神のみスピンアウト・魔法少女めがみ〜な   作:猿野ただすみ

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今回、女神の出番が少ないです。


悪魔8・魔法少女と悪魔の家

私立舞島学園。その校門の門柱に寄りかかるように、小学校低学年くらいの女の子が立っている。

やがて下校中の生徒の中に、女の子が待ち望む人物の姿が目に留まった。

 

「お姉ちゃん!」

 

そう言って、女の子は駆け出し抱きつく。その人物は、舞島学園高等部の制服を着た女子学生。

 

「なんだ、こんな所まで来て。

……何か、あったのか?」

 

女子学生が尋ねると、女の子は目を伏せ言った。

 

「お兄ちゃんに、会っちゃった」

「! ……それで?」

「私、思わず『お兄ちゃん』って言っちゃって、気がついたら慌てて逃げ出してた」

「そうか」

 

そう言って、女の子の頭を優しく撫で。

 

「安心しろ。その程度じゃ真相になど辿り着かんさ」

「うん…」

 

女子学生に撫でられたお陰か、女の子は大分落ち着きを取り戻したようだ。

 

「あ、二階堂先輩! そのオーんなの子は誰ですか?」

 

突然声をかけられ振り返れば、舞島学園中等部の制服を着た女子学生がそこにいた。

 

「先輩の妹さん?」

「……いや、親戚の子だ。今、この子の家がゴタゴタしてて、私が預かっている。名前は…」

 

そこまで言うと、女の子の頭を軽くポンと叩く。すると女の子は後輩学生へ向き直り、軽くお辞儀をして。

 

「……美神、冥子って言います」

 

そう名のった。

 

「めい子ちゃんかー」

「ちなみに冥子の冥は、冥界・冥府の冥だ」

「えっ、す、凄い名前ですね…」

 

さすがに少し引き気味の後輩。しかしすぐに気を取り直し。

 

「あ、ええと、私は長瀬純。中等部の女子バスケ部員です。

この学校の女バスは中高合同練習で、二階堂先輩は私たちの面倒もよく見てくれるんだよ?」

 

そんな彼女の説明に、冥子は二階堂を見て。

 

「お姉ちゃんは、やっぱりお姉ちゃんだね」

「……」

 

フン! と鼻息を鳴らし、そっぽを向く二階堂。そんな姿を見て、無性に嬉しくなる冥子だった。

 

 

 

 

 

月夜の駆け魂(正確には、人形に取り憑いたはぐれ魂)を追い出した、翌々日の放課後。歩美、天理、月夜、そして桂馬とえりの5人は、歩美の家の隣、エルシィが暮らす家の前まで来ていた。

はぐれ魂のこと、不審、とまで行かずとも様子がおかしかったプロセルピナのこと、そして前回聞きそびれた羽衣のことなど、諸々聞きたいことが出来たためだ。

本当のことを言えば当日には来たかったのだが、さすがに親に相談もせずに寄り道をするわけにもいかず、翌日木曜日は、桂馬が「ゲームの発売日だから」と駄々をこね、結局本日金曜日となったのだ。

ちなみに天理は一緒に行くなら、とコミュ障全開でOKを出している。

 

「それにしても、ホントにあの、ぽやーっとしたのが悪魔なのかしら?」

 

西洋人形…、ルナを抱きかかえた月夜が、愚痴混じりの疑問を投げかける。

 

『それは間違いない。あの娘は地獄から、「女神のオーブ」を持ってやって来たからな。それに悪魔が放つ魔力も感じられる。……まあ、微弱なものではあったが』

 

ルナの、星の飾りが着いたヘッドドレスから聞こえたウルカヌスの声が説明をする。

 

「あいつ、本当に落ちこぼれなんだな…」

 

桂馬はゲームをしながらも、あきれ顔で答えた。

 

「えーと、それじゃあチャイム押すよ?」

 

一度家によって鞄だけ置いてきた歩美が、先陣を切る。

 

リンゴーン…

 

呼び出し音が響く。すると。

 

『はーい…』

 

と家の中から返事をする声が。しかしその声は、エルシィのものとは違っていた。

 

(……あれ。この声って、もしかして)

 

歩美は、この声の主に思い当たる。

 

ガチャリ

 

「はい、どちら様で……」

 

しかして、扉を開け顔をのぞかせたのは。

紫の長い髪のキツめな印象の女性。

それは先日出会った、エルシィのサポートとしてやって来た悪魔、ハクアだった。

ハクアは、扉を開けた姿勢のまま動かない。

 

「ええと、ハクアさん?」

 

えりが声をかけると、ハッとした表情になり。

 

「ちょっと! 何であなたたちがここにいるのよ!?」

「また聞きたいことが出来たからここに、……って、エルシィさんには伝えてあるんだけど」

 

歩美が説明をすると、ハクアは怒りへと表情を変え。

 

「エルシィッ!!」

 

大声をあげて奥へと駆け込んでいった。

 

「……なあ、えり。お前はあの、ポンコツ悪魔みたいにはなるなよ?」

「うん。ゲーマーのその意見には同意するよ」

「……え? 私って、そーゆー目で見られてたんですか!?」

 

とばっちりでショックを受けるえりだった。

 

 

 

 

 

それからしばらくの後、酷く落ち込んだエルシィとともに現れたハクアによって、部屋の一室に通される歩美たち。

 

「何か持ってくるから、適当に座って待っててね」

 

そう告げてハクアは退室する。

ハクアに言われたとおり、適当な椅子に腰掛けた桂馬が口を開く。

 

「一応聞いとくけど、今日のこと、ハクアに言うの忘れてたのか?」

「う…、は、はい…」

 

予想通りの返答に桂馬は軽くため息を吐き、ゲーム機の画面からエルシィに視線を移して言った。

 

「お前、えりでももうちょっとマシだぞ?」

「うう~…」

「あのー、にーさま? 私()()って、……いえ、何でもありません」

 

異議を申し立てようとしたえりだったが、そのままの意味だと返されそうな気がし、そうなったら反論できない自信があったので諦めることにした。

 

「……さて、と。それじゃあ早速、エルシィさんに聞きたいことが…」

「ちょっと待て」

 

話を切り出そうとする歩美に、桂馬が待ったをかける。

 

「せっかくハクアもいるんだ、一緒に話を聞いてもらった方がいいだろ?」

「あっ、そうか」

「それに…」

 

桂馬はえりの方を見て。

 

「えりの用事を先に済ませた方が、気兼ねなく話が出来るんじゃないか?」

「なるほど」

 

その意見に納得する歩美。

 

(……ゲーマーって、実は結構頼りになる?)

 

ふと、そんなことを考える。

 

(よく文句とか言ってるけど、考えてみたらこんなことに巻き込まれるのなんて、普通はイヤだよね)

 

今更ながら、そのことに気がつく。

 

(天理が言う「優しい」かどうかは分かんないけど、少なくても「いい奴」なのかもしんない)

 

歩美は桂馬をじっと見る。

 

(……ただなー、ゲームの変人なのがちょっとなー)

 

結局行き着くとこはそこだった。

 

 

 

 

 

「待たせたわね」

 

そう言ってハクアは、トレイに紅茶とクッキーを乗せて戻ってきた。

 

「あ、ダメだよハクア。神様は甘いものが苦手なんだよ?」

 

エルシィがハクアを注意する。が。

 

「エルシィ! そういうことは先に言わなきゃダメでしょ!」

 

やっぱり怒られるエルシィ。

 

「……本当にこの人たちは悪魔なのかしら」

『……むう、そのはず、なのだが』

 

段々自信が無くなってくるウルカヌスだった。

 

「……ハクア。紅茶には砂糖が入ってるのか?」

「ン、桂木? ……いいえ、入ってないわよ。好みの甘さなんて人それぞれだし」

「なら紅茶だけもらうよ」

 

そう言うとトレイから紅茶のみを持っていく。

 

「あ、みなさん。砂糖が欲しかったら言ってくださいね。私が持ち歩いてるものがここに…」

 

そう言ったエルシィの左手に握られたビニール袋の中には、白くてフワフワした、もぞもぞ動く謎の物体が入っていた。

 

「それは砂糖、なのか?」

「はい。地獄の砂糖です!」

 

一瞬の沈黙ののち。

 

「そんなもん、使うかあぁっ!!」

「身体に悪そうだなぁ」

「……なんか、『あ゛ー』とか言ってるよ?」

「美しくないのですね」

「そもそも、人間が食べても大丈夫なんでしょうか?」

 

5人全員に突っ込まれた。

 

「……安心して。ちゃんと人間界の砂糖は用意してあるから」

 

すまなそうに、スティックシュガーの入った容器を置くハクア。

 

「それじゃ私は…」

「待て。お前もここに残れ」

 

部屋を出ようとするハクアを、桂馬が止める。

 

「エルシィだけだと、なんか不安だ」

「……まあ、エルシィだからねー」

「ちょ、ヒドいです~!」

 

エルシィは文句を言うが、誰も取り合わない。

 

「あと、えりがお前に話があるそうだ」

「えりが?」

 

そう言って視線を向けると、えりは焦った表情でドギマギしている。

 

「えり」

 

桂馬が声をかける。

 

「言うって決めたんだろ」

 

相変わらずゲームをしながら、淡々と言う。しかしえりは、桂馬がかけたその言葉だけで落ち着きを取り戻した。

 

「あ、あの、ハクアさん。

……すみませんでした!」

「え、えり!?」

 

思ってもいなかったことに、驚くハクア。えりは更に続ける。

 

「いくら友達が大事だからって、ハクアさんにはキツく言い過ぎました。だから、すみませんでした」

「全く…」

 

ハクアは、呆れていた。

 

「オマエが謝る必要なんてないわ。

本来、魔法少女候補を見つけてお願いするのは、エルシィの仕事よ。精々がサポートメンバーの私が手伝うくらいね。

つまり、えりに頼ろうとしたのがそもそもの間違いだったのよ。

だから、気にすることはないわ」

「でも…」

「えりさん」

 

なおも食い下がろうとするえりに、エルシィが声をかける。

 

「ハクアの気持ちも汲んであげて?」

「……そう、ですね。わかりました。この話はこれで終わりにします」

 

そう言ってえりは引き下がることにした。

 

「エルシィ。お前、ズルいよな」

「え、何がですか?」

 

突然桂馬に言われ、エルシィは聞き返す。

 

「普段はああなのに、時々すげーマトモなことを言うんだもんな」

「私がマトモなことを言っちゃいけないんですか!?

と言うか、ああってなんですか、ああって!?」

「……ホントに言っていいのか?」

「聞きたくありません!」

「なら聞くな」

「はい!」

「……なによ、この不毛な会話は」

 

その時みんなが思っていたことを、ハクアはポツリと呟いていた。

 

 

 

 

 

「えっと、じゃあ今度こそ、エルシィさんとハクアさんに聞きたいことがあるんだけど」

 

ようやく歩美は、本題へと入ることが出来た。

 

「えっと、まずは、前回聞きそびれた羽衣の事から。

何だか色々と出来るみたいだけど、それって結局なんなの?」

 

羽衣は見ていても、あまりにもいろんな事が出来るため、つかみ所が無いのだ。

 

「えーと、羽衣さんは、飛んだり消えたりものを作ったり、とにかく凄いんです!」

「……早速ハクアの出番だな」

「ええ~!?」

『残念ですが、エルシィさんの説明は説明になっていません』

「あうぅ~…」

 

ディアナにまでダメ出しを出され、意気消沈をするエルシィ。

 

「まあ、そこまでにしてあげて。普通の公務魔じゃあ、羽衣の事を詳しくなんて説明できないから。……確かに、エルシィは酷すぎるけど

 

最後にボソリと本音が漏れたが、幸いみんなには聞こえなかったようだ。

 

「それで羽衣だけど、これは地獄の魔法科学によって造られた、魔法の補助システム、あるいはデバイスかしら?

正式名称は『新魔布 タイプ5F』、電魔ナノマシン100%のゲルで帯状に生成したものよ。魔力のロスが無いからエルシィみたいな子でも扱えるわ」

「ハクア、ヒドいっ!?」

 

エルシィの非難はやはり無視し、ハクアは話を続ける。

 

「拡張や変形も自由自在だから、さっきエルシィが言っていたことも可能ってわけね。

あとは、活動記録の保存や情報の表示も可能となっているわ」

「なるほど」

 

と桂馬は頷くが、どうやら肝心の魔法少女たちが判っていない様だった。

 

「ええと、ごめん。『でんま』とか『ナノマシン』とか『ゲル』ってよく判んないんだけど」

 

歩美が代表して質問する。するとハクアが困った顔をして答えた。

 

「そっか。人間界の、しかも子供には判りにくいか。

『電魔』って言うのは、電力化した魔力って考えてもらえればいいけど、あとのはどう説明したらいいのか…」

 

ハクアが頭を悩ませていると、桂馬が口を開いた。

 

「いいか。ナノマシンは、目には見えないくらい小さな機械、そしてゲルは、液体と固体の間、ドロドロの物質の事だ。

つまり、ゲル状のナノマシンの集合体を、あの羽衣の形に加工したっていうことだ。

元がゲル状だから、ナノマシンに魔力を通して念じれば、どんなものでも造ることが出来る。

……と、そういうことでいいのか、ハクア?」

 

最後に確認をとる桂馬。一瞬呆気にとられていたハクアは、慌てて頷いた。

 

「大体その認識でいいわ。補足すると、ナノマシンには色々な術式…、術の使い方がインプットされているから、羽衣さえあれば飛行や透明化がエルシィレベルでも使えるってわけよ」

「ハクア~…」

 

ハクアからもディスられまくり、エルシィは涙目になる。

 

「全く…。あなたがダメなのは、あなた自身が理解していることでしょう? それならそんなこと言われないように、今与えられている仕事を、しっかりと成功させるように頑張りなさい。

……私も、力を貸してあげるから!」

 

ハクアはただダメ出しをするだけではなく、諭すように、元気づけるように言って聞かせた。

 

「……ハクア、ありがとう!」

「ちょっと、エルシィ! 抱きつかないでよ!?」

 

抱きついてくるエルシィに、困惑するハクア。しかしその言葉とは裏腹に、ハクアはまんざらでもない表情だった。

 

「……」

『……どうしたのだ、月夜』

「!? 何でもないのですね!」

 

慌てて否定をする月夜。しかし、心の内では。

 

(……不思議なのですね。あんなに一方的に貶していたのに、今のあのふたりは美しく見える)

 

そう感じていた。

 

「えーと、そろそろ次の質問いいかな?」

「あ、ゴメンなさい! ……ほら、エルシィ。いい加減に離れなさい!」

「あわわわ~」

 

強引に引っぺがされるエルシィ。

 

「そ、それじゃあ聞くけど、はぐれ魂って何?

一応エルシィさんからも聞いたけど、駆け魂、奪い魂、はぐれ魂ってハッキリした違いがあるの?

あと他に、何たら魂みたいなのはいたりするわけ?」

 

歩美の質問を聞いて、成る程と頷くハクア。

 

「質問に答える前に、エルシィからどの程度のことまで聞いているの?」

 

ハクアが、どの程度の知識があるのかの確認を図ると、桂馬がそれに答えた。

 

「駆け魂は悪い悪魔の魂で、人間の女性のココロの隙間に入り込み、その子供として転生しようと目論んでる。

奪い魂は、取り憑いた女性の身体を奪い、肉体を得ようとしている。

はぐれ魂は、まだ彷徨っている段階の駆け魂。あるいは、人に取り憑かないで悪さをする駆け魂。

又聞きもあるけど、大体こんなとこだな」

「そう」

 

ハクアは満足したように頷く。

 

「エルシィにしては、ちゃんと説明してたみたいね。

もう少し詳しく説明すると、その3つひっくるめて駆け魂と呼ばれているわ。それを細分化…、細かく分けると、今、桂木が言った3つに分類されるのよ。

と言うわけで、それ以外のカテゴリーはないわ」

 

取り敢えず、更に厄介なのが現れることが無いことで、歩美はホッと胸を撫で下ろす。

 

「それで、はぐれ魂だけど、この分類の中では一番フワッとしてるの」

「ふわ?」

 

こういう説明にそぐわない言葉に、月夜が聞き返す。

 

「んー、そうね。ひと言で表すと、『人に憑いていない駆け魂』ってとこよ。だから状態もマチマチ。

彷徨っているもの、力を得るために取り敢えず物に憑くもの、転生に興味が無くて負のエネルギーを集めているもの、そして、ある程度力を取り戻して入り込める隙間の無いもの。これら全てがはぐれ魂よ」

「要はカテゴリーのゴミ箱か」

「ん? どういう意味?」

 

桂馬の悪態の意味を尋ねる歩美。

 

「区分が難しかったり面倒くさいと、取り敢えずそこにぶっ込んどくんだ。そしてそれらは、手つかずのまま放置される」

「耳が痛くなる話ねー。否定もしないけど」

 

桂馬の説明に、苦笑いを浮かべるハクア。

 

「まあ、そんなわけだから、はぐれ魂が相手の時には充分気をつけてね。特に力を取り戻しているヤツは、あなたたちが戦った奪い魂よりも自我がハッキリしているものもいるわ」

「う…、はい、わかりました」

 

真剣な表情で言うハクアに、歩美は畏まった返事を返した。

 

「ええと、それじゃあ最後の質問、って言うか一緒に考えて欲しいことなんだけど。

一昨日、プロセルピナさんに会ったんだけど…」

「ああ、エルシィから報告を受けてるわ。何だか様子がおかしかったみたいだけど…?」

「うん。元の世界に戻ってからなんだけど、ゲーマー…、桂木の姿を見てから様子がおかしくなって、『お兄ちゃん』って呼んでから慌てて逃げちゃったの」

 

あの時のことを思い浮かべながら、状況を説明する。

 

「ふぅん。

……そうね、情報が足りないから絞り込めないけど、いくつかの仮説は立てられるわ」

「えっ、どんなの!?」

 

歩美は前のめりになって尋ねる。

 

「例えば、彼女には兄がいて、桂木が小さいころの兄に似ていた。

それから、転生のための魂の浄化が不完全で前世の記憶が残ってる場合があるんだけど、桂木が前世で彼女の兄だった場合、現世で判ってしまうことも稀にあるわ。

他には、……桂木は何かある?」

「そうだな。あいつは並行世界の存在で、そこではボクが兄だった。

いずれボクにもうひとり妹が出来て、ずっと未来からこの世界に来た。

悪い予想だと、何者かにボクが兄だと刷り込まれてる可能性もあるな。

どちらにせよ、ハクアが言ったとおり情報が足りない。こんな推測なら、知らないのとさほど変わりがないな」

「そっか…」

 

結局、プロセルピナについての情報にはほとんど進展は無かった。

 

「だが、落胆することはないぞ。ボクのことを『兄』と呼んだこと自体は立派な情報だ」

「そうね。情報を積み重ねていけば、いずれ正解は導き出せるはずよ」

 

桂馬とハクアに励まされ、そだねと返す歩美だった。

 

 

 

 

 

このとき、質問が始まってからの天理が、いつも以上に喋らないことに、誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

「あー、でも、ハクアさんも一緒にいてくれて助かったよ」

 

質問も終わり、安堵した歩美。すると桂馬が。

 

「何言ってるんだ。エルシィと一緒に暮らしてるんだ、当たり前だろ?」

「えっ、そうなの?」

「ちょ、ちょっと! なんでこの家にいたからって、一緒に暮らしてるって事になるのよ!!」

 

この発言に異議を申し立てようとするハクア。

 

「ここにエルシィひとりで暮らしてるなら、菓子とかの準備はエルシィがしてたはずだ。

だけどお前は、勝手知ったる風にクッキーと紅茶を持ってきた。しかも、人間の世界の調味料まで」

「そ、それは…」

「それにこの家に来てただけなら、突然ボクたちがやって来たことに目くじらを立てる必要もないだろ」

「……」

「何より天理の家で、エルシィが言ってただろ。ハクアがボクと家族の様子を観察してたって話してたとき、『あの日、帰りが遅かった』って」

「「あっ!」」

 

これには、ハクアと歩美も声を上げずにはいられなかった。

 

「えっ、でもなんで、一緒に暮らしてることを隠しておきたいの?」

 

歩美の疑問も尤もだが、それも桂馬は見抜いていた。

 

「ほら、天理の部屋に上がろうとしたときに言ってただろ。『日本の家屋って、土足厳禁だったわね』って。

だけど実際は、エルシィと一緒にこの一般的な家に住んでいる」

「……もしかして、見栄を張ってた?」

 

さすがに歩美も、ここまで言われて事の真相に気がついた。

 

「……あーもー、そうよ! 見栄を張ってたわよ!

私は西の生まれなの。だからヨーロッパとか、西の国で仕事をするのが夢なのよ。

今はエルシィのサポートだけど、いずれは駆け魂隊として活躍するつもりなんだから!」

「ん? 駆け魂隊って凄いのか?」

「駆け魂隊はエリートにしかなれませんから」

 

桂馬の疑問にエルシィが答える。

 

「そうか。まあ、今回のことは、駆け魂隊に配属されるまでの肩慣らしくらいに思っておけ」

「……ええ、そうするわ」

 

ハクアは素直に頷いた。

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね。最後にみっともないとこ見せちゃって」

「別に構わないさ。それでお前の才能の評価が下がるわけじゃないからな」

「そうよね!」

 

桂馬のセリフに上機嫌になるハクア。

 

「それじゃ皆さん、お気をつけて~」

 

そう言ってエルシィが見送ってくれた。

玄関を出て、しかし桂馬はゲームをしながら考え事をしていた。

 

(駆け魂隊はエリートにしかなれない。しかしドクロウ室長はハクアとエルシィに特殊任務を与えた。

……やっぱり、他の連中には知られたくない、特別なわけでもあるのか?)

 

桂馬はずれた眼鏡を直し、心の中で呟いた。

 

(エンディングはどこだ?)




桂馬「桂木桂馬…」

かのん「中川かのん…」

エルシィ「エリュシア=デ=ルート=イーマの…」

3人「あとがき代わりの座談会コーナー☆出張版!」

かのん「って、エルシィさん!? このコーナーって、原作終了後が設定されてるんじゃ…!?」

エルシィ「えーと、実は今回、作者さんがあることに気づいて、この組合せにしたそうです」

かのん「あること?」

桂馬「ああ。実に下らないことなんだが…。
前回のバトル、どうやって駆け魂を捕まえたか憶えてるか?」

かのん「え? ええと、『メルクリウス』が駆け魂を追い出して、『ディアナ』が逃げられないように拘束、向こうのエルシィさんが勾留したんだったよね?」

桂馬「ああ、そうだ。この流れ、どこかで見たことないか?」

かのん「?」

桂馬「そうだな。『勾留』を『消滅』に変えたらどうだ?」

かのん「……あ、もしかして」

桂馬「そうだ。詳しくは言わないが、とある二次作品と同じ流れになっている。いや、たまたまだから、なってしまったか」

エルシィ「それで私も呼ばれたってわけです!」

桂馬「因みに前回の座談会は、月夜とウルカヌスで殆ど書き上がったあとだったので、ボクたちは今回に回されたらしい」

かのん「さ、作者さん…」

桂馬「まあ楽屋ネタはここまでにして、今回の解説といこう」

かのん「そ、そうだね」

桂馬「今回は第2回説明回だ。
まずはアバン的な話で謎の少女・美神冥子と二階堂、おまけで長瀬だな」

かのん「なんか、伏線BAN! BAN! 張ってるね」

エルシィ「かのんちゃんも自分のネタ、入れてきますねー」

桂馬「なお、美神冥子は当然偽名で、元ネタは『GS美神』の美神令子と六道冥子だと」

エルシィ「『美しい神』と『冥界の子』で、キャラにピッタリだったから、みたいですよー?」

桂馬「さて、場面は変わり、エルシィの家に着いてからだが。……登場すらしていないのに、ポンコツ悪魔の面目躍如だな」

エルシィ「そんな面目躍如、嬉しくありません~!」

かのん「そして、とばっちりでダメージ受けるえりさん」

エルシィ「こっちの私は、2倍のダメージです~」

かのん「そして部屋に通されて…。歩美さん、少し桂馬くんのこと見直してる?」

エルシィ「歩美さんも、神にーさまのいいところに気づき始めてますね」

かのん「でも、ゲーマーであることがそれを台無しにしてるね」

桂馬「ところで、エルシィが出した砂糖ってあれだよな?」

かのん「え、あれって?」

エルシィ「原作2巻FLAG.11、『エリー SO SWEET』で私がケーキ作りに使った、地獄の砂糖です!」

かのん「元ネタあったんだ!?」

桂馬「因みに天理は、ここのツッコミしか喋ってないな」

かのん「今回、ホントに喋ってないんだね」

エルシィ「そしてわた…」

桂馬「えりが謝ったあと、ようやく質問タイムの始まりだ。
羽衣の説明は、カバー下の説明を参照にかみ砕いているな」

かのん「『電魔』については、作者さんの独自解釈みたいだね」

エルシィ「次の質問は、駆け魂についてですね」

桂馬「駆け魂そのものは原作のまま、奪い魂はこの作品のオリジナル、はぐれ魂はアニメとマンガの辻褄合わせって感じか」

かのん「はぐれ魂…。スピンオフ作品で私が被害に遭った、あれかぁ」

エルシィ「マンガ版って、どう見ても魂度(レベル)4ありますよ?」

桂馬「なのに、普通の勾留ビンで捕獲してるんだよなー。
まあ、本編とは別の設定で成り立っているって言われたら、それまでなんだが。
まあいい。次は質問、ではないな」

エルシィ「プロセルピナさんについて、一緒に考察してましたね」

桂馬「あの情報量で正体の特定は、まず不可能だな」

かのん「一応、いい線いってる仮説はあるんだよね?」

桂馬「正解ではないがな」

エルシィ「そして、ハクアが神にーさまにやり込められますが、やっぱり最後にフォローを入れる辺り、こっちよりも気配りが出来てますね」

桂馬「そこは、良くも悪くも、えりのお陰だな」

かのん「そしてラストはまた、ドクロウ室長に対しての桂馬くんの疑問だね」

桂馬「どうやらこっちでも、なかなかの策士らしいからな。
……さて、これで座談会も終わりだが」

かのん「なんか今回は長かったね。この段階で、いつもの1.5倍から2倍位だよ」

桂馬「前置きが長かったからな」

エルシィ「そして最後にお知らせがあります」

かのん「はい。このあと22時から、神のみスピンアウトの第二弾が始まります。
主人公の名前は、『黒野ドクロウ』ちゃん。興味がある方はご覧になってください。お願いします」

桂馬「さすがアイドル。こういうのは得意なんだな」

かのん「番宣はよくやってるからね」

エルシィ「さて、それでは。ずいぶんと長くなりましたが、ここでお開きにしたいと思います」

エルシィ・かのん「次回もまた、みてくださいね」

桂馬「……次回も、コンティニューだぞ?」
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