陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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12話

「雄弥はたしか今日はパスパレのライブを見届けるんだっけ…。午前中から何をするかはわかんないけど…」

 

「あらリサ最近雄弥くんと一緒にいれなくて不満なのかしら」

 

「か、母さん何言ってるの。そんなわけないじゃん、アタシそんな子供じゃないからね」

 

「そうかしら?雄弥くんのことになるとリサって誰から見てもわかるぐらいに表情が変わるわよ?」

 

「うそ!?」

 

「ほんとほんと」

 

 

 そ、そんなわかりやすいかな…。思い返してみるとあこにも指摘されたことがあったような。いや、あこはあこで周りをよく見る子だからあこを基準にはできないか。…あれ?アタシの周りで気づいてなさそうな子がパッと思いつかない。…まさか本当に。

 

 

「まぁそこは置いとくとして、リサ雄弥くんのところに行ってきたら?まだ家にいるはずでしょうし」

 

「で、でも今日は午前中から予定があるらしいから今から言っても迷惑かけるだけだよ」

 

「何を遠慮してるのよ。ちょっとでもイチャついてきなさい」

 

「イチャつかないから!」

 

「けど会いには行くのは否定しないのね。そんなに会いたいのね」

 

「あ……」

 

 

 そうだった。母さん相手に言葉勝負じゃ勝てないんだった。遠慮なく上げ足をとる人だしね。

 

 

「さぁさぁそうと決まれば今すぐ会ってきなさい。お化粧なし、オシャレなしのすっぴん状態で行ってきなさい!」

 

「それはさすがにちょっと…」

 

「も〜、自信持ちなさいよ。あなたは我が娘ながらすっぴんでも十分可愛いんだから。ね?雄弥くん(・・・・)

 

「なっ!……え?ゆうや?」

 

「そうですね。というかすっぴん状態のリサなんて何度も見てますから、今さら躊躇わなくてもいいと思いますけどね」

 

「ね〜」

 

「え?ちょっ…ええ?」

 

 

 まずなんで雄弥が家に来てるの!?しかもいつ入ってきたの!アタシ全然玄関が開く音聞こえなかったんだけど!

 

 

「ふふっ、サプライズ大成功ね!」

 

「母さんに朝早く起こされたと思ったら、こっちに行けって言われて何がなんだかって感じでしたけどね」

 

「雄弥くんはリサが相手だと隠し事を隠せないからね〜。リサが寝てる間に来てもらってスタンバイしてもらってたのよ」

 

「この後何するのかは聞いてないですけどね」

 

「この後はリサに丸投げよ♪」

 

「…時間が来るまでリサと過ごせばいいんですね?」

 

「そういうこと〜♪」

 

 

 アタシを置いてけぼりにして二人で話が進んでいく。正直まだ頭の整理が追いついてないから話に加われないんだけど…。

 

 

「とりあえず朝ごはんにしましょうか。その間にリサも落ち着くでしょうし、雄弥くんの分もあるから食べてね」

 

「ありがとうございます」

 

「う、うん」

 

「じゃあテーブルに座って待っててちょうだい♪」

 

 

 言われたとおりアタシと雄弥はテーブルに並んで座る。父さんと母さんが横に並んで、その対面にアタシ。雄弥が来たときはアタシの隣に雄弥が座る。それが定番になってる。

 何度も経験してることなのに、まさか今日会えると思ってなかった雄弥に会えたことでアタシの心は落ち着かないでいる。

 

 

「リサ」

 

「ひゃい。にゃ、にゃに?」

 

「…噛みまくってるな、今日調子悪いのか?」

 

「〜っ!だ、大丈夫、どこも悪くないよ」

 

「ならいいけど…。それでリサの今日の予定は?」

 

「へ?」

 

 

 まさか雄弥にアタシの予定を聞かれる日が来るなんて。今まではアタシの方から一方的に予定を教えてただけなのに。…紗夜が言ってた通り、雄弥は少し変わったみたい。

 アタシが何かした覚えはない。雄弥が変わるきっかけを与えた覚えはないのに、だけど雄弥は少し変わった。嬉しいけど寂しい。きっとAugenblick関係で変わったはずだから。

 

 

(アタシじゃない、それがこんなに心を締め付けるなんて…)

 

「友希那から今日はバンド練無いってのは聞いてる。けどリサは色々と掛け持ちしてるからな。予定がどうなのか聞きたかったんだが、聞いちゃまずかったか?」

 

「う、ううんそんなことない!…雄弥に予定聞かれるの初めてだったから驚いてただけ。アタシ今日はテニス部で午後練があるだけだよ。だから夕方からまた予定が空いてる」

 

 

 もしかしたら雄弥からアタシを誘ってどこか連れて行ってくれるのかもしれない。今まではそんなこと一切無かったから、それで考えたら淡い期待ってことになるんだけど。雄弥に初めて予定を聞かれた今日なら、そのもしもがあるかもしれない。

 

 

「夕方からか……今日の仕事が終わったら連絡するから、そのまま予定空けといてくれ」

 

「そ、それってどっかに連れて行ってくれるってこと!?」

 

「そうなるな。…そんな驚くことか?それと椅子から落ちるなよ」

 

 

 雄弥に言われて自分の今の状態を確認すると、まず座ってる位置は椅子の端っこ。両手は雄弥の腕を掴んでいて、目の前には雄弥の顔が…。アタシは雄弥と顔が当たりそうになるぐらい詰め寄っていた。

 

 

「あ……ご、ごめん」

 

「別に何もなかったからいいんだが」

 

「…雄弥って他に誰か誘ったことある?」

 

「ないぞ。リサが初めてだな」

 

「そう、なんだ…」

 

「リサは初々しいわね〜」

 

「み、みてたの?」

 

「バッチリよ!動画も取っておいたから♪」

 

「消して!」

 

「嫌よ!それよりご飯食べましょう。冷めちゃうわ」

 

「うぅ…」

 

「動画ぐらい気にするなよ」

 

「だって…恥ずかしいもん

 

 

 母さんのことだから、絶対後になってから何回も再生するんだよね。父さんが帰ってきた時とか見せそう。それで二人で弄ってくるんだよね。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 朝ごはんを食べて、とりあえず母さんに弄られないようにするために雄弥の手を引っ張って部屋に駆け込んだ。突然の雄弥の来訪と母さんの弄りのせいで落ち着けなかったけど、やっとのことで今の状況を整理できた。

 アタシは雄弥と二人横並びでベッドに腰掛けて雄弥に体を預けてる。前のお泊り以降全然会えなかったし、前学校で会った時もあんま話せなかったからこうしていられると心が温まる。

 

 

(今は雄弥と二人きり…。夜も雄弥がどこかに連れて行ってくれるんだよね)

 

「急に機嫌よくなったな」

 

「やっと整理できたからね。雄弥とこうして二人でいるのなんてお泊り以来だしね」

 

「…そこまで日にち空いてない気がするんだが」

 

「アタシはもっと雄弥と一緒にいたかったの!雄弥はそうじゃないかもしれないけどさ…」

 

 

 自分で言って悲しくなってくるね。雄弥は欲がないから、ただ身内がいてくれたらそれで満足するから、アタシみたいにそれ以上を求めない。アタシが求めたら雄弥は応えてくれるけど、それはそれで嬉しいけど、アタシは雄弥の一番になりたい。

 

 

「たしかに俺はリサほどそうは思わないな」

 

「ーっ!……そうだよね」

 

(あはは、…アタシなんでこんな辛いんだろ。わかってたことなのに、雄弥がそういう人だってことは)

 

「けど、俺もリサといられる時間は居心地がいい(・・・・・・・・・・・・・・・・)と思ってる」

 

「え?」

 

「他のやつといる時が落ち着かないとかじゃないんだけどな。リサといるときはまた別な気がする」

 

「そっか」

 

 

 まさか雄弥の口からそんな言葉が出てくるなんて。これはやばい、頬が緩みまくって直らないよ。

 

「リサ?」

 

「えいっ!」

 

「……何がしたいんだよ」

 

「このままでいたい、かな。…うん、今はこのままで」

 

 

 雄弥の中でその気持ちがどの位置づけになるのはわからない。家族である友希那と同じように考えられちゃうのか、それともそことも違うのか。今はその答えは求めない。

 アタシは雄弥を押し倒して仰向けになった雄弥の上に寝転ぶ。雄弥は冷静になってるけど、雄弥の心臓は前の泊まりの時みたいに早くなってる。もちろんアタシなんて心臓バックバクなんだけどね。

 

 

「わかった。時間が来るまでか、リサが満足するまでだぞ」

 

「ありがとう。それとね…」

 

「頭を撫でればいいんだろ?」

 

「…うん」

 

 

 やっぱりこうされるの好きだな〜。雄弥に頭を撫でられて、雄弥の体温を感じて、雄弥の音を聞いて、雄弥に満たされていくこの感じが愛おしい。雄弥のことがどうしょうもないぐらい好き。もう好きも愛してるも超えるぐらいに好きなんだ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 どれぐらいの時間そうしてたのかはわからない。ただ、この状態がさっきの二つ以外の条件で終わってしまった。原因は家のインターホンが鳴ったのと同時に雄弥の携帯に電話が来たことだった。

 

 

「電話に出るぞ?」

 

「…うん。どくからちょっと待って」

 

 

 最後に雄弥にギュッと抱きついてからベッドから降りる。雄弥は起き上がりながら携帯の画面を見て不思議そうな顔をした。なんでその相手から電話がかかってきたのかがわからないみたい。

 

 

「…とりあえず出るか」

 

『あ、やっと電話出た。もっと早く取るかと思ったのに』

 

「なんか用か?」

 

『用がなかったら電話しちゃだめなの?』

 

「…暇なだけだろ」

 

『ごめんごめん、それで合ってるけどさ。遊ぼうよ』

 

「今日は仕事あるだろ」

 

『だけど集合時間までまだ時間あるしさー。なんかジッとしてられないから』

 

「それなら疾斗か大輝呼べよ」

 

『二人ともダメだったからさ。雄弥はいけるかと思って』

 

「俺今家にいないからな」

 

うん知ってる。家にあげてもらったよ(・・・・・・ ・・・・・・・・・・)

 

「は?」

 

『ちなみに今井さんの方ね☆』

 

「……」

 

 

 あ、雄弥が面倒くさそうな雰囲気を出し始めた。…なんかこれアタシも巻き込まれそうな気がしてきた。

 

 

「おっじゃましまーす☆」

 

「人の部屋にはノックして入れ」

 

「そうだったそうだった、ごめんね?」

 

「えっと…、たしかボーカルの藤森結花さんだよね」

 

「そうだよー。呼び捨てでいいからね?私もそうさせてもらうし」

 

「わかった。アタシは雄弥の幼馴染の今井リサ、よろしくね結花」

 

「ここはアタシも自己紹介してたほうがいいね。雄弥と同じ(・・・・・)Augenblickのボーカルをしてる藤森結花だよ。よろしくねただの幼馴染の(・・・・・・・)リサ」

 

 

 …やけに一部強調してきたね。これはあれかな?アタシへの当てつけなのかな?アタシじゃ立てない場所に立ってるんだよって言ってきてるのかな?

 

 

「なんでお前らそんな喧嘩腰なんだよ」

 

「おばちゃんは火中の雄弥くんが平然としてることが疑問だわ〜」

 

「どういうことですか?」

 

「母さんなんで家にあげたの!」

 

「雄弥くんと同じバンドの子なんでしょ?断る理由がないじゃない」

 

「…そうだけど」

 

「あとは修羅場を見たかったから!」

 

「それが本音だよね!!」

 

「あはははは!面白いお母さんだね!…大丈夫だよリサ、どれだけ雄弥のことが好きか見たかっただけだから。奪う気はないからね?

 

「へ?……な、なんでそれを///」

 

「分かりやすいもん。ま、応援してるから頑張ってね〜。雄弥は難しいよ

 

「うん、わかってる」

 

「…大丈夫そうだね」

 

 

 てっきり色んな意味で大変な人かと思ったけど、案外いい人だった。やっぱり人って実際に話してみないとわからないよね。

 

 

「さてと、それじゃあ雄弥今からデートしに行こ!」

 

「これから仕事だろ」

 

 

 前言撤回、この人は野放しにしてちゃいけない。さっき本人が言ったことは本当なんだろうけど、アタシの心が大変なことになる。

 

 

「ダメ!雄弥は今日アタシといるんだから!」

 

「だからこれから仕事だって」

 

「アタシも付いてく!」

 

「は?」

 

「結花が変なことしないように見張るためにアタシも付いてく!」

 

「いやリサは今日部活あるだろ」

 

「……休む」

 

「ダメ」

 

「うぅー」

 

 

 食い下がるあたしを見かねたのか、雄弥にアタシだけに聞こえるように耳元でボソボソっと言われた。アタシはその言葉を信じて、部活に行くことに決めるのだった。

 




☆10評価 syugaaaさん
☆9評価 パスタおにいそんさん 友希ストさん 慶和さん Phalaenopsisさん 
☆7評価 猫鮪さん ありがとうございます!
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