陽だまりをくれる人   作:粗茶Returnees

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ストック作るためにこまめに執筆してますが、ふと思いました。第3章はしばらく倦怠期です!そんなんでもお付き合いくださいm(_ _)m
パスパレ2章のイラストが出ましたね。超かわいい!髪につけてるワンポイントの花をみんな自分のイメージカラーのやつではなくメンバーと交換してるのが特に最高。


6話

「…や、…うや!…雄弥!」

 

「…結花?いつの間に入ってきた」

 

「今入ってきたとこ。いつも言われるから今日はちゃんとノックしたよ?それなのに返事がないから入ってきたけど…。…いったいどうしたの?何かあった?」

 

「…別に」

 

「あったんだね。雄弥って嘘つかない分隠し事できないよね〜」

 

 

 それにしても雄弥ほんとにどうしたんだろ…。私が入ってきたことに気づかないことはたまにある。雄弥が何かに集中してる時とかね。けど、何もしてないのに気づかないなんて今回が初めて。

 

 

「結花には関係ないことだ」

 

「そうだけどさ。これから練習なわけだし、気持ち切り替えてくれないと影響出ちゃうじゃん?」

 

「それもそうだな。悪い」

 

「いいよ☆」

 

 

 普段の雄弥なら切り替えができるはず。だけど、今の雄弥がちゃんと切り替えられるかは正直不安。雄弥は何か悩みごとでもあるのかな?……雄弥が悩みごと?うーん、全ッ然分かんないや!

 

 ライブに向けてまた練習の頻度が増え始めた。より完成度を上げるためってのはもちろんのことながら、Augenblickはパフォーマンスも入れるからその練習と新しいパフォーマンスを取り入れられないかの話し合い。…まぁ疾斗はその場の思いつきでやることがあるし、雄弥もそれに合わせるから具体的にはどの範囲を動くか、なんだけどね。

 この手の話し合いに関しては雄弥が発言することなんて滅多に無い。自分が所属してるバンドのことなのに演出についてあまり案を出さない。みんなが話して決まったものをやるって割り切ってる。話し合いが止まったら発言をする程度。

 それとは反対に練習は真面目に取り組む。ストイックに、より精度を上げるために一番集中して練習するのが雄弥だ。そう。それが本来の雄弥(・・・・・)だ。

 

 

「雄弥また間違えてるぞ」

 

「…そうだな。悪い」

 

「雄弥調子悪いの?それならそうと言ってくれたら違うメニューを考えるのに」

 

「いや、調子が悪いわけじゃない」

 

「…雄弥、お前にこんなことを言う日が来るとは思わなかったが、練習には集中してくれ。練習の時間はライブのことだけに意識を向けろ」

 

「わかってる」

 

「わかってないからこうなってるんだろ!」

 

「大輝」

 

 

 今度のライブは私達の可能性を試すライブ。だから今の限界までレベルを上げる必要があるし、そのためには一回一回の練習を無駄にできない。誰よりも熱血的な大輝はそれをとても重視してる。だけど私は大輝を静止した。私から言ったほうがいい気がしたから。

 雄弥に近づいてバシッと勢いよく両手で雄弥の頬を挟む。そうして雄弥の視線が私の視線と重なるようにした。

 

 

「雄弥」

 

「結花痛いんだが」

 

「そんなのは今どうでもいいんだよ。今日雄弥のこと見ててわかった。雄弥でも悩みごとを抱えることがあるんだね」

 

「雄弥が…悩みごと?」

 

「…やっぱり意外なことなんだ。まぁともかく、雄弥が悩むってことはきっとそれは相当なことなんだろうね。人によって悩みごとの重みは変わるわけだけど、雄弥にとってはとても大事なことだよね」 

 

「そう、だな」

 

「うん。その答えを探すのは大事だし、必要なことだけど、それを練習に持ち込んじゃ駄目。仕事にも持ち込んじゃ駄目。プライベートの時間を使って考えて」

 

「…わかった。なんとかする」

 

「よし!今日は練習終わり!明日から頼むよ?」

 

「おい」

 

「だって今から練習再開するムードじゃないじゃん?やるなら自主練でよくない?」

 

「はぁ、そうするか」

 

「疾斗がそう言うなら僕もそうするよ」

 

「そんなわけで、雄弥は帰っていいよ。この後も予定あるんでしょ?ちゃんと切り替えなよ〜」

 

「…ありがとう結花」

 

「今度おすすめのカフェ連れてってね☆」

 

「うちのボーカルは抜かりねぇな…」

 

「あはは、それが結花だからね」

 

 

 むぅ、けっこう良い立ち回りしたはずなのに言われたい放題だね。ま、いっか!雄弥が調子戻らないと私も面白くないからね。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 今日は久々に雄弥くんに練習を見てもらう日。今井さんのことがあったりライブがあったりして中々時間を作ることができなかったから。…いえ、これは言い訳ね。

 私は雄弥くんとの距離をはっきりと掴めずにいた。私が好きになった雄弥くんと再会したとき、彼と今井さんの距離がとても近いことが嫌というほどわかったから。そしてその関係を崩してはいけないのだと思って自分の気持ちを押し殺していた。

 だけど私の妹は、日菜はそれを許さなかった。自分の気持ちを殺すことを良しとしなかった。私のことなんて放っておけばあの子にとっての障害は、今井さんと湊さんだけになったというに…。

 

 

「悪い紗夜。待たせた」

 

「いえ、私も来たばかりだから気にしないで」

 

 

 私たちはいつも練習に使っているスタジオの前で待ち合わせをした。来たばかりと言ったものの、実は待ちきれずに家を早めに出てしまっていた。それを見抜いたのか彼は本当に申し訳なさそうにしていた。…女の子を待たせてはいけないと教えこまれていたのだっけ。

 

 

「ここにいても仕方ないわ。中に入って練習しましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 ……?普段通りのはずの雄弥くんに何故か違和感を覚えた。見た感じ体調が悪いわけではなさそうだ。芸能界にいる以上体調管理には細心の注意を払っているらしいし、湊さんと今井さんがいるならそのサポートもされているはず。

 そうだというのに、今日の雄弥くんはどこかいつもと違うような感じがする。この違和感はいったい……。

 

 

「さてと、早速練習を始めるか。あこと練習した時には、曲の完成度を高めるために1曲を集中的にやったが、紗夜はどうする?」

 

(あー、そういうことなのね。…いえ確信はまだ得られないわ。早まってはいけない)

 

「紗夜?」

 

(だから確認を取らなくては。雄弥くんに、直接)

 

「雄弥くん、何かあったわね?」

 

「……何かって?」

 

「もっと具体的に言ったほうがいいわね。…天体観測の日に日菜に何を言われたのかしら?」

 

「ーーっ!!?」

 

 

 やっぱり日菜が関係してたのね。そこまでは私でもわかったのだけれど、それ以上のことはわからない。私は部屋の椅子を横に並べて座り、隣に雄弥くんを座らせた。

 

 

「…なんでわかった」

 

「日菜が帰ってきた時、あの子珍しく表情が一瞬曇ってたのよ。雄弥くんと遊んだ後はいつも満面の笑顔で、本当に幸せそうな顔をしてたあの子が。すぐに笑顔になったのだけれどちょっと引っかかってて、それで今日雄弥くんを見て確信したわ」

 

「俺ってそんなわかりやすいか?」

 

「雄弥くんを知らない人からしたら全く分からないでしょうね。けど、仲良くなった人なら、なんとなく気づくわ。といっても、全部が分かるわけでもないのだけれどね」

 

「そうなのか…」

 

「話してくれないかしら。もしかしたら力になれるかもしれないわ」

 

 

 雄弥くんの手にそっと私の手を重ねて、覗き込むように雄弥くんを見上げる。雄弥くんは話すことを躊躇ったけど、話してくれた。内容を掻い摘んで、話されたことを整理すると、日菜に恋愛について理解することを求められたということだ。そうなった経緯までは教えてくれなかったけど、あの子のことだからある程度予想はつく。我が妹ながら大胆なことをする。…いえ、日菜だからこそできたことね。

 

 

「…俺の答えを出さないといけないんだ。日菜が真剣に言ってきたことだから、この答えは必ず見つけてないといけない。…けど分からない。どれだけ考えても分からないんだ」

 

「雄弥くん…。そうね、これはとても大切なことだから日菜の言うとおり、雄弥くんが答えを探し続けるしかないわ」

 

「そうだな…」

 

「それでも私は焦らなくていいと思うわ」

 

「え?」

 

「恋愛というものがどういうことかについて悩む人なんて珍しくもないはず。それに、雄弥くんには雄弥くんのペースがあるのだから、焦らずに自分のペースで答えを探せばいいと思うわ。急いでいては冷静な判断はできないでしょ?それと同じ」

 

「俺のペースか…。……俺って…なんなんだろうな…。思考を放棄して、周りに甘えて、いざ答えを求められたら何もできない…」

 

 

 その先の言葉をくちに出させたらいけない。そんな気がして私は雄弥くんの頭を抱きかかえるように引き寄せた。一瞬体が強張ったけど、優しく髪を撫でていると段々と力が抜けていっているのがわかる。ひとまずは落ち着かせられたみたいね。

 

 

「雄弥くんがどういう存在なのか。私や日菜、今井さんや湊さんだけじゃなくて、白金さんや宇田川さん。AugenblickやPastel*Palettesの人たちにとってどういう存在なのかを、これを機に知ったらいいのよ」

 

「俺なんか…」

 

「それ以上は駄目よ。言っちゃ駄目。雄弥くんが思っている以上に周りの人たちにとって、雄弥くんは大きな存在なのだから。否定しないで」

 

「…そうなのか。ごめん」

 

 

 雄弥くんが隠していたこと、いえ無意識のうちに仕舞い込んでいたものを日菜が強引に引っ張りあげた。その影響で雄弥くんは今まで無視していたものを考えることになった。いずれは必要だったことだけど、私はもちろん日菜も雄弥くんの弱さ(脆さ)をわかってなかった。

 

 

(雄弥くんをここまで追い込む程に、この問いかけは雄弥くんにとって重たいものだったのね)

 

「……胸って柔らかいんだな」

 

「………は?……〜〜〜〜っ!!?」

 

「いたっ」

 

「雄弥くんのバカ!!」

 

 

 顔が真っ赤になった私は雄弥くんを思いっきり突き飛ばした。弱っていた雄弥くんはその勢いそのままに椅子から落ちて床にぶつかっていた。

 

 

「雄弥くんはデリカシーがないです!!」

 

「紗夜が自分から抱き寄せたんだがな」

 

「なっ!それは雄弥くんが見ていられない程に弱っていたから!」

 

「ははっ、そうだな。…ありがとう紗夜。おかげで吹っ切れた」

 

「……雄弥くんのバカ」

 

 

 雄弥くんは笑いながらゆっくりと立ち上がった。…このタイミングでその笑顔はズルいわ。怒るに怒れなくなるじゃない。それにしても、雄弥くんの本当の笑顔なんて今回が初めてね。

 

 

「時間を削っちゃったな。練習始めるぞ」

 

「…そうね。練習しましょうか。けどその前に、今回のご褒美を貰ってもいいかしら?」

 

「ご褒美?練習じゃ駄目か?」

 

「それは元から予定してたことだから駄目よ」

 

「…まぁなんでもいいけど。俺は何をすればいい?」

 

「簡単なことよ。目を瞑ってちょうだい」

 

 

 私のお願いに従って雄弥くんは目を瞑ってくれた。私は褒美(・・)を貰うために雄弥くんに歩み寄る。だけど、いざとなると緊張してしまう。

 

 

「紗夜?」

 

(ここで躊躇っていては駄目ね。私だって…)

 

「んっ」

 

 

 目を瞑っている雄弥くんの頬を挟んで少し下に引っ張り、私は軽く背伸びをして雄弥くんの唇を奪った。私自身驚くような行動ね。ついばむように軽く押し当てただけのキスだったけど、私は頬だけじゃなくて耳まで赤くなった。

 

 

「ん、さよ…」

 

「……あっ、ごめんなさい」

 

(私も酷い女ね。力になれるかも、なんて言っておきながら私も雄弥くんの重りとなるなんて)

 

「いやびっくりしただけ。今日は紗夜もいつもと違うな」

 

「そ、そうかしら……。それより練習しましょ」

 

「そうだな」

 

 

 遅くなってしまったけど練習を開始した。彼は完全に切り替えれたみたいだったけど、私は自分がやったことが頭から離れなくて時々集中が切れてしまった。それでも練習はなんとか実のあるものにはできた。練習の後には彼と食事に行き、帰りは家まで送ってもらった。

 

 

(今日は…いろいろあったわね。雄弥くんと……あ、あんなこと!)

 

 

 家に帰って部屋に戻っても今日のことが頭から離れず、ベッドの上で枕に顔を埋めて足をばたつかせた。それを日菜に見られたときは本当に恥ずかしかったわ。




紗夜は一人アメとムチができると思うのです。…アメばっかな内容でしたけど。
これでひとまず主人公に紗夜と日菜の存在が刻まれましたかね。…この状況どう考えてもただの三股じゃ…なんて奴だ。あと、主人公の設定上ヒロインたちみたくすごい深い所まで気持ちが沈むことはないんです。
本人は水深10mと思っていても傍から見たら2m的な。
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