久々の投稿ですがとりあえず模擬戦は終わります。
さて散々に荒らされた試合の中、メイルペーゼはアルヴァンズの第3小隊と対峙していた。
「さてマナは結構温存できたしまあまあかな?………エルの方は………まあ安全第一だししょうがないか」と眼球水晶越しに見えるエルのシルエットナイトを見てまあしょうがないと思い目の前の3騎に意識を向けた。
「流石アルヴァンズと言った所かな?……まあでも」
そう、彼等の強さは故郷の魔獣や騎士団程ではない。
「では銀鳳騎士団、団員(仮)メイルペーゼ、推して参る!」
第3小隊は目の前の異形に違和感を覚えていた。
突如、補助腕と接続されてると思われる片方がまるで翼でも拡げるように展開された。
機体のあちこちも装甲がガシャガシャと動いていて不気味な感じがした。
人であって人でない
そう思わざるを得なかった。
人馬もチャリオットもあのもう一騎の飛んだ機体も分かるが目の前のだけはまるで悪魔ではないかと人の皮を被った悪魔ではないかと思った。
「何をするつもりだ?」
「気を付けろよ。未だに手の内を明かしていないんだからな」ごもっともである。
性能はともかく基本装備から標準装備まで向こうが網羅してるのだから油断ならない
ダーシュの売りは従来より向上した基本性能に安定した操縦性なのだから
そしてまたあの音だ。
「吸気音………来るぞ!各機法撃開始!」小隊長の指示により一斉に開始した。
異形は避けるどころか一直線に向かってくる。
驚きこそしたが全員身構える。
先程のあり得ない回避運動を見ているからだ。
異形は翼を全面に展開した。
あの白い騎士と同じ盾なのだろうか?
いな同じ筈がない!
翼の隙間から複数の触媒結晶が現れた。
バチバチと電気が走り火の玉が当たると思われた時、まるでレールでも敷かれているかのように火の玉は異形を避けて後ろに飛んでいった!
「はあ!?なんだあれは!」
「気を抜くな!来るぞ!」と異形は陽炎を吹かし加速した。
横からの剣撃が来るが流石に2度も喰らうことはない
鍔迫り合いに持っていけた。
「今だ!二人でやれ!」と心得たとばかりに仲間は斬りかかる。
決まったと誰もが思った。
まあ一部を除いてだが…………
翼はまるで巨大な手のように開き一騎の上半身を掴みもう片方は補助腕になってるが通常のと大差ない
変わってるのは手があるところが剣になってることだが………
「なっ!はな…ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「こいつどんだけ奇妙な装備を!」必勝を得た筈の二騎はあっさり受け止められ挙げ句一騎はやられてしまった。
「こいつ………だがこの至近距離からの法擊はかわせないだろ!」と背面武装を展開して鍔迫り合いしてるこの至近距離から法擊をしてやろうとするが何か忘れてる。
此方に近づくキュラキュラと奇怪な音が響くのだ。
『こっちを忘れてもらっちゃ困るわね!』そうあのゲテモノ、チャリオットだ!
しかも味方が落としたと思われる盾二枚を軽々と持ち構えて突撃してるのだがもう遅い鍔迫り合いをしていた小隊長は横からの突進に耐えられず突き飛ばされ機体がしっちゃかめっちゃかになった。
「小た『余所見は命取り………』しまっ!」補助腕に受け止められていた団員も剣を通じて流された電撃で倒れたのであった。
『ヘルヴィー先輩、ナイスです』
『どういたしまして、チャリオットの膂力もバカにならないわね』
『なら良かったですがこっちはマナプールが心もとないので息継ぎさせてもらいます』
『オッケー、ならもう一発やってくるわ!』と爆走して第二小隊の方に突撃するチャリオットを見て少しばかり考えていた。
(サンダリングシールドは良かったけど燃費が悪いから改良しないと、腕に付ける後付けタイプにした方が良いのかな?チャリオットは値が張っちゃうけどファイヤーパーティーは調子が良い。人馬とは違って拠点防衛が主になりそうだけど)などを考えながらだいぶ離れてるエルの方に機体を歩かせるのであった。
ただしチャリオットの置き土産に換装してだが……
一方、第一小隊は第三小隊があっさりと倒れてしまったことに驚きを隠せなかった。
「第三小隊が倒れただと!………くそゼクルス達の救援はあとになりそうだな」第一小隊も最初こそ数と操縦性が勝っているダーシュに軍配が上がると思っていたが紅と白、剣と盾のタッグが予想以上にしぶとかった。
「くっ!予想以上に堅い守りだ」隊長が思ったのは純粋な装甲の厚さではなく戦い方だ。
普通なら神経が磨り減る筈の受けの一手を今の今まで耐えているのだら
「隊長に食らいつく騎士なんか久々じゃないのか!」
「それよりもこのっ!………ちょこまかと」紅の方も厄介だ。
全身が鋭利な装甲な為に全ての動作は攻撃になる為に盾無しだからと侮ることはできない
一瞬たりとも気を抜けないがそれは何もアルヴァンズに限った話ではなかった。
「流石は噂に名高いアルヴァンズと言ったところかね。攻めきれん」
「ああ、既にこちらの装備にも対応してきてる。正直、じり貧だな」テレスターレからかなり改善されてると言っても燃費や操縦性に関してなら向こうに分がある。
更に言えば試作兵装でマナプールの消費が激しいのだ。
かと言って無かったら無かったでここまで食らい付くことなんて出来なかったがマナプールの底が先に尽きるのは分かりきっていた。
「もう少し持ちこたえるぞ。そうなれば二人が来て状況が変わる」
「そうだな、もう少し踏ん張ってもらうかグゥエール!」ディートリヒは後のことをあの二人に任せることにして全力で当たった。
「マナが少ないならもう必要ないな!」とエドガーは一つのボタンを押した。
それは機体に掛かっていた一部の強化魔法を解除する装置だ。
エドガーの機体はフルアーマーが装備されてるがマナプールが少ないのであれば重りにしかならないのでパージしたのであった。
「切り裂け!グゥエール!」とディートリヒも2騎を相手に食らい付くがアルヴァンズはそれを許さない
安定した操縦性の優位を生かして相手にマナを使わせるようにしていた。
「くっ!もうマナが……」
「あと一息なんだがな!」とこの時、ディートリヒは鍔迫り合いになり一騎にやられそうになった。
『今だ!止めを』
『承知!』だが忘れてはならない二人のことは頭から離れているが……………
演習場全体にあの吸気音が響き渡る。
『しまった!肝心の奴を忘れて………なんだあれは!?』
「やっと来たか!」
「やれやれ遅いぞ!二人とも」隊長が驚いているのはチャリオットが装備していた筈の背面武装を鋼色の騎士が装備しているからだ。
これがメイル考案のランドセルをエルと共に更に推し進めたバックパック兵装である。
メイルは補助腕をパージしてチャリオットが置いていったファイヤーパーティーを装備したのだ。
「圧縮空気収束率…………150%…………170%………200!行くよ。団長!」
「ええ!では行ってきます!」
「行って………らっしゃい!!」ファイヤーパーティーとは言うがもう一つエアバレットの魔法も使えるようにしていた。
それはエアバレットをクッションにしてエルの機体を飛ばす為である。
『そう何度も同じ手でやられるか!』と流石のアルヴァンズも二度目には驚かず冷静に対処するがそれはこちらも一緒だ。
「同じ?笑わせるね」
「そうです!本気で行きます!」とそこからはエルのフルコントロールが発揮され横にスライドして避けるだけだった最初と違い縦横無尽に動き法擊を避ける。
「これで……」
「チェックメイトです!」とメイルからすれば故郷以来で久々に跳び膝蹴りを見た感じであった。
喰らった相手の頭部は吹き飛び倒れた。
そしてメイルはすかさずもう一度、エアバレットをエルの着地場所に飛ばしそれをクッションにして残りマナプールが少ない機体を安全に着地させたのであった。
もっとも今の縦横無尽の動きでマナは底を尽きているだろう。
それまでは静かに戦いに見入っていたアンブロシウスが立ち上がったのは、その瞬間だった。
「そこまで! 双方剣を納めよ!!」
素早く、連続して銅鑼が打ち鳴らされる。
それは喧騒を打ち抜き、戦場の騎士へと届いた。
残る戦力で決戦へ移らんとしていた両軍勢は僅かに遅れて剣を引き、場にいる全てが動きを止めてゆく。
「両者ともいずれ劣らぬ素晴らしき機体である!それぞれの良きところ、悪しきところ、存分に見せてもらった!!さすがよ、両者に惜しみない賛辞を送ろう!!」
いまだ戦場に立つ騎士たちへ、観客席から盛大な拍手が送られる。
突然の終了に思考が追いつかないのか、勝ち鬨も上がらぬまま、騎士たちは夢から覚めたような心境でしばらくの間立ち尽くしていた。
(助かったのは我々なのだろうな)とアーニィスは状況を確認すると心中で一人ごちていた。
数では気絶していたユンフが終わり間近で起き上がったので四対四だが正直、あの鋼色の騎士達と人馬にチャリオットに勝てるイメージが浮かばない
それに損耗率も考えればアルヴァンズの負けだ。
観衆の目にもそう映るだろうが、あえて結果を有耶無耶にしたのは多分に政治的な理由であろうと想像がつく。
そこまではアーニィスの興味の外だが。
演習場に併設される控えからは予備の幻晶騎士が現れ、演習場に残る動けない機体を回収してゆく。
アルヴァンズ側のカルダトア・ダーシュはとても酷い有様だ。
アーニィスは少し、仲間の無事が心配だった。
さてエドガーがアルヴァンズの隊長アーニィスと話してると思うがそれはさておき倒れてるディートリヒのグゥエールを中心にみんな集まった。
「すいません、間に合わなくて。やっぱり無茶すぎましたか」
「まったくだね。しかしまぁ、向こうさんとやりあうとこちらの欠点が丸見えだね」
カルダトア・ダーシュはテレスターレと並ぶ性能を持っているがゆえに、改良していてもテレスターレの欠点がよりはっきりと目立つ格好になっていた。
ディートリヒはしばし腕を組んで考えていたが、やがて意を決すると考えを述べる。
「なぁエルネスティにメイル、ツェンドルグはともかくテレスターレは少し粗が多すぎる。メイルが改良してくれたとはいえ元々試作だし仕方ないことなんだろうけどね。多分、陛下もダーシュのほうを評価すると思う……」
「はい、僕もそうすると思います。うーん、そうすると量産機を仕上げるには僕らがダーシュをもらったほうがいいのか、それとも今ある装備を国機研に渡してしまったほうがいいのでしょうか?」
「渡した方が良いんじゃない?基礎技術はラボの方が高いから仕立て直してもらおうよ。それに今回ので思い付いたのが山ほどあるからそっちに力を入れたい」
「良いですね!僕もアイデアが山ほど思い付いたので帰ったら根掘り葉掘り語り合いましょう!」
テレスターレの大きな欠点を晒し、エルネスティとが落ち込んでいるかと気を遣っていたディートリヒは、あっけらかんとした彼の様子に拍子抜けしていた。
「……悔しいとか、そういうのは?」
「うーん? テレスターレは負けちゃいましたけど、それはどちらでもいいかな。ダーシュはテレスターレの改修型でもあるわけですしね。素直にすごいと思いますよ、僕が作ったものじゃなくてもいい物はいい。というわけで、いじるために何機かもらえないか、陛下と交渉してみましょう」
「だね。前線に送られるのは質が良いシルエットナイトじゃないとそれとわたしにもいじれるのを何機か交渉して」
「……ああうん、ああ、うん。そうかい、そうだね。団長様もメイルもさすがだね。ついでにそろそろエドガーの機体も、きっちり作ってあげたらどうだい」
胡坐の上に頬杖をつき、ディートリヒはとても投げやりな気分になっていた。
メイルもまともなことは言ってるように聞こえるが内容はエルネスティと大差ないもう立派な同類だ。
「そうですね……このあと、量産機開発は大詰めを迎えるでしょう。完成すれば国内の幻晶騎士は順次入れ替わってゆく。みんなの機体を揃えるのは、それからでも遅くありません」メイルもそれに頷き賛成の意を示す。
サロドレヴィーラは旧型機を改良したけど新世代にはついていけない、いずれは次なる世代に道を譲らなければならないのだ。
そもそもラボがこの新技術を得て次世代機を開発するなんて分かりきっていたことだ。
二人ともそれが分かっていたからこそ素直に受け入れられる。
少しの砂埃を含む風が、演習場を吹き抜けてゆく。
エルネスティは僅かに目を細め、それから立ち上がると彼らを見回した。
「そろそろ僕たちも引き上げを。ディーさん、動けますか?」
「ああ、魔力も少し回復しているだろうしね。歩くぶんには問題ないよ」
「なんだったら俺らが牽いてくぜ。脚つかんで、だけど」
「キッドじゃなくても私が牽いてあげるわよ。アンカーでなら」
「止めたまえ。せっかく生き残ったのに、壊れる。それとヘルヴィーのは洒落にならんからな!」
にぎやかに言い合いながら、銀鳳騎士団も移動を開始するのであった。
「メイル………」
「マーリー公爵………どうしたんですか?」とメイルはマーリー公爵に呼び止められた。
「短い間だけど銀鳳騎士団はどうかしら?」その時のメイルの顔はマーリーにとってもっとも見たかった笑顔だった。
「最高ですよ。…………本当に………最高の騎士団です」
「そう………なら改めて、行ってらっしゃいメイルペーゼ」
「行ってきます………」ある意味これが本当の旅立ちのような気がした二人であった。
長きにわたってフレメヴィーラ王国の制式量産幻晶騎士であったカルダトア。
その登場からおよそ100年の時を経て、この模擬戦が行われた翌年に後継機である“カルディトーレ”が世に現れる。
一方、戻った二人は…………
「今度は何を作りますか………」
「試作したことがある虫型を……」
「おーーーー!!!虫型ですか!でも獣型も捨てがたいのですが………」
「いっそのこと両方試作しちゃおうよ」
「良いですね!ではさっそく………」
「おい坊主共…………もうよせ………学園長………魂抜けてらぁ」
さて次回はいつになるか分かりませんがよろしくお願いいたします。