Fate/Our world 作:ただのモブ
「サーヴァントアーチャー、」
男の子ならば一度くらいは憧れたことがあるだろう。
「召喚に応じ参上した。」
彼らはいつだって常人ならざる力で悪を倒し、弱き者あるいは世界のことを守ってきた。
「久しぶりだな。」
これは、そんな正義の味方に憧れた、
「マスター。」
何の力も持たなかった1人の平凡な青年の物語である
あぁ、これはきっと夢なのだろう。
知らない草原に知らない空、そして知らない夕日。
そのどれもが美しく幻想的な知らない世界。
これはオレの想像の世界なのだろうか?
そんな世界に1人佇む少女を見つけた。
オレはその少女に呼びかけた…と思う。
反応はなかった。
少女はただ石に刺さった剣を見つめていた。
そしてその剣を握り、迷うことなくその剣を引き抜いた。
少女に引き抜かれた剣は眩い光を放ちだし、
俺の視界はあっという間に光に包まれた。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
「お…………き……か…」
何日も過ごしたような気もするし一瞬だった気もする。
「…い………」
白くなった視界の中で誰かに呼ばれた気がした。
それはとても聞き覚えのある声で、今まで何度も怒鳴られた声だった。
「おい!良い加減に起きないか!!」
「はいっ!?」
気付けばオレは教室にいた。どうやら授業中に居眠りしてたらしい。目の前には鬼の様な形相をした先生が立っていた。
先生「全く…お前は何度注意されたら分かるんだ。あとで職員室に来るように。」
「は、ハーイ…」
その後職員室に行ったオレは滅茶苦茶怒られたのであった。
教室に戻ったオレは弁当を開きながらスマホを取り出してゲームアプリを開いた。呼び出しをくらったせいで多少みんなより昼食が遅くなったがまだ充分間に合うだろう。
「今回も絞られたようだな」
教室に戻り教室にいた男子のうちの1人が声をかけて来た。オレの親友のヨシトだ。
「うるせえ…」
ヨシト「まぁこれでも飲んで元気出せ」
ヨシトは手に持っていた缶ジュースを投げ渡して来る。オレはそれをしっかりとキャッチし一気に飲み干した。口一杯に香ばしい香りと苦味が広がって…
「ゲホッゲホッ…何だこれブラックコーヒーじゃないか!?」
ヨシト「アッハッハッハッハ!!人から貰った飲み物を確認せずに飲む奴なんているか普通!!アッハッハッハッハ!!」
こいつ…オレが苦いもの嫌いなの知ってる癖に…
ヨシト「代わりに今度宿題写させてやるから許せ」
「その約束絶対忘れるんじゃないぞ…全く…」
オレとヨシトは長い付き合いだ。ヨシトは昔っから何でもできる奴だった。成績優秀、運動神経抜群、オマケに顔もイケメンでまさにアニメの中の人間なんじゃないか?と思ってしまうほどだった。正直オレがヨシトだったらオレみたいなモブキャラは見向きもしなかっただろう。だがコイツはオレみたいな人間とも仲良くしてくれる。そういう意味では良い奴なのだが。
ヨシト「ん?またそのゲームか。お前いつも同じキャラを使ってるんだな。」
ヨシトはオレのゲーム画面に映る赤い服を着た弓兵を見て言った
「このキャラ好きなんだ。顔の無い正義の代表者、かっこいいだろ?」
ヨシト「そうだな。正義の味方に憧れるなんてお前らしいと思うよ。そんな正義の味方さんにお願いがあるんだが」
「マジかよ…」
コイツがお願いと言う時は決まって委員会の力仕事を手伝わされるのだ。今の委員会は男一人他女子というハーレムっぷりらしい。ヨシトは何故だが分からないと言っていたがどう考えてもコイツがモテるからだろう。
「さっきのと合わせて貸し2な。」
ヨシト「すまないな…早速今日の放課後にでもお願いしたい。」
「了解…」
放課後、散々こき使われた。時間は既に7時を超えている。
「これで言われてた物は全部か?」
ヨシト「あぁ、すまないな。俺はまだ少し先生に用があるから先に帰っておいてくれ。もう完全下校過ぎてるしな。先生には俺から話しておいたから。」
「そうさせてもらうよ。と、言いたいとこだが最近何かと物騒だからな。この時間に1人で出歩くのは危険だからなぁ…」
ヨシト「あぁ、最近話題になっているな。何でも最近行方不明者が続出していて、しかも一人も見つかっていないんだとか。」
この学校からも生徒が数人行方不明になっていた。お陰で完全下校の時間が1時間早まり部活の連中がいい迷惑だとボヤいていたな。
ヨシト「じゃあ直ぐに済ませてくるからお前は先に校門に行っててくれ」
「分かった。なるべく早くな〜」
ヨシトに別れを告げて学校を出る。校門で待ってる間暇だったのでオレはなんとなく今日の夢について考えていた。
「あの夢綺麗だったな…」
今思い出すと石から剣を抜くってなんかアーサー王伝説みたいだよな。
「オレも伝説の剣とか抜いて一躍ヒーローになれねぇかぁ…なんてな、」
そんなことをボヤいている時だ。なんとなく違和感に気付いた。灯が全くない。最初はヨシトの用事が済んで先生が消灯し始めたのかと思ったのだが学校だけじゃない。周りの家や電灯の電気すら1つも付いていないのだ。
時刻はまだ7時くらいのはず。
「誰かおられますかぁ…?」
人の気配が全くない。とてつもなく嫌な予感がした。オレの第六感が今すぐその場から逃げ出せと言っているのが分かる。オレは怖くなってその場から逃げ出した。走りながら辺りを確認するが、やはりどこの家も電気が付いていない。何かがおかしい。
我が家の前に着く。しかし我が家の電気も付いていない。
「ハァ…ハァ…母さんと父さんはいないのか…?」
急いで鍵を開け中に入った。リビングの電気を付けようとするがどういうわけか何度スイッチを押しても電気が付く気配は無かった。
「クソっ…!?どうなってるんだ…!?」
急いで自分の部屋に行って電気を確認するが当然ここの電気もつかなった。誰かに助けを求めないと、そう思って携帯を起動したが圏外になっていた。
「……嘘…だろ」
助けを呼ぶことも許されず、オレはこの先この暗闇の世界から抜け出すことができるのだろうか…?このまま永遠に1人なんじゃないか、とそんな絶望を抱いた時だった。後ろで人の気配がした。瞬間、オレの中で希望が生まれた。オレは直ぐに後ろを振り返った
「そこに誰かいるのか!?」
だが、オレの希望はすぐに打ち砕かれた。
気が付いた時には黒い鎧を纏った女性がオレの首を絞め上げている。ふと、さっきヨシトから聞いた話を思い出す。この街では行方不明者が続出していて一人も見つかっていない、つまりもう死んでいる可能性だってある。もっと早く気付くべきだった。まさかこんな化け物がこの街にいたなんて。
「ぐっ……!?うぅっ……!」
苦しい。息ができない。少しずつ視界が薄れていっている。
「クソっ…!」
オレは残っている力を振り絞って女性に蹴りを入れた。しかし鎧を纏った女性はビクともしない。おまけに首を絞める力を強めてきた。
「(ヤバイ…落ちる…)」
オレにはもう反抗できるほどの力は残されていなかった。オレは死を覚悟した。鎧の女はもう片方の手に持っていた黒い剣を構え、そしてオレの心臓に突き刺した。オレの意識はそこで途絶えてしまった。
「お…………き……か…」
「…い………」
「おい!良い加減に起きないか!!」
「ハッ……!?」
気がつくと教室にいた。辺りを見るとまだ明るい時間帯だと言うことがわかる。教室の時計を見ると昼、先生に起こされた時くらいの時刻を指していた。
先生「全く…お前は何度注意されたら分かるんだ。おい聞いているのか?」
オレは急いで心臓を確認した。心拍数が跳ね上がっていたがちゃんと動悸がある。それと同時に胸ポケットに何かが入っているのがわかった。
「今のは…夢…?」
先生「寝ぼけているのか?全く…あとで職員室に来るように。」
「あ、はい…」
先生が授業に戻ったのを確認したあと胸ポケットに入っている物を取り出して見た。それは騎士の姿が描かれたカードーーーオレがよく遊んでいたゲームのクラスカードだった。そのクラスカードの存在がさっきの黒い鎧の女の存在が夢でないことを物語っていた。