陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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11話

 私たちPastel*Palettesのライブが決まった。それはすごく嬉しいことだけど、それと同時にこのライブが今後私たちが活動できるのかがかかるライブだから緊張する。けれど、これは私の夢への大切な一歩なんだ。だから私は自分の手で直接チケットを売りたいと思って行動に移した。

 

 

「Pastel*Palettesです!よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

 人が多く行きかう駅前でチケットを売ってるけど、買ってくれる人は全然いない。千聖ちゃんは今ここにはいないけど、他のメンバーは全員ここにいる。みんなが協力してくれてるのに…。

 

 神様は酷いよ。

 

 こんな時に限って雨を降らせるんだもん。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「はぁ〜。私たちもライブしようよ〜」

 

「リーダーと参謀に言ってこい。俺に言ったところで何も起きないぞ」

 

「疾斗と愁の同意があればライブできるんだ…。雄弥も手を貸してくれてよくない?」

 

「俺はライブがあろうとなかろうとどっちでもいいんだよ」

 

「これが売れてる者の余裕ってやつか!」

 

「…結花お前暇なだけだろ」

 

「あ、バレた?」

 

 

 Augenblick唯一の女性ということで私にもそれなりに番組の出演オファーが来る。これは一時のことだから、今後もオファーが来るように私なりに必死に出演してるんだよねー。どうなるか分からないけど。

 

 

「ってかなんで俺の部屋に来てるんだよ」 

 

「他のみんないないんだもん。パスパレでも見てみようかと思ったけどそっちもいなかったし」

 

「…パスパレもいないのか。それなら明日のスケジュールでも見とけよ」

 

「それは後でもすぐできるじゃん!雄弥とこうやって話すのは直接会わないとできないでしょ?」

 

「話すこともないだろ。俺は明日の準備があるしな」

 

「え〜あるよー。今は思いつかないけど☆」

 

「よし帰れ」

 

「や、だ!」

 

 

 雄弥が全然冗談を言わないことがわかってきたから、ガチで帰らせたいみたい。けど私はまだ帰りたくないから抵抗するわけで、体を翻して私の背中を押す雄弥の腕にしがみついた。

 

 

「ふっふっふ!これでは帰らせれまい!」

 

「…持ち上げて運んでもいいんだが?」

 

「お姫様抱っこならどんとこいだよ!」

 

「いや肩に担ぐ感じで」

 

「それは嫌!」

 

「なら自分の足で帰れ」

 

「帰っても暇だからやだ!」

 

 

 あ、すっごく面倒くさそうな雰囲気を醸し始めた。雄弥って表情変わらないわりに意外と雰囲気でわかるんだよね。いや、わかりやすくなったのかな。何がきっかけなのかはわからないけど、きっかけらしいきっかけもないのかもしれないけど、雄弥は変わってきてる。

 

 

「…大人しくしとくなら部屋にいていいぞ」

 

「やっさしー☆」

 

「騒いだら外に追い出すからな」

 

「じゃあ大人しくするね。…10分ぐらいは」

 

「限界早いな」

 

「あはは、やっぱり雄弥といる時が一番素を出せるよ」

 

「…他のやつの時は?」

 

「素ではあるけど…なんて言ったらいいのかなぁ。雄弥が一番落ち着く、かな?」

 

「聞くな」

 

「ごめんごめん。……あ!波長が合うってやつだ!」

 

「俺は合ってるとは思わんが」

 

「私は思うの☆」

 

 

 もちろん他のメンバーといる時だって楽しい。大輝はあの勢いのいいツッコミが面白いし、疾斗は一緒にバカやってくれるし、愁といる時は落ち着ける。けど雄弥は私の根本を見てくれる。隠したい私を引っ張りあげて接してくる。みんなは察して、触れないでいてくれるんだけど、雄弥は容赦ない。

 

 

「雄弥って何もないって言われるわりには、優しいし面倒見いいよね」

 

「そうか?そう思ったことなんてないぞ」

 

「それは自覚してないだけだよ。結構踏み込んでくることもあるじゃん?雄弥にそこまで影響を与えた人は誰なんだろうね〜」

 

「…さぁな」

 

(それでも私が話したくないこととかは一切触れないんだもん。ほんと、そこは変わってない(・・・・・・)

 

 

 雄弥は黙々と明日の準備をしてる。私が話しかけたらもちろん会話してくれるけど、話しかけなかったら黙ったまま。そんな雄弥の背中を見ながら今度はなんの話をしようかと考えていたら話題は外からやってきた。

 

 

「……結花そこから移動しといたほうがいいぞ」

 

「へ?なんで?…まぁ雄弥がそう言うなら」

 

「ユウくーん!」

 

「うわっ!?」

 

 

 私がさっきまで座っていたところは、突風(日菜)の通過地点になってた。あのまま座ってたら間違いなく私は被害にあってたね。

 

 

「…事務所内にパスパレはいないってさっき結花から聞いたんだが」

 

「結花ちゃん?…あ、部屋にいたんだ」

 

「今気づいたんだ…。それで日菜はなんで雄弥の部屋に来たの?」

 

「それは結花ちゃんにも言えることじゃない?」

 

「その話は後で部屋の外でやってくれ。それで日菜の用事は?」

 

「そうだった。あのねユウくん!」

 

 

 タオルで日菜の頭や体を拭きながら話を聞くと、どうやら日菜は遊びに来たわけじゃないみたい。千聖以外のパスパレメンバーで駅前に行ってチケットを手売りしてたら雨が降ってきたと。それで事務所に戻ろうとなったけど彩だけが残っているとのこと。

 

 

「あの馬鹿風邪引いたらどうする気だ」

 

「止めに行くの?」

 

「止めには行かないな」

 

「…ふーん」

 

「日菜は戻ってきてるパスパレメンバーと一緒にいろ」

 

「えーユウくんと一緒がいい」

 

「ダダをこねるな」

 

「はぁ、わかった…」

 

「じゃあ私も日菜たちと一緒にいようかな」

 

 

 千聖もそろそろ事務所に戻ってくるはず、パスパレがどう動くのかその瞬間でも見させてもらおうかな。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「Pastel*Palettesです。よろしくお願いします」

 

 

 雨なんかに負けたくない。次のライブがどれだけ大切なのかわかってる。短い期間での2回目のライブ。しかも今回は全員演奏できる。Augenblickのみんなが手を貸してくれてることは馬鹿な私でもわかった。

 

 

(ここまでやってもらったのに自分で何もしないなんて絶対に嫌!)

 

 

 そう思って始めたこの手売り、その気持ちはまだ残ってるけど、雨の中ひとりで手売りをして、それでも誰も止まってくれない。だんだん私は心細くなってきて、心が負けそうになってた。

 

 

(やっぱり…。わたしなんかじゃ……。雨と一緒にあたしの夢も消えていくのかな…)

 

 

 気持ちに比例して声も小さくなっていく。涙が溢れそうになってくる。

 

 そんな時だった。

 

 

 ここにいないはずの彼の声がしたのは。

 

 

「なんでそんな泣きそうになってんだよ。自分から始めたことだろうに」

 

「…ゆうや、くん」

 

「はぁ。まずはその泣き顔をどうにかしろ。そんなんじゃ誰もチケット受け取ってくれないぞ」

 

「うん…うん…」

 

「…ひとまずこっち来い」

 

 

 雄弥くんに手を引っ張られて私は一旦駅の屋根の下に来た。雄弥くんに渡されたハンカチで涙を拭く。

 

 

「雄弥くんは…なんでここに?」

 

「彩がバカやってるって聞いてな」

 

「なっ、バカって!」

 

「雨の中でもやるなんてバカだろ。風邪引いてそれをこじらせたらどうする気だ。ライブに影響が出るだろ」

 

「…それは。…でも何もしないなんて私には無理だよ!雄弥くんたちが裏で動いてくれてたことなんて私でもわかるもん!」

 

「彩に気づかれるとは」

 

「それは酷すぎだよ!?」

 

「少しは調子戻ったか?」

 

「へ?……あ」

 

 

 私に元気出させるにしてもこれはやり方雑すぎない?きっとリサちゃんの時とはやり方が全く違うんだろうね!

 

 

「その調子ならまだチケット売れるな?」

 

「え!?止めに来たんじゃないの!?」

 

「そう言ったか?」

 

「だってさっき…」

 

「止めに来たとは一言も言ってないだろ?」

 

 

 …たしかに。『バカやってるって聞いたから』とは言ってたけど、止めに来たとは言ってない。けど勘違いするから、あの言い方は誰でも勘違いするからね。

 

 

「その状態のチケット売っても誰も取りたいと思わねぇだろ。びしょ濡れなんだから」

 

「で、でも私何も持ってないよ」

 

「もう少し待て。届くから」

 

「届くって何が?」

 

 

 私の質問に雄弥くんは答えないである方向を指差した。つられてそっちを見るとそこには先に事務所に戻ったはずの日菜ちゃん、麻耶ちゃん、イヴちゃん。そして仕事から戻ったばかりであろう千聖ちゃんがいた。大輝くんと結花ちゃんまでいて、大輝くんが何か大きな荷物を持ってる。

 

 

「…あれって完全に荷物持ちで呼ばれてるよね」

 

「力仕事をあいつから取ったら何も残らないだろ」

 

「そ、そんなことないんじゃないかな」

 

「じゃあ他に何がある?」

 

「え、えっと……」

 

「ほらな」

 

「いやきっとあるよ!私があまり大輝くんのこと知らないだけだよ!」

 

「どうだろうね〜。私もないと思うな〜」

 

「ひゃっ!ゆ、結花ちゃん驚かさないでよ」

 

「ひゃっ!だって。聞いた雄弥?彩が可愛い悲鳴あげたよ」

 

「結花ちゃん!」

 

 

 私が結花ちゃんに翻弄されてる間に他のみんなも屋根の下まで来て、千聖ちゃんが私に近づいてくる。

 

 

「彩ちゃん。説教は湊くんがやってくれただろうからしないけど、生半可な気持ちじゃチケットは売れないわよ。この雨に負けないように声を出さないと」

 

「千聖ちゃん…うん!」

 

「雨でチケットが濡れないようにコレに入れてきたから思う存分やってこい」

 

「ありがとう大輝くん!これって大輝くんが?」

 

「そんなわけないじゃん。この短時間でやったのは疾斗と愁だよ。大輝はただの荷物運び☆」

 

「役立たずみたいな言い方は結花だけにはされたくねぇな」

 

「コレ用意したのは私だからね?」

 

「は?」

 

「ね?雄弥」

 

「そうだな」

 

 

 大輝くんがフリーズしたけど、雄弥くんが行ってこいってジェスチャーを送ってくる。い、いいのかな?

 

 

「ほら彩ちゃん行くよ!時間は限られてるんだからね!」

 

「ひ、日菜ちゃん引っ張らないでー」

 

「ではワタシたちもいざ出陣!ですね」

 

「戦ではない気が…」

 

「あら、今日の成果がライブに響くなら戦とも言えるわよ?」

 

 

 私一人じゃない。Pastel*Palettesのみんながいてくれる。雄弥くんたちも支えてくれてる。それは事務所の人たちも協力してくれているからできること。

 

 みんながいるから、私は前を向けるんだ。

 

 この後雨で体が冷えた私たちは、事務所内の雄弥くんの部屋から行ける隠し部屋の大浴場に入ることになった。結花ちゃんもせっかくだからって一緒に入った。この大浴場も事務所(前社長)との勝負で勝ち取った報酬の一つらしい。彼らの存在がまた謎に包まれた瞬間だった。

 

 




☆10評価 百式機関短銃さん 
☆8評価 kurisavaさん ありがとうございます!
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