御膳試合がある早朝、ライヒアラから旅立とうとする一団があった。
「いやー、実に充実した毎日でしたね」
「うんうん、トイボックスにデュエルレヴィーラ………実に有意義な時間でした」とエルとメイルは今日まで止まることなくシルエットナイト三昧を送っていた。
そして目の前に立つ2騎はトライ&エラーを繰り返し繰り返した今回の自信作である。
だがその犠牲として散々振り回された銀鳳騎士団の団員達はズタボロであった。
今回のはまさしくゲテモノで鬼畜で常識はずれな物であった。
改良型テレスターレの選択装備に人馬型にチャリオット、更にメイルからもたらされたフルアーマーに射程強化型や新型マギウスエンジン、更に更にトイボックスやデュエルレヴィーラ、エドガー専用[テレスターレガーディアン]にディートリヒ専用[グェールテンペスタ]等々、あとは細かい開発、発明、研究とその為に基本休みと呼べる休みなんてないに等しい、まあそんなこともお構い無く二人は腕を高く振り上げ
「ではこれより!」
「頑固頭のラボと競いに」
「「行っちゃいましょ!!」」アディとかキッド辺りは気合い十分の返事をするが他の声に覇気はなかったがゆっくり………ゆっくり………ゆっく?
「ちょっ!オメェらもう少し丁寧にっ!!ってあぶね!」
「エルネスティ!アディにキッド!頼むから街道を……うぷっ……」とシルエットナイト運搬用の荷台に待機してる他の面々は街道から外れ王都に本当の一直線に走り出した為に延々と揺らされる団員達であった。
その頃、王都ではラボが開発した新型シルエットナイトの御披露目が始まっていた。
評価としては十分であろう
テレスターレから得られた新技術を取り入れそこに伝統を引き継いだラボの基礎技術が合わさりカルダトアを凌駕する。
「……と、いったところになります。いかがでございましょうか、陛下。我が国が誇る制式量産機カルダトア、その新たなる姿は。このカルダトア・ダーシュは従来のものに比べありとあらゆる点で秀でております。我ら国立機操開発研究工房の一同、最上の結果を出したと自負しております」
「うむ、流石は我が国が誇る鍛冶師の最高峰よ、見事である」
「ははー、ありがたき幸せ」ガイストは頭を下げるがそこで現国王アンブロシウスは視界の端で少しばかしつまらそうにしてる女性が目に入った。
以前、多大なる功績により王宮に招き共に会食したが口にした瞬間は今でも忘れないメイルの足元にすら及ばない料理だと言って早々に話しだけ済まして帰ってしまった。
あの時は流石に怒りを覚えた。
「つまらそうだのう、マーリよ」問いかけるとガイストもチラチラと見る。
マーリの切り札としてメイルベーゼが噂になってるが同じ技術者として気になるのだろう
「ええ、まったくですわ」それはガイストの努力をバカにする発言としては十分であった。
「なんだと!これのどこがつまらんと言うのだ!百年ぶりの歴史的大業に立ち会っているのだぞ!!」
「それが?確かに良い新型ですけどカルダトアとの互換性はどの程度かしら?私の領内で使ってるサロドレヴィーラは6割はサロドレアなのだけどあのダーシュはいったいどれだけ共通性があるかしら、全部新規じゃ機種転換が大変では?」と言われ、ガイストは答えられなかった。
カルダトア・ダーシュと言ってるが名前と外見だけで中身はまったくの新規であったがそうだとしても自負出来る所はいくらでもある。
「だが性能はそれに見合う物だ!噂はかねがね聞いておるがウォートシリーズと張り合える程の代物か!」そうだ。
このダーシュは同数ならウォートシリーズオンリー相手でも勝てるだけの性能がある。
「確かにウォートシリーズよりは一歩劣りますわね。けどうちのメイルが考案したアレならそれを補って有り余りますわ………そしてそれは今日この会場で証明されます。何故ならこの場はラボの御披露目でもありますがもう一つある騎士団の御披露目でもあるのですから………そうですよね?陛下」
「なんじゃと!陛下!今の言葉は真ですか!」と他の面々は驚き陛下に問いただすとせっかく面白いおかしくしようとしていたアンプロシウスはネタバレをされてつまらなそうに答えた。
「やれやれ、だがその通りだ。あのものが言うには競作コンペティションというそうだ。異なる流れを持つ者どもが、それぞれの作品を持ち寄って比べるのだと」
どこからか、馬蹄の音が響いてきた。
蹄鉄が大地を蹴る音。
しかしそれはただの馬が立てるにはあまりにも重く、あまりにも大きい。
それと一緒にキュラキュラと奇怪な音が響く
「門をあけよ! すぐに“彼ら”がやってこよう! かつて新型機の基をつくりし者、我が命により新たに騎士団と成した者たちよ!」
近衛騎士団のカルディアリアが動き、演習場の門が開け放たれる。
幻晶騎士が5機は並んで歩けそうな、巨大な門の向こうに土煙を上げながら爆走する何者かの影が見える。
先ほどから続く、異常な重量感を持つ馬蹄の音は全く止む気配がない。
一体何が現れるのか、全ての人間が固唾を飲んでそちらを注視していた。
アンブロシウスは腕をあげ、堂々と彼らの名を告げる。
「来い……銀鳳騎士団よ!!」
“ソレ”が現れた瞬間、絶叫の唱和が大地を揺らした。
「なんだ……!! なんだ、なんだあれは!?」
観覧席にいた者、控えの工房にいた者、その場にいた全てがあまりの驚愕に声を上げ、そして立ち上がった。
立ち上がらないものは単に腰を抜かしていただけである。
“ソレ”は堂々と、大地を揺らす轟音ともうもうとした土煙を引き連れて門をくぐる。
全ての人の視線を奪うソレは人であり、馬でもあった。
決闘級魔獣と並ぶであろう、巨大な馬。
胴の位置など幻晶騎士の肩ほどもあり、それを支える脚は太くとてつもない力を感じさせる。
現に相当な重量があるだろう巨躯は軽快なリズムで轟音を打ち鳴らしている。
何よりその場にいた全員を驚愕せしめた原因は、本来馬の頭部が備わっているべき部位に“人型の上半身”が生えていたことだ。
人と馬を掛け合わせたような、異形の存在。
御伽噺にしか存在し得ない、魔獣とは別の新たな魔の形。
驚きのあまり思考を凍りつかせていた彼らだが、やがて少し冷静さを取り戻すとその正体をすぐに理解した。
人馬の騎士が纏うは鋼鉄の鎧。
額に突き出た一本の角、優美な意匠を組み合わせた鎧の形は、決して自然に出来上がったものではなく人の手でのみ生み出される芸術品だ。
右手には長大な斧槍ハルバードと、逆の手には上下に長く先端部が鋭くなった妙な盾を持っている。
にわかには信じがたい光景だったが、それでも人々は一つの道理を導き出した。
――あれは人の手による創造物だ。
幻晶騎士と同じく、人造の巨人なのだ、と。
最初とは別の戦慄が背を這い上がると同時に、彼らは人馬の騎士が何かを牽いていることに気がついた。
土煙の中にまぎれるようにして存在する何か。強堅な作りを持った鉄骨と木材を組み合わせたもの、荷車だ。
その上には布の覆いにくるまれた何かしらが載せられている。決闘級魔獣に比肩するような巨大な人馬の騎士で牽く荷物。
その場にいる全員が、ほぼ同時に同じ発想にたどり着いていた。
それはやはり、幻晶騎士なのだろうと。
「ふふ、ふはははは……やりおったわエルネスティ! それでこそわしが見込んだものよ! いや予想以上か、これほどとは! まったく、まったく楽しいぞ!!」
熱に浮かれたようになっていた彼らを正気に戻したのは、彼らの王の高らかな笑い声だった。
そこで彼らは国王の最初の言葉を思い出す。
すなわち新型機の基を作りし者、新たなる騎士団――銀鳳騎士団。
彼らは理解した。もはや国機研の新型機どころではない、今日この日は歴史が変わるその時であると。
まあそれとは別にマーリは喜びをあらわにした。
「まあ!素敵な騎馬ね。初期の設計図から変わってるから噂の団長くんと最適化したのかしら?………あ、やっぱりチャリオットは流石に遅れるわよね。馬が相手じゃあ」と未だに響く奇怪な音の正体が現れることはマーリにとって予想の範囲内であった。
さて人馬でこれならチャリオットもソレなりに驚くだろう
さてこれで書き留めが終わりなので投稿遅くなります