それと、前後編にしたら短くなると思いきや後編はそんなことなかったです。
練習の時にそれぞれ考えてきたセットリストを言い、どうすれば今の私たちにできる最高のライブができるか、意見を出し合う。リーダーの私が率先して行わないといけないのに、昨日聴いたお父さんの曲が頭から離れないせいで発言できずにいた。
「友希那さんはどう思いますか?」
「……」
「友希那さん?」
「へ?…あ、ごめんなさい」
「友希那どうしたの?どこか具合悪かったり?」
「いえ大丈夫よ…。……あなた達に聴いて貰いたい曲があるの」
「私達に、ですか?」
「ええ」
昨日聴いたあの曲を練習に持ってきていた私はすぐに再生した。お父さんの曲を…、リサは気づくでしょうけど。
「…カッッコイイー!!あこ、この曲をライブでやりたいです!」
「私も…いいと思います」
「リサ姉は?」
「アタシは……」
「……ごめんなさい、やっぱりこの曲はやめときましょう」
「ええ!?」
「友希那…」
「この曲は私達のレベルには見合ってないわ」
「そこはいっぱい一生懸命練習しますから!」
「…既存の曲でやりましょう。今日の練習はこれで終わりよ」
「ちょっ、友希那」
私だってこの曲をやりたい。けれど、私には歌う資格がない。この曲を歌う資格が…。
〜〜〜〜〜
「あこあの曲をライブでやりたいんだけどなぁ。レベルが足りないのはあこもわかってるけど、そこはいっぱい練習するのに…」
「…もしかしたら、…友希那さんが言ってたのは…違うことかも」
「違うこと?」
「うん。…それが何かは分からないけど……今井さんと雄弥さんは知ってるのかも」
「リサ姉と雄弥さん…。あ、友希那さんたちだ!あこちょっと行ってくるね!」
「へ?あ、あこちゃん!?」
りんりんと歩いてたら前に友希那さんとリサ姉がいた。あこはうまく喋ることができないから、だからあこの気持ちをそのまま友希那さんにぶつけなきゃ。
「…あこ?」
「どうしたの?それと燐子大丈夫?」
「…はぁはぁ、…はい…大丈夫、です」
「あ、ごめんねりんりん…」
「ううん。気にしないで」
「それで二人はどうしたの?」
「えっとね、友希那さんにお願いがあって」
「私に?」
「あの曲をあこはライブでやりたいです!いっぱい練習しますし、絶対にライブに間に合わせますから!」
「私も…やりたいです。…私は友希那さんの歌が好きだから…熱くて扇情的な歌が…だから、私もあの曲をライブでやりたいです」
「…ありがとう。けれど、私には…あの曲を歌う資格がないのよ。…帰るわよ」
「あ…」
歌う資格がないってどういうことなんだろう。リサ姉に聞いたら教えてくれるのかな。雄弥さんは教えてくれそうだけど、連絡先知らないし。
「リサ姉…」
「ごめんね、アタシが勝手に話していいことじゃないから…」
「…わかった。…それはそうと雄弥さんは最近忙しいのかな?また練習見てもらいたんだけど」
「雄弥?忙しいのはあるんだろうけど…、雄弥の連絡先教えてあげるよ。そうすれば予定合わせやすいだろうしね♪」
「え、いいの!?」
「もちろん♪」
「よかったねあこちゃん」
「うん!」
「……これでよしっと。まぁ雄弥は今ロケでこっちにいないから、予定合わせれてもライブの後だろうね」
「ライブには来てくれるのかな?」
「それは間に合うって話だったよ」
「やった!成長したとこ見せないとね!」
「雄弥さんの…弟子、だもんね」
「うん!一番弟子はリサ姉だから二番弟子だけどね」
「あはは、アタシが一番弟子か〜。これはアタシも気合い入れないとね。っと、それじゃあ、アタシは友希那追いかけてくるね」
「あ…引き止めてしまってすみません」
「ごめんねリサ姉」
「これぐらいいいって。それじゃあまた明日」
「はい」
「またねリサ姉」
けっこう引き止めちゃったなー。ついついリサ姉に甘えちゃうんだよね。あこももっとしっかりしなきゃ。
〜〜〜〜〜
「それで、結局友希那は父さんの曲を歌うのか?」
『それはまだわからないよ。アタシとしては歌ってほしいんだけどね』
「…歌う資格、か。その資格がないのはむしろ俺だろうな。友希那には父さんの曲を歌う資格がある」
『…雄弥』
「リサは友希那に何か伝えたんだろ?」
『うん。これだけ悩んでるのは音楽に真剣に向き合ってる証拠だって』
「そうか。それだけ言えば十分だろ」
『そう、なのかな…』
「心配性だな」
『アタシの性格だから仕方ないことなんですー』
…そんな拗ねた態度取らなくていいだろ。友希那も俺も、リサには助けられてばっかりだな。未だ自立できていない、か。
「雄弥ー、ひまーー」
「こっちは電話中だ」
『…雄弥、今いるのは宿で自分の部屋って言ってなかった?』
「言ったぞ。今も部屋の中で電話してるからな」
『なんで結花の声が聞こえてくるのかな?』
「それは私が雄弥と同じ部屋で寝るからだよ☆」
「…携帯奪うなよ」
「これだけ言えたら満足だから返すね」
携帯を奪ったと思ったらリサに一言言うだけで満足って、それならわざわざ携帯を奪わなくていいだろ。伝言程度なら俺から言っとくんだがな。
「勝手なやつだな…、もしもしリサ?」
『雄弥ってば女の子と同じ部屋で寝るんだ?』
「昨日は違ったんだがな。結花と同じ部屋だった女性スタッフに代わってくれって懇願されたから代わった」
『へぇ~、でも別に雄弥が代わる必要はなかったんじゃない?女性スタッフは他にもいるんでしょ?』
「みんな断ったらしくてな」
『それでもやっぱり雄弥の必要はなくない?』
「そこはくじ引きで決まったんだが…。リサ何をそんな怒ってるんだ?」
明らかにさっきまでとは声のトーンが変わってる。このパターンは怒り+嫉妬だったような…。
『雄弥が女の子と同じ部屋で寝るから怒ってるの!!』
「……リサとも同じ部屋で寝ただろ」
『それとこれとは別!!』
この後1時間近くリサに怒られ、最終的に1日デートと泊まりに行くことで落ち着いた。けれど、向こうに戻ったらまた怒るとのこと、今日は時間が遅くなってきたから説教が終わったのだとか。
電話が終わって携帯を見ると友希那からメッセージが送られてきた。そこにはシンプルに、だが決意がこもった文字があった。
『お父さんの曲を歌う。ライブを絶対に見に来て』
(見に行かないわけがない。見どころが増えたわけだしな)
「そのライブって私も行っていいかな?友希那の歌を生で聞いたことないしさ」
「なんで覗き込んでんだよ…。ま、来ていいだろ」
「じゃあ迎えに来てね〜」
「自分でたどり着け」
結花の家からそんなに離れてないだろ。道もややこしくないんだしな。
友希那に見に行くことと、結花も行くことを伝えてから就寝した。ロケはまだまだ続くからな。
(歌に全て込めるんだろうが、器用というか不器用というか)
〜〜〜〜〜
Roseliaのライブ当日、ライブハウスに向かおうと思ったら父さんも見に行くらしく、二人でライブハウスに向かった。父さんが見に行くのは意外だったが、友希那にお願いされたらしい。…自分の歌を娘が歌うとなれば聴きに行きたくもなるか。
結花とも待ち合わせをしているため、父さんと二人で待つことになった。結花もまさか親がいるとは思っていなかったようで、近づいてきて一旦固まってた。
「は、はは、初めて!藤森結花といいまひゅ」
「噛んでるぞ」
「うるさい!」
「はぁ、この子がAugenblickのボーカルで、俺たちの大事なメンバーだ」
「は、はずかしいからぁ」
「はは、雄弥が変わってきたとは聞いたが…実際にこういうとこを見ると感慨深いものだな。初めまして藤森さん、友希那と雄弥の父、湊昴です。雄弥の相手は大変でしょうけど、よろしくお願いします」
「は、はい」
「…いやいや付き合ってないから。彼女の紹介とかじゃないからな?」
「分かってるさ。だが、挨拶は大事だろ?」
「勘違いするやつが出そうな挨拶だったけどな。結花もそろそろ落ち着いたらどうだ?」
「ぷしゅ〜…」
駄目だこいつ聞こえてないな。ってか『ぷしゅ〜…』って言うやついるんだな。…仕方ない、ここにずっといる必要もないし、手を引いて中に入るか。ライブが始まれば結花も何とかなるだろ。
ライブが始まり、いくつかのバンドの演奏を聴く。父さんはそれぞれのバンドのその姿勢に目を向けているようだったが、結花は退屈そうにしていた。向上心の塊である結花からしたら目的のRoselia以外は聴く気がないのだろう。…俺?特に何も思わないな。
「結花、次がRoseliaだぞ」
「やっとだね☆」
「…復活早いな」
「友希那の生歌聴けるの初めてだもん!前々から聞きたかったんだよね〜」
「だってよ父さん」
「…父親として嬉しい限りだな」
Roseliaが出てきたところで他の客たちは一気にテンションを上げた。Roseliaの注目ぶりがよくわかる。その人たちとは反対に俺たちは冷静になった。俺は成長具合を見るためと友希那の覚悟を見極めるため。結花は友希那の技術を見るため。父さんは友希那の音楽への思いを聴くため。
1曲目と2曲目はRoseliaの既存の曲が行われた。ということは、3曲目が父さんの曲なのだろう。短い期間でストイックな友希那と紗夜が納得できるレベルまで引き上げたはず。
その推測通り、Roseliaは完成度の高い演奏をした。父さんの曲をカバーしているわけだが、Roseliaの曲として多少アレンジを加えてあるようだ。
「…少しは前に進めたようだな」
「雄弥が仕組んだのか?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。これを狙ってたわけないだろ。俺たちにはこの歌を演奏する資格が無かったから、あのカセットテープを友希那の部屋の押し入れに入れただけだ」
「…あの時か」
「そう。
「雄弥はそれを断ったんだ」
「楽しむために作られた曲を売るために使うのは筋違いだからな」
「そっか〜、あの曲私はけっこう好きだな〜」
「ありがとう、藤森さん。もしよかったら違う曲を歌ってみるかい?」
「え?いいんですか!?」
未だに売るための演奏から抜け出していないんだが、俺たちが演奏していいのか?父さんがこう言うってことは、良いってことなんだろうけどさ。
「今のAugenblickなら構わないさ。何より歌う藤森さんが音楽を楽しむからね。今度雄弥に曲を伝えておこう」
「やった!ありがとうございます!」
「…これから練習しに行くんだろ?先に出といていいぞ」
「うん、ありがとう!それじゃあ失礼します!」
「…雄弥、お前たちAugenblickは
「バンド活動…って言っても無駄か」
「当然だ。無論それもあるのだろうが、裏は別なのだろう?」
「…まぁな。といっても興味ないから俺も深くは知らないし、関わっていないが…。父さん、それ以上は踏み込まない方がいい」
「…わかった」
まさか父さんが探るとはな。ま、忠告はしたからこれ以上は踏み込まないんだろうけど。さてと、Roseliaのとこに行くか。
〜〜〜〜〜
今日のライブは間違いなく最高のライブになった。父さんの曲も私たちの全てを出し切って演奏することができた。私の音楽への思いを込めることができた。そして、雄弥に対する私の答えも…。
「これは…」
「その文字って友希那のお父さんの?」
「そうみたいね」
『良い演奏だった』
「あはは、友希那はお父さん似だったわけだ」
「みたいだな」
「うわっ!雄弥驚かさないでよ!」
「リサのリアクションがオーバーなんだろ」
「そうね」
「ええーー」
普通にノックして入ってきてたじゃない。紗夜がドアを開けていたし。…?父さんがこの書き置きをしに来たのなら何故雄弥は部屋にいなかったのかしら。
「ここのスタッフと話があってな。父さんがこっちに来る時に別れた」
「…あなた心が読めるのかしら」
「読めないからな」
「雄弥さん!今度あこの練習見てください!」
「宇田川さん、雄弥くんは多忙なんですよ!」
「でも…」
「紗夜、予定を調整すれば見れるから問題ないぞ」
「ですが、そうなると雄弥くんが休める日が…」
紗夜が懸念するのは当然のことね。これからもっと忙しくなると聞いている以上あまり私たちの勝手に突き合わせるのは気が引けるわ。…練習に来てほしくないわけじゃないのだけれど。
「休む時にはちゃんと休んでる。1日仕事あってもずっと働いてるってわけじゃないからな。そこまで上に登りつめてないわけだし」
「…雄弥くんがそう言うのであれば」
「やったー!」
「よかったね、あこちゃん」
「うん!」
あこが雄弥に練習を見てもらう約束を取り受けたところで私たちは控室を出た。長居するわけにはいかないもの。リサの提案でこのあとはファミレスに行くことになった。定番化しつつあるわね。
いつもはリサと雄弥と3人で並んで歩くのだけれど、今日はリサが紗夜と先頭を歩いてその後ろにあこと燐子。少し離れて私と雄弥が歩く形になった。みんなに気を遣われたみたいね。
「父さんが言ったとおり、友希那たちの演奏はよかった。あのライブなら一番だな。結花もそう言ってたし」
「当然よ。私たちは頂点を目指してるのだから」
「…もしかしたら勝負するかもな」
「…?AugenblickとRoseliaなら畑違いじゃないかしら?」
「そうなんだがな。疾斗と大輝がそういうのを検討してる」
「そう。もしそうなっても私たちが勝つわ」
「ははっ、強気だな」
「当然よ」
「…それで答えは出たか?」
「っ!」
まさか雄弥から踏み込んでくるなんて思ってなかった。雄弥が言っているのは、きっと私の気持ちの答え、そして音楽に対する答えね。
「どっちも出たわ。私はもう迷わない。Roseliaのみんなと進んでいくわ」
「そうか」
「それと、もう一つの方も答えは出たわ」
「そうか。それならよかった」
歌に込めたのだから伝えたも同然なのだけれど、雄弥には伝わらないようね。お父さんは気づいてそうだけど。
(私には私なりの雄弥の支え方がある)
友希那は、本当にどうしようか悩んだんです。悩んで悩んで、抉らせない程度の健全なブラコンに落ち着きました。認めた相手じゃないとうちの弟は任せれない、みたいな。…あれ?これって最強ポジじゃね?他の子からしたらある意味最大の壁じゃね?
あ、それとAugenblickの裏設定にはこの主人公、本当にノータッチです。関わってるのは疾斗と愁とマネージャーです。
☆9評価 森の人さん ありがとうございます!