色々立て込んでました。
あけましておめでとうございます!
今年もゆっくりですが執筆頑張っていきますので、見捨てないでください!
「……」
気持ちの整理をするつもりが、余計に雲がかかってしまった。
フランのことを思うと、胸が締め付けられるように苦しい。
散々フランを苦しめた私に幸せになる権利なんかあるのか?
一つの疑問が私の頭を駆け巡る。
これはきっと、私への罰なんだろう。罪なんだろう。そう自己解決してしまえば、どれだけ楽なんだろうか。
「私」はなんて強欲な生き物なんだろうか。
人の幸せを奪ってもなお、自分の幸せを掴み取ろうとしているのだ。
「お嬢様……」
「咲夜。私って、こんなに醜い生き物だったの?」
「そんなことはございません」
「でも……! たった一人の妹を傷つけるようなことをしておいて、それでも好きな人のことを考えてしまう下衆な生き物のよ?!」
自分の胸を強く握り、唇を噛み締める。
視界がぼやけて、ぽたぽたと自分の服を濡らしていく。
涙は全てを洗い流してくれる、なんて言うのは明らかな迷信だと今ここで実感できた。
なぜなら、今、私という者が泣いていても、私の後悔と自分への失望は洗い流されないから。
下を向き、両手で顔を隠し、さらに涙を流す。
「う、っ……」
「……」
突如、私は何か暖かいものに包まれたような気がして、目を見開く。
「さ、咲夜……?」
「これ以上、自分を責めるのはおやめ下さい」
強く抱きしめられた私は状況を理解できず、何も言葉を発さなかった。
しかし、それとは反して、咲夜は口を開き、優しく、包み込むように話し始めた。
「いいですかお嬢様。たとえ、あなたが妹様を傷つけてしまって、それでもこいしさんのことを想い続けてしまっていても、私はあなたの味方です」
「……」
「それに、妹様にもきちんと話せば分かってくれるはずです。今は一時的なショックで心を閉ざしてしまっていますが、今後のお嬢様の行動次第で妹様もお嬢様も幸せになれるはずです」
「咲夜……」
咲夜の言葉に説得力があったかと言われればそうでもなかったのかもしれない。ただ、私を勇気付けるには十分すぎる言葉だった。
私は咲夜の腕の中で小さく深呼吸をして、顔を上げた。もう涙は流れなかった。
「……ありがとう、咲夜。やっぱりあなたは自慢の従者よ」
「勿体ないお言葉です。さぁ、行ってください」
「……ええ」
私はいつもの服に着替え、縁側まで歩いていった。
その隣で咲夜は優しく微笑んでいた。いや、微笑んではいたが心のどこかでは不安を感じているのを確かに感知した。
そしてそれが的中したかのように、咲夜はその不安を口に出した。
「お嬢様、どうか、貴方も妹様もこいし様も……誰もが幸せになれる選択肢を……」
「ええ……ありがとう」
そう言って、私は永遠亭を飛び出した。
──────
「こいしちゃん……」
「返事……欲しいな」
私の告白に、フランちゃんは少し驚きを隠せずにいた。
私は、ありのままの想いを全て伝えた。フランちゃんを一生かけて幸せにしたい。その想いだけを強く感じながら。
「まだ、迷ってるよね?」
「……」
「……フランちゃんの中にまだレミリアちゃんがいるのは分かってるよ。レミリアちゃんが好きで好きでたまらないんだよね?」
「……」
「それならそう言って欲しい。まだフランちゃんがレミリアちゃんを諦めていないのなら、今ここで振って欲しい」
「……」
私は、どんな答えが返ってきても後悔はしない。このままもし、フランちゃんがレミリアちゃんを追い続けても、私は今日この日に告白したことを後悔はしないと思うから。
フランちゃんと過ごした期間はかけがえのないものであることにも変わりはない。恋人になってもならなくても、今までの思い出が色褪せたりなんかしない。
だから、私はどんな結末であっても、幸せに過ごせるような選択肢を選ぶ。
フランちゃんの顔はとても悲しそうに、それでも決意したような、そんな雰囲気を漂わせていた。
そうしてフランちゃんは口を開けた。
「……ごめんね」
「……」
分かってはいたのに、半分期待していた私がいた。
もしかしたらフランちゃんが私を受け入れてくれるのかも、私に笑顔を向けてくれるかも。
ただ、それは私の期待だけの、私の夢物語。
結局、生き物は自分が幸せでないと満足ができないのだ。
他人の幸せが私の幸せ、なんてそんな綺麗事並べていてもただただ滑稽なだけだ。
その幸せがただ、その他人の幸せと一致しているから、お互いを愛す事で幸せを得られる。
フランちゃんの幸せと、私の幸せは違う方向を向いていただけだ。
「……そっか」
「……ごめんね……こいしちゃん……やっぱりまだお姉様の事、諦めたくない……」
フランちゃんの涙は留まることを知らず、大粒となってフランちゃんのスカートを濡らす。
それでも私は笑顔を絶やしたりしない。
ここで私が泣いてしまえば、全てが無駄になる。フランちゃんの全てを奪いたくなる。
「……分かった。ありがとう、フランちゃん。話を聞いてくれて」
「……」
それならもう、私の役目は終わった。
これ以上、レミリアちゃんとフランちゃんの仲に干渉する訳にもいかない。
なぜなら、私が伝えたい想いは全て伝えたから。これ以上、フランちゃんに望むものもないから。
それならもう、私は彼女を応援する方を選ぶ。
一度深呼吸をして、笑顔を作り直して。
「さて、それなら、レミリアちゃんもフランちゃんを探してる頃じゃない?」
「……うん」
「そうとなったら探さなくちゃ。きっとレミリアちゃんも君を傷つけてしまったことを後悔してる。一度会って話さなくちゃ」
「……そう、だね。ありがとう、こいしちゃん」
「うん、お易い御用だよ」
きっと、これが最善なんだろう。
もうこれ以上、私は踏み込めないから、こうしてフランちゃんの話を聞いてあげる。役得じゃないか。
「あの……こいしちゃん……」
「ん?」
心配そうに私を見つめるフランちゃん。心配と不安が入り交じった声はとても可愛らしかった。
「この先、どんな事があってもさ」
「うん」
「ずっと……」
フランちゃんは逸らした目をもう一度私に向けて、
「ずっと、親友でいようね?」
その言葉はずるいと思う。
また、フランちゃんを奪いたくなってしまうだろう。フランちゃんを私だけの物にしたいのに。結局それは叶わない。
「あははっ、そんなの当たり前だよ。私たちは、ずっと親友だから。ね?」
「う、うん!」
「ほら行った行った、なんか人里でレミリアちゃんらしき気配がするよ」
「ありがとう、こいしちゃん」
最後にそう言い残すとフランちゃんはベンチから立って人里へと向かっていった。
「……はぁ、振られちゃったなぁ……」
「そのようね。こいし」
「……っ!?」
独り言を言っていると、横から聞き覚えのある澄んだ声が耳に届く。
驚きを隠せず、ベンチから飛び上がり、声の主の方を向くと、青紫の髪をなびかせる少女がいた。
「……レミリアちゃん」
「久しぶり、かしら、こいし」
レミリアちゃんの顔は久しぶりに会った友人に見せる喜びの表情では決してなかった。
逆に少し悲しげに私を憐れむかのような、寂しい表情が見受けられた。
「そうだね、一週間以上会、ってなかったもんね」
「……ごめんなさい。さっきのフランとの話、少しだけ聞いちゃったわ」
そう、レミリアちゃんは私に言った。
──────
「はぁ……はぁ……」
フランが向かったであろう、人里へ向かった。
飛んで探しても良かったが、見つかって逃げられるのも面倒だ、気配を消して歩いて探すしかない。
「ったく……どこにいるのよ……」
早く、フランと話がしたい。
心の整理がついた訳では無い。多分、フランと会うと更なる混乱が起こり、逆効果の可能性もある。
でも、一刻も早くフランと話をしなければならない気がした。
「……ん?」
一瞬、フランの気配を感じた気がした。
そんな僅かな可能性にかけて、小さな気配を辿っていく。
そこは人里の外れで滅多に人の来るところではないような、寂れた公園。
「フラン……と、こいし?」
フランをようやく見つけたと思ったら、どうやらこいしと一緒のようだ。
「しかもなんだかあの二人……距離近くないかしら」
妙な不安を覚えた私は気配を消して近づいていく。すると少しずつ、二人の会話が鮮明に聞こえてくるようになった。
(フラン……泣いているの……?)
嗚咽をしながら、こいしに自分の心の内を明けるフラン。
私はそれを、全て聞いた。
一言一句逃さないように、フランの心を全て知るために。
(……そういうこと……だったのね)
私は近くにあった木にもたれ掛かり、そのままその場で座り込む。その時だった、あの子が望んでいた言葉が私の耳に届いてしまうのは。
「……私はお姉様と結ばれたかった……!」
「っ……」
その言葉はいつもの軽い告白とは違い、フランの必死な思いと、努力が詰められている気がした。いや、きっとそうだ。
この言葉をいわなきゃいけないくらい、私はフランを追い込んでいたということを嫌でも理解してしまった。
実の姉と恋人になりたい。
世間一般ではこれはおかしいことなのだろう。
だが、世間一般なんて言葉は吸血鬼には通用するわけが無い。
だったら、女の子として?
女の子は男の子と恋愛しなきゃいけないなんてルールはない。
私たちが変な訳では無い。私たちが好きになった人がたまたま女の子だっただけだ。
もし、こいしの性別が男の子でも、私はきっとこいしに惚れていた。
私たちは性別に惚れているんじゃない。女の子に惚れているんじゃない。
こいしという一個人、フランという一個人、私という一個人に惚れているんだ。
そう考えてしまえば、フランの言葉は私に重く刺さった。
私はこいしを一途に想ってきた自信があった。なのに、今になって、それが揺らぎ始めているのが分かる。
ああ、そうか。そういうことか。
私は、
「フランのことも……好きなのね……」
ずっと目を背けてきた。妹だから、いちばん身近な存在だから、私はフランの想いの重さも理解せず、ましてや自分の気持ちにすら向き合えなかった。
ああ、やっぱり。私はなんて醜い生き物なんだろう。
同時に二人も好きになるなんて、なんて強欲で、我儘で、傲慢なんだろうか。
でも何故だろうか。後悔は不思議と感じない。たった今自分が酷いことをしている事が明らかになったのに、どうしてか、それに後悔はしていない。
むしろ、今自分の気持ちに気づけたことが何よりも嬉しい。
全ての曇りが晴れた今、私が選ぶ選択肢がはっきりと一本道へと変わった。
──────
「あ、あはは……聞かれてたんだね。ちょっと、恥ずかしいな」
「……」
フランは今、私を探しているんだろう。もうこの近くに、フランの気配は無い。
「……こいし……」
「君が、フランちゃんを幸せにしてあげてね。私はずっと応援してる」
こいしの声は少し震えていた。
こいし自身、きっと覚悟は決めていたはずだ。フランに振られるならばそれも仕方が無いと、そうしたら、私とフランの仲を応援できるように。
「……」
「姉妹だからって、関係ないよ。フランちゃんは姉としてのあなたじゃなくて、一人の女の子として、レミリアちゃんを好きになったんだよ」
「……」
「それに、レミリアちゃんだって本当はフランちゃんのこと、大好きでしょ? 恋人になりたいって、思ってるでしょ?」
こいしの目からは涙がボロボロと溢れ出す、先程まで我慢していた涙が、堰き止めていた物が決壊した。
「だからっ、さ……フランちゃんを……大切にっ……して……ね」
「こいし……」
「これは……私の願い。きっと、二人ならどんな困難も乗り越えられるよ」
涙を拭いたこいしは精一杯の笑顔を私に向けてくれた。
その顔は、恋を諦めて、新たな一歩を頑張って踏み出そうとしている、そんな意志を感じ取れる。
フランとの恋人。きっと幸せに決まってる。さっき気づいたんだ。私はフランのことも愛している。恋人になりたい。恋人になって、フランを幸せにしたい。
でも、私はもう決めていた。
ごめんなさい、フラン、こいし。
あなた達の期待を、
「嫌よ」
裏切るわ。
新しく書いて欲しいエンドはありますか?※一話完結
-
3人とも報われないバッドエンド
-
3人とも平和的なハッピーエンド
-
3人に恋愛感情がないほのぼのエンド