陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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10話

「湊くんは今日なんでこの学校に来たの!?」

「連絡先交換してもらっていいですか!?」

「噂のあの子は彼女ですか!?」

「結婚してください!!」

「趣味は何!?」

 

 

 矢継ぎ早に質問される。こんな展開たしかリサが持ってる漫画にあったような。それはそれとして君たち、授業中だろ。せめて休み時間に質問してほしい。一気に聞かれても聞き取れないけどな。

 

 

「あなたたち席につきなさい!授業しますよ!それと誰ですか求婚した子は!」

 

「先生!授業の内容よりも湊くんのことを知りたいです!」

「先生は私達に先を越されたくないだけでしょ!諦めてください!」

 

「諦めるのはあなた達でしょ!?」

 

 

 女子校ってこんなノリがいいとこなのか。中学のときに似たノリのやつはいたけど男子がほとんどだった気がするな。

 

 

「湊くんも言ってあげてください!」

 

「え、今日はゲストとして、ここにいるわけなんで、このクラスのことに口出ししませんよ」

 

「じゃあ授業終わり!先生お疲れ様でした!」

 

「終わりませんよ!」

 

「ちょっと待ってみんな落ち着いて!」

 

「なによ、今大事な話をしてるんだから」

 

「それよりも大事なことがあるわ」

 

 

 現状況で授業をするかどうかより大事なことって何なんだろうな。俺にはわからん。というかその子以外誰もわかっていないようだ。

 

 

「氷川さん、白金さん、二人は湊くんと知り合ってたようじゃない?そこを追及しないことには何も始まらないわ!」

 

「いえ授業が始まりますよ!?」

 

「先生は関係ありません!!」

 

「えぇ!?」

 

 

 あ、先生がさすがにショック受けてる。黒板に近い人が先生を慰めてる。シュールな光景だな。

 名前を呼ばれた紗夜と燐子はみんなの視線を浴びてたじろいでる。…燐子はもはや怯えてるな。

 

 

「みんなが好き勝手に質問しても何も聞き出せないわ。ここは順番に行いましょう。机を移動して!」

 

『『了解!』』

 

「あ、湊くんも合わせて動いてね」

 

「わかった」

 

「雄弥くんそこはわからないでください!」

 

「名前呼び!?二人はそんな仲だったの!?」

 

「あ……しまった

 

 

 クラスの人たち目つき変わったな〜。…机移動させたけど何この形、裁判みたいなことになってるんだけど。この形にさせた子(委員長)が裁判長役らしい。弁護人と検察官の席が用意されてるけどぶっちゃけ弁護人いないよな。

 ちなみに傍聴席はない。俺と紗夜と燐子と先生以外弁護人側か検察官側の列にいる。紗夜と燐子が真ん中で、俺は少し離れた所に座らされている。先生は俺の横にいるけどな。

 紗夜と燐子がこっちに視線を送ってくるが、残念俺にはどうしようもない。郷に入っては郷に従えということだ。

 

 

「それでは氷川さん、白金さんの順に質問に答えてもらいます」

 

「…授業に戻りませんか?」

 

「戻りません。あなた方は質問に答えるだけでいいのです」

 

「裁判長!私から質問よろしいでしょうか!」

 

「構いません。この人数ですから一人につき一つの質問だけですよ」

 

「もちろんです。では二人は湊くんといつどこで出会いましたか」

 

「氷川さん」

 

「…仕方ありませんね。私の場合中学2年生のときに妹が突然彼を家に連れてきた時ですね」

 

『『なるほど!』』

 

「…日菜への認識ってこんななのか」

 

「彼女はこの前のデビューで知られましたからね」

 

「では白金さんは?」

 

「わ、私は…バンドの練習の時に…初めて会いました」

 

「私と白金さんが所属しているバンドのボーカルの方が彼の姉なんですよ」

 

「普通だね」

「ギルティポイントは無いね」

 

 

 なんだギルティポイントって、貯まったらどうなるんだ?…知らないほうがよさそうだから聞かないけど。

 この状態は次の授業が始まっても続いた。俺と燐子の接点はあまりないから燐子は早々に開放された。俺の隣(先生の反対側)に座り紗夜に申し訳なさそうな視線を送っていた。まぁ紗夜に質問が集中するからな。

 そうそう1時間目の授業の先生は解放されて代わりにその席に2時間目の先生が座った。わりとこういうノリが好きな人みたいでテンション上がってた。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「酷い目にあいました」

 

「お疲れ様」

 

「すみません…氷川さん」

 

「白金さんは気にしないでください。あなたは何も悪くないので。雄弥くんは反省してください。あなたの発言がきっかけなんですから」

 

「そうだな。ごめんな紗夜」

 

 

 お昼休みになって私たちはお弁当を持って屋上に移動していた。今日は風も出ていて日差しも穏やかなので快適です。普段は教室で食べるのですが、…雄弥くんが大変なことになりそうだったので白金さんを連れてすぐに移動しました。

 

 

「…そうやって頭を撫でればいいと思ってませんか?」

 

「悪い。クセになったみたいだ。リサとか日菜とかによくやるせいかな」

 

「…けど氷川さん……嬉しそうですね」

 

「なっ!そ、そんなことありません!白金さんは何を言ってるんですか…」

 

「気持ちよさそうに……してたので。…すごい柔らかい笑顔…してましたよ?」

 

「っ…忘れてください」

 

 

 まさか白金さんにそんなことを言われるとは、宇田川さんとよく一緒にいる影響なのかしら。で、ですがこれは仕方のないこと。私が雄弥くんに頼んだことではありませんし、雄弥くんが上手で気持ちが安らいでしまうからいけないのよ。

 

 

「…っていつまで続ける気ですか!」

 

「紗夜にやめろって言われなかったから」

 

「も、もう十分です」

 

「そうか。それじゃあ……あ、電話出てくる」

 

「はい」

 

 

 私たちとは距離を取って会話が聞こえないようにしてから雄弥くんは電話に出た。仕事関係なのかしら…そう思って気にしていると白金さんに微笑まれてることに気づく。

 

 

「…どうかしましたか?」

 

「いえ…氷川さんは…本当に雄弥さんのことが…好きなんだなと思って」

 

「なぁっ!?し、白金さん!?」

 

「ふふっ、以前…自分でも言ってたじゃないですか」

 

「あ、あれは…その…」

 

「もしかして…私今お邪魔…してますか?」

 

「そ、そんなことありません。むしろ居てもらうほうが助かります」

 

 

 不思議そうにしてる白金さんに私は日菜と約束したことをかいつまんで説明した。二人きりになっても自分を抑える自信はあるのだけれど、今日はどうかわからない。雄弥くんと同じ学校にいるという経験なんて雄弥くんが大学に通わない限りありえないことだから。後にも先にもおそらく今日一日だけの経験で、それを意識すると自分を抑える自信が薄れる。

 

 

「そういうこと…ですか」

 

「ええ。ですから白金さんには一緒にいてほしいのです」

 

「けど…それなら、少しだけ…甘えてみても…いいと思います」

 

「何を…」

 

「妹さんとの…約束のことは…わかりました。……ですが、氷川さんが言ったとおり…この経験は、今日だけです。……勿体無いと思います」

 

「で、ですが…」

 

「学校内ですし…みんなの目があるから…自然と抑えれる…と思います」

 

「そう、なのかしら。…ありがとう白金さん」

 

「いえ…力になれたのなら…よかったです」

 

 

 白金さんの後押しのおかげでちょっと甘えることができそうだ。そう思って雄弥くんがいる方を見ると、今は甘えるより怒らないといけない事案が発生していた。

 

 

「白金さん。彼は一体何をしているのかしら。私の目には誰か女の子を抱きしめてるように見えるのだけど」

 

「…そう、ですね。……あれは…隣のクラスの…丸山さん?」

 

「そう」

 

「ひ、氷川さん?」

 

「少し、ここにいてください」

 

「わ、わかりました」

 

 

 私が決心している間に一体何があったらそんなことになるのでしょうかねぇ?さっきの電話も仕事ではなく丸山さんからということだったのかしら。わざわざそんなとこで見せつけるようにしなくてもいいんじゃないかしら。そもそもあなたには今井さんが!!

 

 

「雄弥くん?何をしているのかしら?」

 

「…紗夜どうした?なんかものすごく怒ってるようだが」

 

「屋上で!私達に!見せつけるように!丸山さんを!誰かさんが抱きしめてるからよ!」

 

「そんな怒鳴るなよ…。学校中に響くんじゃないか?」

 

「それは今はいいのです!それよりも何故丸山さんを抱きしめてるのですか!」

 

「あ、あの紗夜ちゃん。これは私が悪くて、雄弥くんを責めないであげて」

 

「あの…氷川さん。…話を聞くのも…大切だと思います」

 

「…二人がそういうなら一応聞きましょう。すぐにこういうことをする雄弥は後で咎めます」

 

「それはやめないんだ…」

 

 

 丸山さんの話によると、丸山さんは今週末のライブのことを知らなかったとのこと。いえ、正確には日菜だけ何故か知っていたことで、他のメンバーは聞かされていなかった。雄弥くんのさっきの電話はマネージャーさんからの仕事の電話でこのライブの話とは別。メッセージで知らされた丸山さんはその嬉しさを分かち合う相手が欲しかったけど、同じメンバーの白鷺さんは友人と食事するためにクラスにはおらず、若宮さんは学年が違う。そこで雄弥くんが来ていると聞いた丸山さんは連絡を取ってここに来たと。

 

 

(日菜が何故知っていたかは帰ってから聞けばいいとして…)

 

「それで何故あの状況に?」

 

「え、えっと…雄弥くんに話したら雄弥くんもこのこと知ってたみたいで、それでやっと実感が湧いてきて、それで感動しちゃって」

 

「彩が泣き始めたからああなった」

 

「あなたは女性が泣いていたら誰でも抱きしめるのですか?」

 

「そんなわけないだろ。相手ぐらい選ぶ」

 

「では丸山さんに好意があると?」

 

「そうは言ってないだろ。ま、彩が事務所に入ってきた時からの付き合いだからな。多少は気にかけるってだけだ(・・・・・・・・・・)

 

「「「え?」」」

 

「なんかおかしなこと言ったか?」

 

 

 おかしいことは何一つ言っていない。しかしそれは雄弥くんじゃなかったら(・・・・・・・・・・・)の話。何にも興味を抱かないはずの雄弥くんが、丸山さんを気にかけてると言った。おそらくそれはPastel*Palletsのことも、もちろん日菜のこともなのだろうけど。ともかく私たちは雄弥くんのその変化に驚いていた。

 その混乱から最初に抜け出したのは一番付き合いが短い白金さんだった。白金さんは冷静に雄弥くんの変化を検証し始めた。

 

 

「雄弥さんは…丸山さん以外に…Pastel*Pastels以外に……気にかけてる存在は…ありますか?」

 

「ん?……そうだな。…たぶんRoseliaもかな。あんま干渉する気はないけど、成長は気になる…かな」

 

「そう…ですか。…ありがとうございます」

 

「…これって何の質問?」

 

「いえ…ただの、確認です」

 

「確認?」

 

 

 白金さんの意図は見抜けないようですね。なるほど、たったこれだけのやり取りですが、十分に収穫がありましたね。雄弥くんが今どう変わってるのかがわかるのはありがたいです。…今井さんたちにも今度伝えておきましょうか。

 

 

「…なるほど。はぁ、休み時間もそろそろ終わりますし教室へ戻りましょう」

 

「お咎めはなしか」

 

「いえそれは後日ということで」

 

「まじか」

 

「あ、私次の授業が移動教室だから先に戻るね」

 

「ええ。丸山さん、ライブ頑張ってくださいね」

 

「わ、私も…応援…してます」

 

「わぁ〜二人ともありがとう!絶対成功させるね!」

 

「そういうの言わないほうがいいんじゃないか?プレッシャーで、トチるぞ?」

 

「と、トチらないよ!」

 

 

 …なるほど、丸山さんは雄弥くんにとって気軽に話せる相手なのですね。私たちとはまた違った距離感。それがあの二人の仲の良さを成り立たせてるのですね。異性の友達、というものですね。

 

 教室に戻るときは皆さんに気づかれない所まで雄弥くんと手を繋いだ。授業は雄弥くんが座る席が隣ということもあり、心が暖かくなった。クラスの方たちにバレないように注意を払いながら甘えれる時に甘えさせてもらった。今日という日を私はわすれることはないでしょう。

 

 

(日菜には何故ライブのことを知っていたか聞かないといけませんね)

 

 

 それも忘れないようにしようと思いながら、彼を湊さんと今井さんと日菜がいる羽丘女子学園の手前まで手を繋ぎながら送りました。わ、私はこれだけでも恥ずかしいんですよ。




☆10評価 イワサクネサクさん
☆9評価 LyaFさん ありがとうございます!
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