陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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週末にバイトを詰め込むから、週末にストックが減っていくという現象が起きています。


4話

 リサの家に居候することになって2日目、今回は空き部屋を掃除して使えるようにし、そこに布団と机を運び入れ、最低限の生活用品を揃えた。リサの両親は『キングサイズのベッドを用意するから』と言ってリサと同じ部屋にさせようとしていたが、リサが怒ってその話は消えていた。俺もそんな出費をしてほしくないから反対した。

 そんなこんなで人様の家に自分の部屋ができた俺は、極力家事を手伝うようにしている。俺が最も手伝えるのは朝食作りだ。必ず家に帰ってくるから朝の家事は確実に手伝えるからな。

 

 

「今日も助かるわ〜」

 

「居候の身ですからこれぐらい手伝いますよ」

 

「ふふっ、早く息子になってほしいわね。まぁそれは今はいいとして、今日の予定は?」

 

「朝から出勤ですね。仕事が終わったらそのまま天体観測しに行くので今日は帰ってこないです」

 

「天体観測かぁ。いいわねー、私も今度行ってくるわ」

 

「…それ今決めましたよね」

 

「もちろん!」

 

 

 この行動力の高さはいったいどこから出てくるのだろうか。おそらく一生の謎だろう。それはそれとして、今日の天体観測はこころという子の別荘に泊まって行うらしい。別荘を持てるほどの財力を持っている一家とはいったい…。

 

 

「さてと、手伝ってもらったら早く終わるものね。雄弥くんリサを起こしてきてちょうだい」

 

「…?リサなら自分で起きれるのでは?」

 

「そうなんだけどね。雄弥くんに起こしてもらうって普段からないことだし、新鮮でいいじゃない?」

 

「そういうものですか…」

 

「そういうものです!ささっ、行ってきてちょうだい!」

 

 

 背中を押されながら台所から追い出された俺は、大人しくリサの部屋に向かった。…起こしに行くならノックをしたところで反応がない気がする。だが、友希那にはノックをして入るように教えこまれているわけで…。

 

 

(…一応ノックをして、反応はないだろうから入ればいいか)

 

 

 そんなわけでノックをして入ったわけだが、リサはもう起きていた。昨日はまだ寝ていた時間だった気がするが、実は起きていて部屋にいただけなのかもしれない。

 まぁそれは今は置いておいた方がいいのだろう。とりあえず現状は間違いなく俺に非がある状態だ。1、返事を待たずに入った…これは寝ていると高を括ったのが間違いだった。2、リサが着替えてる時に入った(・・・・・・・・・・・・・)…これは間が悪かったと言えるのではないだろうか。いや1、で間違えた時点でこれも俺に非がある。そういえば、どうでもいいから細かいことは忘れたが、女性は寝る時にブラをしないそうだ。なんか体に悪いのだとか。今は関係ないか、俺もパニックになってるようだ。

 さて、俺が今すべき行動は…。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 謝ってドアを閉めるしかない。リサの悲鳴が響いたのは言うまでもない。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 昨日朝食に食べた雄弥の料理が美味しかった。アタシはそれを今日も楽しみにしつつ着替えることにした。その最中にドアがノックされた。たまに母さんが気まぐれで部屋に起こしに来ることがあるから、アタシはてっきり母さんかと思った。だから気にせず服を脱いだんだけど…、入ってきたのは母さんじゃなくて雄弥だった。

 アタシは固まった。羞恥心とか消えたんじゃないかってぐらい反応できなくて、パニックになった。それは雄弥も同じみたいで、いつも動じない雄弥が硬直した。けど先に動けるようになったのは雄弥で、一言謝ってドアを閉めた。アタシはそれを見てやっと雄弥に見られたことを認識できて、今さら羞恥心が込み上げて来て家中に響くぐらい悲鳴をあげた。

 

 

(みられたみられたみられたみられたみられたみられた!!ゆ、ゆゆ、ゆうやにみられた!!)

 

 

 自覚できるぐらい顔が真っ赤になって混乱してるアタシは、どうしたらいいのか何もわからずその場に佇んでいた。そんなアタシを助けてくれたのは、電話をかけてきた友希那だった。

 

 

「も、もしもし友希那?」

 

『リサ大丈夫?私の部屋まで悲鳴が聞こえたんだけど』

 

「え!?そんなに!?」

 

『ええ。それで朝からどうしたの?』

 

「実はね──」

 

 

 カーテンを少し開けて友希那の部屋を除くと友希那も同じようにこっちを見てた。アタシはさっきあったことを友希那に包み隠さず全て話した。友希那が親友だから話せるっていうのもあるし、雄弥の姉だからっていうのもある。

 

 

『はぁ…。今度雄弥に説教しておくわ』

 

「う、うん」

 

『でもよかったじゃない。見られたのが雄弥で』

 

「うん……んん?」

 

『あの子なら人の裸見たところで特に何も思わないでしょ。下世話な話なんて一切しないし』

 

「…それもそうだね。……うん」

 

『……リサ。まさか見られたことより、見られて雄弥が無反応なことの方に落ち込んでないかしら。親友が体で弟を誘惑するなんて私嫌よ?』

 

「へ?……いやいやいやいや、そんなわけないじゃん!」

 

『それならいいのだけれど。…そろそろ服ぐらい着たらどうかしら?』

 

「…………あ」

 

『はぁ〜、上の服を脱いだだけとはいえ体が冷えるわよ』

 

 

 アタシさっきからずっとこの状態で電話してたの!?友希那も先に言ってくれたらいいのに!…スピーカーにしたらよかったんだけど、そこまで頭が回らなかった。とりあえずスピーカーにして、服着なきゃ。

 着替えを再開してると友希那から聞き捨てならない言葉が飛んできた。

 

 

『まだ半裸だけだからよかったじゃない』

 

「よくないから!!友希那は見られてないからそんなこと………友希那も見られたことあるの?」

 

『あるわよ。脱衣所で。目が半開きだったから、疲れきってて意識が覚醒してなかったんでしょうね。本人も記憶になかったみたいだし』

 

「…………ごめん」

 

『…この話はやめましょ。お互い傷つくだけだわ』

 

「そうだね」

 

 

 脱衣所でって、それアタシより酷いパターンだよね。…けど雄弥ってそんなことしないようにしてるはずなんだけど。あ〜でも雄弥って意識がハッキリしてない時は、ただの天然になるんだっけ。…考えないようにしなきゃ友希那に悪いね。

 

 

『リサ今日の練習までには切り替えておいて』

 

「それはもちろん…できる、はず」

 

『…雄弥は今日朝から仕事、その後は天体観測に行くらしいから朝別れたら明日まで会わないわよ』

 

「え!?それ初耳なんだけど!」

 

『昨日電話で聞いたわ。リサには今日の朝言うつもりだったんでしょうね』

 

「そ、そうなんだ」

 

『これなら気持ちも切り替えれるでしょ?…そろそろ朝食だから切るわね』

 

「あ、うん。ありがとう友希那」

 

『どういたしまして』

 

 

 朝食……アタシも今から朝ご飯食べなきゃ。雄弥が今日も母さんと作ってくれてるはずだし。……あ、雄弥!

 

 

「ご、ごめん!部屋に来たのって朝ご飯ができたからだよね?」

 

「それもあるが、おばさんに頼まれたからってのもある」

 

「…母さんの差し金か

 

「リサ?」

 

「ううん!なんでもない!リビング行こ!」

 

「…そんな引っ張らなくても行くから。それと、さっきはごめん。着替えてるとは思ってなかった」

 

「う、うん……。あれはお互い忘れよ!というか忘れて!」

 

「善処する」

 

「…まぁいいや。それで朝ご飯は何作ってくれたの?」

 

「なんか今日は朝から豪勢だったぞ?たしか『今日は朝から面白いことになりそうだからその記念』だったか。面白いことってなんのことだろうな?」

 

「さ、さぁ〜。アタシもわからないかな〜」

 

(母さん狙ってたんじゃん!!)

 

 

 リビングに行くと父さんと母さんがそれはもう楽しそうに満面の笑みでいたよ。しばらく口聞かないって言ったら二人とも慌てて謝ってたけど。父さんなんて泣きかけてたし。

 朝ご飯を食べ終わったら雄弥と二人でソファに座りながら、雄弥の出勤時間までテレビを眺めてた。雄弥がサッパリした人のおかげか、お互い気まずくなるなんてことはなかった。…アタシは少し距離開けてたけど。

 

 

「それじゃあ行ってくる。さっき話したとおり今日は帰らないから」

 

「うん。何時ぐらいに帰ってこれるかわかったら連絡してね?」

 

「わかった」

 

「あらあら、新婚さんみたいなやり取りね〜」

 

「か・あ・さ・ん?」

 

「洗濯物干さないといけないんだった」

 

「…まったく」

 

「はは、いつも楽しそうだな」

 

「うん。それは嬉しいんだけど、偶には落ち着いてほしいかな」

 

「そうなのか。…じゃ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい♪」

 

 

 電話で言ったりしたことはあるけど、こうやって家から送り出す時に言うのは新鮮な気持ち。将来は毎日言えるのかな……、なんてね!

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 仕事をこなして時間を確認する。日菜に言われた時間にはなんとか間に合いそうだ。挨拶を軽く交わしながら帰り支度をして集合場所に向かう。

 予想通り時間には間に合った。そこには既に日菜ともう一人金髪の子がいた。この子が今回別荘を用意してくれた”こころちゃん”なのだろう。

 

 

「あ!ユウくんやっと来たー!」

 

「時間には間に合っただろ。…抱きついてくるのをやめさせるのは諦めたが、今日は力が強くないか?」

 

「待ち遠しかったの!ただでさえユウくんとはそんな遊べてないし!事務所では会うけど最近はすれ違って軽く話して終わりだもん」

 

「そうだったな。…今日は好きにしていいぞ」

 

「もっちろんそのつもりだよ!!」

 

「…で、なんで疾斗もいるんだよ」

 

「……巻き込まれた」

 

「なるほど」

 

 

 いつしか見た遠い目をする疾斗。疾斗をこの状態にさせられる人物がいるということは聞いていたが、この金髪の子がその子ということか。

 

 

「あなたが湊雄弥ね!私は弦巻こころよ!よろしく!!」

 

「ああ、よろしくな弦巻」

 

「こころでいいわ!私も雄弥って呼ぶから!」

 

「わかった」

 

 

 これでもかと言わんばかりに目を輝かせて、周りの人間を不思議と引っ張っていける存在。なるほど、どうりで疾斗を振り回せるわけだ。ただ、こころのこの感じは疾斗にとって嫌なものじゃないはず。むしろ疾斗に近いものだ。ということは遠い目をしてるのは、ただのノリなんだろうな。

 

 

(面白い天体観測になりそうだな)

 

「それじゃあ移動しましょう!車を用意してあるからみんな乗ってちょうだい!」

 

「…疾斗」

 

「言いたいことはわかるが、これが現実だ。こころの家はエゲツないぐらいの金持ちだ。色んなとこに口出しできるぐらいに」

 

「…なるほど」

 

 

 こんな高級車に乗る日が来るとはな。人生わからないものだ。日菜も目を輝かせながら車に飛び乗ってた。…いや飛び乗るなよ、マナーが悪いだろ。

 

 

「ほらほらユウくんもここに座って!」

 

「それじゃあお邪魔します」

 

「…躊躇わないのな」

 

「?高級車とはいえ車は車だろ?」

 

「いやお前さっき…」

 

「それはこころの金持ち具合が予想を超えてたからだが?」

 

「そういうことかよ」

 

「あはは!あたしもユウくんと一緒!車は車だよね〜」

 

「そうよ!遠慮する子もいるけど、私はそれがわからないわ!」

 

 

 一般人は遠慮するものらしい。たしかに豪華なものや輝かしいものは触れずにそっとしておきたいという考えが人にはあるらしいからな。

 

 

「ぎゅ〜♪」

 

「上機嫌だな」

 

「当然だよ〜。ユウくんと一緒なんだもん♪それにこうやって腕に抱きついて頭を肩に乗せるのって普段できないしね!」

 

「あれ面白そうね!疾斗私もやっていいかしら?」

 

「さすがにそれは俺があとで怒られ…」

 

「ぎゅ〜、これいいわね!」

 

「話を聞け!」

 

 

 俺と疾斗は二人が飽きるまでこの状態で居続けるのだった。といっても俺は慣れてるから平然としていたが、疾斗は慣れていないのと相手がご令嬢ということで少し疲れていた。案外こういう時の疾斗は小心者らしい。…もはや二重人格だな。ちなみに、日菜とこころがそれぞれ離れたのは目的地に着いてからだった。




☆8評価 キビンさん ありがとうございます!
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