「このスラスタの配置、もう少し細かく配置していいのでは?」
「ですがそれでは推力が足りなくなりますから大型のスラスタが欲しいですね」
「なら要所、要所で多重装甲にして他を最低限の風の抵抗を考慮したデザインに変えるのは?」
「うぅー、出来ればデザインは弄りたくないです。お気に入りなんですよ。これはこれで」と遠くで話してるエルとメイルの会話を聞くがもはや何を言ってるのか分からなかった。
「駄目だぁ………坊主共の話しが全然わかんねぇ」
「オイラもだよ。親方」鍛治師隊のリーダーと実質副リーダーであるダーヴィドとバトソンは頭をフル回転させているがもうちんぷんかんぷんで意味が分からなかった。
結局、あのあと滅茶苦茶意気投合して一時も離れずシルエット談義を交わしていた。
もう別次元の会話であり周りは付いて行けずアディも気持ちは穏やかではなかった。
だがそれとは別にテレスターレも改善され停滞していた目玉のツェンドルグは互いの制御術式を照らし合わせることにより完成が見えてきたのだが………
「やれやれグゥエールがあそこまで魔改造されるとは」
「ディーのは良いだろう、俺のなんか原型が無いぞ」とエドガーとディートリヒは今度、御披露目で乗るシルエットナイトを見て呟いた。
そう二人の暴走は止まるどころかフルスロットルで爆走しており勢いのあまり二人のシルエットナイトを改造し出したのだ。
コンセプトは剣と盾で超攻撃型と超防御型にはっきり分かれている。
剣であるディートリヒのグゥエールは全身至る所が刺々しい装甲に変えられ全てが攻撃になる過激で極端なのになった。
だが空気抵抗が減った分、機動性は上がり通常より速い運動性を確保していた。
盾であるエドガーのテレスターレはメイルが試作していたフルアーマーが採用されバランスも考えられているために若干の機動力の低下で防ぎ
フレキシブルコートも合わさり鉄壁に近い防御を得た。
まあそのせいで元がテレスターレとは思えないのになった。
しかも止めようにも二人ともシルエットギアとナイトスーツであれよこれよと改造していくので見守るしか出来なかった。
「まぁだ人型なんだから良いだろうよぉ、あんなゲテモノなんかよりはずっとマシだ」と団員達の視線はある一角に向けられる。
そこには通常のシルエットナイトより少し全長が低いのがある。
高さ的にはシルエットナイトが正座なんかしたらこのぐらいの高さだろう
上半身までは人だ。
だがダーヴィドがゲテモノと呼ぶ理由はその下半身にあった。
どの生物にも当てはまらないあえて言うなら荷台に装甲を付けたそんな感じだ。
それはメイルの故郷で採用されてる[チャリオットシリーズ]と言うらしい少数ながら生産されており安定した下半身により力自慢で有名なシルエットナイト、ハイマウォートすら上回るパワーが実現されてるらしく、積載量もあるので通常では再現出来ない超重武装が可能であった。
また国土開拓に多大な貢献をしてるらしくお陰で戦闘と作業の引っ張りだこにあってる縁の下の力持ちだと言う
しかしなんでこんなのがあるのかと言うと故郷からマーリ公爵からの追加の贈り物の中になんとシルエットナイトを贈って来た!
いったいどこに個人に貴重なシルエットナイトをプレゼントする公爵がいるのだろう
因みにそのあと言うまでもなくエルはとてつもなく興奮し動かすついでに工房を拡張しなくてはならない話を何処からか聞きつけ勝手にあっという間に拡張してしまった。
実に簡単に見えた。
大掛かりな作業をチャリオットで細かな作業をシルエットギアでやって早送りでも見てる感じだ。
しかも建築方法が従来のと違い見慣れないが頑丈で立派であり拡張された工房の他が随分見劣りしたもんだ。
そして今は最終調整をしながらエルとメイルが乗るシルエットナイトをあれよこれよと魔改造をしてる所であった。
エルのは以前に実験してカルダトアを大破させた[マギウスジェットスラスタ]を搭載した高機動型のシルエットナイトをメイルのは今回、ライヒアラに来るまでに試作していた装備を纏めたのを開発していた。
「そもそもマギウスジェットスラスタは大喰らいだから事細かに調整しないと……」
「うぅ、確かにそうですが…………」とどうやらエルは諦めがつかないがそれを見てメイルがこんな提案をした。
「じゃあ、いっそのことエーテルリアクターを2基にしたら?バランス調整が難しくなるけどツェンドルグの例があるんだし、てかこれ将来の専用機、それの試作機のつもりだよね」まただ。
コイツらはツェンドルグだけに飽きたらず通常騎にも心臓を2基ぶっこむ気だ。
もう目眩がしてきた団員もいるぐらいだ。
俺達の反応は間違っちゃあいねぇはずだ。
「分かりますか?」
「まぁね。故郷の専用騎は全部私が仕立てた物だからこうやって偏った仕様、敢えて何かを犠牲にして何かを特化させるなんて日常茶飯事だったし」正直、マーリ公爵領はいったいどんな所なんだと本気で気になった。
きっとエルが興奮するような人外魔境に違いない
「因みにどんな専用騎なんですか?とても気になります」
「設計図は覚えてるからってこの紙の量じゃ足りないや」と既に周りには数千枚とも言えるこの二人のアイデアがびっしりと書かれている。
この一部分でも他国に売れば計り知れない価値になるだろうこの二人はもう朝からずっとこの調子だ。
そうしてると馬の足音………いや訂正、人馬の足音が響いて来た。
テストをしていたキッドとアディが帰って来たのだ。
格納庫に入れ待機させると降りて来たアディはさっそくエルに抱きついた。
「アディにキッド、お疲れ様です。どうでしたかツェンドルグの調子は?」
「ああ、すげぇやり易いぜ操縦も慣れてきたし」
「そうそう、ツェンちゃんすっごく調子が良いんだよ!」とまあこんな感じにエルが気の合う奴に会えたのはある意味奇跡に等しいだろうこのシルエット談義さえ除けば年頃の少年少女が戯れている微笑まし光景であることには変わらない
そして約束のお膳試合の期日はあと少しまでであった。
まあそれまでに団員がこの二人の暴走でぶっ倒れていなければの話だが…………
次回は試合になります。