陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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最終話に比べたら大変短いです。
半分くらいですかね。まぁ、エピローグですしね!


エピローグ

「海だな」

 

「海だね」

 

「今って秋だよな?」

 

「ハワイだからあんま関係ないんじゃない?たしか、ハワイ州でも冬があるとこはあるみたいだけど、こっちは関係無いみたいだね」

 

「そこはもちろん調べたからね!」

 

「結花…流石だな」

 

「お姉ちゃんに抜かりはないんだよ☆」

 

「結花、日焼け止め塗っときなさい」

 

「あ、忘れてた!友希那が塗ってー!」

 

「はぁ、仕方ないわね」

 

 

 抜かってんじゃねぇか。まぁいいや。学園祭で獲得した人数無制限のハワイ旅行券を行使し、あのライブに参加してくれた全バンドメンバーとその家族、世話になった病院の人たちや疾斗の爺さんやその従業員たちに、リサのバイト先の店長そして、一応マネージャーも連れてきた。

 リサがマネージャーのことを知って「お世話になったんだから呼ばなきゃ!」と言ったから仕方なく呼んだ。…嫌いじゃないがあまり呼ぶ気にもなれなかったんだよなー。

 

 

「みんな思い思いに遊んでるね♪」

 

「まぁハワイって来るやつは結構来るんだろうが、大抵のやつは早々来ないからな」

 

「あはは!たしかにね!」

 

「リサは来れてよかったか?」

 

「何聞いてんの?当たり前じゃん!…雄弥と一緒ならどこでもアタシは嬉しいし、楽しいよ」

 

「よかった」

 

「雄弥は?」

 

「俺もリサと一緒ならどこでも幸せだよ」

 

「うん♪」

 

 

 あのライブで俺がリサにプロポーズをしたことは当然ニュースになった。事務所からは問いただされたが、それは全てマネージャーのゼファーが対応してくれた。もちろん反感の声も上がりはしたが、それを飲み込むほどの祝福の声が上がった。あの時リサの指につけた指輪は今もリサの左手の薬指にある。

 

 二人で浜辺にあるピーチパラソルの下に座り、海で遊んでる様子を眺めている。競泳する人、ビーチバレーする人、砂で造形を始める人、水の掛け合いをする人、サーフィンするバカに水上バイクをするバカ、フライボードにクルーズ船でタイタニックごっこする人、やりたい放題だな。

 

 大輝は沙綾に連行され、愁はAfterglowのメンバーに混ざって遊んでる。疾斗は知らぬ間にどこかに消えたが、花音たちもいないということは一緒にいるんだろう。結花はリサを除いたRoseliaのメンバーに混ざり、パスパレを相手にビーチバレーをしていた。

 紗夜が日菜に対抗心を燃やしていたが、日菜が心から嬉しそうにバレーをしているから、紗夜も楽しみ始めていた。ちなみに、パスパレの方にはイヴの代わりに薫がいる。

 

 

あれ、いいなー

 

「…タイタニックごっこか?」

 

「うん」

 

「あれ沈むのがオチだっただろ?」

 

「それはフェリーで、あれはクルーズ船じゃん。それに、雄弥ならそうならないように守ってくれるよね?」

 

「当然だ。…よし、それじゃあ俺達も海に行くか」

 

「そうだね♪」

 

 

 クルーズ船で遊んでる香澄たちに声をかけて陸に来てもらった。操縦してるのは黒服の人達だと思ってたんだが、疾斗だった。こいつどんだけ免許持ってんだよ。リサとクルーズ船を満喫した後も思い思いに遊んだ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 お昼が近づいたらみんなが海から上がって、シャワーを浴びてなぜか正装し始めた。アタシはRoseliaのみんなと結花に連れられて別のとこに移動させられた。その部屋に入ったらこれからアタシが着替える服が用意されてたんだけど…。

 

 

「えっと………え?」

 

「なーに固まってんの!あれがリサが今から着るやつだよ☆」

 

「6月のAugenblickのライブの後に、ドレスの話をしてたでしょ?あの時のことを思い出して燐子に用意してもらったのよ」

 

「会心の…できです…!」

 

「りんりん凄いよ!リサ姉にピッタリだよ!」

 

「ええ、とても美しいウェディングドレス(・・・・・・・・・)です」

 

「あの…えと、…これ着るの?」

 

「そうよ」

 

「アタシが?」

 

「うん☆」

 

 

 みんなが正装してたのって、なんか高級なレストランに行くからってわけじゃないんだね。まさか…いや目の前にこれがある時点でまさかなわけがない。今からやるのは、間違いなく結婚式(・・・)だ。

 

 

「ふぇぇ…」

 

「ちょ、リサ姉顔真っ赤だけど大丈夫!?」

 

「け、けっこんしき…」

 

「いやいや、雄弥にプロポーズされたわけだし、私もハネムーンだって言ったじゃん」

 

「そうだけどぉ…」

 

「今井さん、覚悟を決めなさい。雄弥くんは着替え終わったそうよ。…あー、あと、早くしないと日菜が雄弥くんの部屋に突入すると言っていたわ」

 

「燐子着替えるの手伝って!」

 

「は、はい!」

 

「…切り替え早いね〜」

 

 

 アタシの雄弥を取られるわけにはいかないもん!

 たしか結婚式って雄弥が先に行ってて、アタシが父さんと後から入っていくって流れだよね?着替え終わるまでは雄弥も部屋で待ってるんだろうけど、日菜が相手だと油断できない。日菜は常識に囚われないから。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 一足先に父さんと母さんにドレス姿を披露したら、二人とも泣きながら祝ってくれた。それが嬉しくてアタシも泣きそうになったけど、涙を堪えて笑顔でいることにした。

 母さんが先に会場に行って、少ししてから父さんと入場する。知り合いの人達が両脇にいて、みんな拍手しながらお祝いの声をかけてくれる。アタシは照れながら手を振り返していたけど、それも途中まで、雄弥の顔がはっきり見える距離まできたらもう雄弥しか目に入らない。

 

 

「リサ、綺麗だ」

 

「えへへ、ありがとう♪雄弥もカッコイイよ♪」

 

「ああ。ありがとう」

 

 

 雄弥にベールを上げてもらって、お互いの顔がはっきり見えたらすぐにそんなやり取りをした。神父さんに呆れられるかと思ったけど、温かい目で見守られてた。

 

 

「…ってあれ?あの喫茶店の腹話術の人?」

 

「あー、そういやリサは知らなかったんだっけ。この人の本職は神父なんだよ。無所属だけど」

 

「そんな政治家みたいなノリできたっけ?」

 

「できないな。ある意味異端だが、この人の場合特例だよ。なんせ聖人(・・)だからな。ある程度無茶を押し通しちゃうんだよ」

 

「…え?」

 

「ほほっ、私の話はそれぐらいでいいだろう。では、式を始めようか」

 

「そうしますか」

 

 

 式は滞りなく進められた。指輪の交換も、アタシの場合はもう一度雄弥に指輪を嵌めてもらうって形になって、アタシは父さん達が用意してくれた指輪を雄弥の指に嵌めた。

 誓いの言葉もお互いに言って、口を重ねた。優しくも熱い、雄弥の覚悟と想いが込められたキスだった。アタシも、同じように想いを伝えられたかな?

 

 その後は想い出話やらアルバムをプロジェクターで披露されたりした。両家の両親からお祝いの言葉を貰ったし、それぞれのバンドからも改めてお祝いしてもらった。

 …アルバムは恥ずかしかったなぁ。だって雄弥の写真は基本アタシか友希那が一緒に写ってるのに、アタシの写真は雄弥と出会う前からのもあったからね。友希那も顔を赤くして伏せてたけど。小さい頃は二人ともこんなんだったよね〜。

 

 

「よう雄弥、めでてーなーコノヤロー」

 

「絡みがうざいぞゼファー。お前仕事投げ出してきてるだろ。代わりも探さずに」

 

「来月分の仕事だからサボっても影響がないんだよ。それで、どうする気だ(・・・・・・)?」

 

「いちいち試すような言い方するなよ。疾斗と愁に言われて真面目にやってくれたんだろ?」

 

「…バレてるのかー。つくづく惜しい人材だ」

 

「だから関わらないって言ってんだろ」

 

「えっと…雄弥、なんの話してんの?」

 

「俺の体の治し方だよ」

 

「え!?」

 

 

 雄弥の体……治るの?え、じゃあ…治ったらもっともっと一緒にいれるようになるってこと?ホントにそんな方法があるの?

 

 

「それをしたら私に貸し一つだな」

 

「抜かせ。貸し借りも無いってとこまでが二人との契約の範囲だろ?」

 

「クソー、そこまで知られてんのか〜。ま、いいか。認めよう、私の負けだ。この件はおって連絡する」

 

「ああ。……ありがとな」

 

「…!?……はははっ、お前に感謝されるとはな。…長生きしてみるもんだな。雄弥…お前にもそうさせてやるよ」

 

「…ふんっ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「おう!リサちゃんもそいつ手放すなよ?フラフラしやがるからな!」

 

「分かってますよ♪」

 

 

 マネージャーさんは背を向けながら手を振って式場からいなくなった。なんだかんだで仕事が多いのかな。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 宿泊するホテルはみんな一緒で、アタシと雄弥は同じ部屋になってた。こころが「ハネムーンなら当然でしょ!」って笑顔で言ってきた時はみんな固まったなー。アタシもRoseliaで泊まると思ってたし。

 

 

「ゆうや」

 

「どうした?」

 

「本当にアタシの今の声好き?」

 

「好きだよ。言ってしまえば声変わりみたいなもんだろ?…それに、声が代わってもリサはリサだ。俺が愛してる人だ。特徴の一つが代わったところで嫌いになるなんてありえない。たとえリサがどうなろうと俺はリサを愛し続けるよ。必ず側にい続ける」

 

「そっか。…アタシも、雄弥の側にい続けるね。雄弥だけを愛して、雄弥と幸せになる」

 

「ああ」

 

「それでさ、雄弥」

 

「うん?」

 

こ、子供…作ろ?

 

「ゲホッゲホ…リサ!?何言ってんだ!?」

 

「だ、だって、ハネムーンだし…こころもそういうことでやってくれたんじゃ」

 

 

 アタシは自分の顔が熱を帯びていくのを自覚しながら雄弥に詰め寄ってた。目がぐるぐるするしけど、た、たぶん大丈夫だよね。授業はちゃんと聞くから知識はあるし…。と、とりあえず服脱がなきゃ。バスローブだから脱ぐのも簡単で…。アタシが片手で雄弥に触れながら反対の手で服をはだけさせ始めたら雄弥に止められた。

 

 

「リサ落ち着けって」

 

「ゆうやは…してくれないの?」

 

「あのな、リサはまだ高校生だぞ?子供はリサが社会に出てからな」

 

「じゃあ再来年だね」

 

「…大学は?」

 

「あ、そっか。えっと、じゃあ予行演習ってことで、避妊対策して…あた!」

 

「だから落ち着けって!俺はリサ以外の女には手を出さないから」

 

「…約束だよ?」

 

「もちろんだ」

 

 

 アタシは夢の時と同じように指切りじゃなくてキスをした。深い、深いキスをして、絶対に破らないように誓いを立てた。

 

 アタシは

 

 アタシたちは

 

 誰がなんと言おうと幸せな夫婦だ。

 

 

「あ、籍入れるのはリサが卒業してからな」

 

「え?」




書き終わりました。やりきりました。
思い返せば5月13日のあのライブを機に書こうと決めて書き始めたこの作品。まさか100話を超えるとは…。50話くらいまで書けたらいいなー、なんて思いで始めてたのに。
毎日更新ができるなんて思ってなかったですし、実際テストが近づいた時はストックが切れて朝急いで執筆してギリギリ…なんてこともありました。(テスト勉強?聞こえないーー!)
でも、それもこれも読んでくださる皆様がいたからできたことです。ありがとうございました!

あ、番外編は不定期でやりますよ。ガルパ内のRoselia2章とか、パスパレ2章とか…あ、でも素晴らしすぎる内容だから手を出すのも気が引けるような。
ま、まぁとりあえず…なんとなく思いついたのを書きますw
リクエストもあれば受け付けます!満足していただけるものになるかは不明ですけど…、頑張ります!

最後に改めて、ありがとうございました!

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