「…だいぶ進んできたな。リンダのとこまであと少しってとこか」
「そうなの?」
「はい。リンダさんの場所は私も覚えているので間違いないです( •ω•́ )✧」
「そうなのですね。…あら?」
「紗夜?どうしたの?」
「いえ、あちらから何か大きなものが…」
大きなもの?……あの大きさ、あの見た目、間違いないな。
「あこちゃん…あれって…(((;゚д゚;)))」
「フィールドボスだよ!!」
「フィールドボス?それは遭遇しないと言ってなかったかしら?」
「こいつの行動範囲が変更されたんだろ。…リベンジマッチといくか」
「これも倒せるの?ならいいんじゃないかしら?」
「「え?」」
「ダメです!皆さんがいるんですから、ここは安全にやり過ごしましょう!」
「りんりんの言うとおりですよ!雄弥さん!友希那さんもノせられないでください!」
「……それもそうだな」
1人の時や3人の時ならまだしも、今は初心者のリサたちがいるんだ。フィールドボスに見つかってるわけでもないし、ここは大人しくしとくか。
「ボスの足元を歩けば見つかりません!」
「なるほど、灯台下暗しということですね」
「走ってはいけませんからね(`・д・)σ メッ」
「…燐子、私に言ってるのかしら?」
「やらかすのは友希那だからな」
「…雄弥、覚えておきなさい」
なんでだよ…。NFOを始めて初っ端からトラブルメーカーなことしてるじゃねぇか。まぁ、こんなの言っても火に油を注ぐようなもんだから黙っとくが…。
「あこの後ろをついてきてください」
「俺は殿をしとくから、みんな先行け」
「……」
「…あの、…氷川さん…盾は構えなくて大丈夫ですから(-_-;)」
「…リサ?」
「……雄弥と一緒がいい」
「わかった。友希那と3人で行くぞ」
「うん」
友希那に前を歩かせて、その後ろをリサと一緒に進む。今回はなんともなく終わりそうだと思ったんだが…、
「友希那さん!?そっちじゃないですよ!?」
「勝手に進むのよ…」
「オートランを押しちゃったんですか!?」
「…やばいな」
「やっぱりそうなんだ!雄弥どうにかできないの!?」
「俺は職業的に無理だな」
「そんな!?」
俺の職業は真正面から突っ込んで倒すってやつだからな…。あこの"ネクロマンサー"もこういう時にできることが少ないし…。でも、こういう時に頼りになるのがいる。
「あこちゃん、雄弥さん!今井さんと氷川さんをお願いします!いざという時はあこちゃんのアンデッドプレイでやり過ごしてください!」
「アンデッドプレイ?」
「死んだふりをするあこの得意技です!」
「死んだふりが得意なんですか…?」
「雄弥!友希那が!」
「大丈夫だリサ。燐子を信じろ」
「ブラインドカーテン!」
燐子が絶妙なタイミングで"ブラインドカーテン"を発動してくれたおかげで、友希那もフィールドボスに見つからずにすんだ。やはり燐子は頼りになるな。
「宇田川さん…今のは?」
「ブラインドカーテンって言って、一定時間敵に見つからないようにする技なんですよ!便利なんですけど、時間が短くて使いどころが難しくて…。あこにはあそこまで上手くできません!」
「へー、燐子って凄いんだね!」
「いえ、そんなことないですよ(*´ω`*)」
「止まった…。このボタンはまた押すのかしら?」
「押さないでください!」
友希那のポンコツさが、かえってゲームを盛り上げてるような…。ま、簡単に終わるよりかはこういうハプニングがある方が面白いか。
この後も友希那がまた迷子になりかけたり、突然飛び出してきたモンスターの攻撃を防いだ紗夜が、「( ⁼̴̀꒳⁼̴́ )ドヤッ✧」としていたが、それ以外には特に何もなかったな。リンダに手紙を届け、今度はリンダから手紙を渡されてそれをジェイクに渡せば終わりだ。
「…あら?」
「友希那?どうしたのー?」
「何か光っていたような」
「また薬草とかでしょうか…」
「いえ…、薬草とは違うような…」
「あーー!!」
「あこちゃん!あれって!」
「うん!キラぽんだよ!」
「キラぽん?それってあこが探してたっていう?」
「そう!」
「うさぎみたいな見た目なのですね」
「かわいいー♪」
なかなか遭遇できないキラポンを見つけたのか。友希那ってポンコツなだけじゃないんだな。…いや、友希那の視点が俺たちと違うってことか。
「それじゃあ捕まえよっか☆」
「待ってリサ姉!」
「え?」
「キラポンは臆病だから、近づいたらすぐ逃げちゃうの!だから、気づかれないようにしないといけないんだよ!」
「そ、そうなんだ…」
キラポンは見つけるだけでも苦労するのに、見つけてテンション上がってると捕まえれないからな。俺はキラポンに興味がないからサクッと倒して、アイテムを欲してるやつを見つけてはあげてる。……ところであこ?お前何しようとしてるんだ?
「あこちゃん…そのスキルは(;゚Д゚)」
「あー!キラポン逃げたー!」
「あれだけ強力なのやろうとしたらそうなるだろ…」
「あこ、なんでそんなことしようとしちゃったの〜?」
「だってー…、カッコよく倒したかったんだもーん…」
「…ちなみにあの長い前口上は必要なのですか?」
「いえ、その…スキルを使うのには必要なんですけど、あのスキル自体が今回は必要なかったといいますか。…それよりあこちゃん早く追いかけよう!まだ遠くには行ってないはずだよ!」
さてさて、キラポンを追いかけて無事に捕まえれるのだろうか…。急いだらそれはそれで逃げられそうだし、ループになるんじゃ…。
「ここを通ったのはまちがいないはずですが…」
「あちらかしら?」
「いえ、そっちは行き止まりのはずです。……|ω・)ジー」
「キラぽん出てこーい!!」
「そんなんで出てこないだろ…」
「……今のは…?」
「さっきのフィールドボスみたいな…」
「フィールドボスね」
「…今回も見つからないようにすれば!」
「もう見つかってます!」
あの咆哮は間違いなく敵を認識した時のだな。さてさて、見つかってるっていうのなら、やることは1つだな。
「ちょっ!雄弥何してんの!?」
「見つかってるなら倒せばいいだけだ」
「雄弥さんダメですよ!先程も言いましたよね!(*`Д´*)」
「…たしかに逃げるのが現実的な判断だろうな」
「でしたら「でもな」…?」
「これはゲームで、目の前には強い敵がいる。倒すのがゲーマーってもんだろ?」
「!!」
「何言ってんの!無茶なことしないでって言ったじゃん!」
「そうですよ雄弥くん!」
「…雄弥がやるというのなら、私たちは邪魔にならないように後方にいるべきね」
「友希那!?」
「湊さんまで…。宇田川さんからも言ってください!」
「…すみません紗夜さん。今回はあこも戦うのに賛成です!」
「私もです」
「お二人とも何を…」
「「だってゲーマーですから」」
完全に流れはできたな。この流れに逆らうことができず、紗夜とリサもなし崩し的に協力することになった。ただ、紗夜は前衛の職業なのだが、どうしてもレベルがな…。
ボスの足止めをして全員が距離を取る時間を稼ぐ。時間を稼いだらスタンさせといて、その時間を使って紗夜にプレゼントをあげることにした。
「紗夜、この装備を使え」
「…?これはなんですか?」
「…うそ」
「……レジェンドウェポン( ゚д゚)」
「??」
「それはどういうものなのかしら?」
「入手が極めて困難な種類の装備のことです…。超高難易度のクエストをクリアしないといけないのですが、まだクリアしてる人が少ないものです。しかもレジェンドウェポンが出る確率が低いんです…」
「細かいのは抜きでいいだろ。これを使っときゃステータスを底上げできる。紗夜にも前衛をしてもらうが、無理に攻めなくていい。自分を守ることを最優先にしとけ」
「…そんなの意味があるのですか?」
「ありますよ。ヘイトって言うんですけど、雄弥さん一人に攻撃が集中しないやうにするんです(`・ω・´)」
「頼りにしてるぞ?」
「…!…わかりました!」
真面目に考えると無謀もいいところなんだが、これはこれでいい気がする。ガラにもなく俺も浮かれてるってことか。ま、一旦思考を切り替えようか。
ボスが後衛に向かわないように、先陣をきって斬りかかる。ボスの動きは、モンスター全体の中でも平均的だが、体力は多い方だな。さすがに最初のフィールドボスってだけあって、他のフィールドボスよりは弱そうだ。
「雄弥さん!引いてください!」
「わかった!」
「あこちゃん合わせて!」
「うん!」
「デッドリィブラスト!」
「ホーリーレイ!」
「うわ、すご!倒せた!?」
「いえまだです!」
「紗夜構えろ!」
「はい!!…くっ」
燐子とあこの攻撃は直撃していた。体力も削れてるようだが、まだまだダメージを与え続けないといけない。紗夜が精確に盾で防いだおかげで一瞬ボスの動きが硬直した。その隙を逃さないようにスキルを叩き込み、ヘイトをこちらに向けさせる。いくらレジェンドウェポンを使わせてるとはいえ、いかんせんレベルがな…。だから体力も減ってるのだが、すかさずリサが紗夜にヒールをかける。……ヒーラーとしての目利きがいいよなぁ。
わりと連携ができていることに関心しつつ、敵の攻撃を回避する。ボスを誘導し、燐子とあこが狙いやすい位置に移動させる。会話してないが、意図をくみ取ってくれた燐子が詠唱しており、そのすぐ後にあこも詠唱をしていた。今度は同時ではないが、それはそれでいい。強力なスキルをくらう度に一瞬動きを止めてくれるからだ。
「雄弥さん!ι(`・-・´)/」
「わかってる!……燐子!」
「はい!」
どのレベルのスキルになれば動きを止めてくれるのか。それが分かればあとはこっちのもんだな。燐子たちがいる後衛側に紗夜もいさせといて、いざという時には盾で防いでもらうようにしておく。Roseliaと俺の間にボスを配置させ、前後から攻撃し続ける、という構図に持ち込んだら、あとは消化試合だな。
ボスが動きを止めるギリギリのスキルを俺と燐子が交互に使い、ボスの体力を順調に減らしていく。その間にあこに最強スキルを詠唱してもらっておく。
「いっくよー!"デッドリィ・スパイラルフレア"」
「おぉー!あこカッコイイじゃん!」
「えへへー!当然だよ〜♪」
「これで倒せたのですか?」
「残りの体力とスキルのレベルを考えたらそうだと思いますよ!」
「そうですか…。結局なにもできま……!皆さん下がってください!」
「「「っ!!」」」
「きゃっ!」
「紗夜さん!」
「"ブラインドカーテン"!」
「燐子ナイス!…でもこれってたしか…」
「はい、一瞬です。…でも、この時間で(>人<*)」
「"セブンスキャリバー"」
ボスがみんなを見失った隙をついて、背後から7連撃を叩き込む。このスキルは敵との距離で内容が変化するもので、離れていれば七つの剣が飛翔してささり、近くならこうやって自分の剣で7連撃をいれる技なのだ。そして、こっちの方が威力が出る。MPの消費量とスキル後の硬直時間がネックだが、タイミングさえ間違えなければ大いに使える。
今度こそボスを倒すことができ、ボスは断末魔をあげながら消滅していった。んで、ドロップアイテムは…、俺にはいらないやつだな。
「やったー!倒せたー!」
「はぁ〜、怖かった〜。みんな順番にヒールかけるから並んで!」
「リサ姉、あことりんりんは体力減ってないからね?」
「氷川さんから治してあげてください(*´︶`*)」
「いえ、私は…」
「ダメダメ!アタシらを庇ってくれてできた傷なんだから、しっかり治すよ!」
「素直に治してもらっとけよ」
「雄弥もね!」
「……」
「ゆ・う・や?」
「わかった。…ところで友希那は?」
「へ?友希那ならそこに……あれ?」
「まさかボスに…」
「いえ、それはないはずです」
ボスが友希那に攻撃するなんて瞬間は一切なかった。なんなら後衛組に攻撃しに行ってなかったんだからな。と、いうことは迷子か。…戦闘中に迷子なんて聞いたことないんだけどな。
「あら?あなた達こんな所にいたのね」
「こんな所って…さっきまでボスと戦ってたんじゃん!友希那はどこに行ってたの!心配したよ!?」
「そ、それは悪かったわね。私は見ての通り無事よ。それとあこ、これ」
「えぇー!!キラぽんの尻尾!?どうやったんですか!?」
「近づいて捕まえただけよ」
しれっと言ってるが、よくキラぽんを見つけれたな。見失っていたから、あとを追いかけてってわけじゃないはずなんだが…。まぁ、いいか。
無事に友希那とも合流でき、今度こそ村へと戻りジェイクに手紙を渡した。これでクエストは達成され、あこが欲しがっていたリンダのサイスも手に入った。
「やったー!みなさんありがとうございます!りんりん!今度また一緒にクエスト行こうね!」
「うん。勿論いいよ(๑′ᴗ‵๑)」
「みんなお疲れー。いやー、大変だったけど、案外面白いね〜♪アタシは偶にならこれやってもいいかな〜」
「ほんと!?やる時絶対誘ってね!」
「うん!」
「さて、これであこの目的も達成できたのだから、今日はこれで終わるわよ。明日からの練習、全力で取り組むように」
「もちろんです!」
「今日夜ふかししてはいけませんよ」
「う…はい…」
「ふふっ、あこちゃん、これからもよろしくねd(*¯︶¯*)」
「うん!りんりんもよろしく!」
ログアウトの仕方をレクチャーし、順にログアウトしていく。全員がちゃんとログアウトできてるか俺と燐子が確認し、最後に俺たちもログアウトすることになった。
「あ、そうだ」
「どうかされました?」
「燐子にこれやるよ。さっきのドロップアイテム」
「え?……こ、これって(๑*ㅁ* )」
「燐子の職業で使うやつだろ?俺にはいらないし、使える人が持つべきだと思ってな」
「ありがとうございます!大切にします!(*ノ´∀`*)ノ」
「そりゃどうも」
「…雄弥さん」
「ん?」
「またやりましょうね。私、今日のボス戦すごく楽しかったです♪」
「いいぞ。俺も楽しかったからな。予定が合ったら一緒にやろう」
「はい(*^^*)♪」
最後に俺たちもログアウトして、それぞれ帰路につく。最終的にはいつも通り、俺とリサと友希那の3人になったのだが、心なしかリサの機嫌が悪い気がする。
「リサ、機嫌を治しなさいよ」
「別に機嫌悪くないもーん」
「…はぁ、雄弥」
「…俺なんかしたか?」
「しーらない」
「友希那わかるか?」
「大方ゲーム内で雄弥と燐子の連携の良さとか、最後のやり取りとかに嫉妬してるのよ」
「そうなのか?」
「うっ……そうです」
「そうか」
友希那に見破られたからか、顔を赤くして他所を向いているリサの手を取って引き寄せる。突然のことだから、リサはその力にしたがい、二人の距離が縮まる。肩に手を押し当てて離れようとするが、俺のほうが力が強く、リサは諦めておとなしくなった。
「なんなの?」
「リサ、ゲームなんだから慣れてる人同士で連携が上手くいくのは当たり前だろ」
「…でも」
「それに、
「ぇ…?」
「現実ならリサとが一番何でも上手くいく」
「ふぇ!?」
「俺にとってリサ以上なんて人はいないんだ。だから、例え機嫌を損ねてもずっと一緒にいてくれ。俺もリサを愛するから」
「…うん。アタシも、雄弥をずっとずっと愛してるから。…ごめんね?めんどくさかったよね?」
「いや、そんなことない。言ったろ?全部引っ括めてリサが好きだって」
「えへへ、ありがと♪」
リサとさらに距離を縮めて影を重ねる。ハワイ以来な気がするが、そこはどうでもいいか。改めて自覚した。俺はリサに溺れてるなって。だが、心地良いものだ。
「そこまでやれとは言ってないのだけど……はぁ、あなた達流石ね」