神のみスピンアウト・魔法少女めがみ〜な   作:猿野ただすみ

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済みません。大変遅くなりましました。


悪魔14・結とマルスと二振りの剣

エルシィは美代の後をつけていた。……とはいっても、うららが美奈に[メルクリウス]とえりの紹介をしていた時、[メルクリウス]から小声で突っ込まれて、慌てて追いかけたのだけれど。

然りとて、エルシィも駆け魂の登録は済ませてあるため、対象を見つけるのはいとも容易かった。1分もかからずに対象へと辿り着く。

美代は正義と共に会場を出て、廊下にいた。辺りには他に、人の姿は見えない。

 

「美代、私の事は『お父様』と呼ぶように言ったはずだが」

「ですが…」

「口答えをするんじゃないっ!!」

 

バチイイン!という乾いた音が、廊下に響き渡る。

 

(あわわっ! これって、でぃーぶいってやつじゃないですか!?)

 

姿を消したエルシィが、ガタガタと震えながらその様子を見ている。

 

「いいか。女であるお前が、私に口出しするんじゃない! お前はただ、私の言う事に従っていればいいんだ!」

 

(しかも、セクハラでパワハラです!)

 

この様子を見ていて、さすがにエルシィも憤りを感じた。そして周りへ注意が行き届かなくなり、装飾品の花瓶が置かれた台に軽く接触して。

 

かたり…

 

小さくではあるが、そんな音を響かせる。それに気づいた正義は、ビクリと肩を竦ませた。

 

「……まあいい。挨拶回りが途中だから、先に戻っているぞ」

 

疑心暗鬼に囚われた正義は、そう言葉を残して会場へと戻っていった。

 

(……何だか私でも、美代さんの心のスキマの原因、わかった気がします)

 

さすがに今回は、あまりにも分かり易い状況である。桂馬ほどの考察力が無くとも、推察することは出来た様だ。

 

(とにかく、皆さんと合流して報告しましょう!)

 

そう結論づけたエルシィは、美代の傍を()()()()()()()

 

 

 

 

 

父が立ち去り、彼女は認識していないがエルシィも立ち去り、ひとり廊下に残された美代。

 

(私は…どうして…!)

 

自問し、自身を責める。そんな事を繰り返すが、父に逆らうことが出来ない現状に自己嫌悪をする。それがいつもの事であった。……だが。

 

「……え」

 

ふと気がつくと、美代の右手には禍々しいデザインを施された、一振りの剣が握られていた。

 

「これ、は…?」

 

そう言って剣を眺めている内に、美代の心の中にある感情がふつふつと込み上げてくるのだった。

 

 

 

 

 

 (歩美)

(ん? どうしたの、メル)

 (あの悪魔っ子が、ヴァイスの事で話がしたいそうだ)

(うん、わかった)

 

メルクリウスからの報告を受け、[メルクリウス]はえりに伝える。

 

「……そうですか。わかりました。早く美代さんを助けてあげないと」

「そうだね」

 

二人は迂闊にも、その様な会話を交わしてしまう。

 

「……美代? まさか、美代姉さまに何かあったの!?」

「え…、あ、結さんのこと忘れてました~!」

「わ、私も!」

 

……うっかりは感染するものなのだろうか。

 

「……! 魔法少女が関わっているという事は、美代姉さまにヴァイスが取り憑いてるのですか!?」

「あうう~、メルクリウスさん、ごめんなさい~」

「いや、私も相槌打っちゃったし」

 

謝るえりに、ため息を吐いて答える[メルクリウス]。

 

「しょうがないか」

 

[メルクリウス]が意を決して。

 

(メル、みんなをこっちへ呼んで)

 (彼女を巻き込むのかい)

(バレちゃったし、仕方がないよ。それに魔法少女候補だから、知る権利はあるんじゃない?)

 (……確かに。わかった)

 

メルクリウスは応え、会話は途切れた。

 

 

 

 

 

数分の後、テラスには他の魔法少女達とエルシィが集結する。

 

「はあぁ。何とかうららちゃん達から解放されたよ」

「私と美奈が戻らなければ、まだ抜けられずにいたかもしれないのですね」

 

[アポロ]が疲れた声で言い、[ウルカヌス]は呆れたように言った。

 

「あの! それで美代姉さまは…!?」

 

居ても立ってもいられないと、エルシィに尋ねる結。促されたエルシィは、先程見た光景を語って聞かせた。

 

「それで、言いたいことが言えない事で心のスキマが出来て、そこに駆け魂…ヴァイスが入り込んだんじゃないかと」

 

エルシィの推測に[ウルカヌス]が頷いた。

 

「確かに、さっき美奈から聞いた話とも合致するのですね」

 

[ウルカヌス]の補足に、みんながその意見で納得しそうになったその時。

 

「待ってください。エルシィさんのその推測は間違いじゃないと思うけど、多分少しだけ違います」

 

そう意見を返したのは結だった。

 

「結、何か心当たりがあるの?」

 

[メルクリウス]が尋ねると、深く頷いてから、意を決して口を開いた。

 

「美代姉さまは多分、私と同じなんだと思います」

「同じ…って、さっき私に話してくれた事でしょうか」

 

えりが尋ねると、結は首を横に振り話を続ける。

 

「えりちゃんに話した、もっと先…。多分、ただ言いたいことが言えないんじゃなくて、言いたいことを言わせて貰えないんだと思います」

 

確かにエルシィが、美代はDVにセクハラ・パワハラを正義から受けていたと言っていた。これでは何か口答えしようにも、無理矢理抑え込まれてしまうだろう。

 

「……私のお母様は暴力は振るわないけど、お母様に強く言われると言い返すことが出来なくなるから」

 

自分に照らし合わせた結は、顔を俯かせながら言った。みんなはどう声をかけてあげればいいのかわからず、この一帯だけ静けさが支配する。すると、それを見計らったかのように。

 

『きゃあああああ!』

『うわっ! や、やめろっ!!』

 

会場の中から悲鳴や喧騒が聞こえてきた。みんなは一端視線を合わせ、一斉に動き出す。……と。

 

「えりと結は危険だから、そこで待ってて!」

「! ……はい」

 

[メルクリウス]から注意を受け、えりは渋々頷いた。

 

 

 

 

 

中に入ると多くの人々が(うずくま)り、何やらブツブツと呟いていた。平気な人達も右往左往し、我先にと扉に殺到している。[メルクリウス]が蹲る人のひとりに近づいてみると。

 

「……いや…違うの…ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

とても小さな声で謝っていた。[ウルカヌス]や[アポロ]が別の人物に近づいてみても、みんな似たり寄ったりの状況である。

 

「これって一体…」

 

姿を消した状態で、エルシィが呟く。

 

「皆さん、ご無事ですか!?」

 

そう声をかけてきたのは柳である。その後ろに正太郎とうらら、美生、美奈がいる。

 

「正太郎さん、一体何が…!?」

「皆さん、あちらを」

 

[メルクリウス]の疑問に正太郎は、会場の舞台を指す。そちらに視線を移すと…。

 

「え、美代さん…?」

 

舞台の上には美代が両刃の剣を携えて立ち、目の前で腰を抜かしている正義に切っ先を突きつけていた。

 

「……お姉様があの剣を持って現れて、会場の人達を斬りつけていったの」

「斬られた方が傷を負うことは無いようですが、御覧のようにただ謝るばかりで。おそらくですが、自分が行った罪の意識に、(さいな)まれているのではないかと思われます」

 

美奈と正太郎が状況を説明する。

 

「……つまり、罪の意識を掘り起こす、もしくは抉り出す、そういった剣という事でしょうか」

「柳さんのその意見が正しいのですかね。言わば必罰の剣といった所でしょうか。悪…いえ、ヴァイスの力で正義を行おうというのは、かなり皮肉めいてますが」

 

柳の意見に、ため息を吐いて正太郎は答えた。

 

「でもそれなら、剣で斬られなきゃいいんだよね?」

 

そう言って飛び出したのは[メルクリウス]。瞬時に魔法少女の衣装へ切り替え、舞台に向かって突き進む。

 

「あ、駄目…」

 

美奈が制止しようとしたときには、[メルクリウス]は既に美代のすぐ傍まで辿り着いている。その手を正義へと伸ばし。

次の瞬間、その腕に奔る衝撃。痛みは無いが、同時に過去の記憶が呼び覚まされる。それは、酷い点数を採ったテストの答案用紙を隠していたことだったり、学校の花壇の花をうっかり折ってしまったことを黙っていたことだったりと、罪の意識を抱いたそれぞれのことだ。

ひとつひとつはそれ程のものではないはずだが、それぞれが[メルクリウス]…いや、歩美の心に、途轍もない重圧となってのしかかってくる。

がくり、と[メルクリウス]が膝をつく。

 

『メルクリウス(さん)!』

「……何とか、大丈夫…」

 

叫ぶみんなに、何とか答える[メルクリウス]。

実際、どうにか持ち堪えてはいるが、それは決して[メルクリウス(歩美)]が強靱な精神力を持ち合わせているからではない。

 

 (大丈夫か、歩美。(女神)の力である程度は緩和できているが…)

(ありがと。お陰で少しはマシみたい。……でも、戦うのはちょっと無理かな)

 

そう心の中で返した[メルクリウス]は、遂には堪えきれずにへたり込んでしまった。

途端に駆け出す美代。その行く手には魔法少女達。[メルクリウス]には及ばないが、神速とも呼べるそのスピードで一気に間合いを詰め、振り上げた剣を一番手前にいた[アポロ]に向かって振り下ろし。

 

私の聖域(パーソナル・サンクチュアリ)!」

 

ギリギリ間に合った[ミネルヴァ]の結界によって、その剣は弾かれる。

 

「……み、みんな。……結界から、出ないように」

 

何とか声に出して伝える[ミネルヴァ]に、みんなは一斉に頷いた。

 

 

 

 

 

一方、テラスに残ったえりと結。最初は不満を感じていたえりだったが、()()が自分達を想って言ってくれたこと、そして実際、何の役にも立てないことはわかっていたため、すぐに心は落ち着いた。

そんな彼女が結に視線を移すと、落ち着きなくもじもじとしている。その様子を見てえりは、ふとあの時のことを思い出し、口を開いた。

 

「どうかしましたか、結さん」

「……美代姉さまの中にはヴァイスがいます。もしかしたら、あの悲鳴の原因が美代姉さまなのではと思うと、居ても立ってもいられなくて…」

 

結の心情を聞いたえりは、やはりと思う。

 

「それなら、確認しに行けばいーじゃないですか」

「でも、メルクリウスちゃんが…」

 

その返答する姿を見て、()()もあの時、自分と同じことを思ったんだろうと、今更ながら理解する。

 

「結さんはメルクリウスさんの言いつけと美代さん、どちらか大切なんですか?」

「美代姉さまです!」

 

すかさず答える結に、えりはニコリと笑い言った。

 

「答え、出てますよね?」

「あ…」

「今ならもれなく、私も付いてきますよ?」

「えりちゃん…」

 

結の表情に、僅かながら笑顔が戻った。それを見たえりは、心の中で感謝をする。

 

(ありがとうございます。ちひろさん)

 

 

 

 

 

魔法少女達と美代との戦闘は、膠着状態となっている。[ディアナ]が矢を射ても美代は剣で弾き、[ウルカヌス]が衣服を操って動きを止めようとしても、気配を読んでか咄嗟に効果範囲から距離をとる。[アポロ]が歌で浄化を図ると、周りの斬られた人達、そして[メルクリウス]が苦しみだしたので慌てて中止した。ディアナが剣を使って人々の負の感情を蒐集していると推察し、女神を通して連絡をとったため、以降[アポロ]は攻撃出来ずにいる。

方や美代も、[ミネルヴァ]が張った結界を攻略できず、透明化していつの間にか近づいたエルシィが展開した羽衣の結界によって、正義が守られこちらにも手出し出来ないでいた。ついでに言えば、無事だった来客はタイミングを逸した正太郎達を除き、既に避難を終えている。

そこへ。

 

「美代姉さま!」

 

結、そしてえりが現れた。

 

「……結…ちゃん?」

 

今まで会話すらしようとしなかった美代が、名前を口にした。彼女にとっても、結がここへ来るのは予想外だったようだ。

 

「美代姉さま、これ以上みんなに非道いことしないで!」

 

結の呼びかけに、美代は苦い顔をする。

 

「……結ちゃんなら、私の気持ち、わかるでしょう?」

 

この問いかけが、その似た境遇を指していることは結にもわかる。だが、美代と結には根本的な思考の違いがあった。

 

「……わかりません! 確かに私と美代姉さまは、よく似ているんだと思います。私も、お母様の言いなりではいたくないと思ってますから。……でも私は、他の多くの人を巻き込みたいとは思ってません!」

 

結の反論に、更に苦渋に満ちた表情になる美代。暴走状態にあるとはいえ、今はまだ彼女の感情の発露に過ぎない。良心の呵責もあったのだ。

 

「……う、うるさあああいっ!!」

 

結に向かって振り下ろされる剣。それは単なる癇癪であったが、それでも結を斬りつけるには充分な間合いである。

 

「結さんっ!」

 

それは咄嗟のことである。えりが結を押し退けたのだ。これはあくまで無意識の事で、もう一度同じ場面になった時、えりの体が動いているかはわからないが。

振り下ろされた剣が、えりの背中を斬りつけた。そしてそのまま二人は倒れ込む。魔法少女達も、正太郎達も、美代でさえ言葉を失う。そんな中。

 

「えりちゃん!?」

 

最初に声をかけたのは、庇われた結である。そして次に声を発したのは。

 

「……あれ? 私、なんともありませんよ?」

 

この様子に、結以外のみんなが絶句する。それはそうだ。[メルクリウス]でさえかなりの精神ダメージを受けているのに、まったく何ともないのだから。

しかしその事を知らない結は、ただ安堵した。そしてキッと美代を睨み、しかし言葉は別の者に投げかける。

 

「マルスさん! 私に力を貸して下さい! 美代姉さまを、ヴァイスから解放する力を!」

 

その呼びかけに応えるかのように、透明化したエルシィが持つ[女神のオーブ]から光が放たれ、結の身体を覆う。

 

『結。君のその真っ直ぐな想い、私は好きだよ』

 

---……ありがとう、マルスさん。

 

心の中での短い会話の後、覆っていた光は閃光となり、それが治まったその場には、新たな魔法少女が誕生していた。

 

「結ちゃんが、めがみ~なになっちゃいましたの!」

「う、嘘…」

「ふ、二人とも、おお落ち着いて…」

 

うらら、美生、美奈が驚いている。因みに一番驚いているのは、落ち着けようとしている美奈だったりするが。

 

(……これ、ハクアさんが何とかしてくれる…よね?)

 

アポロ(かのん)]がこの状況を憂い、同時に仕事の増えたハクアに対して同情の念を感じるのだった。

 

「美代姉さま。私が、めがみ~な・マルスがお相手します!」

 

そう告げた[マルス]の手には、半透明の両刃の剣が握られている。

 

「あの剣は?」

「あれはマルスの理力の剣、[祝福の剣(ブレス・ブレード)]。美代さんの剣と同様に人を傷つけず、ダメージを与えるのは人の精神ではなく邪な存在…、この場合はヴァイスなのですね」

 

正太郎の質問に、ウルカヌスから聞いた説明を伝える[ウルカヌス]。

 

「「ハアァッ!!」」

 

裂帛の気合いと共に、両者は踏み込み剣がぶつかり合う。数瞬の鍔迫り合いののちに、弾かれたようにお互いが飛び退く。

 

「嘘…。お姉様は古流剣術の使い手なのに…」

 

美奈が呟く。

 

「……マルスは軍神、近接戦を得意とするのですね」

 

やはりウルカヌスからの情報を伝える[ウルカヌス]である。

もちろん、結自身は剣術を習っているわけではないが、マルスから戦闘経験や技能をフィードバックして、半ば自身の技能・経験として扱っているのだ。

 

 (結、気をつけろ。あの剣に斬られると、罪の意識に押し潰されて身動きが出来なくなる)

(それでメルクリウスちゃんも…。え、それではえりちゃんは?)

 (……私に聞かないでくれ。強いて言うなら、記憶操作を受け付けないのと関係あるのかも知れないな)

 

わからないなりに、推測を述べるマルス。[マルス()]はそれでひとまず納得することにして、再び美代へと斬り込む。

しかしその剣はいなされて、[マルス]の頸筋へと刃が閃く。[マルス]は慌てて、しゃがみ込むように姿勢を低くして刃を躱し、そのまますれ違い様に美代の胴へと剣を振るうが、こちらも軽く躱されてしまう。

どうやら美代の方が[マルス]よりも一枚上手(うわて)のようだ。

本来のマルスなら、それほど苦もなく美代を征していただろう。だが今は、結が力を行使している関係で、本来の実力が出せないでいる。経験と技能をフィードバックしているとはいえ、どうしても(いき)値というものがあるのだ。

 

(……マルスさん。試したいことがあるの)

 

美代と剣を斬り結ぶ[マルス]が、マルスに語りかけた。

 

 (試したいこと?)

 

マルスが聞き返すと、結がその内容を伝える。すると。

 

 (な、それは危険すぎる! 下手をすれば…!)

(わかってる。それでもこれくらいの覚悟がなければ、美代姉さまに一太刀入れることは出来ないから…)

 

マルスは反対するが、結とて今のままでは敵わないと察していたのだ。

 

 (……わかったよ。どのみち今の私では、これ以上の手助けは出来ないんだ。だから、結の健闘を祈っているよ)

(ありがとうございます、マルスさん)

 

結は、知っている。美代の強さを。

結は、知っている。美代の太刀筋を。

結は、美代の剣術の稽古を時々見学していた。普段とは違い、生き生きとしている美代を見ているのが嬉しかったから。だからこそ。

 

「ハァッ!」

 

気合いと共に強引に美代を押し返すと、美代は僅かにバランスを崩す。

 

(ここっ!)

 

結は剣を大上段に振り上げた。しかし美代のそれはフェイク。大きく隙を作った[マルス]の胸に、美代の剣が突き刺さる。

 

「結ちゃん!?」

「結!」

「結ちゃん!!」

 

うらら、美生、美奈が叫ぶ。

当の結は、他の者達同様に罪悪感が押し寄せる。だがそれは、()()()()()()()()()()。そして今はマルスによって、多少軽減されている。だから、膝をつくわけにはいかなかった。

()()()()()()()()()()()。だからこそ、美代がどのタイミングで突いてくるのかはわかっていた。そして剣が突き刺さった場合、次の動作までにひと動作余計にかかる。つまりは。

 

「フッ!!」

 

[マルス]が振り下ろした剣が美代を捉えた。美代を右肩から縦に切り裂くと。

 

『ををををを……!』

 

ダメージを負った駆け魂が美代から抜け出した。

 

「エルシィさん!」

 

剣の呪縛から解放された[メルクリウス]が叫ぶ。

 

「はい! 勾留ビンッ!」

 

透明化を解いたエルシィが勾留ビンを発動させ。

 

「駆け魂勾留!」

 

見事駆け魂を捕縛したのだった。

 

 

 

 

 

「ありがとう。助かったよ」

 

立ち上がった[メルクリウス]が[マルス]にお礼を言った。

 

「いえ…。私は美代姉さまを助けることで精一杯だっただけです。……でも」

「でも?」

 

[メルクリウス]が聞き返すと、[アポロ]達と喜び合っているえりへと視線を移して。

 

「えりちゃんのお陰です。『出来ないことでも精一杯やればそれなりになる』…。そう教えてくれたから、私は魔法少女として精一杯頑張れたのだから」

 

そう言ってにこりと笑う[マルス]。そこには一切の憂いも無い。

 

(結、いい笑顔だなぁ。これも、えりのお陰だね。……えり、あなたもちゃんと役に立ってるよ)

 

心の中で思い、そして。

 

「……さて。後始末はハクアさんに任せるとして」

「ハクアさん?」

 

ハクアを知らない[マルス]が疑問を浮かべるが、それは無視して。

 

「魔法少女は六人揃ったし、ようやく詳しい話が聞けるね」

 

ついに、女神の事情を知るときが来たのだ。




結「五位堂結と…」

マルス「マルスの…」

結・マルス「あとがき代わりの座談会コーナー☆出張版!」

マルス「……って、いつまで[出張版]で続ける気なのだ、作者は」

結「確かに。あっちの作品、エタった状態だからね。書きたいとは思ってるらしいけど」

マルス「ヤレヤレだな。さてそれでは解説を…」

結「その前に。今回は今までで最長の1年1ヶ月と十日ほど空いた訳だけど、その理由を説明しないと」

マルス「ああ、そうだったな。とはいっても、いわゆるスランプだった訳だが」

結「うん。しかも【神のみ】関連全般みたいで、試しに他作品とのクロス短編を書いてみても、途中で筆が止まっちゃったみたいだね」

マルス「他作品…というのは、例の【魔王さま!】とのクロスのことか?」

結「それもだけど、【防振り】で書いても駄目だったって」

マルス「ふむ…。それではどうやってスランプを乗り越えたんだ?」

結「作者さんはスランプになると、とりあえず放置して、書きたくなるのを待つみたいなんだけど、今回は結構時間がかかったらしいね。だけど最近、久々にアニメ1期から見たら、急に書きたくなってきたんだってさ。原作読んでも無理だったのに、どうしてだろうと首を捻ってたよ」

マルス「何だか、メルの探究心を刺激しそうな話だな」

結「人間心理って奥が深いよね」

マルス「……さて、それでは本当に解説に移るとしようか」

結「そうだね。それじゃまずは美代さん…、向こうのボクが慕ってるみたいだけど、父親には酷い目にあってるみたいだね」

マルス「男女平等…いや、ジェンダーレスが叫ばれてる時代にこれでは、時代錯誤もいいところだ」

結「実際に偏見を無くすのは大変だけど、これはそれ以前、問題外だよ」

マルス「まったくゲスな男だ。成敗したいところだな」

結「そこまでは言わないけど、懲らしめてはやりたいね」

マルス「さて次は…、あちらの結か。何だか口調が中途半端というか…。今の口調は無視するとしても、お嬢様口調とも違うな。とはいえ、時々丁寧な口調にはなっているし」

結「あれは、お嬢様教育の過渡期なんだよ。ボクもあの頃は、お母様にはお嬢様口調だったけど、うららや美生には普通に話してた様な気がするな」

マルス「人間に歴史あり、と言うやつだな」

結「まあね。じゃあ次だね。ええと、必罰の剣についてかな。この剣は斬りつけた相手の罪悪感を呼び起こす能力がある、っていうのは、作中で白鳥のおじ様が言ってたね。そして剣を仲介して、その時に発生する負の感情を駆け魂…ヴァイスは糧にしてるんだって」

マルス「つまり美代とヴァイスは、うぃんうぃんの関係という訳か。作中の言葉ではないけど、随分と皮肉めいてるな」

結「所詮は悪魔に、いい様に使われてるみたいなもんだからね」

マルス「順番が前後するが、それに対して結が扱う私の剣が、祝福の剣(ブレス・ブレード)だな」

結「うん、そうだけど…。これってパクリの寄せ集めなんだよね」

マルス「な、何だと!?」

結「まず祝福の剣(ブレス・ブレード)って名前だけど、これは【スレイヤーズ】に登場した剣の名前そのまんまだよ。そして邪なもののみを切り裂く能力は、【うしおととら】の獣の槍だ。
その流れでついでに説明すると、マルスから技能と戦闘経験をフィードバックしてるのは、【Fate/stay night】の衛宮士郎とアーチャーの経験憑依のパロディだね。【プリズマ☆イリヤ】の夢幻召喚(インストール)も入ってるのかな?」

マルス「何故[マルス]の能力だけパクリの嵐に…」

結「単純に剣技だけじゃ地味だから、他の所から持ってきてこうなったらしいよ」

マルス「ううむ、言わんとすることはわかるが、今一納得いかない」

結「まあまあ。それじゃ、話の流れで飛ばしたエリーだけど。何だか活躍してるなぁ」

マルス「以前ちひろに言われたのと同じことを、的確なタイミングで使っているな」

結「こっちのエリーは桂馬くんと一緒にいるお陰で、学習能力が少し底上げされてるみたいだからね」

マルス「それでも少しというのが、少々悲しいものがあるな」

結「まあ、エリーだから。そんなエリーの重要なところが、必罰の剣で斬られたのに何ともなかった事だよ」

マルス「これは作中でも書かれているとおり、記憶の消去…抜き取りをれじすとするのと起源は同じだ」

結「つまり、今作では明かされない設定だね。……そういえば【ドクロウちゃん】も、更新止まってるなぁ」

マルス「そこは作者に頑張って貰うしかないな。……さて、魔法少女が六人揃ったな。次回は当然、説明回の説明会か」

結「そうだね。奪い魂の事とか女神の事とかが明かされる予定だよ」

マルス「うむ。……これで大体終わりかな」

結「そうだけど、終わる前に少し。これは作者さんが、今回の話を書く前に前話を読み返して気づいたことなんだけど」

マルス「何かあったのか?」

結「まあ、内容とは全く関係ないんだけどね。美奈と[ウルカヌス]…月夜が二人で会話してたけど、元になったオリキャラ、高校生の美奈の親友が、()()夕貴だったの思い出したんだって」

マルス「本当に関係ない、と言うか楽屋ネタだな」

結「そうだね。ま、作者さんの自己満足だよ」

マルス「さて、これで本当に終わりかな」

結「そうだね。……それでは皆さん、次回もまた見てくださいませ」

マルス「な、結がまるでお嬢様みたいではないか!?」

結「……(怒)」
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