1人の少女が神社の山道を自転車で駈け下る。
その顔は涙で濡れており、ギュと口を閉じ何かをこらえるようにしていた。
ー 結局は私じゃなくて仕事なんだ ー
今日は一緒に居てくれると思っていた。
ようやく私を見てくれるようになった、そんな淡い期待も抱いていた。
でも、いざ仕事の一報が入り込むとあの有様だ。
仕事が大事なのはよく分かっている。どうしようの無いものと割り切ってしまえば耐えられるかもしれない。
でも、
でも!!
私は寂しかった!!
兄さんは、この世にたった1人しか居ない家族なんだ。誰にも変えられない。
朝、目覚めると兄さんはいない。
あるのは、置き手紙が添えられた冷めた朝ごはん。
それを食べて学校に行く。そして、授業も終わって帰ってくる。
でも、家には誰もいない。
家に帰って1人で食べるご飯は不味かった。
学校で起きたことで、楽しかった事や辛かった事を話したい、相談したいと思っても、兄さんはいない。
私以外誰もいない家で待っている時、怖くてどうしようもなく不安になった。
兄さんがいないこの状況で、私は自暴自棄になった…
だから、学校にも行かなくなった。
それから、髪も染めて、不良ぶって、寂しさを紛らわせるように仲間を作った。
楽しかったけど埋まらなかった。
見て…欲しかった。
こんな事を考えるているうち何もかもが嫌になってきた。そして、思っ切り目をつぶり、坂道を駆けていく。
「 もうどうにでもなっちゃえ 」
加耶がそんな悲痛に満ちた呟きをした 刹那
ドルゥンドルゥンッ!! ギィィィィィィ
けたたましいエンジン音とブレーキ音が鳴り響く。
「ちょ!? ちょぉぉぉお 危ねぇええええ」
さらに、変な声が聞こえ目を開けると目の前には、原付に跨るフルヘェイスメットの人間が叫んでいた。
しかも、加耶自身それに、段々と近づいていっている。
あれ?これって…
「ぶつかるぅぅぅうううううううううううううううううううううう!?!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!! 止まれええ! !嬢ちゃぁぁぁぁぁあああん!!!!!!」
2人の叫びがこだました 数秒後
山道に、 ガッシャァァァァァン というエゲツない衝突音が響き渡った。
カラカラカラ
という車輪の空回る音が聞こえる。
「痛っぇ !? お、おい? 嬢ちゃん大丈夫か?」
ぶつかってしまった相手から声をかけられる。完全に悪いことをしてしまった。
ぐへぇ、思い切り体を打ち付けたみたい。背中が痛いなぁ
なんとか体を起こしとりあえず言葉を返そうとする。
「ぅぅ だ、大丈夫です… すみません …?」
そう私は声をかけようとして、ちょっと戸惑う。
(ん?なんかこの声聞いた事があるような)
衝撃でぼんやりなっている視界がクリアになっていく。ヘルメットを取りそこに居たのは、昨日会った人物によく似ていた。
(….あ、コイツ!!)
「ほんとか? ちょっと俺に傷見せてみろよ?…!? って き、君は!!」
どうやらあちらも気づいたようだ。
「「昨日の「女の子!!」「狼人間!!」」
AM 10:29 小宮神社付近 林中
先程ぶつかった相手は、昨日会った男だった。その衝撃事実に加耶は混乱した。
「な、な、な、」
口をパクパクさせながら、加耶は、なかなか言葉を出せない。
そんな姿を見て男は少し苦笑いしながら声をかけた。
「いやぁ まさかこんなとこで会うとはなぁ
あの後、無事だったんだね! よかった〜!
って、流石に昨日の今日じゃ混乱しちゃうよねぇ 」
そう言いながら、頭をポンポンと叩かれる。
ますます混乱。
ポンポンと叩かれて続けられた頭はいつのまにか、軽くさすられている。
そうしているうちに、加耶の混乱が落ち着いたようだ。
「い、いや あの…おかげさまで…
て、ていうかッ! なんでアンタがこんなとこに?てか、あの狼の姿は何?あのバケモノは一体何だったのよッッ!!」
ただし、混乱は落ち着いても、昨日の訳のわからない状況を思い出してしまった。
加耶は、先程までの背中の痛みは何処へ行ったか分からない程の力で男を掴み前後に揺らす。
「ちょ 、ま、待ってえ、、ゆ、ゆ、らさぁないでぇ、ぇぇ、ぇ
…ゲホッ ゲホッ き、君力強いな。!?ッ」
男は加耶の手から離れされドスンと尻餅をつく。これで、終わったか…と男が思ったのもつかの間。
加耶は無言で スッ と拳を上げ、
早く説明しろ
と言わんばかりの威圧をかける。
それに、ただならぬものを感じ男は必死で言葉を紡ぐ。
「わ、分かった。せ、説明するから、頼むその振り上げている拳を納めてくれないか?
ていうか、本当にお願いします。殴らないで、頼むから、その拳を納めてぇぇぇ(泣)」
その後、加耶は拳を納め男の話を聞く事にした。
よっとッ
という掛け声と共に、男が立ち上がる。
そして、立ちあがり開口一番にこう言った。
「ごめん。説明したいのは山々何だけどね。ちょっと、また逃げてくれないかな?」
「…は?」
「!?ッ いや、マジで、ほんとごめん。
その威圧は応えるなぁ。できればやめて、ちょーやめて、…分かったッ 分かったぁからぁ。簡潔に説明するからぁぁ。近くにある木片で殴ろうとしないでぇぇ 」
「…ふざけてるの?」
加耶の目の威圧が一層強くなる。
「ご、ごめん。 ちゃんと、ちゃんと話すよ だ、だからね?その木片捨ててぇ…」
ぽいっと加耶が木片を放る。そして叫んだ。
「 ああッ もうッ 早くして! 早く説明してよッッ!! 」
それの言葉は、加耶の昨日から溜め込んでいた悲痛な叫びだった。
その声を聞き、さっきまでふざけていた男の顔つきが、キッと引き締まる。そして、昨日のように優しくしかし、芯の通った声で言う。
「昨日も名乗ったと思うけど、俺の名前は月原朗磨。まだ、自分でも分かってないけど、狼人間になれる能力を持ってる。 今俺がここにいる理由は、…また、バケモノが現れんだ。そして、俺はそのバケモノを倒すためにここに来た。」
一方その頃、
AM 10:29 小宮町 都道付近
新庄忠は、現場に向かうため車を飛ばしていた。小宮神社の山道から都道に出るまでに加耶を見つけられれば幸いだったのだが加耶の姿みられなかった。
(多分、奥の山道の方に進んだか…昔、加耶が拗ねた時、あの林の中に篭っていたな。…少し面倒な事になったな ………!?ッ)
瞬間
車の目の前を大きな影が横切った。
新庄は間一髪のところでハンドルを切り回避しようとしたが、間に合わず
ゴッォンと言った鈍い音が車を揺らした。
「なッ!? 猪か?」
新庄は慌てて車の外に出る。
ここでは、山道に生息してる猪が当たってくる事がある。しかし、目で姿を認識すらできない速度で突っ込んでくることはまずない。
周りを見渡すと、車の横にナニかいる。
ただ、さっきの影からして猪ではなさそうだ。
「 一体なんだ? !?ッ 」
新庄は固まった。
車の横にいるのは猪などの動物ではなかった。
いたのは、
身体中食いちぎられ、ズタズタになった人の死体だった。
理解が追いつかず、その場に立ち尽くしていたが、
その転がっているを死体をみて、その特徴に気づいた。
「この死体…同じだ…
この前の連続殺傷事件や昨日の事件の死体とやられ方が… それに、とても人間じゃ出来ない様な傷が多過ぎる。」
速やかに死体を確認した後、すぐさま、携帯を取り出し間田に連絡を入れる。
「もしもし、間田か?今…「し、新庄さん!?こちらから連絡を入れようかと思ってたんで丁度良かったです!!すみません。本当にとんでもない事になっているんで、とりあえず、聞いてください!!」あ、ああ分かった。そちらの要件から頼む。」
電話に出た間田の口調からして、冷静さを失っている様でかなり焦っている。
無論、こちらもとんでもない事がおきているわけだが、間田からの報告を先に受ける事にした。
「お、落ち着いて聞いてください。バケモノがまた出ました。それも、今日発見された現場からです。
…それで、近くに捜査に当たっていた警官が複数名襲われて、殉職されています。」
「 何!? 」
「驚くのも無理ないと思います。 そ、そうだ! バケモノは現場から逃走。都道沿いに移動を開始、現在は行方が分からなくなっています。とりあえず、合流してしましょうッ
新庄さん、今、何処にいますか?」
まさか…
段々と新庄の思考の歯車が噛み合う。
今、間田から連絡を受けた事そして、先程目の前で起きていた事。これらを考え導き出される1つの可能性が新庄の背筋を凍らせた。
「間田…電話を切るなよ。いいか、今こちらで起きたことを話す。そしたら、電話を繋いだままそれらを無線で伝えろ!」
「わ、わかりましたッ!!」
この可能性はあくまで推測に過ぎない。だが、これがもし本当なら、取り返しのつかない事態になる。
そう思い、間田にそれらを伝えようとした
直後。
「オ゛イ゛イ゛イ ゛ ア゛エ゛オ゛オ゛?」
君の悪いほど低く、そして、くぐもった音を聞いた。
恐る恐る振り返ると、そこには、
バケモノがいた。
投稿速度を上げれるよう頑張っていきます。(切実)
近々また、話をまとめるかもしれません。
加筆修正を行いました。2018/10/11