陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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あぁー、ゆりしぃエモい…。ゆりしぃゆりしぃ…。ああぁぁ…(。>﹏<。)

…失礼しました。鑑賞会したのでまだその余韻が…


側にいて

「リサ出かけようか」

 

「え?急にどうしたの?」

 

 

 今日はRoseliaの練習がなかった。バイトも入れてないし、部活も休み。だから雄弥と一緒に過ごそうと思ってたんだけど、アタシが雄弥のとこに行く前に雄弥の方が先に来てくれた。夏が終わって秋になって雄弥と婚約した。婚約しても雄弥との接し方が変わったわけでもなかった。アタシからしたら変わったかなって…、そう思ってたけどみんなが言うには何も変わってないって。無自覚じゃなくなったってだけみたい。

 それで、雄弥は普段とは違う格好をしてアタシの部屋に来たんだけど、雄弥の手にはアタシが着させられるであろう服があった。雄弥がそんなことするのって初めてだからビックリだよ。

 

 

「冬になると寒いから出かけにくいだろ。街中とかなら関係ないが」

 

「えと、話が見えないんだけど。とりあえずその手に持ってるのは何?」

 

「ライダースーツ」

 

「…え?」

 

「だからライダースーツだ」

 

「なにそれ」

 

「バイク乗る時に着るやつだな。プロテクター入りで、体を守ってくれる」

 

「…バイクで出掛けるの?」

 

「嫌か?」

 

「ううん。嫌じゃないよ。初めてだからビックリしてるだけ」

 

 

 雄弥から渡されたスーツは女性用のやつで、たしかに肘とか肩とか背中のとこにプロテクターが入ってるけど、見た目的にはオシャレに着こなすこともできるってやつだった。ズボンの方もそんな感じだね。

 軽装の上から着ることができるみたいで、アタシは今着てる服の上からそのスーツを着た。慣れてないから違和感があるけど、そんなに動きにくいってわけでもなかった。

 

 

「あ、泊まりだからな」

 

「それは先に言ってほしかったかな!」

 

 

 週末を利用した1泊2日のツーリング。それが雄弥が持ちかけてきた話だったみたい。アタシは雄弥を部屋から追い出して、着替えとか生活必需品をリュックに次々と入れた。雄弥を追い出したのは、下着とか見られたら恥ずかしいから。リュックに荷物を入れたのは、バイクに荷物入れるとこないって聞いたことあるから。スクーターならシートの下に入れられるんだとか。

 

 

「お待たせ雄弥」

 

「大丈夫。そんな待ってない」

 

「ならよかった。じゃあ行こっか♪」

 

「ああ」

 

 

 母さん達には雄弥が話をしてたみたいで、楽しんできなさいって言われた。耳打ちで「孫ができるの期待してる」って言われたけど、そ、そういうのはしないからね。…子どもは欲しいけど。

 

 

「へ〜、これが雄弥のバイクなんだ〜。カッコイイね☆」

 

「ありがとう。まだ年齢的に大型のは取れなくてな。中型のバイクだ」

 

「中型でも大っきい気がするんだけど…」

 

「大型のを見たらそうでもないって思うぞ。ま、それはいいとして、荷物はそこに入れたらいい」

 

「あ、入れるとこあるんだ」

 

「サイドバッグってやつだな。リサのそのリュックぐらいならなんとか入るだろ」

 

「…おぉー、ピッタリ」

 

 

 サイドバッグ。その名の通りバイクの左右に付けられてるやつで、こうやって荷物をある程度収納できるみたい。大きさはマチマチなんだとか。アタシは右側に入れて、雄弥のは左側に入ってるみたい。他にもシートバッグとかタンクバッグとかあるんだとか。雄弥は使ってないけど。

 

 

「このヘルメット使ってくれ。髪には気をつけてな」

 

「うん。…って、これリボンとか外さないとだよね」

 

「それもそうだな」

 

「……これでよし、…でー、このあご紐のはどうやるの?」

 

「ジッとしてろ」

 

 

 雄弥に言われた通りジッとしてると、雄弥がヘルメットのあご紐を付けてくれた。その時に雄弥が覗き込むようにしてたから顔が近くて、ボーッと見ちゃってた。

 

 

「付けれたぞ。…リサ?」

 

「…ぁ、うん。ありがとう」

 

「…調子悪かったのか?それなら今日のは中止にするが」

 

「ううん。そんなことないよ。雄弥が…その…カッコイイなって

 

「……そうか」

 

「う、うん」

 

 

 なんだか気まずい雰囲気になっちゃった。雄弥のこと好きっていっぱい言ってるけど、カッコイイっていうのはあんまり言ってこなかったからかな。お互いに慣れてなくて、でも少し新鮮な感じがした。

 雄弥もヘルメットを被って、雄弥とアタシのヘルメットに付いてる機械を操作し始めた。何かなって思ってたけど、すぐにそれが何かわかった。通話ができるようになるやつみたい。ちなみに、ヘルメットはお互いにフルフェイスってやつみたい。一番安全なヘルメットみたい。サイズも合わせてくれてる、んだけど…いつ測ったんだろうね。

 

 

「これでよく聞こえるだろ?」

 

「うん。これすごいね!」

 

「疾斗のやつが使っててな。いろいろと教えてもらったんだよ」

 

「なるほどね〜」

 

「それじゃあリサも乗ってくれ。ここのバーに足を乗せるんだ」

 

「ここに足を乗せて…、よっと」

 

「サイドバッグ付けてると後ろの人が乗りにくくなるんだが、そこは勘弁してくれ」

 

「ううん。全然気にならないよ!」

 

 

 アタシは雄弥の肩に手を乗せたんだけど、それじゃあ駄目って言われちゃった。運転しにくいし、後ろの人のことが気になって集中できないんだとか。それじゃあどうしたらいいのかって聞いたら、手をお腹の方に回せって言われた。要は抱きつけってことらしい。密着したら体重がかかるとこがほぼ一箇所になるし、振り落とされる心配もなくなるんだって。…なんだか恥ずかしいよね。アタシの心臓が速くなってるんだけど、これも雄弥に伝わっちゃってるのかな。

 

 

「それじゃあ出発するぞ」

 

「いいよ☆」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 雄弥の運転は滑らかだった。加速も減速も優しくって、バイクのギア(?)を変える時も普通ならガコンってなるらしいんだけど、全然気にならなかった。あ、今変えたんだなって分かるぐらい。…一人で乗る時はここまで丁寧じゃないんだって〜。そんなの聞いたらもちろんお説教タイムになったよ。

 サービスエリアのバイク置き場のとこで正座させて、一人の時でも運転には気をつけてって。雄弥に何かあったらアタシも気が気じゃないからって。いつの間にか他のバイク乗りの人もアタシのお説教でグサってなってたみたい。でも大切な人に何かあってからじゃ何もかも遅いからね。何回でも言わなきゃね。

 

 

「あとどれくらい?」

 

「んー、1時間かからないぐらいだな。疲れたか?」

 

「ううん。大丈夫」

 

「もう少し休憩するか。ここも結構気持ちいいとこだし」

 

「じゃあじゃああっち行こうよ!景色良さそうだしさ!」

 

「いいぞ」

 

 

 遠く離れた所に見える海。今いる場所と海までの間にある街並み。自然も多くて、どこかほっこりする景色が広がってた。アタシはその景色に目が釘付けになりつつ、隣にいる雄弥に寄りかかった。雄弥は何も言わずにアタシの肩に手を回して、引き寄せてくれた。こうやって雄弥と寄り添える。いつものことだけど、それでもいつまでも、こうできることが嬉しかった。色褪せないでアタシの心を満たしてくれる。側にいてくれるだけで。

 

 しばらくの間そうしてて、雄弥と軽く口を重ねたら出発した。雄弥が連れてきてくれたところは、海が近い旅館だった。海が近いけども、旅館のすぐ近くには山があって、その山を少し登って行ったら辺り一面に紅葉が広がってるんだって。雄弥ってどこからこういう情報仕入れてくるんだろ。この辺は田舎みたいだから、他のお客さんも少ないし、この旅館もSNSとかはしてないらしい。一応ネットには載ってるけど、電話でしか予約できないんだとか。

 でも、すごく風情のある旅館だよ。和風の建物で、大浴場もある。家族風呂、なんてのもあるみたいだけどね。中庭があって、そこにも紅葉があった。ご飯は食堂で食べるようになってるみたいで、他のお客さんとも一緒なんだって。アットホームな旅館として経営してるから、なんだとか。部屋に着いたら荷物を置いて、ライダースーツも脱いで軽装になる。肌寒くなってきてるから、カバンから

カーディガンをだして羽織る。

 

 

「部屋もいいね〜♪」

 

「気に入ってくれたようで何よりだ」

 

「よく知ってたね。またAugenblickの誰かから聞いたの?」

 

「いや、今回はゆりさんが教えてくれた」

 

「…へー?ゆりさんが?」

 

「…リサ?」

 

「いつの間に会ったんだろうね〜?それに、雄弥って結構ゆりさんのこと好きだよね〜」

 

「会ったのは偶然だし、ゆりさんは俺の師匠だからな」

 

「ふーん?」

 

 

 雄弥が悪いわけじゃないし、ましてやゆりさんが悪いわけでもない。でも、アタシの知らないところで二人が仲良くしてるのって、すっごいヤだ。自分勝手で、嫉妬深いのなんて前々から自覚してる。でも、嫌なものは嫌。雄弥のことは全部知りたい。

 アタシが拗ねてると、雄弥に唇を奪われた。アタシの体を強く抱きしめてくれて、なんだか一つになった感じがする。アタシも雄弥の首に手を回して雄弥を求めた。アタシだけを見てほしくて、他の人になびく可能性を無くしたくて。

 

 

「ゆうや…」

 

「リサ…たしかに俺はゆりさんのことを慕ってる。でも、俺が好きになるのはリサだけだ。あー、家族愛で言えば友希那と結花も好きだが、異性として好きなのはリサだけなんだよ」

 

「…でも…紗夜と日菜は?」

 

「吹っ切れられるさ。リサがいるんだから」

 

「ほんと?」

 

「あぁ。もう二度と嘘はつかないからな」

 

 

 雄弥の初恋は紗夜と日菜だった。雄弥が恋愛を理解したと同時に分かったことみたいだけど、その時も紗夜と日菜と仲良かった。一緒に遊んだりしてた。だからこそ不安だった。だって、アタシのことを好きって言ってくれた時と紗夜と日菜を好きだったって気づいた時が一緒なんだから。

 でも、何度同じことを聞いても、何度も不安になったことをぶつけても、雄弥はアタシを見てくれる。アタシだけを見てくれて、アタシの心を温めてくれる。都合のいい女って言われるかもしれない。でも、それでもアタシは雄弥のことが好きなんだ。

 

 部屋を出たら少し山を登って、一面を紅く染める紅葉を二人で見た。不思議なところで、ここに人がいることで初めてこの場所が成り立つ。そんな感じがするところだった。日が暮れ始めたら山を降りて、海岸線を腕を組んで歩いた。綺麗な夕焼けで、それが水平線に沈んでいくまで二人で眺めてた。

 夕食をいただいたらお風呂に入るわけなんだけど、ここは日帰り温泉も兼ねてるみたいで、この時間になると地元の人が寄ってくるんだとか。それを待ってたら遅くなっちゃうし、慣れてないバイクでの移動だったから結構疲れが溜まってる。だから、お風呂にはすぐに入りたかった。…つまり、家族風呂を使うことになったんだけど、それを使う時は同部屋の人も一緒じゃないと駄目みたい。そう、雄弥と一緒に入るってこと。

 

 

「へ〜、炭酸泉なのか」

 

「…なんで雄弥は平気なわけ?」

 

「なにが?」

 

「混浴のこと!」

 

「こうしてないと気まずいだろ」

 

「…ぇ」

 

「平静を保とうとしてるだけだ」

 

「そ、そっか…雄弥もなんだ

 

 

 お湯に浸かるときにタオルを使うのはマナー違反だけど、さすがにそんなこと言ってられない。アタシはタオルを体に巻いたまんま、雄弥と背中合わせでお湯に浸かってた。

 

 

「俺が先に上がって、廊下のとこで待っとくから」

 

「え、でもそれは悪いよ」

 

「一緒に上がるのか?」

 

「そ、それは…」

 

「だろ。だからリサが後に上がってくれ。もう少し浸かってたいんだろ?」

 

「…うん。ありがとう雄弥」

 

「どういたしまして」

(タオル巻いてる時からそうだったが、濡れた状態だと余計にリサのスタイルがくっきり出るしな)

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 部屋に戻ったら布団を旅館の人が敷いててくれたみたいで、既に眠たくなってたから、雄弥に髪を乾かしてもらって寝た。お互いに少し近づいて、手を繋いで。

 とても怖くて嫌な夢を見て目が覚めた。雄弥がアタシの前からいなくなる夢。しかも他の人と寄り添うとかじゃない。もう二度と会えなくなる、つまり雄弥が死んじゃう夢。アタシはすぐに隣の布団に目を向けた。雄弥がそこで寝てるはずだから。

 でも雄弥がいなかった(・・・・・・・・)。暗いのが極端に苦手なアタシは、暗いことで心細くなったし、雄弥がいないことも合わさって強い不安にかられた。

 

 

「ゆうやぁ…どこなの…?」

 

 

 荷物はあるんだけど、部屋の中にはいない。そっと部屋のドアを開けて、恐る恐る外を見てみたけど、案の定明かりがなくて雄弥もいなかった。廊下に出て雄弥を探すのは怖いんだけど、ジッと待つこともできない。壁に手を当てて、そっと歩いていくんだけど、体全体が震えちゃってて歩くペースはすごい遅かった。

 

 

ゆうや…」

 

 

 声を出して探そうとしても、怖さには勝てなくて自分でも声が出てるのか分からなくなるぐらい小さな声が出た。そんな声に反応する人なんてもちろん誰もいない。

 明かりのない廊下だったけど、唯一明かりが差し込む所があった。そこは中庭に唯一入れるようになってる場所で、縁側になってるとこだった。目を凝らしてそこを見ると、そこには誰かが一人だけ座ってた。…ううん。誰かじゃない。この距離でも分かる。アタシはさっきまでの歩みとは逆に、走ってその人の所に行って飛びついた。

 

 

「ゆうや、ゆうやぁ!」

 

「リサ?どうした?」

 

「よかった…ゆうや……ゆうや」

 

「…怖い夢でも見たか」

 

「うん…」

 

 

 いきなり飛びついたのに、雄弥はアタシを受け止めてくれた。泣きつくアタシをあやすためにそっと頭を撫でてくれる。アタシは雄弥を強く強く抱きしめた。これが現実だって理解するために、雄弥がちゃんといるって理解するために。

 

 

「ゆうやがね…いなくなっちゃったの……どこにも…」

 

「なるほどな。でも大丈夫だぞリサ。俺はリサの前からいなくならないから。どこかに行っても必ずリサのとこに帰ってくるから」

 

「…でも……こわくて…ゆうやへやにいなくて…あたし……あたし」

 

「それは…うん、ごめん」

 

「おねがい……だから…あたしを…ひとりにしないでぇ……ずっとそばにいて…」

 

 

 アタシが雄弥を抱きしめてた力は、涙があふれることで弱くなっていった。縋りつくように、体を雄弥に傾けた。雄弥は包み込むようにそっと抱きしめてくれた。アタシが落ち着いてくると、雄弥は視線を外に向けた。アタシもそれをつられて外を見たら、雄弥がなんでここに来たのかがわかった。

 

 

「きれい…」

 

「だろ?ちょうど雲もないから月明かりがダイレクトに届いててな」

 

 

 周りに人口の光がないから、自然本来の明かりが届いてきて、中庭を照らしていた。紅葉も昼間に見たときとは違う美しさがあって、アタシの中にあった恐怖心もなくしてくれた。

 

 

「部屋に戻るか?」

 

「ううん。もう少しだけ」

 

「だろうな。リサが満足するまでここにいよう」

 

「ありがと♪」

 

 

 アタシは雄弥に体を預けながらその景色を見てた。何も言葉を交わすことなく、ただただその景色を。

 いつの間にかアタシは寝ちゃってたみたいで、気づいたときには翌朝になってた。寝ぼけてるアタシを雄弥がそっと撫でてくれて、アタシの好きな笑顔を向けてくれた。

 

 

「おはようリサ」

 

「おはよう、雄弥」

 

 

雄弥(愛しの人)の名前を呼ぶ

 

─ただそれだけのことだけど

 

─それは何よりも心地よいこと

 

 

 

 




次回の番外編 

・Roseliaはメンバーでプールに行くことに。友希那からそれを聞いた結花は羨ましがる。そんな時にある情報を入手し、プールに行くために雄弥を連行する。

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