ナイツ&マジック 二対の鳳   作:コーちゃん元帥

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 さーて出来たよ出来たよ~だがなんかアルヴァンズがかわいそうになったけど気のせいか?
 


トンでもオンパレード開始です

 

 

 王都カンカネン郊外に存在する、近衛騎士団のための演習施設。

 

 そこで行われていた国立機操開発研究工房シルエットナイトラボラトリの新型量産機のお披露目は、突然の銀鳳騎士団の登場により混沌の坩堝へと叩き込まれていた。

 演習場を我が物顔で走る人と馬をあわせたような異形の機体と更に現れたもうワケわかんないゲテモノが追随する。

 

 巨大な質量を持つ鋼鉄の蹄が大地を打ち鳴らし、一足ごとに雷鳴のごとく馬蹄の音が響いては観覧席に居並ぶ見物人たちの鼓膜を震わせた。

 

 人々は瞬きすら忘れ食い入るようにそれを見つめている。

 

 人が扱う最強最大の兵器、幻晶騎士シルエットナイト。その一種でありながら人からかけ離れた姿を持つ人馬の騎士――ツェンドルグが人の手で作られた物だと

 

 ツェンドルグとゲテモノを見つめているのは、なにも見物人たちばかりではなかった。

 カルダトア・ダーシュの騎操士ナイトランナーたちもまた興味深くそれに見入っていた。

 

 

 「ツーヴァ、見てみろ。すごいな、幻晶騎士が人馬の形をしているぞ、あっちのゲテモノも噂に聞くマーリ公爵領の奴か?なかなか面白い」

 

 「“衛使”殿が我らを呼ぶわけだ……あちらも侮れないものだな」

 

 「まったくだな。しかし衛使殿ははめられたのか?これではこちらの新型機というより、まるであちらのお披露目だ」

 

 

 隣の機体からくっくっと皮肉げな笑い声が漏れるのを聞き、彼もまた腕を組み幻像投影機ホロモニターに映る人馬の騎士等をにらんだ。

 

 

 「さてどうかな……我らを呼んだということは、単にはめられたわけではないだろう。それよりも、今のうちにアレに対する戦い方を考えておいたほうがいいのではないか」

 

 「貧乏くじかとおもったがどうしてなかなか、面白くなってきたじゃないか」

 

 

 カルダトア・ダーシュの眼球水晶が輝きを増し、相手の一挙手一投足を見逃すまいと盛んに像を結ぶ。

 

 騎操士たちはすでに観覧席の喧騒とは遠く離れた場所にいた。

 見るべきものは敵の姿、知るべきものは敵の動き。

 

 静かに、しかし確実に戦いは始まっている。

 

 

 

 

 そんな騎操士たちの緊張も、ざわざわと抑えきれぬ喧騒に満ちた観覧席からは窺い知れなかった。

 観客である貴族位の者達はある意味混乱している。

 

 

 アンブロシウスは小さな笑みを浮かべたまま走るツェンドルグを眺めていたが、ふと隣にいるオルヴァーへと視線を向けた。

 

 「おぬしはあまり驚かぬのだな」

 

 「滅相もありません。前々よりライヒアラ付近に恐ろしい魔獣が出没するとの噂を耳にしておりましたが、それがまさか新型の幻晶騎士のことだったとは。このオルヴァー、心底より驚き慄いております」

 

 

 オルヴァーの糸のように細められた目元には一瞬だけ複雑な色彩が過ぎったのだが、彼はそれを周囲に気取られる前にすばやく消した。

 

 そして平素のごとくわざとらしい仕草で頭をたれる。

 その変わらなさは、この粘度の高い気配の中では逆に異常とすらいえたがもう一人いる。

 「ですがあちらこそ驚いてないと思いますが?」とオルヴァーは目線だけマーリ公爵の方に向ける。

 アンブロシウスも見てみると実際の所、マーリ公爵はまだ二十歳だが見る側からは若者がはしゃいでいるという感じだ。

 断じてこの異形共に驚いていない

 

 「楽しそうだのう?マーリよ」と声をかけられてマーリは振り向くそれは満面の笑みであった。

 「えぇ、かわいい団長君とウマがあったようでなによりですわ。メイルから教えて貰った人馬とは随分変わってるから団長君と最適化したのかしら」それはアンブロシウスにしても驚きであった。

 流石にあれほどの傾奇者は二人はいないと思っていたからだ。

 「それにしてもオルヴァーさんも耳がよろしいようでアルヴァンズを揃えてくれるなんて性能を引き出すならもってこいの試験会場ですね」オルヴァーもこれにはやれやれとしていた。

 というよりもしかしたらこやつは知ってるのではないのか?そう思ってしまう程にマーリの言葉は心臓に悪かった。

 

 「そちらも良い耳をお持ちのようで?」

 

 「お褒めに預り光栄です。陛下そろそろ祭り事を初めてもよろしいのでは?」とアンブロシウスも予測していたオルヴァーも少しばかりネタバレされてやれやれとした。

 少しだけオルヴァーと話し

 

 「その前に、あやつらのことを知らしめねばならんな……」

 アンブロシウスが誰へともなく呟いた直後、貴賓席の扉がノックされ警備の兵が銀鳳騎士団の到着を告げる。

 

 押し殺した吐息が部屋に満ちる。

 全員の視線が、一斉に扉へと集中した。

 扉は開かれ四人の騎士が現れた。

 

 銀鳳騎士団――先ほど名乗りを上げた、騎士団長エルネスティ・エチェバルリア、第1中隊長エドガー・C・ブランシュ、第2中隊長ディートリヒ・クーニッツ、平団員(仮)メイルベーゼである。

 

 

 居並ぶ貴族たちは、思わずあがりそうになった呻き声を気合で飲み込んだ。

 

 いつもならば、その見た目から早速値踏みを始めているはずである。

 

 しかし今回ばかりは彼らは自らが混乱に陥る前にそれを切り上げた。

 

 

 左右を歩く2人の若者、エドガーとディートリヒはまだいい。

 その装いと鍛え上げられた様子を見れば良い騎操士であることがわかる。

 それは同時にただの騎操士以上のものではないということだ。

 

 問題なのは彼らの長であるエルネスティの姿だった。

 

 初見の印象はまず小さい、幼い。

 

 歩くたびにふわふわと揺れるセミロングの紫銀の髪、少女のように整った顔立ちに低い身長が合わさって、どこかの深窓の令嬢だと紹介されても信じてしまいそうな出で立ちである。

 

 それが国王直属の騎士団の長を称している。

 

 そしてもう一人、この場にいるマーリ公爵の切り札とも呼ばれる人物の名は聞いていた。

 聞けば聞くほど胡散臭かった。

 マーリー公爵領のシルエットナイトは独自の生産開発拠点を持っており独自に開発、生産をしてるがそれの中心人物であり単騎で四、五十の魔獣どころか師団級魔獣を討伐に生活水準を向上させるなどあらゆる面で公爵に貢献してるとだがどうだろうか蓋を開けて見れば団長と同じ子どもだ。

 ピンクのロングヘアーに毛先にはリボン、紅い瞳だが落ち着いた目、こっちも団長と同じく低身長も合わさって少女のように見える。

 服装だってどちらかというと女性よりに見えなくもない

 まったく悪い冗談である。

 こんな人物達を見定める眼を持った者はここにはいない

 

 物理的に圧されそうなほどに集中した視線の中でも、彼等にひるんだ様子はなかった。

 逆に瞳に強い意思を湛え、その目はまっすぐに国王へと向けられている。

 

 ただ、団長が国王へととった騎士の礼が些かぎこちなかったのが周囲にどこかちぐはぐな印象を与えていた。

 これだけ堂々と振舞っておきながらそこだけまるで“勉強途中の子供”のようである。

 逆にメイルベーゼの礼は見事と言わざるを得なかったがこちらはこちらで見た目と中身のギャップが激しく違和感を覚えた。

 

 

 「陛下の仰せにより、最新鋭試作機体“ツェンドルグ”、および試作兵装群を搭載したカルダトアベース・テレスターレ改、更にチャリオットここにお持ちしました」

 

 「ご苦労であった」

 

 

 言葉の内容が、周囲の興味をさらに掻き立てた。

 

 ツェンドルグ、というのは先ほどの人馬の騎士であろう。

チャリオットもあのゲテモノで間違いないだろうそれも興味深くはあるが、問題はもうひとつの単語にある。

 試作兵装群とは一体何なのか? 

 まだなにか隠し持っているのか――この時点で、彼らは既に完全に術中にはまっていたといってよい。

 

 彼らの手札はあからさまであり、ただ相手の手札だけが伏せられたまま。

 場の主導権がどこにあるかは明白だ。

 

 

 アンブロシウスには、そんな周囲の興奮と困惑が手に取るように察せられた。

 

 口元の笑みをどこまで隠せているか、本人にも自信がない。

 すでに彼の悪戯心は所々、水を差されたとはいえ満杯を通り越して破裂せんばかりである。

 

 ここからはネタばらしの時間だ。

 

 同時に国機研と銀鳳騎士団の立ち位置を決定付ける。ここまで派手に見せびらかしたのは単に悪戯心ばかりではなく、いや多分にそれも含んでいるが、この後の話を通してしまうための布石でもあった。

 

 すでに状況はワンサイド・ゲームと化している。

 

 

 「さて皆の衆よ、そこにいる子供がエルネスティ・エチェバルリア……ライヒアラ騎操士学園の長であるラウリの孫であり、新型機、そしてその人馬の騎士の設計者よ。今はわしの命により、銀鳳騎士団の長でもある」

 

 

 その、はずだった。

 

 

 「……お、お前等が、お前等のような子供がアレを設計したというのか……!!」

 

 

 一人の男が、彼の言葉をさえぎるまでは。

 

 

 ガリガリと乱暴に白髪の混じる髪をかき乱し、血走った眼を見開いて歩み出たのは国機研第一開発工房長、ガイスカ・ヨーハンソンだった。

 

 立ち振る舞いから一目で真っ当な精神状態ではないと知れる。

 それは目上も目上、国王の言葉を遮ったことからも明らかだ。

 

 

 「違う……違うだろう!! あ、あんなもの、普通は動くはずがない。何か、何かあるだろう、誰かから聞いたのか、いや、誰かが作ったのだろう!? 違う、作れるはずがない、なんだ、ならばどうしたのだ……!?」

 

 

 もはや周囲のことなど彼の目には映っていない。支離滅裂な言葉を喚きながらどんどんとエルへと詰め寄ってゆく。

 

 その狂態を目の当たりにして、アンブロシウスは珍しく困惑を露わにしていた。

 

 

 「(おお、これは少し荒療治が過ぎたかのぅ……対抗意識を持つ程度でよかったんじゃが)」

 

 

 言葉で制止できるか、束の間アンブロシウスは悩んだが完全に錯乱している様子を見れば通じるものとも思えなかった。

 

 彼は諦めて取り押さえるよう命令を下そうとしたが、その時に何かを言いたげな様子のエルと目が合う。

 興味を覚えたアンブロシウスは開きかけた口を閉じ、同じく目線だけで許可を下した。

 

 

 エルは要領を得ないうわ言じみた叫びをあげて迫るガイスカへと向き直る。

 

 彼の左右では、エドガーとディートリヒがもしもの場合に備えて全身を緊張させていた。いくら力に長けるドワーフ族とはいえ、現役の騎操士二人に敵うものではない。

 

 

 「ツェンドルグは、魔力転換炉エーテルリアクタを2基搭載しています」

 

 

 もはや手を伸ばせば届きそうな距離、エルのつぶやきは確かにガイスカに届いた。

 カッ、と意味不明の音を吐き出して彼の動きが凍りつく。

 

 同時にオルヴァーが珍しく目を見開き、驚愕を表情に乗せていたが相変わらずマーリ公爵だけはその笑顔を絶やさなかった。

 というかメイルの初期案の設計図で2基搭載してるのを知っているし

 

 

 一拍遅れて、エルの放った言葉の意味を周囲の人間も理解していた。

 小波のように、驚きは周囲へ広がってゆく。

 

 

 「なぜか、わかりますか?」

 

 

 エルはにこりと笑みを浮かべ、小さく首をかしげて問いかける。

 

 それに対してガイスカは間の抜けた姿勢のまましばらく凍り付いていたが、それもやがて溶け出していった。

 

 

 「あ、あれは……そう、そうか、巨大すぎる。炉が一つでは、支えきれん……そこまでして、やっと」

 

 

 ぶつぶつと呟きながら、ガイスカの瞳に明瞭な知性の光が戻ってくる。

 

 問いに答えるために必要なものは、理である。

 どんなに奇妙に見えても、技術で作られているものは理と知で語れば、読み解けるものなのだ。

 

 二つの心臓を備えた人馬の怪物。

 正気を取り戻した彼を震えがくるほどの衝撃が襲うが、それ以上に洪水のような疑問と知識欲が湧き上がっていた。

 

 

 「確かにそれで、形は維持できる……が、それだけで動くまい。まだ足りない。ほ、他にも何か仕掛けているのだろう」とそこでメイルがエルに提案する。

 

 「簡潔にまとめた資料があるからそれで説明しない?せっかく図面も持ってきたし」

 

 「良いですね。ではではさっそく」

 

 エドガーはこの期に及んではもう何も突っ込むまいと覚悟を決め、無言で傍らのトランクケースを開いた。

 

 ディートリヒも同じく無言で持ち運んでいた木製の台を組み上げ、簡易の黒板を用意していた。

 

 エルとメイルは素早く何枚かの図面をそこに張り出すと、可憐な花が咲き誇るように満面の笑みを見せて。

 

 「では解説いたしましょう! まずは基礎の構成からですね……」

 

 「いやちょいと待たんか、この馬鹿者共が。わしを無視して勝手に始めるでない、マーリお主もお主で何で話しを聞こうとしとる!」

 

 プレゼンテーションが始まる直前に慌てて待ったをかけたのは、当然アンブロシウスである。

 ついでにマーリもどこから取り出したか分からない椅子に座って聞く体勢を整えていた。

 思わず流されかけていた周囲の人間も、その一言で我に返った。

 「あらせっかくかわいい騎士さん達が説明してくれるのですから聞いても良いではないですか」

 

 「……陛下もごいっしょにどうでしょうか。大丈夫です、皆様にお聞かせするために大量の資料を持ってきましたからじっくりと全てですね……!」とちょんちょんとメイルがエルをつつき止めようとするので少しはまともかと思いきや

 

 「じっくりは無理だよ。簡潔コースで5分で済ませるべき」とどうやらプレゼンテーション自体は止める気は微塵もないらしい

 

 「それのどこが大丈夫なんじゃ。後でゆっくりと聞いてやる、まずはそれを仕舞わんか」

 

 

 エドガーとディートリヒはやはり無言で、テキパキと台と図面を仕舞ってゆく。

 

 エルとメイルついでにマーリも実に残念そうにそれを見送っていた。

 

 「ガイスカ、おぬしも控えよ」

 

 「……!!あ、ああ、も、申し訳ありません……あのような醜態を……」

 

 「やれやれ、少々薬が効きすぎたようじゃな。まぁよい、正気に戻ったのならまずは話を聞け」

 

 

 一転、地に頭を擦り付けんばかりに平伏するガイスカへとアンブロシウスは投げやりに応じる。

 

 

 「ぷっ、くく、ふふふ……」

 

 我慢し切れなかったのだろう、ついに横であがった笑い声にアンブロシウスは小さくため息をつくと、ゆっくりと振り返った。

 

 「オルヴァー、おぬしまでもか」

 

 「これは申し訳ございません。いやぁ、どのような子供かと思っていればずいぶんと面白くて……陛下を呆れさせる者などそうは見れるものではありませんし」

 

 

 笑顔で頭を下げるオルヴァーへまたも投げやりに応じるアンブロシウス。

 

 先ほどまでの緊迫した空気は完全に霧散し、なんとも緩い気配が場に漂い始めていたのだった。

 

 

 

 

 気を取り直して、アンブロシウスは咳払いをして場の空気を切り替えて少しの時間、説明に入った。

 

 内容をまとめればこうだ。

 騎士団の創設理由がエルネスティが趣味で始めたシルエットナイトの新型を作ったことにあるがそこで強奪事件が発生したが、幸い開発者は無事な為に護衛戦力として騎士団が出来た。

 更に言えばラボの人間と子どもであるエルネスティが馴染めるとは思えず独自の開発集団にした方がよいとのこと

 

 あとは二つの開発集団は別々でした方がよいと確かにテレスターレはじゃじゃ馬だったがラボをそれを基に洗練されたカルダトア・ダーシュを作った。

 という感じになる。

 

 こうして銀鳳騎士団の存在は周知のものとなり、この日列席した者たちを起点として、フレメヴィーラ王国の貴族のあいだにエルネスティの名が静かに広まってゆくことになる。

 

 その名前にはひとつの注意が付帯していた。

 

 曰く、銀鳳騎士団騎士団長エルネスティ・エチェバルリアなる者は、凄まじいまでの開発能力を持つと同時に想像を絶するほどの幻晶騎士バカである、と。

 

 そうして話が終わってからしばしの後。

 

 

 「さて諸君、彼らが何者かわかったからには、次は新型機の力を知りたかろう。これより国機研と銀鳳騎士団による模擬戦を行うこととする。双方準備せよ」

 

 

 アンブロシウスの命に従い、銀鳳騎士団は準備のため演習場へと降りていった。

 

 降りる間にも、一緒に移動しているガイスカとエルにメイル等、3人のひたすら意見交換をしている声が廊下から響いてくる。

 

 ガイスカも元をただせば叩き上げの技術者であるからして、未知なる技術への貪欲さは他に引けをとらない。

 エルにしても枷が外れたメイルにしても趣味の話は止まらない性質とくれば、それは整備用の工房につくまで続くことだろう。

 

 

 そのころの観覧席には、もはや最初のような尖った様子はなかった。

 

 今はただ、互いの組織が持てる力を振り絞った機体の力について盛んに議論を交わしている。

 要するに単なる野次馬と大差ない状態だ。

 

 アンブロシウスとオルヴァーが何か話していたがそれを知るものはいないそれと一つ分からない事があったのでマーリに聞くことにした。

 何を聞くにしてもあのゲテモノ、チャリオットと呼ばれるシルエットナイトだ。

 騎馬は歩兵の3倍といった話しはあるがあれはどうとらえるべきか?

 

 「マーリよ。あのチャリオットとやらは騎馬と同じ例えでよいのか?」なんか色々とワケわからんのを付け足し始めてるし

 

 「難しいですわね。あれは膂力と火力だけなら通常の3倍にはなりますけど如何致しますか?」と内心驚いてはいる。

 見た目とは裏腹に性能はトンでもないな!と

 アンブロシウスは今の情報を元に考えたがすぐに終わった。

 

 「これより、国機研と銀鳳騎士団による模擬戦闘を始める。なお戦力は均衡をとるため銀鳳騎士団、騎士4騎及び騎馬1騎、チャリオット一騎! 国機研、騎士10騎とする!!」

 

 

 観客の歓声を背景に、アンブロシウスが対戦規定を告げる。

 

 盛り上がる観覧席とは対照的に、演習場内に布陣するグゥエールの操縦席ではディートリヒが億劫そうにぼやいていた。

 

 「ツェンドルグは騎士3騎分と判断されたわけだね。1つの騎馬は3の歩兵に等しく、か。幻晶騎士にも当てはまるものかな?」

 

 「ちょっとチャリオットまで同じ扱いっておかしいでしょ」と今回、ヘルヴィもチャリオット要員で来ていたがこのゲテモノも騎馬扱いではたまったものではない

 

 「そうですね。確かにチャリオットは膂力と火力は3倍ですけど総合的には精々2倍ですかね」

 

 「そうなのか?まあどちらにしろこの場合、国機研むこうの新型機はこちらのものを改良したものだ。それが3騎……正直、戦力負けに思えるがな」

 

 4人の改良型テレスターレ(カスタム騎)は以前よりは良くなったがメイル曰く基礎技術で劣ってるらしく安定化を優先させた為に向こうの全面改修されたカルダトア・ダーシュよりは全騎一部を除き劣ってる。

 というかみんなそれぞれ特化型なのでそれ以外が劣るのは仕方ない

 

 「楽しみですね。どこまで“まともに”なっているのでしょう? 使い勝手は大分と改善されたようですし……そうだ、後で乗せてもらいましょう!」

 

 「あ!ズルいワタシも乗りたい!ラボの技術は良い見本」

 

 「……ああうん、君達はいつもどおりで羨ましい限りだね」

 

 ずれた感想を漏らすエルとメイルの様子にディートリヒはやれやれと首を振る。

 

 「まぁ、俺たちとて以前のままではないさ、というよりはテレスターレの面影すら残ってないしな」と3人は微妙な顔をする。

 今回のカスタム騎ならぬ試作兵器満載のシルエットナイトからどこを見てもテレスターレのテの字すら見えない

 

 「ねぇ、それで私たちはどーすればいいの?」

 

 「やっぱ3騎相手にやりあうのか?」

 

 背後に控えるツェンドルグから双子の声が届く。

 

 彼らの最大の勝機であり、また不安要素でもあるのがこのツェンドルグだ。

 

 これまでに身内での戦闘訓練は積んできているものの、双子にとってはこれが初陣にも等しい。

 何が起こるか予想は困難だ。

 

 ヘルヴィから文句がこないがそれは換装した装備の説明を受けて今はワクワクしている。

 

 「大丈夫、わたしが一個小隊引き受ける。ヘルヴィさんは戦場を掻き回してください」

 

 「オッケー、任せなさい!」

 

 「ならどうする。手堅く定石に従うか、それとも」

 

 「それなのですが。エドガーさん、ディーさん、少しの間だけ無理をお願いできますか?」

 

 

 彼らの団長の指示を、二人は操縦席の中で不敵な笑みを浮かべて聞いていた。

 だが一番、悪い笑顔をしていたのはエルネスティとメイルベーゼだったりするが………

 

 

 

 高らかな喇叭ラッパの音が演習場に並んだ双方の部隊の間を駆け抜けてゆく。

 

 さらに戦闘の始まりを告げる銅鑼ドラが打ち鳴らされ、大きな歓声が後に続く。

 

 

 直後、大地を揺らしながら巨人の騎士が突撃を開始した。

 

 最初に動きを見せたのは銀鳳騎士団側だ。

 4騎の騎士が前に走り出て、ツェンドルグはその後ろを速度をあわせてついてゆく。

 

 国機研側――カルダトア・ダーシュを操る騎操士集団である“アルヴァンズ”。

 

 彼らのリーダーであるアーニィスは銀鳳騎士団の動きを見てふむ、と鼻を鳴らした。

 

 「同時突撃を狙ったか……?しかしチャリオットは動いてないが、まぁ、想定の範囲内だ。槍壁陣構え、前進する」

 

 彼らは3個小隊を横並びにして、全員で盾と槍を構えてゆっくりとした速度で前進を始める。

 

 明らかに人馬の形をもつツェンドルグを意識した陣形である。

 突撃力の高い魔獣に対する常套手段でもあり、穂先を潰してあるとはいえ長く突き出た槍は速度をつけての突撃を躊躇わせるには十分だ。

 

 銀鳳騎士団が接近の速度を上げた。

 さらに部隊の後ろにいたツェンドルグが単騎で横に距離を取ると、先行する3機を追い抜いての襲歩を開始する。

 

 「第2小隊は右へ向かい槍壁陣を維持、第3小隊はチャリオットを、第1小隊格闘準備!!」

 

 

 突出し始めたツェンドルグにあわせて、アルヴァンズは部隊を三つに分けた。

 

 

 そのまま槍を構えてツェンドルグを迎撃する部隊とチャリオットを倒す部隊、槍を捨てて騎士と格闘をする部隊である。

 長い槍は突っ込んでくる相手には有効だが、小回りに長けた騎士を相手にする場合は不便が勝る。

 

 3個小隊と一騎を抱えるアルヴァンズは小隊ごとに役割を分けることで、数の有利を生かしてきた形だ。

 ツェンドルグとチャリオットに一個小隊(3騎)ずつ、4騎で同数の騎士と格闘戦

 

 

 両者の動きを見ていた観客の大半も、歩兵同士の衝突と騎馬やチャリオットを相手にした戦いに綺麗に別れたと、そう考えていた。

 

 直後に銀鳳騎士団によるトンでもオンパレードな異常な行動を始めるまでは。

 「じゃあ、一番手もらうわよ」

 チャリオットは完成して二年になるがどちらにしろこの場に置いては旧型騎である。

 だがなぜ持ってきたかと言うとエルネスティとメイルベーゼによる変態ともいえる魔改造を経て劇的な進化を得て新型騎に勝る新型チャリオットそしてそのオプション武装が展開される。

 背中に積まれた4つの長大な武器の先に4つの巨大な火の玉が形成される。

 それはアルヴァンズを動揺させるには十分だった。

 

 

 

 

 

 「バックウェポン?しかし有効射程にはまだ遠いぞ」

 見た目だけならバックウェポンを使うと分かるが問題は距離である。

 未だチャリオットからアルヴァンズまで演習場の半分以上はあるため、普通に考えれば明らかに遠すぎる。

 

 

 

 

 だが前途のように変態に昇華したチャリオットには問題ない

 「チャリオット[ファイヤーパーティー]、ファイヤ!」

 4つの火の玉は放たれたがそんなのを気にする余裕なんてない!

 なぜならそれは真っ直ぐアルヴァンズに向かって飛んでくるのだから

 「なに!?全員回避し……」言い終える前に爆音で掻き消された。

 「ぬぉぉぉぉ!?なんだ!この火力は」

 

 「これほどの距離を届かせるのかよ!」

 

 「法撃も止む気配がないぞ!」

 

 「落ち着けぇ!敵はあれだけではない!回避しつつ第2小隊は騎馬モドキを第3小隊は回り込んで黙らせろ!我々は不利だが正面をやる!「隊長!」こんどはなんだ!」

 

 「騎士2騎に変化あり!」と団員からの必死の叫びに敵に目を向ける。

 

 

 「マギジェットスラスタ、起動」

 

 「積層配置から展開」

 

 「「吸気圧縮開始……」」エルとメイルは深い笑みを浮かべていた。

 チャリオットでこれならこれからやることはきっと大いに驚いてくれるだろうと確信を得て

 

 

 突如として起こった爆音が轟く戦場とは異なる異音が場内に響き渡りはじめる。

 

 急激に集められた空気が渦を巻く、独特の甲高い音。

 魔力転換炉の吸気音を数倍に激しくしたような音が、銀鳳騎士団のうち2騎から放たれていた。

 

 金属地をそのままのようにした鋼色の2騎がゆっくりとしゃがむ

 それぞれ異なる所に追加された装甲が、がしゃがしゃと配置を換えていた。

 

 装甲を支える可動機構により、向きが真後ろへと変えられる。

 階段状に重なった装甲の裏側につけられていた、板状の弁が開いてゆく。

 

 重なった装甲の内部は中空になっており、そこには紋章術式エンブレム・グラフがびっしりと刻まれていた。

 

 それを見ていた観客に戸惑いが広がった。

 何故装甲を動かすのか、あれでは守るべき部分が剥き出しではないか、と。

 いまだ謎の音を立てるその装置の意味を知る者はいない。

 

 それだけ怪しげな動作をしていれば当然、アルヴァンズは警戒心を抱くというよりはこれ以上俺たちを混沌へ導かないでくれと願っていた。

 

 「なんだあれは?」

 

 「空気を集めている……エア・バレットを撃つシルエットアームズか?何か新兵器のようだが……わからん」

 

 「ツーヴァ、イドラ、先ほどの法撃並に警戒しろ。そろそろ射程内だ、こちらも魔導兵装で仕掛けるぞ」

 

 槍を持たない第1小隊が背面武装バックウェポンを起動する。

 同時に第2、第3小隊も背面武装を起動していた。

 高速で移動するツェンドルグは騎士よりはるかに突出している。

 既に完全に魔導兵装が有効な間合いの中だ。

 

 そうして未だに止まない法撃を掻い潜り法撃する直前、それは起こった。

 

 鋼色の騎士が膝を撓め、身を沈めて力を溜める。

 騎操士であるエルネスティとメイルベーゼの意思をそのまま反映するフルコントロールにより操作されているその機体は、ストランド・クリスタルティシューの力を余すことなく発揮する。

 踏み込みが大地を抉り機体が疾走へと移る瞬間、紅蓮の炎がその身から噴き上がった。

 

 輝きと、爆音を伴う炎の尾が追加装甲から長く伸び、今まさに加速へと踏み切ったその機体へと尋常ならざる推力を与えていた。

 

 人の5倍の大きさを持ち全身を金属と結晶で構成した、莫大な重量を持つ幻晶騎士。

 それがまるで法弾のごとき圧倒的な速度に到達する。

 

 

 炎の尾が現れていたのは僅かな時間だった。

 鋼色の騎士が二歩目に入る頃にはそれは陽炎へと変化し、機体の背後の空間を揺らめかせるばかりだ。

 

 鋼色の騎士が二歩目を踏み切る瞬間、再び背後に炎が顕現する。

 当然、騎士は更なる推力を得て速度を増してゆく。

 

 

 

 「ゼルクゥーーース!! 気をつけろ! あれはそちらヘ……!!」

 

 誰もが眼前の未知なる光景に動揺している中、最初にそれに気付いたのは第1小隊のアーニィスだった。

 

 鋼色の騎士達はもはや異常なまでの速度に達し、先行していたはずのツェンドルグすら追い抜いてアルヴァンズへと迫っている。

 そう、槍持つ第2小隊へと。

 

 

 「ばっ……なんだこいつ等は!?」

 

 「槍では間に合わん! 撃て!!」

 

 

 ツェンドルグにばかり注意していた第2小隊は、法弾と見紛うほどの速度で接近する鋼色の騎士に対する反応が遅れた。

 

 それでも彼らは咄嗟に魔導兵装を撃ち放ち、迎撃を試みた。

 一瞬の行動であったにもかかわらず、飛翔する法弾が正確に鋼色の騎士を捉えていることが彼らの技量の高さを証明している。

 

 

 大きな驚愕に襲われつつも、第2小隊の小隊長であるゼルクスは頭の隅の冷静な部分で相手の失敗を確信していた。

 

 異常極まりない速度の奇襲は賞賛に値するものだが、逆にあれだけの速度を出してしまっては攻撃の回避などできたものではない。

 敵は自らの速度で自滅するのだ。

 

 

 だが、そんな彼の思惑を上回る者がいる。

 

 銀鳳騎士団団長エルネスティ。

 その身体的条件から、彼は訓練の大半を高速戦闘に対応すべく費やしてきた。

 

 団員(仮)メイルベーゼ。

 7歳の時に無断出撃してから特務騎士として魔獣激戦領であるマーリー公爵領の最前線で鍛えた圧倒的、経験値の塊。

 

 そんな彼等の鍛えられた反射神経と圧倒的な演算能力が、刹那の間に行動を差し挟むことを可能とする。

 

 

 鋼色の騎士のそれぞれに装備された追加装甲。

 可動式マギジェットスラスタともいうべきその装備が、噴射口を一斉に横へと向ける。

 

 短い爆音と、炎の煌き。

 

 急激な横方向のベクトルを加えられた鋼色の騎士は、一瞬で進行方向を斜め向きに変化させた。

 

 

 「は?」

 

 

 敵は第2小隊の予想をはるかに超えていた。

 

 ちゃんと狙いが定まっていたことが災いし、法弾は鋼色の騎士に掠ることすらなくその横を通り過ぎてゆく。

 

 

 「うわぁああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 白刃が閃く。

 

 鋼色の騎士は第2小隊の左側を通り過ぎざま、剣を振るった。

 圧倒的な速度をもった斬撃は決闘級魔獣の突進にも匹敵する威力を発揮する。

 

 機体の左手に盾を構えていたことが、左端に位置していたフィリア機を救った。

 それでも強大な衝撃に盾が弾き飛ばされ、フィリア機は大きく傾いて後ろへ倒れこんでゆく。

 

 

 「フィリア! まずいな、私があれを抑える、ユンフは後ろを……」だがそれだけでは終わらなかった。

 ユンフの機体にワイヤーが絡み付いていた。

 そうエルは剣で吹き飛ばしたがメイルはワイヤーで絡めていたのだ。

 

 

 「まずは一騎………」デュエルレヴィーラのワイヤーが限界まで延ばされるとビシッと張る。

 そうエルは逆噴射で止まることにしたがメイルは相手を重りにして無理やり減速することにしたのだ。

 その為に後付けのワイヤー発射装置を付けたのだ。

 ユンフ騎は圧倒的重量に引っ張られ宙を舞った。

 結果、分かるだろ?おもいっきり地面に叩きつけられた。

 

 「うわぁぁぁぁ!?」

 

 

 「ユンフぅぅぅ!…………は!しまった」あまりの出来事に忘れていたが自分が何と対峙しようとしていたのか思い出した。

 

 爆音を轟かす鋼色の騎士に隠れて、人馬の騎士はもはや眼前に迫っている。

 土煙を跳ね上げ、圧倒的な迫力を持った騎馬が突撃してくる。

 

 鋼色の騎士達の攻撃により大きく体勢を崩した今の第2小隊では、あれを迎撃するのは無理だ。

 ゼルクスはそう素早く判断すると無理矢理飛びのいた。

 

 そうして開いた空間を、ツェンドルグが走り抜けてゆく。

 

 ツェンドルグはすれ違いざまに、その左手に持った細長い盾を振り回し殴りかかってきたが、ゼルクス騎は盾で受け流すことで損害を最小限とした。

 

 

 その隙に、爆発的な速度で駆け抜けた片方の鋼色の騎士は機体を停止させていた。

 

 両脚を踏ん張り、同時にマギジェットスラスタを前方へと向ける。

 今度は一瞬ではなく長時間の噴射が行われ、自らが持つ速度をその推力で打ち消していた。

 

 もうもうとした土煙と、揺らめく陽炎をまとって鋼色の騎士が動きを止める。

 

 ややゆっくりとした動きで振り返ったとき、そこには総崩れになった第2小隊の姿があった。

 

 

 そして更に第3小隊にも迫っていた。

 

 「な!一騎このまま来るぞ!」

 

 「近付けるな!法撃開始!」と第2小隊をすり抜け自分達に迫る一騎の鋼色の騎士を迎撃せんと法撃を仕掛けるが全てが遅かった。

 

 鋼色の騎士は飛びながらも法撃を飛ばして来たのだ。

 それは当たることもなく地面に着弾し土煙が舞う

 「な、目眩ましか!だがそれではやつは」と第3小隊の隊長の横にいた味方から強烈な金属と金属がぶつかり合う音が聞こえた。

 

 「もう遅い……」

 メイルは更に減速するためにそして数を減らす為にしたこと、それは敵に向かってドロップキックをすることだった。

 「こいつ無茶苦茶な!」ザルーグはとっさに盾で防ぐが完全にとはいかず大きく後ろへ倒れた。

 鋼色の騎士はワイヤーを切り離し空中で回転、更に短く炎を噴射し着地しようとしたがそこを見逃すほどアホではない残りの2騎は法撃しようとするが忘れていたことがあった。

 チャリオットの法撃が飛んできて攻撃するチャンスを逃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な、何の冗談だあれは……!?」

 

 

 第2、第3小隊の惨状とそれをもたらした鋼色の騎士達の存在は、第1小隊に強い動揺を与えていた。

 

 彼らはすぐに救援に向かおうとしたが、それをアーニィスが押し止める。

 

 

 「落ち着け!残りの騎士が迫っている、今、救援に向かえば我らも背中を突かれるぞ!」

 

 

 その言葉で、彼らは残る歩兵2騎のことを思い出す。

 鋼色の騎士達のあまりに派手な攻撃は、彼らの注意を完全に奪ってしまっていた。

 

 「ファルゼンは第2小隊に合流、我々は前進するぞ。2対3だ、可能な限り素早くあの2騎を倒す! ゼルクスたちはそう簡単にはやられん。今ので守りを固めるはずだ!」ついでにいえば第3小隊もまだ全騎健在だ。

 

 

 3機のダーシュが走り出す。

 銀鳳騎士団の2機との間があっという間に縮んでゆく。

 

 

 「イドラ、あの鋼色のに注意しろ! またあの音が聞こえたら迎撃に回る!!」

 

 

 アーニィス機、ツーヴァ機が先行し、走りながら背面武装を発射する。

 対して銀鳳騎士団は紅白2機のうち、白い騎士が前へ出る。

 

 殺到する法弾が突き刺さるかと思えたそのとき、白い騎士の肩周りに配置された装甲が動き始めた。

 補助腕が蠢き装甲を前方へと集中させてゆく。

 さらに盾を構えて完全な防御形態をとった白い騎士は、勢いを落とすことなく飛来した法弾を全て弾き飛ばした。

 

 

 「あれも、ただの機体ではないということか……」

 

 「鋼色のは動いていない、今のうちにやるしかないぞ。あの妙な装甲とて、全てを覆えるわけではあるまい!」

 

 

 アルヴァンズの3機はさらに法弾を撃ち続け、圧力を加えながら剣の間合いへと入った。

 それと味方を巻き込まない為かチャリオットからの支援が無くなっている。

 

 白い騎士の陰から、今度は紅い騎士が飛び出してくる。盾を持たない、攻撃型の重装機だ。

 それは剣を振るうと見せかけて、ツーヴァ機へと腕を振り上げた。

 

 その篭手の根元から、炸裂音と共に何かが飛び出した。

 

 剣を交えることを想定して構えていたツーヴァ機の顔面に、飛び出してきた金属の塊が直撃する。

 衝撃は眼球水晶に届いたと見え、操縦席ではホロモニターの映像の半分が歪んでいた。

 

 

 「こいつらは、どれだけ妙な装備を!!」

 

 

 ツーヴァ機が怯んだ隙に紅い騎士はイドラ機と切り結び、力任せにそれを押し返す。

 

 その横ではアーニィス機と白い騎士が切り結び、同じく一旦間合いを離していた。

 

 

 「倒し……きれないか!」

 

 

 アーニィスは密かに歯噛みする思いだった。

 数ではアルヴァンズが勝っているが、攻撃と防御に特化した性能を持つ紅と白の騎士はなかなかに手ごわい。

 

 その時、彼らの背後から大量の空気を吸い込む異音が響いてきた。

 鋼色の騎士が再び動き出したのだ。

 

 

 「これは窮地だな……イドラ、後ろを警戒。ツーヴァ、いけるか」

 

 「ああ、動きには支障ない。ゆくぞ」

 

 

 アルヴァンズは再び攻勢に移る。

 紅と白の騎士もそれを迎え撃つべく動き始めていた。

 

 

 





 新型チャリオットは少し前の話で出した試作兵装の一つを発展させたものです。
 つまりタンクからガチタンに進化したことです。
 後のキャリッジに実装される三式装備を4門搭載したもんです。
 次回、カスタム騎のバトルに移行します。

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