フランがシスコン過ぎて困っています   作:かくてる

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マジでほんと土下座させてください遅れてすみませんでした。


後日話 永遠の縁

 私は現在、地霊殿にいる。というのも、こいしに会いに来たのではなく、仕事の関係上さとりに用があったためだ。

 決してこいしの顔が見たいからじゃない。ないったらない。

 

「にしても暗いわね……」

 

 時刻が午前中であろうと、地底には光が届かない。壁に等間隔にぶら下がっている蝋燭の灯火だけが光源だ。

 

「それにしても、あの鴉とかは見えるのかしら?」

 

 鳥目は暗闇に弱いと聞く。一体どのようにして生活しているのだろうか。

 吸血鬼であるからといって、暗闇が好きな訳では無い。むしろ、私は暗闇が苦手な方だ。暗くて前が見えないし、何より幽霊が怖い。というのも、以前に冥界の亡霊が紅魔館でお化け屋敷を開催してから、トラウマになってしまったからだ。

 

「……は、早いこと用事を終わらせてこいしに抱きついて帰りましょう……」

 

 私の足音だけが、コツコツと響く。奥に入っていく程、暗さが増していき、私の恐怖心を煽る。

 ふぅと一息ついた瞬間、

 

「……ひぃ!?」

 

 遠くの方でなにか物音がした気がした。本当は無音のはずだが、私の恐怖心が煽られているからか、幻聴が時々現れる。しかし、今回は違った。

 

……し、……りー……いま……たの…………ろに……るの……」

「……ま、待ってちょうだい……本当になにか聞こえるのだけど……」

 

 これは声だ。地霊殿の誰かであって欲しいと諏訪子に懇願する勢いだが、それを無視して足音がコツコツと近寄ってくる。

 

「……ひっ、……い、嫌……」

 

 怖すぎる。私はここで殺されてしまうのだろうかとそう考えるだけで足が竦む。

 

わたし……りーさん…………りの……に……いるの……

「さ、さとりぃ! こいしぃ! どこにいるのー!?」

 

 たまらなくなった私は走ってさとりのいる部屋を探す。

 

「……嫌、嫌っ! こんなとこで死にたくない!」

 

 しかし、足音は近づく。もう後ろは振り返れない。何せ、「もう私の背後に何かがいる」ことは分かっているからだ。

 

「私……メリーさん、今……あなたの……後ろにいるの」

「ひぃぃいいぃぃっ!」

 

 未だかつてここまで威厳のない紅魔館当主を見たことがないと、霊夢なら笑うだろう。しかし、私に今必要なのは命の安全だ。というか、足速いわこの幽霊。

 

「い、いいわよ! 幽霊だろうとなんだろうとやってやろうじゃない! かかってきなさい!」

 

 意を決した私は右手にグングニルを手にする。きっと大丈夫だ。私なら勝てる。幻想郷でも指折りの妖怪だもの。

 私は身を翻し、グングニルを声の方向に向ける。

 

「神槍、スピア・ザ・グン……あ、あれ?」

 

 しかし、後ろを振り返っても姿が見えなかった。私は周りを見渡すが、暗い廊下が長く続いているだけで、おかしなところは何一つなかった。

 

 私の向いていた方向は、だ。

 

 

 

 

 

 

 

「……ここだよぉ?」

 

 

 

 

 

 

 瞬間、心臓が止まった。

 首元にある血の付着した包丁を手にする人物が後ろでニタリと笑っていた。

 

 

「きぃぃやあぁぁぁぁぁあぁあぁあぁああぁあぁああぁっ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ以降、レミィが口聞いてくれなくてさぁ……」

「……それ、十中八九こいしが悪いよ……」

 

 フランの部屋で恋愛相談をしている。と言っても、私のお悩みだ。

 私がメリーさんの真似をしてレミィを驚かせたら、想像の十倍は面白い反応をしてくれたが、それに怒ったレミィが……

 

 

 

 

 

『えっへへー、驚いた?』

『あ、お、え、……えっ、え……こ、こい、……こい、し?』

『いやぁーそんな反応してくれるならドッキリの甲斐があったなぁ! レミィって意外と怖がりなんだね? あ、ちなみにこの包丁についてるのはケチャップだよ』

 

 未だに腰を抜かしているレミィ。涙をぼろぼろと流して真っ青な表情で私を見つめる。

 私だと分かるやいなや、プルプルと下を向いて震えていた。

 

『…………』

『……ありゃ? やりすぎた?』

 

 よっぽど怖かったのかなと少し反省しようとしたら。

 

『……もうこいしなんて知らないっ!』

『うぇえ!?』

 

 半泣きのまま、お姉ちゃんのいる部屋の方へスタスタと歩いていってしまったのだ。

 

『ちょ、レミィ!?』

『いいわよ! ついてこないで!』

『そ、そんなぁ!』

 

 

 

 

 

 

「って感じでさ……」

「ちゃんと謝ったら? どうりでお姉様帰ってきた時涙目だったわけだ……」

 

 呆れるようにやり終えたトランプを片付けるフラン。

 

「わ、分かってるんだけどさ……レミィ部屋から出てこなくて……」

「……はぁ……お姉様も子供だなぁ……」

「ねぇフラン、どうしたらいい?」

 

 未だ呆れたままのフラン。右手を額に当てている。

 

「……これ聞かされてる身にもなって欲しいよ……」

「あ、あはは……」

「とりあえずっ」

 

 苦笑いをしていると、人差し指を立てたフランがずいっと身を乗り出してくる。

 

「早くお姉様に謝ること。んで、仲直りして煮るなり焼くなり好きにしたら?」

「絶対に使い方を間違えてると思うよ……けど、わかった。行ってくる……」

 

 

 

 追い返されてしまいそうな不安を抱えながら、同じ階にあるレミィの部屋へ歩き始める。

 扉の前に立つとその不安が増大してのしかかる。さらに嫌われてしまったらどうしようという不安が私の取り柄である笑顔を奪っていきそうな気がする。

 

「すぅう……」

 

 一度大きく深呼吸をして、扉をノックする。

 

「れ、レミィ? 入るよ?」

 

 返事はない。勝手に入ってはいけないだろうが、この状態だと返事がないまま平行線になる気がするため、背に腹はかえられない。

 

「……あ、あー、レミィ?」

 

 レミィは布団の中にくるまって微動だにしない。布団が大福のようにふっくらとしている部分がある。するとその大福からズズっと鼻をすする音がした。

 

「……なによ」

「……お、脅かしちゃってごめんね?」

「……ふん」

 

 どうやら許してくれないらしい。ここまでいじけるレミィを見るのは初めてだ。正直可愛すぎてキュンキュンしっぱなしだ。

 

「……そんなに怖かった……かな?」

 

 確かに私の中でも自信作だ。たまにお燐にも同じことをしてビビらせたりしている。あの瞬間の顔が面白くてたまらないのだ。まぁ、結果的にレミィに同じことしたら怒らせちゃったわけで。

 

「……こわかった」

 

 今にも消えてしまいそうな声で、そう呟いた。流石にやりすぎたと感じた。私は慌てて頭を下げる。

 

「……ご、ごめんなさい! ただ驚かせたかっただけなんだ!」

「……」

「ゆ、許して……くれる?」

 

 ニョキっと布団から顔だけを覗かせたレミィの目元は腫れていた。余程泣いていたのだろう。今も涙を貯めている。可愛い。

 

「……嫌」

「え、えぇ……うぅん……」

 

 これは、何かお詫びが必要な時のいじけ方だと把握している。普段は凛々しい振る舞いを心がけているレミィだが、こういう時はただのいたいけな少女だ。

 

「……ちゅー……する?」

「…………」

 

 レミィは泣き腫らした顔で私を見つめる。さながらそれは寂しがっている子犬のようだ。さっきから私の心臓が高鳴っていて騒がしい。

 

「そこ……すわって……」

「……え、なん……」

「早く」

「は、はいぃっ」

 

 とはいえ、本気で怒ったレミィはめちゃくちゃ怖い。当然だ。本気を出せば幻想郷を破壊し得るのだから。

 私は言われるがままレミィのベッドに座る。すると、寝転がったまま、私の腰に腕を回して、お腹に額を擦りつけてきた。

 

「れ、レミィ……?」

「……」

 

 レミィのセミロングの髪から仄かな香りがする。気持ちのいい匂いだ。私はそのサラサラの髪を撫でながらレミィを抱きしめる。

 

「……ごめんね……レミィ」

「……ぅん……」

「……じゃあ、お詫びにレミィのしたいこと言ってよ」

「…………いいの?」

 

 顔を擦り付けたままのため、表情は見えない。しかし、少しだけ声色が明るくなった気がする。

 

「……うん! なんでも言ってよ! まぁ、お詫びになるか分からないけど……」

「じゃあ……今日はずっと部屋にいて」

「え?」

「……何よ。だめなの?」

 

 レミィは顔を上げて頬をふくらませながら私を睨む。紅色の瞳が潤っている。

 

「……い、いや。それだけでいいのかなって……」

「……今はそれだけで十分なの。あとから追加で注文するわ」

「……そゆことね……」

 

 1時間ほど、私とレミィは無言のまま抱き合っていた。途中フランが静かに扉を開けて様子を見に来たが、先程までの呆れた顔はどこへやら、安心した表情で部屋を後にした。

 恋人というのは、相手の好きでは無いところを見つけてしまうため、気持ちが逓減していくと聞く。しかし、何故だろう。レミィの意外な一面を見つけても、それすら愛おしいと感じるのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう。こいし。もう大丈夫よ」

「……ん。わかった」

 

 顔を上げたレミィの表情は少しばかりスッキリしたように見える。私は改めてレミィの顔を見て口を開く。

 

「……改めてごめんね。つい出来心で……」

「もういいわ。こいしに抱きつく口実が出来たからプラマイゼロよ」

「あ、あはは……」

 

 どうやら許してくれたみたいだ。次からは無闇にレミィを驚かせないようにしよう。本気で神槍が飛んできそう。

 

「……じゃあ、追加の注文の話ね」

「え、あれはもう終わりじゃ?」

「追加の注文の話、ね?」

「……はい」

 

 前言撤回。まだレミィの気は収まってないみたいだ。屈託のない、いや、なにか裏のありそうな笑顔を私に向けてくる。語気を強めたレミィの前に私は膝をついた。

 しかし、私が従うとわかった途端、レミィは顔を赤くしてモジモジし始めた。

 

「……えっと……」

「?」

「……今日……は、こいしに……」

 

 怒ったりいじけたり恥ずかしがったり。今日のレミィは何かと忙しいな。と危うく口に出しそうだったが、キレられそうなのでやめておこう。

 

「……せ、攻められ……たい……」

「…………」

「…………」

「…………」

「も、もうっ! 何か言ってちょうだい!」

「へっ? あ、あぁごめん。何言ってるかわからなくて……えっと、つまり?」

「だから……えっちなことする時に……こいしがリードして欲しいのっ!」

 

 やけくそなのだろう。声のボリュームに遠慮がないのがその証拠だ。

 

「あ、ええっと……私が攻めていいの?」

「え、ええ」

「いつも上は譲らないレミィが?」

「う、うるさいわね! 今日はそういう気分なのっ!」

 

 大声で捲したてるレミィに驚きを隠せない。私たちが恋人になってから、何度かそういった行為を行うことがあった。そのどれもにおいても、レミィは私の身体を弄るのが好きなようで、一向に私が上に乗ることを許してくれない。

 私がレミィに馬乗りになると「私の方が年上なんだからぁ……ね?」と甘い声を出しながら力づくで私を下にしようとするのだ。

 そんなレミィが今日は馬乗りにされたいと言っているのだ。驚きを隠せないのは無理もない。

 

「……い、いいの? というか、どうしていきなり?」

「こいしの弄られてる時の顔……凄い気持ちよさそうだから……もしかしたら気持ちいいのかもって……」

「っ!? ちょ、恥ずかしいこと言わないで!?」

「だ、だってあんなに可愛い顔して大きな声で鳴くんだもの……」

「や、やめてぇ!!」

「二人とも……何話してるの?」

 

 蕩けるような顔で行為中の私の顔を言葉にするレミィに顔をりんごのように真っ赤にする私というバカップルの会話を扉の前で目を細くして呆れているフランが聞いていた。

 

「え、ふ、フラン……んんっ、どうしたの?」

「いやもう隠しきれてないよ……「えっちなことをする時にこいしがリードして欲しいのっ!」のところからいたから」

「ほぼ話の全容!?」

 

 フランがいるとわかった途端、いつもの凛々しいレミィに戻ろうとしていたが、それはもう手遅れの極みだった。

 

「はぁ……声が大きすぎなの。お姉様もこいしも。さっきからそこの廊下を歩いてるメイドたちが真っ赤にして歩いてたよ?」

「うっ……」

「あ、あはは……レミィの声って響くもんねぇ……」

「とにかく。まだ夕方だからえっちは夜にしてね。今日は私は地霊殿に泊まるよ。どうせ隣のお部屋から聞こえる声で眠れそうにないからね」

 

「今日はお空の翼の中で寝よーっと」と言って部屋を後にするフラン。どうやら気を遣わせてしまったようだ。

 フランが部屋を出たあと、数秒の静寂が訪れた。会話が見つからない訳では無いが、どの会話も今の雰囲気には合わないと感じてしまったため、口をなかなか開けない。

 

「あ、あー、こいし? 少し散歩にでも出る?」

「う、うん。そうしよっか」

 

 痺れを切らした私達はそそくさと外に出る準備を済ませて、紅魔館を出た。

 どれだけ気まずい雰囲気でも手だけは繋いだまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さっむ……」

 

 外に出るや否や、白い息が出始める。ロングコートを着て手袋をしても、冷たい風を凌ぐことは出来なかった。

 

「幻想郷の四季は上下が激しいわ……」

「地底は寒さとかないからなぁ」

「あそこは「熱い」よ。全部溶けてしまいそうだもの」

「とはいえ、手袋しても手が冷えるって……どんな寒さだよぅ……」

「じゃ、こうしましょ」

 

 レミィは自分のコートのポケットに繋いだ私の手を入れる。レミィの手の温度とポケットの中の程よい温かさがじんわりと伝わってくる。

 同時に、ほんの少しだけ頬を染めてしまう。

 

「あら、今更こんなことで照れてるのかしら?」

「べ、別に照れてないやいっ」

「ふふっ、可愛いわね」

「……っ」

 

 ポケットの中で、レミィの指が私の手をなぞるように撫でてくる。強すぎず、弱すぎず、私の手のひらを愛撫していく。私の頬は紅潮してしくばかりだ。妖しく、それでもって艶やかなレミィの笑みが私の理性を刺激してくる。

 

「れ、レミィ……」

「……今日は……あなたが……ね?」

 

 レミィは少し小悪魔気質というか、Sっ気があるというか。私を弄る事に快感を覚えてるみたいだ。

 この前だって……

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

『はぁ……はぁ……レミィっ、もう、やめっ……』

『いーやっ。まだ足りないわよ?』

『んんっ……!? ちゅう……』

 

 夜中に響くみずみずしい音の正体は唇を押し付け、啄むようにキスをするレミィの口から発生したものだった。

 

『ぷはぁ……あ、やんっ、レミィ……っ!』

『ふふっ、やっぱりこいしの声は可愛いわ……もって聞かせて?』

 

 レミィの指が私の全身を撫でる。レミィは私が感じやすい箇所を熟知しているため、緩急をつけて「そこ」を撫でたり、摘んだり、舌で舐めたり。その度に私の反応を見て楽しんでいる。

 

『……あら? そんなはしたない顔して……』

『……あっ、……んぅ……ふっ……んんっ』

 

 息がさらに荒くなっているレミィの舌が私の首筋から耳にかけて這っていく。生暖かいレミィの唾液が付着していく。抵抗ができない、つまり私もそれを「気持ちいい」と感じている。それを知っているレミィはさらに私を弄ぶ。

 

『……あ、ほら。口から唾液が出てる……んふふ……力が入ってない証拠ね……れろ……』

『あ、ちょ……れみ……んむぅ……』

 

 耳から頬、そして口へレミィの舌が移動してくる。垂れている唾液を舐め取りながら、キスをしてくる。さらに唾液が私の口の中へ流れ込んでくる。

 

『……れ、……レミィ……もう許して……』

『……はぁ……はぁ……まだ夜明けまで数時間あるわ。言ってること……分かるわね?』

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 とまぁこんな感じにお嬢様だからかなんなのか、自分が下になることは好まず、自分の思うがまま恋人を弄びたいと思っているのだろう。まぁ、私も満更じゃないけど。

 

 でも今日はそんなレミィが「公認」で弄んでいいと言っているのだ。本気を出させてもらいましょう。

 

「……分かってるよ。覚悟しててね?」

「……っ」

 

 そう、本気で。

 

 

 

「とは言うけど、今は散歩。早く行こ? レミィ」

「え、えぇ、そうね」

 

 少し引きつった笑顔を私に向けるレミィ。あぁ、その顔がどんな顔になるのか、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 こいしの顔が、変わった。

 いつもの可愛らしく鳴くこいしでは無い。もうそれは「捕食者」の顔だった。

 

(私……どんなことされるのかしら……)

 

 元はと言えば自分で蒔いた種だ。今更変更してくれなんて言わない。というか言えない。少しでも楽しみにしてしまっている以上、後悔はしたくないからだ。

 

「さ、レミィ。人里にでも行こっか」

「ええ、そうね」

 

 とりあえず散歩をして気を紛らわそう。と割り切れたらいいものの、下半身が湿っている気がするのは私が変態だからだろうか。

 

 

 

「あ、そういえば新しい本が……」

「あら? この本、フランが欲しいって言ってた本だわ」

「ありゃ、そうなの?」

「ええ、あの子ココ最近も本を読んでるのよ。買っていってあげようかしら」

「いいね」

 

 人里は商業施設は意外と多い。そのため、1時間ほどの散歩の時間をここで潰すことは最適である。

 

「……あ、これ、フランが持って帰ってきたパフェの店だわ」

「フランってずっと甘党だもんねぇ?」

「いつまでも子供舌ってことね。かくいう私も甘党なのだけど……」

「まぁ私含め子供だしねぇ……女の子だし、甘いのが好きで当然だよね」

 

 普段のデートと何ら変わりのないものだが、こうしてこいしと手を繋いで歩くだけでも、私は溢れるくらいの幸せを感じる。

 

「ここでね、前にフランがずっこけたのよ」

「えっ、ここで?」

「そう、そこに生えてる木の根っこに引っかかって顔面から落ちたの。鼻とおでこを真っ赤にして……ピエロみたいだったわ」

「ピエロて」

 

 思い出話も尽きない。付き合いの長い私達だけれども、まだ知り合っていない時間の方が長い。まだまだお互いにしれないところばかりだ。だからこうして、新しい発見や思い出を話したり、聞いたりすることが出来る。

 こうした時間が、とてつもなく貴重なんだとそう感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅあ……いいお風呂だったねぇ……」

 

 紅魔館に帰った後、ディナーを終えてレミィと一緒にお風呂に入った。後はもう寝るだけになった。

 

「今日は割と歩き回ったわね。結構疲れたわ」

「……そっか。ね、レミィ」

「ん、どうし……」

 

 私はレミィの肩を掴み、後ろのベッドに押し倒す。約束通り、今日は「私の番」だ。

 

「ちゅ……んぅ……じゅる……」

「んっ……ちゅ……」

 

 強く唇を押し付け、レミィの口内を私の舌で掻き回す。口を離した頃には太い銀色の唾液の糸が引いている。

 

「ふふっ、レミィ。可愛いね」

「……こんな、気持ち、なのね……」

 

 普段と立場が逆転しているため、お互いに新鮮な気分を味わっている。

 私は今日、「レミィを弄める(可愛がる)」。

 

「レミィさ」

「な、なに……」

「今日、散歩の時から濡らしてたでしょ」

「へっ、な、なんで……」

 

 私は、分かっていた。ずっと足を閉じて太もも同士を擦り合わせていた事を。普段から上品な歩き方をしているレミィだが、今回ばかりは違和感を隠せていなかった。

 

「へぇ……? レミィって、実はM?」

「そ、そんなこと……ひゃっ……!?」

 

 件の「濡れている」所に指を置く。その可愛らしい声がたまらなく愛おしくて、興奮する。

 

「あっはは……こんなになっちゃってる……かぁわいい……」

「ん、こ、こいし……」

 

 酷く歪んだ顔。汗もかいてきて、顔を赤く染め上げている。あぁ、最高だ。もっと、弄りたい。

 

「……さいっこう……レミィ、かわいいよぉ……」

「あっ、……いやっ、……んんっ……」

 

 私の舌がレミィの身体を愛撫する。愛撫、なんて優しいものじゃないかもしれないけど、跡が残るくらい、舐めて、吸って、舐めてを繰り返す。

 レミィの歪み、感じて、気持ちよくなっている顔を見つめながら。

 もしかしたら、私は歪んでいるのかもしれない。いや、きっとこれが正常であることを願う。レミィがリードしている時もきっとこんな表情だったはずだ。

 ねぇ、そうでしょう? 

 

「レミリア……ほら、もっとよく顔を見せて?」

「っ……」

「あっ、ほらまた濡れてる。満更でもないんだね?」

「や、やめっ……んぅ……んんんっ!」

 

 夕方、フランに声が大きいと指摘されたからなのか、手で口を塞ぎ、必要以上に声を出さないようにしてる。

 私はレミィの手を掴み、口から外す。

 

「ほぉら……声出しちゃったら外に聞こえちゃうよぉ?」

「あっ、こい……し、……いじわる……」

「聞こえないよ……?」

 

 キッと睨みつけるレミィの顔。まだ、余力はあるみたいだ。ここから、レミィの顔はどう歪んでいくのだろうかな。

 

「れろ……ちゅぅ……じゅるる……」

「んっ……」

 

 レミィの舌を私の舌で舐め回す。ヌルヌルした唾液が交わり合う。私はそのまま頬や耳、首筋を強く舐めていく。その度にレミィの体が強ばるのだから愉しくて仕方がない。

 

「あぁ……可愛い……愛してるよ……レミリア……」

「あ、ひゃ……こい、しっ!」

 

 レミィは耐えられなくなったのか、やりすぎだと思ったのか、私を自分の上からどかそうとした。しかし、私はそれを口を塞ぐことで制する。

 

「ちゅ……んっ……じゅる……」

「んむっ……んんっ……」

「……レミィ? 何してんの?」

「な、なにっ、て……あなた……やり、すぎっ……」

「知らないよ。そんなの」

 

 突き放すように、そう言い放つ。その瞬間のレミィの崩れた表情が垣間見える。私はその快楽に溺れる。

 

「あぁっ……その顔……最高……レミリア……愛してるよ……」

「へっ、……ちょ、こい、こいし……待って……も、もう体力なんか……あっ、ひゃ……んっ……」

「……レミィのおっぱい、やっぱり可愛いね……」

 

 完全に服を脱ぎ捨て、私のレミィの体が素肌で重なる。控えめに膨らんだ胸同士が触れ合い、潰れる。そして、私の舌で、レミィの「気持ちいいところ」をずっとずっと責め続ける。

 しかし、私の本番はここからだ。

 

「ね、レミィ」

「はぁ……はぁ…………な、なに……」

「今日の散歩でさ」

「……」

「フランの名前、何回出した?」

「えっ……えっ……」

 

 完全に困惑するレミィ。私はレミィにキスをしたあと、もう一度問う。

 

「何回、出した?」

「……えっ……と」

「別に嫉妬してたわけじゃないんだよ? でも、彼女の前で他の女の子の名前は出すのは良くないよね?」

 

 100人中100人が嫉妬であると答えるだろう。しかし、大事なのはそこではない。

 

「……時間切れ。答えは39回。霊夢やお姉ちゃんの名前を入れると46回。まぁ、今回はこれを含むことにしよっか」

「……え、こ、こいし……まさか……」

「じゃあ、お仕置きね?」

 

 そう、私の本来の目的はレミィ自身の蒔いた種で弄られるという形を作り上げることだ。こうすることで、レミィは反省と同時に罪悪感に駆られながらすることになる。表情にも変化が生まれるはずだ。

 そのシチュエーションこそ、私が求めていたもの。

 ここで私は気づいた。私という生き物はかなり変わっている生き物だと。とてつもなく変態で、狂気的だと。

 だが、それでも構わない。

 

「1セット5回のこいしちゃんコースを46セットね?」

「ちょ、ちょっと待って……」

「拒否権なーしっ」

「い、いやぁ……」

 

 あぁ、最高だ。大切な恋人を私の手で弄ぶ。照れた表情も歪んだ表情も。全てが私の思う通りになる。

 狂っているなと、そう感じる。

 しかしどれもこれも、レミィがかわいいのがいけない。

 ちなみに、こいしちゃんコースの正体は内緒ねっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

「……あの……レミリア……さん……」

「……ふん」

「とりあえず……土下座させてください」

「……こいしのおたんこなす……」

「すみませんでしたぁー!」

 

 私は裸のまま、ベッドの上で土下座をする。その相手はもちろん、掛け布団を体に巻き付け、涙目になって拗ねている恋人(レミィ)に向けてのものだった。

 

「……いくらなんでもやりすぎなのよ……このバカ……アホ……ド変態」

「返す言葉もないです……」

 

 結局、昨日は暴走しすぎた。こいしちゃんコースを終えたあとも、私の興奮は収まることを知らなかった。結局、「それ」が冷めたのは今から30分前の事だった。

 我に返ることには、めちゃくちゃになったベッドの上でベトベトになった身体。そして、涙目になっていたレミィがいた。

 

「……え、で、でも。レミィも感じて……」

「何?」

「いえなんでも」

「……もう、こいしにリードさせない……」

「え、…………えぇえぇえええぇええぇ!?」

 

 大衝撃発言だった。昨日の快感が、昨日限りだったなんて、そんな話を信じたくない。

 

「だって、あなたあんなに暴走するんだものっ。私の体爆発するわよ!?」

「なんでなんで! レミィも気持ちよさそうだったじゃん! 次も私にやらせてよ!」

「ひとっこともそんなこと言ってないわよ! 私がリードする時の数十倍はやりすぎよ!」

「うそうそ! レミィもあんあん言ってたじゃん! 今ここでレミィの真似してあげようか!?」

「やめて! それだけはやめて! もう咲夜たち起きてる時間だからぁぁ!」

 

 朝の7時。小鳥のさえずりと共に、聞こえてきたのは、幼くも艶やかな2人の痴話喧嘩だった。

 

 

 

 

 一通り喧嘩を終えた後、私達は浴場へと足を運んだ。

 

「……まだ、股に変な感覚が残ってる」

「わ、悪かったって……反省してるから……」

 

 ムスッとした私に申し訳なさそうにするこいし。許してやってもいいのだが、これはこれで今後のエサになりそうな気がするので、曖昧な感じに返しておく。

 

「とりあえず、お風呂に入りましょうか」

「そうだね」

 

 服を脱ぎ、シャワーを浴びてから広い浴場に隣り合わせで座る。

 

「……本当に疲れたわ……」

「あ、あはは……ねえ、温泉行かない?」

 

 こいしが突然にそのような提案をする。

 

「温泉? いつ?」

「まあ、明明後日くらいに」

「いいけれど……どこの温泉に行くの?」

「私、あそこに行きたいんだ。鳳凰山の」

「ああ、前に4人で行ったところね」

 

 以前、フランとさとり、こいしと私で行った壮大な温泉郷のことだ。

 あそこでの出来事は、私達にとっても大きなターニングポイントになっていた。それに加え、最高の湯加減と景色だったため、もう一度行きたいとは思っていた。

 

「……いいわね。行きたいわ。今度は2人で、ね?」

「……当たり前だよ。レミィ」

 

 目を合わせ、2人でクスクスと笑う。

 彼女を見ていると、自然と笑みがこぼれてしまう。幸せを感じる。

 ずっと、こんな時間が続けばいいのに、なんて感じてしまう。

 

「ね、レミィ……」

「何かしら?」

 

 こいしという私の大切な存在に、いつまでも依存してしまいそう。

 昨日のこいしのように、狂気的に、そして強欲的に、こいしを求めてしまいそう。

 でも、それでいい。こんなにまで私を好きにさせたのは、紛れもなく、こいしの責任だ。

 

「愛してる……」

「私もよ……こいし、愛してる」

 

 永遠にこの時間が続くことは無い。しかし、永遠に途切れることの無い私とこいしの縁を私はつかみ続ける。

 

 

 

 いつか、別れる日が来たとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 〜END〜




これにて、3ルート全て完結致しました!

ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

この後、3人が誰も恋人にならなかった世界線みたいなやつを書いて、その後はアンケートをとって、一つ結末を増やそうかなと考えています。

では、また

執筆中です!(2024/3/9)


まって!忙しすぎてかなり後になりそうですが、更新はしたいと思います!(2024/6/20)


活動報告にもありますが、いつか必ず完成させます。忘れてねぇよお前のこと!という神様がいらっしゃいましたら、首を長くして期待せず待って欲しいです!(2025/10/18)

新しく書いて欲しいエンドはありますか?※一話完結

  • 3人とも報われないバッドエンド
  • 3人とも平和的なハッピーエンド
  • 3人に恋愛感情がないほのぼのエンド
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