「同じ答えにいき着くことがわかっていても"なぜ?"というフィルターを通すことが大事だと私は思うわ」byレイシー
「既に存在しちまってるものに"なぜ?"と問いかけても時間の無駄だろ。どうせ頭を使うなら"それでどうする?"の方がよっぽど有益だ」byレヴィ
この作品の主人公の思考はは2つ目の考え方に少しよせてます。
「ちょっと待ってリサ」
「え、どうしたの友希那?」
「過去を振り返ること自体は否定しないけれど、中学入学から話してたら店が閉まってしまうわ」
「……あ、そっか。あはは〜ごめんね?…えっとじゃあ、友希那のお父さんのバンドの解散あたりからかな」
「……そうね」
えっとー、あの頃はたしかーーー、
ーーーーーーー
中学2年生になって半年ぐらい雄弥が所属してるバンド、Augenblickも活動が少しずつ拡大し始めた。バンド活動だけじゃなくて、メンバー全員でバラエティ番組に出ることもしばしば。ともかく!雄弥たちは今注目され始めてるってこと!
「リサはこの頃機嫌がいいわね」
「え、そう?いつも通りだと思うけどな〜」
「そんなことないわ。誰から見ても最近のリサはずっと機嫌がいいわよ」
「そ、そんなに?……うーん、自覚ないんだけどなぁ。気をつけようかな」
「どうせ雄弥のことを自分のことのように喜んでるのでしょ?」
「あ、あはは〜。そうなんだけどさ」
仕方ないじゃん。会った時からずっと見守ってきたんだもん。というか友希那もなんだかんだで喜んでるよね〜。
「リサは本当に雄弥が好きなのね」
「うん!友希那と同じくらいにね!」
「…そうじゃないわ」
「え?」
「雄弥のこと
「……へ?…誰が?」
「リサが」
「誰を?」
「雄弥を」
「なんだって?」
「異性として好きなのねって言ったのよ」
「……ふぇ!?」
う、嘘!?ア、アタシが雄弥を!?…ないない!だって雄弥は全然表情変わらないし、自分から何かすることもないし、相手のことなんて考えないし。けど、カッコイイとこもあって、実は優しさがあって、なんというか天然?っぽい時がたまにあって、アタシや友希那のことを第一に思ってくれてて………。
(……あ、そうだったんだ)
「やっぱり好きだったのね」
「う、うん……」
「けどまだ認められないわよ」
「えぇ!?そこは応援してくれるんじゃないの!?」
「幼馴染のリサのことを応援したい気持ちもあるけど、弟の雄弥のことも大切だわ。リサに嫌がらせをしたいわけじゃないのよ?ただ、雄弥はああいう子だから将来を考えたら、ね」
「アタシの女子力をもっと上げるしかないか〜」
ま、今よりもっとできることを増やせばいいってことだよね!よーっし!友希那を認めさせるだけの力をつけてやるんだから!
〜〜〜〜〜
リサにはあんな理由を言ったけど、実際には少し…少しじゃないわね、とりあえず別の理由もある。…雄弥は弟ではあるけど…私も…その…。
家に帰ると父さんが先に帰ってきていた。そこまで珍しいことではないけど、今日は私より先に帰ってくる日じゃなかったはずだから驚いてしまった。
「ただいま」
「……友希那か、おかえり」
「…?何かあったの?」
「……隠せることじゃないか。…友希那、父さんは
「……え?」
父さんの口から出てきた言葉をすぐに理解することは私にはできなかった。けれど、音楽雑誌とかをどんどん処分していくその姿を見て、それが本当のことなんだとぼんやりと理解していった。
それから数時間が経ったところで雄弥も帰ってきた。食事は済ませてくると連絡があったから父さんたちも既に食事を済ませてる。私は…食べたかしら?あの後ことをあまり覚えてないわね。
(とりあえず雄弥にも父さんのことを話さなくちゃ)
私は失念していた。雄弥はたとえ家族のことであってもそこまでの関心を見せないということを。だから、これは必然の出来事だった。
「…そうなのか。…それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって…あなたね!父さんたちが否定されたのよ!なんとも思わないの!?」
「父さんたちとその相手との音楽の認識の違いってことだろ?他人と方向性が違うなんて世の中でよくあることだろ。それに父さんたちは売るための音楽は受け入れられないってことだろうけど、俺たちは売るための音楽をしてるしな」
「……あなたは…父さんを家族だと思ってないの!?」
「家族でいられるのはありがたいことだ。身寄りのない俺を引き取ってくれてるからな。けど、
雄弥が真顔でそんなことを言った瞬間、私は私の中で何かが切れる音が聞こえた。そして、感情をコントロールできず、何も考えれないで発言することになった。最低なことを。
「……もう、いいわ」
「友希那?」
「…所詮あなたには私たちなんてその程度だったのね。……出ていって」
「ん?」
「出ていって!あなたは家族なんかじゃないわ!もう顔も見たくない!声も聞きたくない!今すぐに家から出ていって!二度と私たちの前に現れないで!!」
「…………わかった。必要な荷物を纏めてすぐに出ていく。世話になったな」
そう言って雄弥は5分程度で荷物を纏めてすぐに家を出ていった。私は泣き崩れた。
(私は…わたしは……)
後悔が絶えなかった。泣いて泣いて泣いて、泣き続けて気づいた時には朝になってた。泣き疲れていつの間にか寝てしまっていたみたいね。それから雄弥と再会するまで数ヶ月を要することになったわ。
〜〜〜〜〜
アタシは家に帰ってお母さんから友希那のお父さんのことを聞かされた。すごくショックで、友希那と話をしたかったけど、友希那のほうがショックが大きいだろうから連絡を取ることができなかった。
ううん、私がただ友希那になんて声をかければいいかわからなかっただけだね。それで、雄弥なら話ができるかなって窓から湊家を見たら荷物を持って家を出る雄弥が見えて、アタシはすぐに追いかけた。
「雄弥!そんな荷物持ってどこ行くの!?」
「リサか。……どこに行くかはわからない。ただ、湊家には戻れなくなったから出て行く」
「な、なに言ってんの?…それっておじさんの仕事のことと関係あるの?お金のこととかなら雄弥が出て行く必要なんて…」
「リサ違うんだ。そういうことじゃない」
「じゃあなんで雄弥が出ていく必要があるの!そうだ、しばらく家に来なよ!よくわからないけどアタシん家なら問題ないはずだよね?」
「それもだめなんだ」
「なんで!?ねぇ何があったの!?」
「俺は友希那の視界に入っちゃいけないし、友希那の耳が聞こえる範囲にいてもいけないんだ」
「どういうことか説明してよ!」
(さっきから意味がわからないよ!なんでなの…友希那と喧嘩したってことなの?)
雄弥から話を聞いたアタシは、当然怒った。友希那に怒ったっていうのもあるけど、それ以上に
「雄弥は湊家に感謝してないの!?」
「感謝はしてる。育ててもらってるからな」
「それならなんでそんな…、おじさんの気持ちを考えれないの?」
「俺にそんなことがわかるわけがないだろ。一般論も危ういんだぞ?」
「これをきっかけに考えたらいいじゃん!理解しようとしたらいいじゃん!なんで最初から諦めてるの!」
「…どれだけ考えてもわからないことなんだ。俺が病院で湊家に引き取られるって聞いたとき考えたさ。なんで見ず知らずの人間を引き取ってくれるのか、なんで友希那もリサもこんな俺にずっと話しかけてくるのか。入院してる間は暇だったからずっと考えてた。それでもわからなかったんだ。だから"なぜ"の追及はやめた」
「けど…!だけど!それはその時分からなかっただけかもしれないじゃん!今ならわかるかもしれないじゃん……なんでっ…」
知らなかった。雄弥が真剣に悩んでいたことなんて。あの頃は知り合ったばっかで雄弥のことを何も分かってなかったから。…けどそんなのは言い訳で…だけど…だけど。
もう頭の中がグチャグチャになってわけがわからなくなってきた。涙が溢れるけどなんで泣いてるのかわからない。なんで怒ってるのかもわからなくなってきて、なんで喧嘩なんか…雄弥を好きだってわかったのに……なんで。
そうしてアタシはこの先ずっと後悔する最低なことを言うことになってしまった。それがアタシの罪で、それがずっとアタシを縛ること。
「家族のことも想えないなんて、そんなの……そんなの"人じゃない"よ!」
「やっぱそうなのか。リサ、今まで側にいてくれてありがとう。人じゃない俺がこれ以上2人の側にいても邪魔だからな。もう2人の近くにはいないようにするから」
「……あ、…ちょっ、雄弥!」
「2人の人生を応援してるから。…さようなら」
(待って、待ってよ!違う!こんなこと言いたいんじゃなくて!…こんなのって!)
アタシの思いとは裏腹に言葉を発することができなかった。その間にも雄弥は一度も振り返ることなくそのままどこかに立ち去って行ってしまって、追いかけるための足も動かなかった。
アタシは…アタシは……。
〜〜〜〜〜
「…そんなことが……あったんですね」
「雄弥くんが悪いわね」
「紗夜さん!?」
「だってそうでしょ?そういう人物とはいえ悪いことは悪いのよ」
「それは…」
「あはは、凄いな〜紗夜は。…あたしはそう考えれなかったよ」
悪いものは悪い。理解できないことであっても悪いことを認識させないといけない。紗夜はそう言ってるんだ。アタシは…甘やかしちゃうからな〜。もしかしたら紗夜と一緒の方が雄弥のためになるんじゃ。
「…今井さん、たしかに私は雄弥くんと一緒にいる時間を居心地よく思っていますが、私には無理ですよ」
「!!…紗夜ってエスパー?」
「なにを馬鹿なことを…」
「あはは、だよね。それで無理ってどういうこと?」
「私にはそこまでの器がありません。私にできることはせいぜい雄弥くんをあなた達とは違う角度で支えるだけです。…悔しいですが彼を中心から支えられるのはあなた達だけです」
「あの……氷川さん…それって」
「…私も私の妹も彼と出会い、彼に惹かれていきましたから」
「ええー!!え…えぇ!?」
「あこお店で騒がないで」
「あ、ごめんなさい…って友希那さんは驚かないんですか!?」
「驚いてるわよ」
言葉だけを聞くと驚いてなさそうだけど、友希那も驚いてる。コーヒーを飲もうとしてるけど手が震えてるもん。
(紗夜だけじゃなくて、日菜もなんだ…)
「まぁ、私も私の妹も彼との必要以上の接触を控えるようにしてるのでので、今井さん気にしないでください」
「え…なんで…?」
「…そこは教えません。…ですが、猶予を与える程度だと思ってください。そう簡単に割り切れるものでもないですから」
「まぁそうだよね」
「特に妹の方は堪え性がありませんから。この間2年ぶりに2人で遊んだことを大変喜んでいましたし、今では同じ事務所にいるため会う頻度も高いでしょうし。……おそらくすぐに遠慮することをやめるでしょう。私でも自分を抑えるのがいっぱいいっぱいなので」
「うぅ…」
「と、とりあえず……今は和解できてます…よね?」
「そうだよね。2人とも雄弥さんと仲いいもんね」
「そう、なんだけどさ。……それでも、ね」
「今井さん…」
「……リサ、明日はバイト入れてなかったわよね?」
「え…うん。だって練習あるでしょ?」
「明日は来なくていいわ」
「へ?」
「雄弥と2人で遊んできなさい」
ゆ、友希那ほんとにどうしちゃったの!?練習を休んでデートしてこいなんて(言ってない)。そ、それより今のアタシが雄弥に会ったら前みたいに接せるかな…。
「雄弥には私から言っておくから。いいわね?」
「……はい」
ええい!シリアスっぽいのが長い!!
ってことで友希那さんに一肌脱いでもらってデートのセッティングをしてもらいました。
☆7評価 Pad2さん ありがとうございます!