶこともあった。

 

「あ、おはよー! レミリアちゃん」

「ええ、おはよう、こいし」

 

 気づいたらもう、こいしは自分の素を隠さなくなっていた。これはきっと、フランのおかげだと思っている。

 いや実際そうなのだろう。

 

「さて、今日はどこに行く?」

「うーん、お腹空いたのよねぇ……」

「あ、じゃああそこのオムライス屋さん食べに行かない? 前にお姉ちゃんが絶賛してたんだけど」

「お、いいわね名案だわ。行きましょう?」

「やったっ、いこいこっ」

 

 こんな風に私はこいしとの仲を深めていっていた。

 初めは妹と私の共通の友達として仲良くなっていた。私も、それが楽しいと思っていた。

 そしたら、いつの間にか、どうしてか。

 

 

 

 

 

 

 

 私はこいしに、惚れていた。

新しく書いて欲しいエンドはありますか?※一話完結

  • 3人とも報われないバッドエンド
  • 3人とも平和的なハッピーエンド
  • 3人に恋愛感情がないほのぼのエンド
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