陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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大学の講義中、バイト中、睡眠中にイベントのランキングが落ちていきます。歯がゆいです。


9話

 パスパレのポスターが張り出されたからなのか、練習中紗夜の気が立っていたらしい。というか友希那に帰らされたとか。リサと電話した時にそう聞いた。

 

 

(バンドに私情を持ち込むな、ね)

 

 

 当の本人の理由がアレ(・・)な気もするが、まぁ部外者がとやかく言うものでもないか。RoseliaのことはRoseliaのメンバーで越えていけばいい。

 …のだが、なぜかRoseliaが雑誌に写真付きで載せられたことの記念お茶会こと"Roselia雑誌掲載記念お茶会"に呼ばれた。そのまんまだな…。指定された喫茶店に行くと、そこには呼び出し人のリサとRoseliaのメンバーのあこと燐子がいた。友希那と紗夜がいないのは予想通りだ。

 

 

「あ!雄弥さんだ!」

 

「こんにちは…」

 

「なんか会うの久しぶりな気がするな」

 

「最近雄弥忙しいみたいだからね〜。あたしはともかく、実際燐子とあこに会うのは久々なんじゃない?」

 

「…そうだったか」

 

 

 なるほど、それなら久しぶりってことで合ってるのか。それに燐子に会った回数はまだ片手で数えれる程度だな。リサの隣の席に座って店員に紅茶を注文する。デザートはいらない。来る前にAugenblick(アウゲンブリック)での全体練習で食べてきたからな。パンケーキの投げ合いになったが。

 

 

「そういえば、雄弥さんは雑誌見てくれました?」

 

「まだ見てないな」

 

「えー、超超カッコイイのにー」

 

「…統一感は、その…あれですけど」

 

「あはは〜、あたしが浮いてるからね〜。はぁ…」

 

「……あー、ギャルだからか」

 

 

 答えを言い当ててしまったからなのか、気にしていたのか、リサに小突かれながら燐子から雑誌を借りてRoseliaのページを開く。そこには予想通りリサ一人が浮いてる写真があった。リサの方をジッと見ると頬をかきながら苦笑して目をそらされた。

 

 

「……それで…Roseliaの、ライブ衣装を…作ることに…なりました」

 

「りんりんは服作れるんですよー!あこのこの服もりんりんが作ってくれましたし!」

 

「…まじか。レベル高いな」

 

「…そんなことは」

 

「いやいや燐子はもっと自信持っていいって!あたしでも服は作れないし」

 

「そうだな。リサには無理だな」

 

「……なんか棘がある言い方」

 

 

 リサに軽く睨まれるも、事実だしなーと軽く流していると向かいの席に座ってるあこが目を輝かせながらこっちを見ていた。

 

 

「どうかしたか?」

 

「いやー、雄弥さんとリサ姉ってすっごく仲いいんだなーと思って。強めに言われても許してるところとか」

 

「ま、雄弥のことでいちいち気にしてたらね〜。そこは長年の付き合いってやつかな☆」

 

「……今井さんは…雄弥さんのこと…大切に思ってるんですね」

 

「なっ!!」

 

 

 リサのやつ大丈夫か?一瞬で顔を赤くしてるんだが…。

 

〜〜〜〜〜

 

 

 り、燐子って意外と爆弾発言するんだね。そ、そりゃあ大切だよ。けど大切な幼馴染であって、そういうのじゃ…。

 

 

「ほ、ほら雄弥ってほっといたらどうなるかわかったもんじゃないからさ」

 

「我ながら否定できないな。今だと仕事に没頭するだけになるんだろうが……」

 

「ね?だからアタシがついてないとなーって。友希那も友希那でほっとけないから、纏めて見てるって感じ。それだけだからね!」

 

「ふふっ…わかりました」

 

「?」

 

 

 うぅー、燐子のあの感じ、絶対信じてないなー。雄弥なんてなんのことかわかってないみたいだしさ。

 雄弥とは幼馴染だから…、そうそれだけのはず。それ以上は望んじゃいけない(資格がない)んだから。

 アタシが視線を落としてるとすぐに頭に手が置かれる。それはやっぱり雄弥の手で、本人はなんでアタシがこうなってるのかわからないんだろうけど、それでもこうやって優しく頭をなでてくれる。

 

 

(こういうとこだよ…。こういうとこがあるから、アタシは雄弥から離れたくないって思っちゃうんだ)

 

「なにを落ち込んでるかは俺にはわからない。けどリサが自分を殺す必要なんてない」

 

「え?」

 

「リサはいっつも周りを優先する。自分のことは必ず二の次だ。それはリサの性格なんだろうけど、もっと周りを頼っていい。もっと甘えていいんだ。すぐには難しいかもしれない。それなら幼馴染の俺を使えばいい」

 

「雄弥…」

 

 

 ほんと…アタシの気持ちなんて知らないくせにさ。なんで…そうやってアタシが求めるようなことを言ってくるのかな。けど、

 

(…そうだね、たまには雄弥を頼らせてもらおうかな。まずは今ちょっとだけ甘えさせてもらおうかな)

 

 瞳を閉じて雄弥の腕に自分の腕を絡めて、雄弥の肩に頭を乗せるように体ごと雄弥の方に傾ける。

 

 

「……りんりんどうしよう。あこ、今すごくここにいちゃいけない気がしてきたよ」

 

「…そうだね。……私も…場違いな…気がする」

 

 

 ……あ。そうだったー!!あこと燐子が目の前にいるんだった!!ほんとになにしてるんだろアタシー!

 

 

「ご、ごめん2人とも!こ、これは、その」

 

「…いいんですよ…今井さん。……雄弥さんの…言うとおり……こういうときに…気を抜いてください」

 

「あこ、リサ姉のこと好きだから、リサ姉には無理してほしくないし」

 

「だ、だから!」

 

 

 燐子がものすごく慈愛に満ちた表情で言ってくるし、あこの純粋な感性が確実に今のアタシに追い打ちをかけてるよ。ほんとに、恥ずかしい…。

 すぐに雄弥から離れたけど、完全に離れるのが寂しくて手だけは繋げたままにしてる。これならテーブルに隠れてるから2人にはバレないはずだし。

 その後は4人で雑談したり、ライブに向けての話とか、話題が尽きることがなかった。夕方ぐらいまで喫茶店で話しこんじゃって、雄弥の携帯にマネージャーさんから電話がきたことをきっかけに今日はお開きになった。

 

 

「なんの話だったの?」

 

「今度使う機材の確認だった。たいていのことは自分たちで決めれるからな」

 

「え、スタッフさんと話し合って決めるとかじゃなくて?」

 

「ああ。デビューした頃に勝負して勝ったからな。ライブのことはほとんどを自分たちで決めれるようになった」 

 

「…たまに雄弥のことがわからなくなるな〜」

 

「事の発端は俺じゃないからな?リサが知ってる通りの俺だよ」

 

「……だといいなー」

 

 

 雄弥のことでアタシが知らないことはいっぱいある。出会う前のことは雄弥の記憶がないから知らないし、出身も肉親もわからない。雄弥がデビューし始めた頃のこともアタシも友希那も知らないし、聞き出す勇気がない。けど、知りたいとは思う。身勝手なことだけど…。

 

 

 

「それに、俺はリサのことも友希那のこともわかってない。何年も一緒にいるのにさっぱりだ」

 

「それは違うよ。雄弥はアタシたちのことをわかってくれてる」

 

「……お前たちの気持ちもわからないのにか?」

 

「うん。そういうのを汲み取るのが苦手な人だって世の中にはいっぱいいるだろうし、身近な例だと日菜がそうでしょ?」

 

「……そう、だな」

 

 

 これは…半分は納得できるって反応かな?

 

 

「一般論ではそうだとしても、俺には当てはまらない…って考えてる?」

 

「……リサは人の考えがわかるのか?」

 

「あはは、そんなことないってば〜。雄弥と友希那のことはわかりやすいってだけだよ」

 

「そうなのか…、噂をすればってやつだな」

 

「へ?…あ、友希那ー!」

 

 

 家の近くまで行くと、ちょうど友希那も帰りだったみたい。アタシの声に友希那が反応して足を止めてくれる。お茶会のこと言ったら練習しなさいって言われちゃった。もちろんこの後家で自主練するから大丈夫☆

 

 

「そうそう、Roseliaのライブ衣装作ろうって話になったんだけど。いいかな?」

 

「…それくらいなら構わないわ。好きにしなさい」

 

「やった!……友希那なにかあったの?」

 

「っ!………別に、なにもなかったわ」

「そ、そっか。友希那がなにか悩んでるように見えたけど、アタシの思い過ごしだったみたいだね。……あ、あははは〜」

 

「それじゃあ、私家に入るから」

 

「あ、うん。…友希那、一人で抱え込まないで、悩んだらアタシたちだけにでも相談して?」

 

「……ありがとう」

 

 

 友希那はやっぱり何か悩んでる。それが何なのかわからない。無理に聞き出すこともできないし。けど、アタシは友希那を支えたい。友希那のお父さんのことも知ってるから。

 

「………」

 

「どうしたの?」

 

「…いや、今はいいや」

 

「ええー。気になるじゃん」

 

「…じゃあちょっとだけ。RoseliaのことはRoseliaで解決しろよ」

 

「へ?それは当たり前なんじゃ…」

 

「近いうちにわかるさ」

 

 

 どういうことなんだろ…。たしかに紗夜のことは雄弥に電話で話したけど、あれは紗夜と日菜の問題なわけだし。…そりゃあ練習に影響でてくるならフォローするつもりだけどさ。それと雄弥に甘えてはいいけど、Roseliaで何かあったときは手を貸してくれないってことだよね?

 

 

「……なんだかんだでRoseliaって不器用だよな」

 

「雄弥にだけは言われたくない」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 はぁー、なんで私は迷ってるのかしら。FWFに出ることが私の目標なのに。Roseliaはそのための手段として集めたのに。より確実な手段が提示されたのに、なんで私は…。

 

 

「有力なとこに声でもかけられたのか?」

 

「雄弥!?……なんで勝手に部屋に入ってきてるのよ」

 

「返事がなかったからな」

 

「…そう。……なんでわかったのかしら」

 

「友希那が悩むのって音楽以外にあるのか?…むしろなんでリサがわからないのかが俺にはわからないぐらいだよ」

 

「…心外ね」

 

「え?他にあるのか?」

 

 

 ……悔しいけど咄嗟に出てこないわね。話がそれてきたわね。雄弥はこんな話をしに来たわけじゃないはず。

 

 

「それで雄弥は何を私に言いに来たのかしら?」

 

「リサにはさっき言ったがRoseliaのことで悩んでも俺は手を貸さないってことを言いに来た。よっぽど迷走しない限りは、だけどな」

 

「むしろそれが当然ね。私たちの指導役をしてもらってるけど、あくまであなたはAugenblickのメンバーなのだから」

 

「ああ。……友希那」

 

「………なにかしら」

 

「間違えるなよ」

 

「それは…どういうことかしら」

 

「それは言えん」

 

「…そう」

 

 

 わからない。私自身の悩みも、雄弥が危惧してることも何もわからない。私はいったいどうしたら…。

 

 




基本放置が主人公のやり方です。でも筋は通します。恩があれば返します。
☆9評価 RYUさん ありがとうございます!
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