始語―ハジマリガタリ―
【虚刀流】という武術を知っているだろうか。
虚刀流とは、剣を全く使わない剣術であり、鑢家の一子相伝の流派である。剣を使わないのに剣術とはおかしな話かもしれないが虚刀流は剣術なのである。
何故このような現代には似つかわしくない剣術の話をするかというと、俺、藤丸七花はこの世唯一の虚刀流の使い手であるからだ。
俺は【転生者】と言うらしく、生前は【鑢 七花】という名前であり、虚刀流七代目当主だった。島で暮らしていた俺はある日島に来た女性、とがめとともに刀集めの旅に出た。いろんな場所へ行き、いろんなやつと戦った。刀集めは順調だった。だけど、最後の一刀【炎刀:銃】の前に、とがめは殺されてしまった。その後、とがめの仇を討ったあとはよく覚えていない。いつの間にか俺は死に、この世界に産まれていた。
【藤丸七花】として。
この世界でも俺は虚刀流を続けている。俺に残った最後のものだからな。まあ、あんまりおおっぴらに出来ないから、朝早くの公園や山の中でやってたりする。たまに妹がついてくるが見ているだけなので大丈夫だろう。
高校を出て、一人暮らしを始めた俺はバイトをしようとチラシを見ていた。そして、その中の一つに目を奪われた。
「検査を受けるだけで日給三万だと…?主催は…カルデア…?」
凄い胡散臭いが一人暮らし初めで金がない俺はすぐさま応募した。そこからが、俺の人生の転機だった。
「なんだここ…」
俺は某市で一次検査を受け、日給三万を貰って喜んでいた時に職員に
「あなたは二次検査に選ばれました。もしよければ、受けられませんか?長丁場になりますので、受けられる場合は準備をしてきてください。」
面倒くさかった俺は断ろうとしたが「日給五万です」という言葉に逆らえなかった。
そして連れてこられたのは凄い綺麗な空間だった。何か特殊な器具を付けられ、横になった。よく分からんがこれで金がもらえるのならいいだろ。
…いつの間にか眠っていたようだ。暖かい毛布の中で目を覚ました俺は辺りを見回すと、誰だか知らん優男がいた。
「やあ、目が覚めたかい?君、検査中に寝ちゃったらしいね。えと…藤丸七花くん?」
「そうらしいな…。あんたは誰だ?どうして俺の名前を?」
「初めまして、僕はロマニ・アーキマン。皆からはDr.ロマンって呼ばれてるからロマンでいいよ。僕はここの医者でね。君が運び込まれた時にカルテを見させて貰ったよ。君凄い大きいね。僕もそのくらいほしかったなー」
「…はぁ。で、えーと、ロマン。ここはどこなんだ?」
「ここかい?ここは医務室さ。普段は人が来ないから僕の休憩室みたいになってるけどね。あ、お饅頭食べる?」
「ふーん…。饅頭は貰っておく。」
ロマンから饅頭を貰い口に入れる。意外とうまいなコレ。
「君は一般人のようだが、どうしてここに来たんだい?」
「ああ、それは…」
そのとき
ドォォォォォォォォォォォン
「!何だ!?」
「爆発!?今のは…中央管制室の方か!?まずい!!」
部屋から飛び出し駆け出したロマンを追って現場へたどり着いた俺が見たのは
「…嘘だろ、なんだよこれ…」
俺の目の前には天井が崩れ下敷きになった人、さっきの爆発に巻き込まれ体の一部がない人、既に何人もの人が息絶えていた。
「なんなんだよ、ここは…!」
「七花くん、来てしまったのか!?僕は管制室に行く!君は早くここから逃げるんだ!」
俺が呆然としている間にロマンは走り去っていってしまった。
昔の俺なら、きっと耐えれたのだろう。とがめが死に、多くの人を殺した俺なら。
しかし、今の俺は【虚刀:鑢】ではない。【藤丸七花】なのだ。この世界に転生し、藤丸七花として生きてきた俺には、耐えることが出来なかった。
『まだ逃げていなかったのか!七花くん!そこはとても危険だ!早く逃げるんだ!!」
ロマンの声が遠くから聞こえる。俺はここで死ぬのかもしれない。こんなことだったらあんな検査受けなければ良かったな。ああ、父さんに、母さんに、妹に会いたい。
とがめに、会いたい。
アンサモンプログラムスタート
霊子変換を開始します。
その言葉をきっかけに、俺は意識を失った。