「クー・フーリン…?知らねえな」
「嘘!知らないの!?あのアイルランドの光の御子!影の国の女王スカサハから教えを受けた大英雄よ!?」
銀髪の少女がヒステリック気味に騒いでいる。正直耳がキンキンする。
「おおっと、俺も有名だな。まあ、そこの兄ちゃんには知られていないようだが…。俺はこの冬木の聖杯戦争に呼ばれたキャスターのサーヴァントだ。今この地はおかしくてな。セイバーの野郎が聖杯を手にしてここら一帯をこんなにしちまいやがった。お陰でまともなサーヴァントは俺一人よ。てなわけで、お前ら、俺と契約してセイバーと戦ってくんねぇか?」
「…すまんが、話がよくわからん。サーヴァントってなんだ?」
「「そこから(なの)!?」」
いや、俺この間まで高校生だった一般人だし。
「はいはーい!私もサーヴァントについて聞きたい!前の話は寝ててよく聞いてなかったし!」
「先輩…サーヴァントとは簡単にいうと神話や教科書に出てくる偉人、英雄達のことです。聖杯戦争ではセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーのクラスに合った七騎のサーヴァントを召喚し戦いあい、最後に勝ち残った一組のマスターとサーヴァントが聖杯を手にして願いを叶えるんです」
「ほへー…てことは、織田信長とか豊臣秀吉とかも呼べるってこと?凄いね!」
「ふーん…よくわからん」
「あなた達ねぇ…魔術のまの字も知らないでしょ。なのにこんなとこまで来てしまって…ああもうどうしましょう…レフ…あなただけが頼りなのに…」
「魔術?魔法とかのことか?こう、火を出したりとか」
「あー…魔法と魔術はちげえんだか、火なら俺も出せるぜ。『アンサズ』!」
クー・フーリンと名乗った男が持った杖から頭大の火の玉が出てくる。
「おー!!すげえ!!カッコいいな!!」
「へっ、といったわけで、そこのでっかい兄ちゃんかオレンジ髪の嬢ちゃん、銀髪の嬢ちゃんは…あらら、マスター適性ないのか。なら二人のどっちかから…」
そんな話をしていたとき
『―ピッ、っ繋がった!!無事かい、七花くん!?』
「ロマン!無事だったのか!俺は一応無事だ。」
『良かった…こちらは何人か無事だった人がいて、全員で管制室にいるよ。そっちは、て所長!?無事だったんですか!?それに…マシュに、えーと…藤丸、六華…藤丸!?君たち兄妹なのかい!?』
「Dr.ロマン!なぜあなたが管制室で指揮をとっているの!?レフは、レフはどうしたの!?」
『所長…申し訳ありませんが、レフ顧問は、爆発に巻き込まれ…』
「嘘…嘘よ…レフがいないなんて…私はどうすればいいのよ…」
『所長…』
所長と呼ばれた娘、ヤバそうだな。活でも入れて…六華?
「所長!私達はその、魔術も知らない一般人です!今何が起きているのかさっぱり分かりません!聖杯戦争とかサーヴァントとかもやっぱり分かりません!今頼れるのはオルガマリー所長、貴女だけなんです!どうか、私達のリーダーとして、私達を引っ張っていって下さい!!」
六華が俺の方を向いて頭を下げるようにジェスチャーしている。俺もやれってことか。
「あー…その、所長。俺もたまたまここにきた一般人だ。所長は魔術にも詳しいんだろ?俺は戦うことはできても、考えることはさっぱりなんだ。だから、所長の能力を、俺達のために活かしてくれないか?頼む、所長だけが頼りなんだ!」
「オルガマリー所長、私からもお願いします!」
「「「所長!!!」」」
「…なに適当なこと言ってるのよ。あなたたちに私の何が分かるのよ」
…俺は何も言えないな…
「分かるよ。所長はこんなに怯えて、怖がっているのに皆の先頭に立って、皆を引っ張ってきたんでしょ?カルデアの代表として。それはとても凄い、立派なことだよ!私はそんな所長を認めるし、尊敬する!」
「はい!所長は先程の戦いも後ろから攻撃を仕掛けてくれてとても助かりました!所長は凄い人です!」
「二人とも…ありがとう…。ええ、そうよね。こんなところで廃れてちゃ、アニムスフィア家の名が泣くわ!ロマン!そちらの状況を教えなさい!ここからは私が指揮を取るわ!クー・フーリンも私と一緒に、情報共通を行います!」
「「所長!!」」
『わかった!』
「…化けるもんだな。さっきまであんなに怯えてた女だったのに。こりゃ、面白くなってきやがったぜ!」
…なんかよくわからんがうまくいったようだ。
「とりあえず…六華?何でお前ここにいるんだ?」
「七花にいこそなんで?私は検査受けてたらよくわかんないうちにここにきてた。」
「俺もそんな感じだ。えっと、そっちの娘が…」
「はい、私はマシュ・キリエライトといいます。先輩と契約しているデミ・サーヴァントです。よろしくお願いします、先輩のお兄さん!」
「よろしく、俺は藤丸七花。六華の兄だ。六華を頼むな。その大きな盾で守ってやってくれよ。」
「はい!ところで、あの…七花さん。さっきのサーヴァントを倒した動きは…」
「それ私も知りたい!七花にいなんだったのあの動き!ブパーンて!ズビューンて!」
「ああ、あれは虚刀流って言って…」
『君たち、話しているところ悪いけどいいかな?これからの方針を決めるから皆で集まってくれ。』
「これから私達はここを特異点Fと呼び、キャスター、クー・フーリンと協力してセイバーを倒し、特異点を修復します。そこで、戦力増強のためにここでサーヴァントを召喚します。」
「え、サーヴァント召喚ってそんなに簡単にできるもんなのか?」
「本当は儀式や呪文だったりがいるんだけど、マシュの盾と一級の霊地、そしてこの『召喚石』があれば誰でも召喚できます。六華にはマシュとキャスターがいるので、ここは七花に召喚してもらいます。」
「…え、俺!?え、俺がやって大丈夫なのか!?」
「六華には十分な戦力がいます。あなたも生身で戦闘ができるようですが、今マスターに怪我を負われるわけにはいかないんです。正直あんまり期待していないので気軽にやっていいわよ。クー・フーリンがいれば大体はどうにかなるでしょ。」
「だったらよかったんだがな…俺一人で終わるんだったらとっくに終わらしてるよ。キャスターの俺じゃあセイバーには勝てねえ。しかも、セイバーに心酔している番人までいやがるしな。」
「…え?セイバーってそんなに強いの!?一体誰よ!?」
「まあ見りゃ一発で分かるが…星の聖剣を持つ騎士王、アーサー王だ。」
「前言撤回よ藤丸七花!!めちゃくちゃ強い凄いサーヴァントを引きなさい!!いいわね!!」
「は、はい!」
思わず返事をしてしまったが、誰がくるか分からないんだろ?なんか、織田信長とかそんなのは聞こえたが…
誰でも召喚できるのか…
俺は手に持っていた石を設置されたマシュの盾の上に投げた。すると、光が立ちあがり三つの光帯を作り回転し始めた。
『これは…不安定な霊基だ。あまり強いサーヴァントではなさそうだぞ。』
「いやー!ヘラクレスとかきてー!!」
俺の目の前で強い光が爆発し、視界が一瞬光で包まれた。光が消えその中に一人の女性が立っていた。重そうな十二単に白髪の短い髪。こちらを見据える理知的な双眸は…
「キャスター、元尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督、奇策士とがめ。召喚に応じ参上した。あなたが私のマスターか?」
「……とがめ…とがめなのか…?」
「如何にも、私はとがめと…って七花ぁ!?」
「とがめ!!」
俺は脇目も降らずにとがめを抱き締めた。周りの視線なんて知ったことじゃない。とがめだ!とがめがここにいるんだ!!
「とがめ!とがめ!!」
「ええい、止めんか七花!恥ずかしいだろうが!嬉しいのは私も一緒だが、こんな衆目の前で…、って周りの人が見てるじゃないか!!恥ずかしいからやめろ!!早く!!」
ポカスカと頭を殴られ、仕方なくとがめから手を放した。
「えっと…七花。そのサーヴァントは?まさか、知り合いなの?」
「七花にいのあんな嬉しそうな姿、初めて見た…」
『えっと…こっちからはキャスターの霊基のサーヴァントがいるってくらいしかわからないや。でも、とんでもなく弱々しい霊基だな…』
「なによ、外れじゃない!!キャスターだし、あなた攻撃できるの!?」
「とがめを悪く言うな!とがめは確かに攻撃なんてこれっぽっちもできないし耐久力も障子に毛が生えた程度だけど、とがめを外れというのは許さないぞ。」
『というか…その、真名をとがめという女性、どんな文献を見てもでてこないんだけど、どういうことだい?』
「それは私から説明しよう。私は、この世界ではない別の世界から呼ばれたサーヴァントだ。私はその世界では『刀語』という物語を書き、その著者として歴史に名を刻んだ。そのつてもあり、「座」に登録されたのだ。まあ、七花ほどの縁がなければ呼ばれるはずもないんだがな!というか七花、なぜお前がここにいるんだ?」
「ああ、それは俺が『転生者』だからだな。とがめといた時代から死んだ俺は記憶を持ったままこの時代を生きてきたんだ。それで、今はこの通り。」
『「………」』
「え、七花にいは私のお兄ちゃんじゃないってこと?どうゆうこと?」
「おいおい六華。俺は前世の記憶があるってだけのお前の兄ちゃんだ。それで、ここにいるのが俺の前世の…そうだな、「鞘」だった人だ。」
「それって、相棒とか、私とマシュみたいな、そんな感じ?」
「…そんな感じだ。」
「…七花、そこの娘は、お前の妹なのか?」
「ああ、そうだぞ。可愛いだろ。」
「七花、お前はそんなに妹バカだったのか…じゃなくて、似てなさすぎだろう!?」
「…ちょっと待ちなさい。あなた、キャスター、別世界のサーヴァントですって?それに七花、前世の記憶を持ったまま別世界から転生した、ですってぇ!?」
「「そうだぞ(な)。」」
「…もういいわ。あなた達のことは後にするわ。頭が痛くなるから。とりあえず、キャスター、貴女は何ができるの?」
「…うーん…私に出来ることと言っても、せいぜい奇策を考えることくらいなのだが…。そういえば、サーヴァントとしてスキルと宝具を得ていたんだった。」
「…そういえば、作家系サーヴァントは他人へのエンチャントが出来るって聞いたわね…」
「よし、七花、私の正面に立て!」
「おう。これでいいか?」
とがめの正面に立ちとがめを真っ直ぐに見つめる。
「…そう見つめるな。恥ずかしい。まあいい、いくぞ!『エンチャント』!」
そういうと、俺の体が光り、俺の服が昔の、下は袴、上は腕のみ布がついている動きやすい格好に変わっていた。
「これは…体が動かしやすい…。いや、『戻っている』…?」
「ふふふ、七花、そなたの体はあの時よりもずっと弱くなっていたからな!私のスキルにより、『刀語』に書いたあの頃の強さになっているのだ!ついでに格好もな!うん、その方が七花らしいぞ!」
「すごいな…俺もこの世界に来てからできるだけ鍛えてきたんだが、まだまだ未熟だったな…」
…当たり前か。俺は「刀」じゃないんだから
「凄い!七花にい凄い格好いいよ!それが七花にいの昔の格好なの?」
「確かに、神秘もさっきよりも格段に上がってるし、侮れないわね…これ私にも使ってくれる?」
「すまないな、銀髪の娘。これは『刀語』の主人公である七花にしか使えんのだ。」
「そう…て、はぁ!?あなたが書いた物語の主人公なの!?七花は!?」
「そうだぞ。そっかー、俺達の旅路を書いたものががそんなに売れたんだな。でもあれ、結構嘘っぱちなところもあったんだろ?」
「い、言うな!馬鹿者!ばれなければいいのだ!」
「…もう驚かないわ。それで、宝具の方は…」
「ッ、嬢ちゃん!」
「はい!」
ガキィィィン!!
「え、な、何!?攻撃!?」
「アーチャーの狙撃だ!全員建物に隠れろ!!いいかマシュ、お前に宿っている英霊は一級品だ。あの矢からも後ろの奴らを十分に守れる。あとはお前の気合次第だ。合図を出したらマシュの後ろを六華とオルガマリーが走れ!七花、矢を見切れるか!」
「この姿なら大丈夫だ!!」
「よし、七花はキャスターの嬢ちゃんを背負ってマシュの後ろを付いてきてくれ!俺は先に行ってあいつを牽制しておく!あいつとは因縁があるんでな、お前らは俺がアーチャーを引き付けている間にセイバーを叩け!行くぞ!」