英雄語―エイユウガタリ―   作:おののっきー

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毎回毎回時間が空いてしまい申し訳ありません。仕事もうやだ。
ハロウィンはイバラギン神イベでしたね。今回でイバラギン宝具5にしました。ちなみにシトナイはきませんでした。





内緒語―ナイショガタリ―

 

 

 

 

フランスから帰ってきた俺たちはロマンの呼び出しで中央管制室に集まっていた。

 

「どうしたんだ?俺と六華、マシュととがめだけだなんて。」

 

「あはは・・・まあ呼び出しのメインはダヴィンチちゃんから話してもらうよ。きっと驚くよ。とがめさんを呼んだのはとがめさんの宝具が必要でね。」

 

「宝具が必要・・・?」

 

「あ、来たみたいだよ。」

 

ロマンの言っている意味が分からず悩んでいるところに、人一人ぶん入りそうな透明なタンクを持ってダヴィンチちゃんがやってきた。というか実際に入ってた。

 

「ってこれ、中の人・・・」

 

「「所長ぉぉぉぉ!!!!????」」

 

そう、タンクの中に三角座りで眠っているのはカルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアだった。

 

「ふっふーん、大変だったんだぜ?フランスで君達の存在証明を確認しながら所長の肉体を作るのは。おかげでほとんど出番がなかったよ。そこ、作者が忘れてただけとかいうなよ!」

 

「・・・なるほど、肉体を作った・・・私のいた時代からだと考えられないが、人の手で造られた人間、人造人間というやつか。ということは私が呼ばれた理由は、」

 

「そう、君の【毒刀・鍍】にいる所長の魂だよ。君のその刀を空っぽの肉体に刺すことで、所長の魂を肉体に移す。そうすれば、所長は復活できるって手だてだよ。」

 

ダヴィンチちゃんととがめが神妙な顔で話しているが・・・

 

「・・・おい六華、二人の話していること分かるか?」

 

「私が分かるわけないでしょ七花にい。」

 

「だよなあ。」

 

話についていけない俺たちだった。

 

「あー・・・君達に簡単に説明すると、オルガマリー所長が生き返るんだよ。」

 

「あー、冬木でとがめがやった奇策か。本当に出来るもんなんだな。」

 

「所長の胸に刀刺したときはビックリしたね・・・。」

 

こっちでロマンから説明を受けている間にダヴィンチちゃんととがめの方では話が進んだようだ。

 

「では所長をタンクから出すよ。君は【毒刀・鍍】の準備を。」

 

「ああ・・・大丈夫かな・・・。」

 

「?なにか言ったかい?」

 

「ああいやなにも。ではいくぞ!」

 

解放された所長の肉体に【毒刀・鍍】が刺さる。その瞬間、場の雰囲気が明確に変わった。毒々しい、粘っこい悪気だった。

 

「とがめ!!」

 

「先輩!!」

 

雰囲気が変わったのを察知し、俺とマシュでとがめと六華の盾になるように庇う。ロマンはダヴィンチちゃんが庇ったようだ。

 

「・・・お前は、所長か?」

 

()()は濁った目でこちらを見、答える。

 

「いいや、違うな・・・俺は、()()()()()だ。」

 

「「!!」」

 

恐れていたことが起こった。あの肉体にはオルガマリーの魂ではなく四季崎記紀の魂が入ってしまっていた。つまり、オルガマリーの魂は・・・

 

「とがめ!!!」

 

すぐさまエンチャントを施され、四季崎へと向かっていく。貫手を放ち動きを抑えようとするが、

 

「おいおい、血気盛んだな。【虚刀・鑢】」

 

四季崎により容易くいなされる。柔術の応用だろうか、直に食らった七花は訳も分からずに後ろに投げ飛ばされた。

 

「そんなに殺気をぶつけるなよ、お前らが待ってた所長とやらはちゃんとこの体に入ってるぞ。」

 

「「「「「「!」」」」」」

 

「四季崎記紀、と言ったね。今のはどういうことだ?」

 

ダヴィンチちゃんが殺気をぶつけるように言い放つ。だが四季崎記紀は殺気を風のように受け流して答える。

 

「そもそも俺は【虚刀・鑢】が完成した時点で生きる未練はねえんだ。ここにいることが不可解だっての。・・・それであの嬢ちゃんだが、まあ俺と一緒にいたからだろ、魂が衰弱してて意識が覚醒できていねえ。最初は【王刀・鋸】と【誠刀・銓】を持っていたようだから守られてたが、一時【王刀・鋸】が消えやがった。そんときに俺にアてられたらしい。」

 

「・・・つまり、【王刀・鋸】がなかったせいでこうなったってことか?」

 

「そうだな。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「とが「だって!!!あのときマルタをどうにかしたいって言うから!!!マルタの契約をとくには【王刀・鋸】を使うしかなかったんだもん!!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「いやそりゃあね!?王刀使ってオルガマリーを保護してたのに使っても大丈夫かなー?とは思ったよ!?だけどもう取り出しちゃったし、それ使えばマルタが仲間になるんだから「とがめ」はひぃ!!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「とがめ、君は【王刀・鋸】を使えばこうなるかもしれないことは分かってたね?」

 

ダヴィンチちゃん、今までで見たことないほどヤバイ顔してるぞ・・・。

 

「・・・はい。【王刀・鋸】を使う時、オルガマリーから刀が離れるのでヤバイかなーとは思ってました…。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「「「とがめ(さん)ーーー!!!!」」」

 

「だってー!!だってー!!!」

 

俺たちは叫びとがめが喚く、中央管制室は阿鼻叫喚と化した。誰もが混乱している最中、その場を落ち着けたのは思いもがけず奴だった。

 

パン!!

 

大きな手の叩かれる音に反応し、全員が音の発生源を見る。

 

「だー!世界を救うって奴らが情けねえ、そんな調子で世界救えると思ってんのか!!人の話は最後まで聞け!!」

 

それはオルガマリー…ではなく、オルガマリーの体をした四季崎記紀だった。

 

「まず早とちりするな!!あの嬢ちゃんは生きてるぞ。今は俺が出てるってだけで嬢ちゃんは眠ってるだけだ。俺がいなくなれば起きるさ。」

 

「お前がいなくなる?どういうことだ?」

 

「この体にいる俺は残留思念みたいなものだ。生きた魂に比べればちっぽけな存在さ。今ここにいるだけでも存在は消えていっている。」

 

「お前、消えるのか………?」

 

「ああ、消える。まあ嬢ちゃんと魂少し混じったから残るっちゃ残るけどな。」

 

「………おい今なんて言っ」

 

「時間だ。せいぜい足掻いて見せろよ。【虚刀・鑢】。」

 

「だからお前今何て言ったーー!!!」

 

バタン

 

四季崎記紀……オルガマリーの体が糸が切れたように前に倒れてしまった。顔面からいったが大丈夫なのだろうか……。

 

「……七花くん。奴は消えたのか?そして、奴は何者なんだ?」

 

「ダヴィンチちゃん……奴は、四季崎記紀は元々はとがめが持ってる十二本の完成形変態刀、そして、俺を造った男だ。そして【毒刀・鍍】は奴の怨念を込めて造られた【最も毒気の強い刀】だ。」

 

「そこから先は私が説明する。」

 

「とがめ。」

 

「【毒刀・鍍】は私の宝具として召喚できるが、私の宝具では【魂を内包している】という点に強調されている。この特性を活かしてオルガマリーの魂をこの刀に内包させた。まあ、先に四季崎記紀がいたのだから、互いに干渉してしまったようだが……。」

 

「そこだ。奴は魂が混じったと言っていた。あれはどういう……」

 

「ん……」

 

倒れていたオルガマリーから声があがる。俺たちは全員がオルガマリーを見て反応を伺った。

 

「私は………」

 

「所長、大丈夫ですか!?」

 

「……あれ、ここどこ……?宮殿……?」

 

「……所長?」

 

ロマンがオルガマリーと顔を合わせて必死に語りかけるが、オルガマリーの目の焦点が合っていない。

 

「何よあの黒い柱……!!やだ、止めてぇぇ!!!」

 

「所長!!しっかりしてください!!所長!!」

 

ロマンがオルガマリーの肩を揺らしながら語りかけているが、オルガマリーの錯乱は止まらなかった。結果、またもや意識を失ってしまった。

 

「これは、どういうことだ……宮殿……黒い柱……?」

 

「いいから担架を!!所長を早く医務室へ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室に運ばれた所長は意識を覚ますことなく、また寝たきりになってしまった。

 

「ロマン、オルガマリーの体調は……」

 

「七花くん……あれから意識は戻ってない。魂が体に定着してないのもあるかもしれないけど、やっぱりあの四季崎記紀の魂が混ざった、というのが問題だろう。」

 

「………目を覚ますのか?」

 

「分からない。僕たちも全力を尽くしているが、今の状態を維持するので手一杯だ。加えて次の特異点の捜索もしなくちゃいけない。」

 

「………そうか。ごめんな。」

 

「いいんだよ。ああ、そんな悲しそうな顔するもんじゃないよ。ほら、僕のとっておきの豆大福あげるから。マシュには内緒だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は豆大福をもらい、医務室を出た。フラフラとあてなく歩き、近くにあった廊下のベンチに腰かけた。

 

「………」

 

第一特異点、フランス。本物の戦争、ワイバーン、サーヴァント、そしてファヴニール。あの戦争に、俺はこれからついていけるのか?あの巨大な竜に太刀打ちできたか?俺の力は通用するのか?ロマンやダヴィンチちゃん、職員の皆の頑張りに応えられるのか?

 

 

俺は、とがめ達を守れるのか?

 

 

「七花にい!!」

 

「!」

 

どうやらかなり深く考え込んでいたらしい。目の前には気づかない間に息を切らしてうつむいている六華が立っていた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「六華、そんなに慌ててどうしたんだ?何かあったのか?」

 

六華が顔を上げる。その顔には後悔と不安が纏っているが、それを振り払うように目からは強い光を放っていた。

 

「七花にい!私に虚刀流を教えて!!」

 

「虚刀流を?」

 

「私も強くなりたい……私も皆と戦えるようになりたい!!お願いします!!」

 

頭をさげ懇願される。

 

……ああ、俺はやっぱりバカなんだな。六華の言う通りだ。六華は一歩踏み出し、俺は立ち止まっている。それだけの話だったんだ。なら、兄として、妹より遅れるわけにはいかないな!

 

「……ああ、いいぜ。俺でよければ虚刀流を教えてやる。」

 

「本当!」

 

「ああ……まあ、最初は体力づくりからだけどな。」

 

「体力には自信あるよ!フルマラソンだって走ったことあるんだから!」

 

……眩しいな。純粋に、ただ先だけを見ている。

 

「……俺も強くなるよ。六華。」

 

「……うん。強くなろう、七花にい。」

 

互いに顔を見合い、俺が拳を出すと六華がそれに合わせ拳を返した。こっぱずかしくて顔が赤くなってしまったが、それは六華も同じようだ。

 

「おーい!七花ー!六華ー!何してるんだ~?」

 

とがめが来たようだ。そう言えば廊下で話していたことを忘れていた。俺と六華は声を合わせてこう言った。

 

「「内緒(だ)!!」」

 

 


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