神のみスピンアウト・魔法少女めがみ〜な   作:猿野ただすみ

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自分の頭の中にある神のみ妄想作品の一つを、短編にしてみました。一応第1話を想定してはいます。

※不定期ですが、連載にしました。


魔法少女めがみ~な
悪魔1・悪魔と女神とめがみ〜な


とある電波塔の天辺。そこに一人の少女が腰掛けていた。

少女は着物に似た、膝上までの丈で袖無しの服を腰ひもでとめ、ニーハイソックスにローマ風のサンダル、長い黒髪はポニーテールにまとめている。

そして半透明の羽衣をまとった幼顔の少女は神秘的でさえあったが、残念なことに後ろ手に持ったほうきと、頭の左側に着けたドクロの髪飾りがそれを邪魔していた。

 

「…ついに見つけました」

 

少女は呟き、すくりと立ち上がった、が。

 

ビョオォォ…

 

「え…」

 

突然の強風に煽られた少女はバランスを崩し、

 

「あわわわぁ…!」

 

塔の上から落下した。

……しかしその日、その周辺での落下事故は記録されてはいない。

 

 

 

 

 

舞島市にある舞島東小学校。九月の午後の日差しのなか、4年3組の生徒達が体育の授業を受けている。今回は紅白に別れてのソフトボール。

 

「あーあ、50メートル走の方がよかったのになー」

 

外野を守っている少女がボヤいている。

ちなみに1チーム九人以上いるため、外野の守備は多めだ。よって会話が出来る距離に友達がいる、などという構図が出来ることもあるわけで。

 

「走る方がいいなんて、歩美くらいだよ」

 

少女…歩美のすぐ近くを守っているもう一人の少女が、呆れた表情で言った。

 

「ちひろだって駆けっこ好きじゃない」

 

歩美はもう一人の少女、ちひろに心外だと言わんばかりの表情を見せるが。

 

「いや、50メートル走と駆けっこは別っしょ?」

「えー?」

 

ちひろの発言が信じられない歩美。そんな歩美を見て一つタメ息を吐き、ちひろは言った。

 

「歩美って、ホント走るの好きだよねー」

「うん!!」

 

とびきりの笑顔でうなずく歩美を見て、ちひろは少しだけ羨ましくなる。

今まで色々なことにチャレンジしたけれど、始めてしばらくすると冷めてしまう。歩美のように、情熱をもって取り組めるものがある人がとても眩しいのだ。

まだ小学生なんだから大丈夫、と思ってるけど、羨ましいものは仕方がない。

 

ドッ!

 

「!?」

 

一瞬、自分の体に何かがぶつかったような気がした。ちひろは辺りを見回すけど、特に変わったことはない。

 

「ちひろ、どうかした?」

「ああ、いや、何でもない…?」

 

ちひろはいぶかしみながらも否定した。

 

 

 

 

 

その日の夜。お風呂からあがった歩美は、自分の部屋で宿題をやっていた、が。

 

「うーん、全然わかんない」

 

言って机に突っ伏した。

高原歩美は体育以外の成績がザンネンな子であった。

 

コンコン…

 

「え?」

 

歩美が窓の方を見る。いま、明らかに窓を叩く音がした。

 

(なに? まさかドロボウ!?)

 

しかし泥棒だったら、わざわざ窓を叩いたりするだろうか。

不安や疑問を抱きながら、歩美は窓に近づき、深呼吸をしてから一気に開けた。

…そこには、高校生くらいだろうか。自分より年上の、変わった服を着たお姉さんがいた。片手にはほうき、もう片方の手には、淡く光る水晶球の様なものを持っている。

 

「び、びっくりしました。驚かさないでください〜」

「ビックリしたのはこっちよ! アンタ誰!?」

 

歩美が詰め寄る。

 

「あ、すみません。自己紹介がまだでしたね。

私はエリュシア=デ=ルート=イーマといいます。みんなからはエルシィって呼ばれてます。地獄からやって来ました悪魔です」

「……はい?」

 

この人は何を言ってるんだろう。歩美はそう思った。

 

「ええと、高原歩美さんですよね。5月2日生まれ10歳。血液型O型、身長141㎝、体重34㎏。舞島東小学校の4年3組…」

 

エルシィと名乗った少女は半透明のタブレットPCの様なものを見ながら、歩美のパーソナルデータを挙げていく。

 

「な−−−!」

 

いきなり自分の情報を読みあげていくエルシィに、歩美は開いた口が塞がらなくなる。

 

「ええと、歩美さん。魔法少女になりませんか?」

 

歩美は頭の中が真っ白になった。

 

 

 

 

 

翌朝、登校しようと家を出ると。

 

「歩美さん、考え直してはいただけませんか?」

 

扉の前にエルシィが立って待ち構えていた。

 

「イヤだって言ったでしょ!」

 

歩美はエルシィの脇を通り抜けて、すたすたと歩いていく。エルシィはその後を追い泣きついてくる。

 

「そんなこと言わないでお願いしますよ〜」

 

こうなると、どちらが子供かわからない。

 

「だいだい悪人の魂…、駆け魂だっけ? 捕まえたいのはわかったけど、どーしてそれが私なの!?」

「だから言ったじゃないですかぁ。この『女神のオーブ』が選んだのが歩美さんなんですってばぁ!」

 

エルシィは、昨夜現れたときに持っていた珠を見せながら言った。

 

「なんで地獄の悪魔が『女神のオーブ』なのよ!」

「そんなのわかりませんよー。ドクロウ室長がそう言って渡してくれただけですもん」

「とにかく私は…!」

「歩美ー、おはよー」

 

小さな丁字路でちひろが声をかけてきた。

 

「ち、ちひろ!?」

「どーしたん歩美。

…ん? その人だれ?」

「何でもないよ! さ、早く学校いこ!」

「え、ちょっと、歩美?」

 

歩美はちひろの背中を押してその場を離れようとする、と。

 

ドンドロドロ、ドンドロドロ…

エルシィのドクロの髪飾りから変なアラームが流れ出した。

 

「!? これは…」

 

エルシィが髪飾りの音に気を取られているうちに、歩美はちひろを引っ張ってその場から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

三時間目、算数の授業中。

 

「(歩美さん)」

「…!!」

 

突然の囁き声に思わず声をあげそうになる。歩美は声のした方をちらりと窺うが、声の主、エルシィの姿は見えない。

 

「(歩美さん、お昼休みに体育館の裏へ来てください)」

「(どーしてわざわざそんなとこに…)」

「(ちひろさんのことで話があります)」

 

反発する歩美の言葉を最後まで言わせずに、エルシィは話を続けた。その声はとても真剣で、切羽つまった感じだ。

 

「(ちひろが、どうかしたの!?)」

「(それは、込み入った話になるのでそのときにお話しします。それじゃあ体育館裏で)」

 

それだけ言うとあとは声は聞こえず。

 

ガゴッ!

 

風通しのために開けられていた後ろの窓から何かが激しくぶつかる音がして、みんなが一斉に振り返った。

 

 

 

 

 

そしてお昼休み。歩美は言われたとおり、体育館の裏へやってきた。

 

「来たわよ、エルシィさん」

「お待ちしてましたぁ」

 

声が聞こえたかと思うと、パッとエルシィがあらわれた。突然のことに歩美は目を丸くする。

 

「この羽衣さんを使って姿を消してたんですよ。便利でしょ?」

 

歩美の反応をみてエルシィが説明した。

 

「確かに便利だけど、それよりちひろのことよ!」

「そうでした、今はまずちひろさんのことですね」

 

なんだか頼りない感じだが、ちひろに何かあったらしい。ここは黙って聴くことにする。

 

「はっきり言いますと、ちひろさんの中に駆け魂がいます」

「え…」

「しかもただの駆け魂ではありません。奪い魂と呼ばれているものです」

「うばいたま、って…?」

 

歩美は緊張した面持ちでたずねる。

 

「それにはまず、駆け魂から順に説明します。

駆け魂は昨日言ったように、地獄から逃げ出した悪人の魂です。

駆け魂は人間の女性の心のスキマに入り込みます。それは人間の負の感情で力をつけて、やがてその女性の子供として転生するためです」

 

ぞわっ

 

歩美の背に悪寒が走る。さすがに、どうしたら子供が出来るのかはまだ知らないが、女の人が子供を産むことくらいは知っている。

自分だっていつかは母親になるのだろうけど、そんなモノが自分の子供だったらと考えると気分が悪くなる。

子供とはいえ、歩美も女性なのだ。

 

「そして奪い魂ですけど、これも心のスキマに入り込むところまでは同じなんですが、転生ではなく入り込んだ人の体を奪ってしまうんです」

「からだを、うばう…」

「はい。スキマに入った奪い魂は体を侵食して肥大化し、やがて体の周りを覆います。すると宿主は体の自由を奪われて、やがて魂も取り込まれてしまいます。そして体は完全に奪い魂のものになってしまうんです」

「取り込まれた魂は、どう、なるの…?」

 

喉が、カラカラになっている。それでも、聞かなくてはならない。いや、聞かずにはいられない。それは親友に関わる、とても大事なことだから。

 

「奪い魂に食べられてしまいます。記憶は引き継がれますが、それはもう記憶があるだけの全く別の存在です」

「…っ! どうしたら奪い魂を追い出せるの!?」

 

歩美は声を張り上げて問う。ちひろを助けるために。

 

「駆け魂なら心のスキマを埋めてあげれば追い出すことが出来るんですが…。

奪い魂の場合は宿主を、その、…殺すしかありませんでした」

「そんな!!」

「そこで! それを何とかしてくれるのが魔法少女なんです」

 

なんだか通販番組のようなノリでエルシィが言った。

 

「魔法少女は女神の力を借りて、奪い魂の力を無効化して追い出すことが出来るんです。

もちろん普通の駆け魂にも効果がありますよ。室長に確認とったばかりですから」

 

エルシィはえへん! と胸を張る。が、偉いのはドクロウ室長で、凄いのは魔法少女とそれに力を貸す女神。エルシィはほとんど使いっ走りである。

 

「魔法少女になれば、ちひろを助けられる…」

 

歩美がそう、呟いたとき。

 

「キャアァァァ!」

 

校庭の方から悲鳴が聞こえてきた。

慌てて校庭へ向かうと、そこには人の何倍もある異形の化け物がいた。

すぐそばには腰を抜かしたのか、地面に座り込んだ少女が。

 

「あれは、えり?」

 

それは歩美のクラスメイトのえりだった。

 

『たす、け、て…』

 

化け物が声を発する。くぐもってはいたが、それは歩美がよく知るものだった。

 

「ちひろ…!」

「あれが奪い魂です! 早く助けないとちひろさんが…!」

「なるよ!」

「え?」

「ちひろを助けるためだったら、わたし魔法少女になる!」

 

歩美はエルシィの目をみて力強く言った。

 

「ありがとうございます! それでは早速…」

 

お礼を言うと、エルシィは女神のオーブ取り出す。するとオーブは輝きだし、一筋の閃光が歩美へと伸びる。

閃光を受けた歩美の体は光に包まれ、それと同時に心へ直接声が響いてきた。

 

 

 

 

 

『キミが私の代わりにヴァイスの勾留を手伝ってくれる娘かい?』

 

−−−え、だれ? ヴァイスってなに?

 

『私はメルクリウス。地上の人々が女神と呼ぶ存在だよ。

ヴァイスは駆け魂のことさ。私たち天界人はそう呼んでる』

 

−−−そうなんだ…。

うん、私が魔法少女になる! 魔法少女になってちひろを助けるんだ!!

 

『そう…。それなら私の力、貸してあげる』

 

−−−! これは…!?

 

 

 

 

 

校庭では化け物、奪い魂がえりに向かって手を延ばしていた。

 

「ひうっ!」

 

えりが小さく悲鳴をあげる。

 

『え、り、にげ、て…!』

 

ちひろは逃げるよう促すけど、腰の抜けたえりは動くことができない。

 

「えり!!」

 

遠くでメガネをかけた男子生徒が叫ぶ。

奪い魂の手が、いよいよえりに届くというその時。

 

バギャアッ!

 

土煙をあげ、電光石火で近づいてきたなにかが、奪い魂の手を弾いていた。

土煙が晴れたとき、そこには一人の少女が立っていた。

露出している肌は小麦色。髪は輝かんばかりの銀髪。

昔のスイーツ喫茶のウェイター風の、フリルのついたミニスカコスチュームでスカートの下には膝上丈のスパッツ。胸元にはリボンのついた大きな星形のブローチ。

そんな彼女はえりをひょいと抱き上げると、すぐさまその場を離れ、あっという間にメガネの男子生徒のもとへやって来て、えりをそっと降ろす。

 

「あ、あの、ありがとうございます。それで、あなたは誰ですか?」

 

えりが尋ねると、少女は一瞬思案顔になりこう答えた。

 

「私はメルクリウス。魔法少女めがみ〜なのメルクリウスよ」

今、ここに、魔法少女めがみ〜なが誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 

歩美、いや、[メルクリウス]は再び奪い魂の前に立つ。

 

「奪い魂! 必ずちひ…、この子の体から追い出してやる!」

 

[メルクリウス]が宣言すると、奪い魂が敵意を剥き出しにして襲いかかってくる。

しかし打ち下ろしてくる拳を、[メルクリウス]は軽くかわした。

 

ブゥン!

ブオォッ!

 

ムキになった奪い魂が闇雲に拳を繰り出すが、それもことごとくかわしていく[メルクリウス]。

 

(…これで4つ)

 

攻撃を避けながら、心の中で数を数えていく。

奪い魂は気づかなかった。[メルクリウス]の避け方にある法則性があることに。

 

 

 

 

 

「円…」

「え、なんですか? にーさま」

 

えりがにーさまと呼ぶ少年、例のメガネの男子生徒が応える。

 

「メルクリウスは攻撃を避けながら、敵を円で囲うような動きをしてる。きっと、なにか技を出すためなんじゃないか?」

「そうなんですか?」

「ゲームじゃよくある話だ」

 

それだけ言うと少年は、手にしていた携帯ゲームを始めた。

 

「そう、ですか…」

 

えりはそれを呆れて見ているだけだった。

 

 

 

 

 

(5つ、…あと1つ!)

 

かわし続ける[メルクリウス]だが、ここにきて奪い魂の攻撃のパターンが変わる。

体を低くし腕を地面と水平にスイング。つまり[メルクリウス]に向かってラリアットを放っている感じだ。

腕まわりだけで自分の身長くらいあるそれを、

 

「私は、()()()を助けるんだ!!」

 

飛び越えた。

[メルクリウス]はジャンプし、その天辺に手をついて、まるで跳び箱のように跨いだのだ。

そして着地と同時に。

 

「6つ目!」

 

足を踏みしめた場所から光が放たれる。

それは、それぞれマーキングしていた場所も同様で、円周上に等間隔に付けたポイントが光を放ち、奪い魂を取り囲むように六芒星の魔法陣を結ぶ。

 

浄化の六芒(カタルシス・ヘキサ)!!」

 

魔法陣が放つ光に、奪い魂は苦しみだし、体はその姿を留めることができなくなる。

 

おおおおお……!

 

奪い魂が呻きながらちひろから離れていく。

大きな体の核となっていたちひろは落下を始めた。

 

「ちひろ!!」

 

魔法陣の中へ飛び込んだ[メルクリウス]は空中でちひろをキャッチ、抱き抱えた状態で着地する。

 

「大丈夫、ちひろ!?」

「…あり、がと」

 

お礼を言って、意識を手離したちひろ。[メルクリウス]は安堵のタメ息を吐いた。

 

 

 

 

 

ちひろの体から追い出された奪い魂は、新たな宿主を見つけるために逃げようとしていた。しかしそれを許さない者がいる。

 

「逃がしません!」

 

エルシィだ。羽衣の機能で空を飛び、上空で奪い魂が追い出されるのを待っていたのである。

 

「勾留ビン!」

 

エルシィがビンを取り出すと、それは抱えなければならないほど大きくなり奪い魂を吸引し始めた。

 

「うう〜っ、ええーいっ!!」

 

エルシィが気合いを込めると、奪い魂はビンの中に収まっていく。

 

バンッ!

 

フタを閉めるとビンはもとのサイズへと戻っていった。

 

「駆け魂勾留!

ありがとうございます、歩美さん!」

 

こうして魔法少女の初仕事は、無事終了したのである。

 

 

 

 

 

一夜が明け、自室で目を覚ました歩美。

昨日の事が夢のような気がするが、机の上に置かれた星の飾りがついたヘアゴムを見ると、すべて現実にあったことなんだと認識させられる。なぜなら。

 

『アユミ、目が覚めた?』

 

星飾りからメルクリウスの声がする。つまりこれこそが変身アイテムであり、メルクリウスとの会話も可能とするのだ。

 

「うん。でも人のいるとこでは話さないでね」

『ああ、わかってるよ』

 

とりあえず安堵し、歩美は着替えを済ませる。星飾りのゴムバンドで左側の髪をサイドアップにまとめた。

これでいざというとき、すぐに変身出来る。…いざというときなんて、来ない方がいいけど。

一階に降りると母が朝食の準備をしていた。

 

「おはよう」

「おはよう、歩美。もうすぐご飯の準備が出来るから待っててね」

「はーい」

 

返事をして、歩美はテーブルにつく。

 

(そういえばエルシィさんはどうしたのかな)

 

ふと、そんなことを考えていると。

 

ピンポーン…

 

玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「こんな朝早くから誰かしら?」

「あ、私が出るよ」

 

歩美は再び立ち上がり、小走りで玄関に向かう。

 

ガチャリ

 

扉をあけて顔を覗かせながら。

 

「はーい、どちら様で…」

 

歩美は言葉を詰まらせる。

 

「おはようございます。私、隣に引っ越してきました今野(いまの)エルシィといいます。どうぞよろしくお願いします!」

「エ、エルシィさん!? どうして…?」

「はい。これからもなるべく、歩美さんの近くにいた方がいいというドクロウ室長の判断です」

『アユミ。平穏な日常は、まだしばらく先のことみたいだね』

 

メルクリウスの言葉を聞きながら、歩美は強く、心に誓う。

 

(ドクロウ室長、いつか倒すっ!!)

と。




名前の出なかった彼の活躍の場はあるのか?
連載になったのであります(笑)。
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