陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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たぶんこれが番外編で唯一のシリアス話になります。


最初で最後の時間(雄弥誕生日回)

「ったく、なんで今日(誕生日)にライブなんだか…」

 

「なにー雄弥?リサと過ごしたかったって〜?」

 

「ああ」

 

「ストレートだね!私たちとは過ごしたくなかったのかな〜?家族なんだけどな〜」

 

「リサを家に呼べば全員一緒にいれたのにな」

 

「その方法があったか!…ま、スタッフさんたちが準備しちゃったし、疾斗たちもノリノリで協力したみたいだし、なんか新曲まで作ってくれたんでしょ?」

 

「ありがたいっちゃありがたいんだけどな。いつも急なんだよな…」

 

「あはは!たしかにね!」

 

 

 今日、10月27日は湊雄弥()の誕生日だ。友希那の誕生日が昨日で、湊家に引き取られた時に、友希那が俺の誕生日をこの日だと決めたらしい。記憶が飛んでたし、当時はこういうことを何とも思ってなかったら、好きにしてくれって感じだった。リサと付き合ってからだな。誕生日を大切だと思うようになったのは…。

 

 

「それよりさ、もうすぐ(・・・・)だっけ?」

 

「…そうだな。予定日は2週間後だ」

 

「雄弥……大丈夫?」

 

「…あぁ。俺なんかよりリサの方が不安だろうからな」

 

「雄弥も無理しちゃ駄目だよ?リサは雄弥のことをすぐに察するんだから」

 

「わかってる。今日もライブを盛り上がらせて、その話を聞かせるつもりだからな」

 

「うん♪頑張ろっか!」

 

 

 そう、リサは出産を控えてる。俺が日菜の策略に嵌められた結果、俺とリサの間に子どもができたんだ。学生の間に子どもができる、ということはさせたくなかった。嫌でも目立つし、周りからの目も変わってしまう。大学は人が多く集まるから、それだけ視線を浴びることになる。そういうのを気にするリサにそんな負担を背負わせたくなかったんだ。

 だが現実にはできてしまった。なら俺は全力でリサを支えるだけだ。リサの交友関係の広さと本人の人柄のおかげか、リサをサポートしてくれる人が多いのもありがたいことだ。できれば片時も離れたくないのだが、今回みたいにどうしても離れることがある。そんな時に誰かしらリサの側にいてくれるのだ。今回ならRoselia全員がリサと一緒にいる。リサを置いてライブを見に行くなんてことはできないから、だそうだ。

 

 

「そろそろ時間だな。…他の奴らは?」

 

「あっち」

 

「……馬鹿だな」

 

「いつものことでしょ」

 

「馬鹿ってなんだ馬鹿って!こちとら衣装が破けて大変なことになってんだぞ!」

 

「ちょっと大輝静かにしてよ。目立たないように治すの難しいんだからね。時間もないことだし」

 

「またつまらぬ物を斬ってしまった」

 

「どこの五右衛門だテメェ!そもそも疾斗が刀を持ってきてるのがおかしいんだろぉが!!」

 

「なんかそこにあったから持ってきた。暇だったから大輝を斬ってみた。そしたら衣装がやられた」

 

「サイコパスかよ!!」

 

 

 どうせ家を出る前にイヴと日本刀のことを語り合ってたんだろうな。話し込んで時間がギリギリになってここに来たら、うっかり刀も持ってきてたってとこか。やっぱり馬鹿だ。今回は全員同時に登場するってやり方だから、大輝の衣装の応急処置を終わらせないといけない。だから愁が急ピッチで直してるんだが…。

 

 

「いっそ大輝だけ後からでもいい気がしてきた」

 

「疾斗のせいなんだけど!?」

 

「私はそれでもいいよ」

 

「右に同じく」

 

「直すのやめていい?」

 

「誰か止めろよ!」

 

「後はここ直せばいいから。ちょうど目立ちにくいとこだし、それぐらいできるでしょ?」

 

「まじか!チクショー!!」

 

 

 嘆いてるわりに、大輝の裁縫のペース早いんだな。手先を細々と動かすのは苦手、とか言ってたくせに。……いやよく見たら雑だな。

 

 

「よし直った!……あれ?袖口が塞がってる」

 

「苦手どころの話じゃないんだけど!?あーもう!僕も後から出るから3人先に出といて!」

 

「大輝お前…天才かよ」

 

「あはははは!本番前に笑かさないでよ〜!」

 

「ほら行くぞ……ん?」

 

『ライブ、頑張ってね☆』

 

「…まったく、自分も大変だろうに…」

 

『成功させる。帰ったらライブの話するから、楽しみにしといてくれ』

 

「…雄弥もマイペースだよね〜」

 

 

 勝手に携帯を覗きこむなよ。別に見られて困るようなこともないんだが。マナーというものがあるだろう。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「う〜〜ん!今のとこいい感じに盛り上がってるね〜!」

 

「そうだな。…早く衣装着替えてこい」

 

「ぶーぶー。もうちょっと語りたいのにー」

 

「終わってからでいいだろ」

 

「はーい」

 

 

 そそくさと更衣室に入っていく結花を見送り、俺達も衣装を着替えた。あとはアンコールとして2曲だけ。1曲は俺たちが結成した時に作られた歌で、もう一つがマネージャーのゼファーが新しく作った曲だ。まぁ、どっちもゼファーが作った曲ってわけだ。と言っても、ゼファーが作った曲はこの二つしかないんだけどな。むしろ新しく曲を作ってきたことが驚きだ。

 

 

「おっ待たせ〜♪」

 

「お、結花も着替え終わったか」

 

「あと3分くらいしたら、出ないとね」

 

「ちょっとま休憩だな」

 

「3分あったらカップ麺食えるんじゃね?」

 

「それ完成して終わりだから」

 

「2分待って1分で食べる」

 

「大輝ってほんとに馬鹿だよね〜」

 

 

 いつもと同じやり取りだ。ライブがある日もない日も変わらない。ライブ前だろうとライブの途中だろうと同じノリで過ごしてる。今日も同じようになるはずだった。スタッフが慌てて舞台袖に来るまでは──、

 

 

「み、みなさん大変です!」

 

「大変なのは大輝の頭の中だが?」

 

「それブーメラン発言だぞ、疾斗」

 

「ふ、ふざけてる場合ではないですよ!」

 

「ふざけてるつもりもないんだけど…、どうしたんですか?暴動ですか?」

 

「違います。……ゼファーさんが……ゼファーさんが倒れました!」

 

「なっ!?」

「嘘だろ…」

「ゼファーが…」

「ゆ、ゆうや…」

 

 

 基本的に放任主義で、ほぼ顔を合わせなくなったとはいえ、さすがに世話になったゼファーのことだ。みんな動揺してるし、結花もか弱い声で俺の名前を呼んだ。俺は結構ドライな人間だから、ゼファーが倒れたと聞いてもそこまでの動揺はなかった。

 

 

「…救急車は?それとゼファーの様子も」

 

「呼びました。今運ばれてるはずですが……、ゼファーさんは…意識がありません」

 

「そうですか。わかりました。…あなたはゼファーのとこに行っといてください」

 

「俺たちも行かないと「馬鹿か」なんだと!」

 

「ライブ中だぞ。何があろうと最後までやり切る」

 

「めちゃくちゃ世話になった人が意識不明で運ばれてんだぞ!」

 

「あと1分しかないよ!どうするの!?」

 

「俺たちはライブを最後までやる義務がある。それにあのゼファーだぞ?自分の体のことを理解してないはずがない。だから新曲を作ったんだ。最後になるとわかっているから。だったら俺たちはそれを披露するべきだ。それが恩を返すってことだろ?」

 

「……くそ…!」

 

「決まりだな。雄弥の言ったとおりだ。最高に盛り上げて、ゼファーを煽りに行くぞ。あの盛り上がりを見れなくて残念だったなって」

 

「あはは、性格悪い気もするけど、僕も疾斗に賛成かな。あのゼファーが悔しがるとこ見てみたいし」

 

「…うん。…それじゃあ!最後までやりきるよ〜!」

 

 

 1曲はゼファーが最初に作った"Herkunft-起源-"、そしてもう一曲は、ゼファーが最後として手がけた新曲が"Vertex-頂点-"だ。どちらも、掴みどころがないようなゼファーが作ったとは思えない、真っ直ぐな曲だった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 ライブが終わったら、疾斗たちはすぐに病院に向かって行った。俺はリサに帰るのが遅くなると連絡してから、後を追いかけるつもりだった。しかし、そうはならなかった。

 

 

「…家にいてほしかったんだがな」

 

「ゼファーさんにはアタシたちRoseliaもお世話になってるからね」

 

「よく紗夜と友希那が許したな」

 

「私も行く、ということで紗夜を説得したのよ」

 

「友希那…。なるほどな」

 

「タクシーを使ってすぐに行くわよ」

 

「あぁ」

 

 

 俺たちはタクシーを使って、ゼファーが運び込まれた病院に向かった。先に行った疾斗たちとは、入れ替わりということになり、結花には先に帰ってもらうことにした。

 

 

「……お前まで来たか。…おや、友希那ちゃんとリサちゃんまで」

 

「一応な」

 

「どうも、お世話になってます」

 

「さすがに心配でしたからね。アタシたちの活動をサポートしてくれてますし」

 

「ははっ、嬉しいよ。…まさかRoseliaがデビューしてしばらくしたら、リサちゃんが妊娠するとは思ってなかったけどね」

 

「あ、あはは〜。すみません…」

 

「いやいや、いいんだよ。後悔しないであろう道を進めばいいんだ。それこそ仲間と、そして雄弥と一緒にね」

 

「…はい。ありがとうございます」

 

 

 …なんで急にこんなこと語るようになってんだ?ゼファーはもっと飄々とした人間のはずなんだが、頭でも打ったのか?

 そんな疑問が浮かんだが、正直に言えばなんとなく察していた。だから、前置きが終わったところで、話を切り出すことにした。

 

 

「それで?もう長くないんだろ?」

 

「「え?」」

 

「…さすがだな。よく見通してる。……そうだな。長くない…という言い方も相応しくないな。終わりが(限界が)すぐそこさ」

 

「そんな……」

 

「で、言い残すことはあるのか?」

 

「ちょっと雄弥!」

 

「いいんだよリサちゃん。…話しておかないといけないことは、いくつかある」

 

 

 俺の不謹慎な話し方にさすがのリサも咎めてきた。だが、当の本人であるゼファーが止めたことで、リサも渋々と黙ることとなった。ゼファーは窓の外を眺めて話し始めた。まるで言葉を零すように。

 

 

「残念なことだが…、リサちゃんの出産までは生きられないだろうね。……いや、明日を迎えられるかも怪しいか」

 

「ハッ、()の顔ぐらい拝んでから逝けよな」

 

「雄弥さっきから不謹慎だから!……って、え?」

 

「…孫?どういうこと?」

 

「そうなんだろ?ゼファー。俺とリサの子どもだから、お前にとっては孫なんだろ?」

 

「よく分かったな…」

 

 

 そんなに意外だったのか。ゼファーが目を見開くところなんて初めて見たぞ。リサと友希那なんて固まってるし。

 

 

「…あぁ、そうだ。雄弥、お前の体の半分は、私と同じ血が流れている」

 

「知る気もなかったがな。…なんとなく察した」

 

「だろうな。……"ゼファー"というのは、個人名ではない。代々受け継がれる名前だ」

 

 

☆☆☆

 

 私は機械的に任務をこなす人間だった。何も疑問を抱かず、何も感じずに言われたことをこなすだけ。そんな日々を送っていたんだがな…、レイナに出会ってその生活に変化が生じた。モノクロだった世界に、色が付き始めたんだ。

 彼女はターゲットと仲のいい人物だった。作戦決行の日、彼女はターゲットの部屋に遊びに来ていた。だが、関係のない人間がいたところで、私のやることは変わらない。彼女の目の前で私は任務を遂行した。当然彼女は錯乱したが、私の頬を1発叩いた後に、涙を流しつつこう言ったんだ。

 

 

『可哀想な人』

 

 

 理解ができなかった。目の前で友人を殺されたというのに、犯人に向かってそんな言葉をかけてくるんだからな。…だが、その一言はまるでしこりのように私の中に残り続けた。

 私の中に生まれた小さな変化は、少しずつ大きなものへと変わっていった。そんな中、新たなプロジェクトが生まれた。"最強のゼファーを作る"。そんなプロジェクトだ。家族に捨てられ行き場を失くした子ども、組織の人間の子ども、集められるだけ集め実験を繰り返した。だが、産まれてからでは難しいとわかり、産まれる前に調整すべきだという結論に至った。

 

 組織で方針が決まっていく中、私はレイナと会うことが増えていた。任務以外では外に出なかった私が、な。不思議な女性だった。どこにでもいるような女性のはずが、表の世界しか知らないはずが、その目はすべてを見透かしているような、透き通った瞳だった。あらゆるものに関心を抱き、あらゆるものに価値を見出していた。どこにでもいるようで、他を探しても見つからない、そんなレイナに段々と惹かれていき、私たちは恋に落ちた。

 それが悲劇と変わってしまったがな。…私は歴代で最強のゼファーだった。そんな私の子どもが、組織に利用されないわけがない。レイナの身に宿った新たな命は、レイナから離されて実験台送りに、そのショックでレイナは病にかかり、療養するも命を落とした。私はその後すぐに組織を抜けた。一人では対抗できない程に組織が大きいからだ。対抗できる勢力を作り、表ともパイプを繋ぎ、大切な子どもを取り戻すために。

 

──それがレイナに誓ったことだったから

 

 

☆☆☆

 

 

「その子どもがお前だ。雄弥」

 

「…そうかよ。……で、なんでリサが泣いてんだよ」

 

「だってぇ……こんなの……こんなの…ないよぉ」

 

「ったく。…俺がこうやって生きてんだから、泣くなよ」

 

「うぅ…」

 

 

 泣きじゃくるリサに胸を貸す。リサは俺にしがみついて、あふれる涙を止めることなく泣き続けた。その様子を見た友希那がゼファーとの話をつなぐ。…まぁ本人も気になることがあるんだろう。

 

 

「ゼファーさん。お話から察するに、"ファースト"や"セカンド"といったコードネーム?は、"ゼファー"という座に着く可能性なのかしら?」

 

「そうだね。期待値が大きい順に並べられるんだよ。当代のゼファーが死ぬか、ゼファーを超えることで、その名を引き継ぐというシステムだ。私が名前を変えずに生きてきたのは、組織と対立するという意思表示でもあったんだよ」

 

「…そうですか」

 

 

 外に出てから、リサや友希那に出会ってから学んで、今になってわかる。胸くそ悪い組織にいたんだなって。ま、疾斗が言うには、組織はほぼ壊滅にまで追い込まれたらしいんだけどな。

 リサの頭を撫でて落ち着かせつつ、その瞳から流れる涙を拭く。涙が止まって、リサが少し落ち着いたら軽く口を重ねる。俺は大丈夫だと伝えるために。

 

 

「雄弥…お前の本当の名前、生まれ故郷、そして生まれた日付なんだが」

 

「そんなの知る気はないな」

 

「雄弥?」

 

「ゼファー。あんたの子どもは10歳かそこらで組織を抜けるのに失敗して死んだ。今ここにいるのは、湊家長男でAugenblickのベースを担当して、リサと結婚した湊雄弥だ。他の誰でもない。誕生日?そんなの今日に決まってんだろ」

 

「ちょっと雄弥」

 

「ははっ、…それもそうだな。今さら父親面はできないよな」

 

「ああ。じゃ、もう帰るから」

 

 

 背を向けて病室の扉を開ける。リサと友希那がゼファーに謝っているのを背中越しに聞き、二人がこっちに来るのを待つ。ゼファーがリサのお腹に手を当て、双子が産まれるのを言い当てていた。俺や疾斗同様、生命の息吹に敏感なんだろうな。…俺は二人が来てからもしばらくそのまま立っていた。

 

 

「…雄弥?どうしたの?」

 

「帰るんじゃなかったのかしら?」

 

「帰るさ。だがその前に。……孫の顔を見る前に死ぬんじゃねぇぞ、親父(・・)……それと…産んでくれてありがとう。今度お母さんの墓参り行ってくる」

 

「!!……あぁそうだな。レイナにどんな孫ができたか話してやらないといけないからな。…俺は地獄行きな気もするが」

 

「はっ、信じときゃ報われるのが故郷の宗教だろうがよ」

 

「ははは!なら、今から信者となってみるか」

 

 

 振り返ることなく、顔を見ることなく短い会話をした。少し荒っぽい気もするが、これが俺達の会話としては相応しいのだろう。今までで一番気兼ねなく話すことができたのだから。

 

 リサは予定日より少し早く出産を迎えた。病院は、産まれた子どもをゼファーにもすぐに見せれるように、というリサの考えを尊重して、ゼファーがいる病院だった。無事に産まれた子どもをリサと一緒に迎え、一緒に喜びを分かち合った。頑張ってくれたリサに感謝してもしきれなくて、何度もお礼を言いながらリサを抱きしめた。

 

 結局、ゼファーが孫の汐莉と愛彩を見ることは叶わなかった。その時にはほとんど見えなくなってたからだ。だが、元気な泣き声を聞き、二人の手に触れ、たしかに新たな生命を感じ取ることはできたようだ。…本来は産まれてすぐの子をこうやって連れ出すわけにもいかないんだが、特別に許可をもらえた。情に脆い日本らしいな。

 

 

「もう思い残すことはない」

 

 

 そう言ってゼファーはすぐに息を引き取った。俺は一緒についてきてくれていた看護士に子供を預け、しばらくその部屋に残った。ゼファーの置き手紙があったからだ。

 

 

──これを読んでいる時、私は既に死んでいるだろう。願わくば孫の誕生を待っていたいが、そこはどうなるかわからないな…。さて、長く書くこともないからすぐに本題に入るぞ。手紙と一緒に隠しておいた注射器があるはずだ。それを雄弥が自分の体に打ち込め。お前の体質を治すことができる。…研究には長い時間がかかった。なんせ雄弥は私の要請をことごとく断っていたからな。データが取れなくて時間がかかるのなんの。まぁ完成したからいいんだがな。それは雄弥の体質を戻すと同時に、20年〜30年分の寿命が戻せる。これでリサちゃんと長生きできるだろう。もう無茶なことはするなよ。 ゼファーより

 

追伸 お前の中に私とレイナの子──が生きていると信じている

 

 

 2枚目には、お母さんの墓がどこにあるのかを示されていて、そこに埋めてほしいということと、財産の相続に関する遺書も書かれていた。

 

 

「……っ……馬鹿が。……最後にカッコつけやがって…。……寿命が回復?…わかんないとでも思ってんのかよ。お前の寿命(・・・・・)を渡してきてるって俺が気づかないとでも思ってんのかよ!」

 

 

 葛藤が生まれた。人の人生を奪ってきた俺が、人から人生を貰っていいわけ無いだろって。いっそのこと壊してしまおうかと…。でも、そんなことはできなかった。死人に文句を言っても仕方ないし、何よりも…果たせないと思っていたリサとの約束を果たせることになるのだから。だから、俺はそれを使うことにした。

 

 

「……イッテェな。……おい親父。これ、涙が止まらなくなるぐらいイテェぞ」

 

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