疑似サーヴァントになりまして   作:半田

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パトロクロス、召喚

 サーヴァント、パトロクロス

 アキレウスの親友にして、トロイア戦争で活躍した猛者の1人。戦いを放棄したアキレウスから鎧を借り、彼のフリをして兵士を率いて戦った逸話で知られている。生前の逸話から、サーヴァントとなった彼は『アキレウスの力を一時的に引き出す』という特殊能力を獲得した。

 

 その能力の都合上、アキレウスとパトロクロスは英霊の座を半共有している。そのため、聖杯戦争において彼等2人を同時に呼ぶのは難しい。無理に2人とも呼び出そうとすると、アキレウスの能力の何割かがパトロクロスに奪われるという弊害が発生する。

 それゆえに、アキレウスのスペックを下げたくないのであれば、彼等を同時に召喚するべきではないのだ。

 

 

 

 聖杯探索(グランド―オーダー)

 史上最大規模の聖杯戦争において、パトロクロスは召喚されることを拒否しようとした。自分を召喚してしまうと、アキレウスの霊基に支障が出る可能性がある。人理そのものの危機には、大英雄であるアキレウスが必ず必要になる、と彼は考えた。

 だが、何らかの不具合や意図せぬ偶然によって、パトロクロスが召喚される可能性もある。また、味方側が召喚しなかったとしても、敵側がアキレウスの力を封じるために、あえてパトロクロスを召喚する可能性もあるだろう。それは避けなければならないことだった。

 

 そこで、パトロクロスは発想の転換をした。

 

「逆に考えるんだ。『召喚されてしまえば良いさ』と」

 

 パトロクロスは、単体としては本来成立しない英霊である。彼の逸話は「アキレウスの親友であり、彼の鎧を借りて活躍した」というものが有名であるため、それを除外してしまえば彼の霊基数値は大きく下がる。そのままの彼はサーヴァントとして成立することができない。

 だが、人理修復という緊急事態においては、唯一彼が召喚されるための抜け穴があった。

 

 

 それは『疑似サーヴァント』である。

 相性が良い人間(もしくはサーヴァント)を依り代とし、本来は召喚できない英霊を無理やりサーヴァントとして召喚する。グランドオーダー中の特例とされる、特殊な英霊召喚の技法。

 零体化できない、食事や睡眠が必須、ダメージを受けると依り代が死ぬ、といった弱点は多いが、依り代となった人物の能力を発揮できるなどの利点も存在している。

 

 

 パトロクロスの依り代となった男は、平凡な魔術師である。

 由緒正しき血統に生まれたわけではない。固有結界も魔眼も持ってない。家族が悪趣味な肉体改造をされたわけでもないし、殺人鬼やロリコンなどの特殊性癖も持ってない。ごく普通の、日本に生まれた平凡な魔術師の1人である。依り代の彼の唯一特殊な点は、聖杯戦争の参加者(・・・・・・・・)であったということだけだ。それだけで、彼が呼ばれる理由としては十分だった。

 

 

 

 特異点F。炎上する日本の地方都市。黒い髑髏の兵士が蠢く、生きた人間が誰もいない場所。

「疑似サーヴァント、ライダー。召喚に応じ参上した」

 英霊と融合した人間を触媒に、横になった円い盾を道として、1人のサーヴァントが召喚される。

 

「……融合したせいか、本当の名前の記憶が曖昧なんだ。パトロクロスと呼んでくれ。この名前の方がしっくり来る」

 目の前にいるのは3人の男女だ。雰囲気は普通だがある程度整った顔をしている男と、背の丈ほどある巨大な盾を持った少女。そして、そこはかとなくヒステリックな雰囲気のする女性。どうやら彼等によって呼び出されたらしい、とパトロクロスは解釈した。

 

 周囲を見渡せば、あちこちから忍びよる人影が見えた。それぞれが剣や槍などの武器を手にしており、空洞の瞳でこちらを眺めている。骸骨兵(スケルトン)というやつだろうか。真っ黒の容姿をしたそれは、死霊魔術についてよく知らないパトロクロスからしても異常に見えた。

 

「生憎、戦いは不得手なんだけどね。マスター、指示を頼むよ」

 そう言って、彼はいつの間にか手に持っていた槍を構えた。




【元ネタ】イリアス
【CLASS】ライダー
【真名】パトロクロス
【性別】男性
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具EX(D)
【クラス別スキル】
対魔力:B-
 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。サーヴァント自身の意思で弱め、有益な魔術を受けることも可能。Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 パトロクロスの場合、その死因から太陽神に由来する魔術に対して抵抗力が下がる。

騎乗:A++
 乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。本来は騎乗スキルでは乗りこなせないはずの竜種についても、例外的に騎乗可能。
 パトロクロスではなく依り代由来のスキル。これにより、神獣である馬が引く戦車型の宝具を乗りこなすことが可能となる。

【固有スキル】
神性:D
 その体に神霊適性を持つかどうか、神性属性があるかないかの判定。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。より肉体的な忍耐力も強くなる。
 河神のひ孫であるパトロクロスの攻撃は、わずかではあるが神性を帯びる。

武技模倣:A
 相手の使用する武技を模倣する能力。高ランクの『心眼(偽)』の複合スキルであり、相手の攻撃を見切るための能力としても使用可能。 才気あふれたアキレウスに、パトロクロスが友人としてついていくことができた理由の1つ。

コンビネーション:B
 特定の人間と共闘する際に、どれだけ戦闘力が向上するかを示すスキル。どれだけ苛烈な戦場でも目配せ一つで互いの坑道を把握、最適な行動を取る。人の動きを理解する「武技模倣」との併用で、あらゆる相手を補助する形で戦闘することが可能となる。また、相手も動きを読む効果を持つスキルを持っているならば、真にスキルの効果を発揮することができる。

変化:C
 文字通り「変身」する能力。ただし、変身できるのは自分と似た背格好の人物のみ。この条件さえ満たしていれば、特定の人物そっくりに変身することも可能。多少の体型の違いであれば条件には影響しないため、異性への変身も可能である。

魔術:C
 基礎的な魔術を一通り修得している。パトロクロスの依り代の属性は『水』であり、魔術回路は19本ほど。魔術回路の本数は魔術師の平均程度だが、人よりも回路の耐久性と燃費が良いため、短時間なら40本相当の魔力を生成することができる。
(比較例:士郎が27本。凛がメイン40、サブ30×2の合計100本)

【宝具】
疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2~60 最大捕捉:5人
 アキレウスが戦場で駆ったと言われる三頭立ての戦車。
 海神ポセイドンから賜った不死の二頭の神馬「クサントス」と「バリオス」、エーエティオーンの都市を襲撃した際に奪った名馬「ペーダソス」からなる戦車。

 アキレウスと共有していた能力の残滓。本来の宝具よりかなり劣化したもの。ただ、その分魔力の消費が大幅に下がっているため、移動手段として使うには最適の宝具となっている。
 3頭の神馬の『影』によって引かれており、空を飛んで移動する。耐久性が下がっているため相手を轢き殺すような運用はできず、狙撃に対しても非常に弱い。


■■■(セルフギアス・スクロール)
ランク:EX 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大捕捉:1人
 詳細不明。魅力を無効化する効果がある。依り代由来の宝具。

【Weapon】
無銘・槍
 パトロクロスは、アキレウスのフリをして進軍する際に、彼の槍を持たずに自分の槍を持って行った。もし彼がアキレウスの槍を使っていたならば、あのヘクトールに勝つことができたのかもしれない。

無銘・鞭
 依り代由来の武器。軽微ではあるが『竜殺し』の効果が付与されている。そこそこ高価な代物。

【解説】
 パトロクロスの疑似鯖。

 ギリシャ神話における英雄の1人。父はアルゴノーツの一員メノイティオスであり、河神の血を引いている。ロクリスで生まれたが、幼少期に殺人の罪を犯してしまいテッサリアに亡命。テッサリアの王であるペレウスによって拾われ、その子供アキレウスの側使えとなる。少年の頃から一緒に育ったため、アキレウスとは竹馬の友。トロイア戦争にも2人で参加し、多くの戦績を残した。

 彼の逸話でもっとも有名なのが、アキレウスから鎧を借りて、彼の代わりに兵士を率いて進軍した逸話である。

 アキレウスは、当時のギリシャにおいて最強の英雄だった。あらゆる攻撃を無効化する不死身の肉体と、あらゆる者より速い俊足。そして、神々からもらった鎧。戦場においてアキレウスは無敵であり、彼に勝てる者は誰もいなかった。トロイア戦争の参加者の中でトップクラスの英雄が味方にいたことで、軍の士気は最高潮に達していた。

 しかし、総大将のアガメムノンがアキレウスから現地妻を無理やり奪ったことで状況は変わる。愛する人を無理やり奪われたことに激怒したアキレウスは、パトロクロスを連れて自分の屋敷に引きこもってしまうのだ。
 アキレウスが抜けたことでギリシャ軍の士気はダダ下がり。更に、息子を雑に扱ったことに激怒したアキレウスの母が、神々の王ゼウスに頼んでギリシャ軍の兵に甚大なダメージを与える。そのことでギリシャ軍に壊滅の危機が訪れてしまう。

 その状況を見ていられたなかったパトロクロスは、アキレウスから鎧と戦車を借りて出陣する。アキレウスが戻ってきたと勘違いしたことでギリシャ軍の士気は再び高まり、逆境を覆すことに成功する。しかし、パトロクロスは勢いそのままに敵へと進軍したことで、敵の懐に誘い込まれた末にトロイア軍の総大将ヘクトールに討ち取られてしまうのだった……。



 死後、パトロクロスは英霊の座に登録された。
 人間霊でありながら、信仰や想念によって精霊の領域にまで昇華された存在『英霊』。またの名を境界記録帯(ゴーストライナー)。人類史そのものの記録である彼等は、人々に逸話を語られることにより、生前は持っていなかった能力を獲得することがある。

 英雄パトロクロス。その力は本来トップクラスの英雄に並ぶ者ではなかった。マイナーな河神の孫であり、優れた武具を持っているわけでもない。戦争の中で英雄を1人倒したという逸話こそあるが、怪物や神を殺した他の英雄と比べたら、本当に些細なものにすぎない。
 しかし、アキレウスから防具を借りて戦った逸話が、英霊パトロクロスに大きな影響を与える。彼はアキレウスの纏っていた神造の鎧を借りる能力だけでなく、『英霊アキレウスの力そのもの(・・・・)を一時的に引き出す』という、トンデモない能力を獲得したのだ。本来なら常に大量の魔力を消費するトップサーヴァントの力を、必要な時にだけ引き出すことができるというのは、他のサーヴァントと比べて大きな利点になっている、


 パトロクロスが本来所有する宝具『英雄の衣を借りる者(アキレウス・ランプスィ)』。
 アキレウスに変身することで一時的にトップサーヴァント級の実力を得るという恐ろしい宝具だが、疑似サーヴァントとなったパトロクロスはこの宝具を有していない。
 また、疑似サーヴァントになる際に霊基を削りすぎたせいで、パトロクロスは生前の人格と培ってきた技術のほとんどを消失している。ただし、『技術模倣』によって強いサーヴァントから技術を学んでいけば、いずれパトロクロスの実力を超える可能性もゼロではない。





 依り代となった少年の設定は、過去編として後々出していきます。彼が参加した聖杯戦争も、設定は既に構築済みです。
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